美容クリニックの事業計画書は、保険診療のクリニックと同じ様式で書けますが、数字の作り方が違います。価格は自院で決め、売上には消費税がかかり、新規患者を集める手段として広告の比重が大きくなります。しかもその広告は医療広告等ガイドラインで書ける内容が絞られています。審査担当者が確かめるのは、この3つを織り込んだうえで返済できる数字になっているかどうかです。
この記事では、美容医療(医療脱毛・注入・美容皮膚科・美容外科)で開業する医師が融資用の事業計画書を組む手順を、施術枠からの売上試算、消費税と前受金の扱い、広告規制、2025年以降の美容医療規制と開設手続きの順に、公的資料に沿って説明します。
まとめ:美容クリニックの事業計画書で先に固める前提
- 売上は「税抜単価×1日の施術件数×診療日数」をメニューごとに積み上げる。件数は医師・看護師の施術枠と機器の台数から上限を出し、1年目の稼働率は自院の根拠で置いたうえで、稼働率を下げた場合の数字も並べる。
- 美容目的の自由診療の収入は消費税の課税売上になる。課税事業者になる時期を確認し、損益には納付する消費税を織り込み、資金繰り表は税込の実際の入出金で組む。
- 回数券やコース契約は前受金で、特定商取引法の特定継続的役務に当たると中途解約に応じる義務がある。前受金を設備投資の原資に数えない。
- 集客計画は医療広告等ガイドラインの範囲で組む。リスティング広告やバナーは限定解除の対象外で、割引額を強調するキャンペーンも不適切な広告の例に挙がっている。
- 外来医師過多区域では、自由診療だけの無床診療所でも開設6か月前の事前届出の対象になる。開業予定地の指定状況を物件契約より前に確認する。
保険診療のクリニックと美容クリニックで事業計画書が変わる3点
クリニック全般の事業計画書の組み立てや融資審査の評価軸はクリニック事業計画書が開業融資の成否を左右する理由と評価基準で扱っています。ここでは美容クリニックで上乗せして書くべき部分に絞ります。
1つ目は単価の根拠です。保険診療は点数表で単価が決まりますが、自由診療は自院が価格を決めます。そのため審査では「なぜその価格で、なぜその件数が来るのか」を、商圏内の競合の料金表と自院の施術枠で説明する必要があります。
2つ目は税金と入金の形です。保険診療の社会保険診療報酬は消費税が非課税ですが、美容目的の自由診療は課税売上です。一方で、審査支払機関を通して診療月の翌々月に入る保険診療の入金とは違い、現金・カード・医療ローンで受け取ります。カードや医療ローンの入金日は決済会社との契約で決まるので、入金までの日数を資金繰り表に入れます。前受金の比率が高くなる点も保険診療にはない特徴です。
3つ目は集客の制約です。美容クリニックでは、新規患者の獲得に使う広告費が売上計画の前提になります。その広告が医療法の規制を受けるため、「どの媒体に、何を書いて、いくら使うか」を規制の範囲で書いておかないと、計画と実行が食い違います。
公庫の創業計画書10欄に美容クリニックで書く中身
個人開業の融資先の選択肢として、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金があります。公庫の制度ページでは、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)とされています。創業計画書は公庫の書式ダウンロードページで配布されている様式(10欄)を使うか、自分で作った計画書で代えます。様式の基本的な書き方はパーソナルジムの事業計画書で解説した公庫の創業計画書の記入例と共通です。
| 創業計画書の欄 | 美容クリニックで書く中身 |
|---|---|
| 1 創業の動機 | 主力メニューと商圏の需要 |
| 2 経営者の略歴等 | 美容医療の経験年数・施術件数・専門医 |
| 3 取扱商品・サービス | メニュー別の税込価格と売上構成比 |
| 4 従業員 | 看護師・カウンセラー・受付の人数 |
| 5 取引先・取引関係等 | 販売先は一般個人・薬剤と機器の仕入先 |
