この記事で扱うのは、幼稚園の新設認可に向けて都道府県へ提出する事業計画書です。融資審査用や既設学校法人の年度事業計画とは、提出先と記載目的が異なります。審査は国の幼稚園設置基準に加えて、都道府県ごとの審査基準に沿って進みます。そのため計画書では、学級数・1学級の幼児数・園舎と運動場の面積・資産と運用資金・開設後の収支を、基準の数字に当てはめて示す必要があります。
以下では、学校法人を新たに設立して幼稚園を開く場合を中心に、設置基準の数字、申請の日程、資金計画の制約、収入構造の選び方を、条文と都道府県の審査基準の実例で順に示します。週に数回の幼児教室やプリスクールとして開く場合は「幼児教育の事業計画書の書き方|幼児教室・プリスクールの届出判定と在籍数から組む収支計画【2026年版】」、認可保育所として開く場合は「開業を目指す事業者が保育園の事業計画書で最初に押さえる全体像」で扱っています。
まとめ:幼稚園の事業計画書で押さえる要点
私立幼稚園の設置には都道府県知事の認可が要ります(学校教育法第4条第1項第3号)。設置者は原則として学校法人で、幼稚園だけを設置する学校法人の設立(寄附行為の認可)も都道府県知事が所轄します。計画書は、幼稚園の設置認可と学校法人の設立認可の両方の審査に使われます。
幼稚園設置基準は2026年4月1日の改正で、1学級の幼児数を「35人以下」から「30人以下」を原則とする形に改めました。新設する幼稚園は原則30人以下で学級を組みます。都道府県の審査基準はさらに上乗せをしていて、大阪府は3歳児を原則25人以下、4〜5歳児を30人以下とし、保育室は53㎡以上(3歳児25人以下の学級は41㎡以上)、遊戯室は100㎡以上を求めています。
日程は開設の1年半以上前に始まります。大阪府は開設年度の前々年度の9月30日までに計画書、11月30日までに申請書を出し、認可の適否は原則として前年度の9月30日までに決まります。
資金面では、新設法人が金融機関から借りて園舎を建てる計画は通りにくい点に注意が必要です。新設時に認められる負債は自治体ごとに異なります。大阪府は私学事業団・福祉医療機構からの借入と交付予定補助金相当額を、和歌山県は私学事業団からの借入を認めています。東京都は私学事業団・東京都私学財団からの借入を園舎建築費の2分の1以内に限っています。そのうえで、人件費や経常経費を基に算定した運用資金の保有を求めます。現金以外に認められる資産は自治体によって異なります。計画書の中心は、認められる借入以外の財源で土地と園舎を用意できることの証明と、開設後2〜3年の収支均衡です。
収入の構造は、子ども・子育て支援新制度の施設型給付を受けるか、受けずに私学助成と保育料で運営するかで変わります。施設型給付を受けない幼稚園の利用料は、2026年10月から月28,000円を上限に無償化の対象になります。
幼稚園を新設できる設置者と開設ルートの選び方
学校教育法第2条は、学校を設置できる者を国・地方公共団体・学校法人に限っています。附則第6条には「私立の幼稚園は、当分の間、学校法人によつて設置されることを要しない」という例外があり、個人立や宗教法人立の幼稚園が現存するのはこのためです。ただし、この例外を使った新設を認めるかは都道府県の審査基準次第で、新設の設置者を法人に限る例が目立ちます。
都道府県の審査基準は、新設の設置者を絞っています。大阪府の審査基準は「幼稚園の設置者は、学校法人であること」と定めています。埼玉県の審査基準は、学校法人のほか、保育所や幼保連携型認定こども園を設置する社会福祉法人にも設置を認めています。両府県の基準では、個人が幼稚園を新設する道はありません。株式会社は、構造改革特別区域法第12条の認定を受けた特区に限り、学校設置会社として幼稚園を含む学校を設置できます。
| 開設ルート | 設置者 | 認可・手続き | 主な収入 |
|---|---|---|---|
| 学校法人を新設して幼稚園を開く | 新設の学校法人 | 寄附行為の認可+幼稚園の設置認可 | 保育料・施設型給付または私学助成 |
| 既設の学校法人が幼稚園を増設 | 既設の学校法人 | 幼稚園の設置認可+寄附行為変更の認可 | 同上 |
| 保育所を運営する社会福祉法人が設置 | 社会福祉法人(認める県のみ) | 幼稚園の設置認可 | 同上 |
| 既存の保育所・幼稚園から認定こども園へ | 学校法人・社会福祉法人など | 認定こども園の認可・認定 | 施設型給付 |
| 幼児教室・プリスクールとして開く | 個人・株式会社も可 | 保育の実態があれば認可外保育施設の届出 | 月謝・保育料 |
新設法人の場合は、寄附行為の認可と幼稚園の設置認可の両方を受けます。私立学校法第24条は、所轄庁が寄附行為を認可する前に、学校法人の資産が第17条の要件(学校に必要な施設・設備またはその資金と、経営に必要な財産を持つこと)を満たすかを審査し、私立学校審議会の意見を聴くと定めています。そのため事業計画書は、教育内容の説明だけでは足りません。資産をどう用意するかの証明も兼ねます。