| 6 関連企業 | 経営中の法人があれば記入 |
| 7 お借入の状況 | 住宅ローン・奨学金も含めて記入 |
| 8 必要な資金と調達方法 | 内装・機器(購入かリースか)・運転資金 |
| 9 事業の見通し(月平均) | 税抜単価×件数の式と固定費 |
| 10 自由記述欄 | 広告計画・安全管理体制・合併症時の対応 |
美容クリニックで差が出るのは2・9・10です。2では、勤務医として担当した施術の種類と件数を書きます。主力メニューを自分で施術してきた証拠になり、9の件数の根拠につながるためです。10には、次章以降の広告計画と安全管理体制を書くと、審査で聞かれやすい「集客できなかったら」「事故が起きたら」に先回りできます。数値計画をExcelで組む手順はエクセルで事業計画書を作成する具体的な手順と必要シートの全体像で解説しています。
施術枠と機器の稼働から組む売上計画
美容クリニックの売上の上限は、患者の数より先に施術できる枠の数で決まります。上限を出してから稼働率を掛ける順で組むと、審査で件数の根拠を聞かれても答えられます。たとえば診療時間9時間・脱毛機1台・全身脱毛1回60分(準備と片付けを含む)なら、脱毛の上限は1日9枠です。医師が注入に充てる時間を1日4時間・1件30分とすれば注入は8枠、看護師1人がレーザーを3時間・1件20分で担当すればレーザーは9枠になります。
メニュー別の売上試算の式と計算例
式は「税抜単価×1日の施術件数×月の診療日数」で、メニューごとに分けて計算します。下の表は、医療脱毛機1台・レーザー1台・医師1人の小規模開業を想定した計算方法の例です(単価や件数は仮置きの数字で、実際の計画では商圏の競合料金と自院の枠で置き換えてください)。
| メニュー | 税抜単価 | 1日の上限枠 | 1日の件数(稼働率) | 月の件数(22日) | 月の売上 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 医療脱毛 | 30,000円 | 9枠 | 6件(67%) | 132件 | 396万円 | 5% |
| 注入(ボツリヌス・ヒアルロン酸) | 40,000円 | 8枠 | 4件(50%) | 88件 | 352万円 | 25% |
| しみ・肝斑(レーザー) | 15,000円 | 9枠 | 5件(56%) | 110件 | 165万円 | 10% |
| 合計 | - | 26枠 | 15件(58%) | 330件 | 913万円 | 約14% |
原価率もメニューで分けて置きます。表では注入の原価率を25%と仮定していますが、注入は薬剤そのものが原価になるため、仕入先の見積もりから1件あたりの薬剤費を出して置き換えます。脱毛やレーザーは消耗品が中心で原価は小さく、代わりに機器の購入費かリース料が固定費に乗ります。売上構成比が変わると利益が変わるので、メニュー別に原価率を書くと審査担当者が検算しやすくなります。カード決済の手数料も変動費として売上の数%を見込みます。
稼働率は、勤務医として担当してきた件数や開業前の予約見込みなど、自院で説明できる根拠で置きます。表の50〜67%は計算例のための仮定です。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査(全業種)では、調査時点で開業時の予想月商を達成している開業者は58.7%(達成率100〜125%未満が24.5%、125%以上が34.2%)で、残る4割は予想に届いていません。これは稼働率ではなく月商の達成率ですが、予想を下回る場合の数字を用意しておく理由になります。稼働率を1〜2割下げた売上も併記し、開業1〜3か月目はさらに件数を落として、赤字月を前提に運転資金を積みます。
自由診療の売上にかかる消費税と経理方式
美容目的の自由診療は消費税の課税対象です。国税庁のタックスアンサーは、健康保険法などによる医療を非課税取引に挙げたうえで、美容整形は非課税取引に当たらないと明記しています。非課税になる取引には保険診療のほか助産などもあり、医療費控除と課税・非課税の線引きは自由診療は医療費控除の対象?治療と美容の境界・消費税・申告のやり方で整理しています。患者に示す料金は税込の総額表示なので、16,500円のメニューは税抜15,000円と消費税1,500円の合計です。
開業直後は免税事業者でいられる期間があります。個人事業者は開業した年と翌年は基準期間(前々年)の売上がないため原則として免税ですが、翌年は特定期間(前年1〜6月)の課税売上高と給与支払額がともに1,000万円を超えると課税事業者になります。株式会社などで開業する場合は、資本金1,000万円以上だと設立1期目から課税です。基金拠出型の医療法人の基金は会社の資本金とは性格が異なり、新設法人の判定との関係は大阪国税局の文書回答(平成21年4月24日)で扱われているので、医療法人で開業する場合は判定を税理士と確認します。患者は消費者なので、インボイスの登録を取引先から求められる場面は限られます。
経理は税抜方式と税込方式を選べ、どちらの方式でも納付する消費税額は同じです。この記事の試算は、課税事業者として売上を税抜で置いています。税込で置く場合は、納付する消費税を費用(租税公課)に入れて利益を見ます。免税事業者の期間は税込で経理します。資金繰り表は経理方式と別に、患者から受け取る税込の金額を入金、消費税の納付を出金として、実際の現金の動きで作ります。月913万円の税抜売上なら受け取る消費税は月約91万円で、仕入れにかかった消費税を差し引いた残りを確定申告や中間納付でまとめて納めます。月次の資金繰りの組み方は資金繰り表の作り方:エクセルで組む5手順と入金予定日の計算式を参照してください。
コース契約の前受金と特定商取引法の中途解約
脱毛5回コースのように回数をまとめて売ると、開業初月から現金は厚くなります。ただしこれは役務を提供する前に受け取った前受金で、売上ではありません。美容目的の医療のうち主務省令で定める方法による脱毛・しみ取り・しわやたるみの治療などを、1か月を超える期間・5万円を超える金額で契約すると、特定商取引法施行令の別表第四にある「特定継続的役務」に当たります。患者は契約書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフができ、その後も中途解約ができます。中途解約で請求できる損害賠償の上限は、施術開始前が2万円、開始後は「5万円か契約残額の20%のいずれか低い額」と、施術済み分の対価の合計です。対象となる施術方法の考え方は消費者庁の特定商取引法ガイドで確認できます。
計画書では、コース売上を「受け取った月」でなく「施術した月」に分けて計上します。前受金を設備投資や広告費の原資に数えると、中途解約が重なった月に返金で資金が詰まります。
初期投資・固定費と損益分岐点
初期投資の大部分は内装と機器です。機器は購入するかリースにするかで、計画書の見え方が変わります。購入は「必要な資金」の設備資金に入って借入額が増え、リースは借入を抑える代わりに毎月の固定費が増えます。購入する機器は、「機器代÷その機器のメニューが毎月生む限界利益」で回収にかかる月数の目安を出せます。たとえば800万円の脱毛機で、上の例の脱毛(月396万円・原価率5%)が毎月約376万円の限界利益を生むなら、約2.1か月分の限界利益に相当します。逆に、月10件しか使わない機器は数年分かかります。この数字は家賃や人件費を引く前のもので、機器どうしの比較に使う目安です。購入かリースかの判断は、それぞれの支払いと借入の返済を資金繰り表に並べて比べます。
固定費は次のように置きます(上の売上例に合わせた仮置きの数字です)。
| 固定費の費目 | 月額(例) | 置き方 |
|---|---|---|
| 家賃 | 75万円 | 30坪×坪単価2.5万円 |
| 人件費 | 235万円 | 看護師3人・受付等3人・法定福利費込み |
| 機器リース料 | 40万円 | レーザー・脱毛機をリースにした場合 |
| 広告宣伝費 | 90万円 | 売上の約1割 |
| その他 | 40万円 | 光熱・システム・保険・備品 |
| 合計 | 480万円 | 院長の所得は含めない(個人開業) |
変動費(薬剤・消耗品の約14%とカード手数料3%)を引いた限界利益率は約83%なので、損益分岐点売上高は480万円÷0.83≒578万円です。上の売上例913万円に対して63%の水準で、メニュー構成比が表のとおりなら、件数が想定の63%を下回ると赤字になる計算です。内装の減価償却費と借入の利息は表に入れていないので、実際の計画では固定費に加えます。計算式の詳細は損益分岐点の計算方法:5つの計算式と決算書からの求め方で扱っています。
開業1〜3か月目の件数を想定の半分(売上約457万円)とすると、限界利益約379万円に対して固定費480万円で、毎月約100万円の赤字です。開業前の家賃・人件費・広告費と合わせ、この期間を乗り切れる額を運転資金として「必要な資金」に入れます。借入の元金は利益から返すので、個人開業では、税引き後の利益から院長の生活費を引いた残りが毎月の返済額を下回らないかも確かめます。
集客計画と医療広告等ガイドラインの限定解除要件
集客計画で避けたいのは、実行できない広告を前提に件数を置くことです。医療機関の広告は医療法と医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)で規制され、自由診療の美容医療は特に事例が多い分野です。計画書に書く前に、次の3点を確認します。
- 限定解除の4要件:自院のウェブサイトのように患者が自ら求めて見る媒体は、問い合わせ先の明示、自由診療の通常必要な治療内容・標準的な費用・治療期間と回数、主なリスク・副作用の情報提供を満たせば、広告可能事項以外も書けます。リスティング広告やバナー広告は1つ目の要件を満たさないため、書ける内容が広告可能事項に限られます。
- 費用を強調した広告:「今なら○円でキャンペーン実施中」「期間限定で50%オフ」は、品位を損ねる広告の具体例としてガイドラインに挙がっています。初回割引を集客の柱にした計画は、表現を変えるか、価格訴求以外の施策に組み替えます。
- 体験談とビフォーアフター写真:患者の体験談は広告できません。術前術後の写真は、限定解除の要件を満たした媒体で、治療内容・費用・主なリスクや副作用の詳しい説明を同じページに分かりやすく付けた場合に限って使えます。限定解除の対象でない広告には載せられません。
そのうえで、広告費を媒体別に分け、媒体ごとの予約単価(広告費÷予約件数)を置いて、売上計画の新規件数と結び付けます。予約から来院までの割合と、新規と再来(コースの消化を含む)の内訳も分けます。たとえば月の新規予約120件のうち8割の96件が来院するなら、表の月330件のうち残る234件は再来とコースの消化で埋める計算です。予約単価7,500円なら広告費は90万円で、件数と広告費のどちらかを変えればもう一方も動きます。規制の詳細と禁止類型は医療広告ガイドラインとは?令和8年改正の禁止事項と限定解除4要件をサイト制作の実務で解説、地図検索からの集客は歯科・クリニックのMEO対策|医療広告規制の線を守って集患する運用設計を参照してください。予約・カルテ・顧客管理をどう組むかも開業前に決める項目で、既製の予約システムの比較はクリニック予約システムとは?予約方式・費用相場と選び方、開発判断を解説で、院内の運用に合わせた仕組みが必要な場合は医療機関向けシステム開発で相談を受けています。
2025〜2026年の美容医療規制と計画書への反映事項
美容医療は2025年以降、規制と行政の監視が強まっています。計画書の10欄(自由記述欄)か別紙に、人員体制・診療録・安全管理の項目を書いておくと、計画をどう実行するかを具体的に説明できます。
相談件数の増加と厚生労働省の通知
国民生活センターによると、PIO-NETに登録された美容医療サービスの相談件数は2023年度6,281件、2024年度10,744件、2025年度7,944件です(2026年7月31日更新のページ。2026年度分は5月31日現在の集計)。こうした状況を受けて厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」が2024年11月に報告書をまとめ、2025年8月15日には医政局長通知「美容医療に関する取扱いについて」(医政発0815第21号)が出ました。無資格者が業として行う脱毛行為等・アートメイク・HIFU施術などを医師法違反とし、看護師等が医師の指示なくこれらの医行為を行うことや、看護師等が診察したり治療方法を選んで提案・決定したりすることも違法な例に挙げています。看護師等は医師の指示の下で、診療の補助として施術を担当できます。2025年12月26日の通知では、美容所やエステサロンにもアートメイクの扱いの周知が求められています。
計画書に反映するのは人員体制です。看護師が施術を担当する場合も、診察と治療方法の決定は医師が行い、その指示の下で施術する流れを示します。同じ通知は、診療所の管理者は原則として勤務時間中常勤とする従来の考え方も確認しています。医師の勤務時間と施術枠を対応させた表を付けると、件数の根拠と安全管理を同時に示せます。
美容医療を行う医療機関の定期報告
2025年12月に公布された改正医療法で、医療法に第6条の12の2が新設されました。美容目的の医学的処置・手術などを行う病院・診療所のうち厚生労働省令で定めるものの管理者は、医療安全のための措置の状況などを都道府県知事(診療所が保健所設置市・特別区にある場合は市長・区長)に報告し、知事は報告のうち特に必要な事項を公表します。施行は公布から2年以内の政令で定める日で、2026年10月時点ではまだ施行されていません。厚生労働省の規制の事前評価書では、報告は年1回で、専門医資格の有無、研修の実施状況、医療安全の指針の策定状況、合併症が起きたときに患者が相談できるアフターフォロー体制などが想定されています。
すでに施行されている変更もあります。2026年3月31日の改正で、医師法施行規則第23条の診療録の記載事項に、美容目的の治療では「患者の主訴及び希望する治療の内容」を含めることが加わりました。開業時の計画書では、カウンセリングから施術・アフターフォローまでの記録の流れと、医療安全の指針・研修の計画を書いておくことは、報告制度への準備になります。報告の対象と項目・様式は省令で決まるので、施行時に確定した内容と自院の記録を照合します。
外来医師過多区域の事前届出と自由診療のみの診療所の扱い
2026年4月1日から、都道府県知事が指定した外来医師過多区域で無床診療所を新たに開設する場合は、開設の6か月前までに都道府県へ事前届出をする制度が始まりました。近畿厚生局の案内では、都道府県知事の要請・勧告に従わない場合、保険医療機関の指定期間が通常の6年でなく3年以内になると説明されています。医療法上も、勧告に従わない事実は公表されることがあります。
美容クリニックで見落としやすいのは、保険医療機関の指定を受けないから関係ないと考えてしまうことです。厚生労働省の外来医師過多区域に関する質疑応答集(その1)(港区掲載)のQ54は、一般診療所は「自由診療を含むすべての無床診療所が対象」と回答しています。同じQ&Aでは、届出義務は区域と不足する医療機能が公表されてから6か月後以降の開設に生じるとされています。美容クリニックが集まる都市部は候補区域に重なりやすいので、物件を契約する前に都道府県の指定状況を確認し、開業スケジュールに6か月の余裕を入れます。
開業スケジュールと開設手続きの順序
臨床研修等修了医師が診療所を開設する場合は、医療法第8条により開設後10日以内に所在地の都道府県知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)へ届け出ます。医療法人など臨床研修等修了医師でない者が開設する場合は、第7条により開設前に許可が必要です。実務では、図面の段階で保健所に事前相談し、構造設備の指摘を内装工事に反映させます。
自由診療だけを行うなら、保険医療機関の指定申請は要りません。美容皮膚科で保険の皮膚科診療も行う場合は地方厚生局への指定申請が必要で、指定は原則として毎月1日付になるため、開業日と保険診療を始める日がずれないよう逆算します。外来医師過多区域の事前届出は、前章のとおり自由診療だけでも対象です。
| 時期の目安 | 手続き・準備 | 計画書との関係 |
|---|---|---|
| 開業12か月前〜 | 主力メニュー・商圏の決定 | 3欄・9欄の前提 |
| 物件契約の前 | 外来医師過多区域の指定状況の確認 | 該当時は開設6か月前までに届出 |
| 開業6〜4か月前 | 物件契約・内装と機器の見積もり・融資申込 | 8欄の金額を確定 |
| 図面確定・着工前 | 保健所への事前相談 | 内装費の手戻りを防ぐ |
| 開業3〜1か月前 | 採用・広告・予約の準備 | 4欄・10欄 |
| 開設後10日以内 | 診療所開設届を保健所へ提出 | - |
審査で数字を疑われる美容クリニックの計画書
「美容医療は単価が高いから成り立つ」という前提で数字を置くと、次の3つの穴が残ります。
件数の根拠が商圏の需要だけで、施術枠と結び付いていない計画は、医師1人・機器1台で1日に何件施術できるかが分からず、売上の上限を検証できません。
消費税の納付と前受金の返金を見込んでいない計画は、受け取った現金から後で出ていくお金を見落とし、資金繰りが合わなくなります。
割引キャンペーンと症例写真の大量掲載で集客する計画は、開業後に表現を差し替えると予約単価が想定から外れ、件数の前提が崩れます。ガイドラインで書ける内容を前提に予約単価を置き直します。
エステサロンのように医師が関与しない業態で開業を考えている場合は、施術できる範囲そのものが違うので、エステサロン開業で事業計画書が融資審査を左右する具体的な理由を参照してください。
よくある質問
美容クリニックは保険医療機関の指定を受ける必要がありますか?
自由診療だけを行うなら不要です。保険の皮膚科診療なども行う場合は、地方厚生局に保険医療機関の指定を申請します。保険診療と保険外の診療を併用すると、保険外併用療養費制度で認められた場合を除き、原則として保険診療分も含めて全額自己負担になります(いわゆる混合診療の禁止)。会計を分けるだけでは足りず、診療の実態で判断されるので、同じ受診で保険診療と美容目的の施術を組み合わせない運用を決めておきます。
事業計画書の売上は税込と税抜のどちらで書けばよいですか?
経理は税抜・税込どちらの方式も選べ、納付する消費税額は同じです。メニュー別の比較がしやすいよう損益は税抜で置き、資金繰り表は税込の実際の入出金で作ると混乱しません。税込で置く場合は納付する消費税を費用に入れます。免税事業者の期間は税込で経理し、課税事業者に切り替わる時期を計画書に明記します。
美容皮膚科と美容外科で事業計画書は変わりますか?
枠の決まり方が違います。美容皮膚科は、記事の例のように脱毛60分・レーザー20分・注入30分といった1件の所要時間と、機器の台数、施術を担当する医師・看護師の時間で枠が決まります。美容外科は1件の単価が高い代わりに1件の手術に長い時間がかかり、手術室の設備と医師の手術時間が上限になります。術後の診察枠や合併症への対応体制も詳しく書きます。
外来医師過多区域で自由診療のみのクリニックを開く場合も届出は必要ですか?
必要です。厚生労働省の質疑応答集は、一般診療所は自由診療を含むすべての無床診療所が対象と回答しています。開業予定地の都道府県が区域を指定しているかを確認してください。
コースの前受金は事業計画書でどう扱えばよいですか?
受け取った月の売上にせず、施術した月に分けて計上します。たとえば総額15万円の脱毛5回コースを一括で受け取り、各回が同額なら、1回施術するごとに3万円ずつ売上に振り替えます。2回施術した後に中途解約されると、契約残額9万円から損害賠償の上限(5万円と残額の20%=1万8,000円の低い方)を引いた7万2,000円が返金の目安です。前受金は設備投資や広告費の原資に数えず、返金に備えた現金として残しておきます。