開設の前々年度から始まる幼稚園の申請スケジュール
幼稚園の認可申請は、開園の2年近く前に計画書を出すところから始まります。提出期限は都道府県ごとに違い、園舎を新築するかどうかでも変わります。
| 都道府県 | 計画書の提出期限 | 認可申請書の提出期限 | 認可の決定 |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 前々年度の9月30日 | 前々年度の11月30日 | 原則 前年度の9月30日まで |
| 和歌山県 | 前々年度の11月末日 | 前年度の4月末日 | 開設月の前月末日まで |
| 青森県 | 前々年度の1月31日 | 前年度の9月30日 | ― |
| 宮城県 | 前々年度の9月30日 | 計画の達成が確実になった時期 | ― |
2029年4月に開園するなら、前々年度は2027年度にあたります。大阪府では2027年9月30日までに計画書を出す必要があり、園舎の設計と土地の確保はそれより前に済ませておかなければなりません。園舎の建築を伴わない場合、大阪府は申請書の期限を前年度の6月30日、青森県は計画書の期限を前年度の5月31日まで遅らせています。和歌山県は計画書の審査で、必要に応じて私立学校審議会、県教育委員会、関係市町村の幼稚園・こども園の担当部局、私立学校連合会の意見を聴き、現地調査も行います。
計画書を出す前には、都道府県の私学担当課への事前相談が実質的な第一歩になります。立地や定員について所管庁との調整が済まないうちに建築へ着手すると、認可審査で計画変更が必要になった際に手戻りが生じるおそれがあります。
幼稚園設置基準と都道府県の上乗せから決める学級数と面積
計画書の施設計画は、学級数から逆算します。学級数が決まれば、教員の人数、保育室の数、園舎と運動場の最低面積が条文の算式で決まります。
2026年4月改正の1学級30人以下と教員の配置
幼稚園設置基準第3条は、2026年4月1日施行の改正で「一学級の幼児数は、三十人以下を原則とする」となりました。改正前は35人以下です。改正時点で存在した幼稚園は2032年3月31日まで従前の35人で編制できますが、これから新設する幼稚園には30人が適用されます。学級は学年の初めの日の前日に同じ年齢の幼児で編制するのが原則です(第4条)。
教員は、園長のほか各学級に専任の主幹教諭・指導教諭・主務教諭または教諭を1人以上置きます(第5条第1項)。特別の事情があれば、学級数の3分の1の範囲で専任の助教諭や講師で代えられます(同第2項)。園長を専任にしない場合は、さらに教員を1人置くのが原則です(同第3項)。養護教諭と事務職員は「置くように努めなければならない」という努力義務です(第6条)。
都道府県の審査基準は、これより厳しい数字を置いていることが多くあります。
| 項目 | 国の設置基準 | 大阪府 | 埼玉県 | 和歌山県 |
|---|---|---|---|---|
| 学級数 | 規定なし | 原則3学級以上 | 規定なし | 原則3学級以上 |
| 3歳児の学級 | 30人以下 | 25人以下 | 20人以下(超えたら補助教員) | 25人以下(超えたら教員2人) |
| 4〜5歳児の学級 | 30人以下 | 30人以下 | 国の基準による | 30人以下 |
| 保育室 | 学級数以上 | 53㎡以上(3歳児25人以下の学級は41㎡) | 39㎡を標準 | 53㎡以上 |
| 遊戯室 | 保育室と兼用可 | 100㎡以上 | 78㎡を標準 | 106㎡以上 |
| その他 | ― | 通園バスは乗車40分程度まで | 園地1,000㎡以上・定員270人上限 | 出入口2か所以上 |
大阪府の基準は2026年7月28日施行の改正で3歳児25人以下・4〜5歳児30人以下とし、3歳児の学級を25人を超えて編制するなら、その学級数と同じ数の教員を加算するよう求めています。3歳児を何人で組むかは、教員の人数と人件費に直結します。
園舎と運動場の面積を学級数から計算する方法
園舎と運動場の最低面積は、設置基準の別表第1・別表第2に算式があります。
| 区分 | 算式 | 3学級 | 6学級 |
|---|---|---|---|
| 園舎(1学級) | 180㎡ | ― | ― |
| 園舎(2学級以上) | 320+100×(学級数−2) | 420㎡ | 720㎡ |
| 運動場(2学級以下) | 330+30×(学級数−1) | ― | ― |
| 運動場(3学級以上) | 400+80×(学級数−3) | 400㎡ | 640㎡ |
3学級(3歳・4歳・5歳を各1学級)なら、園舎は延床420㎡以上、運動場は400㎡以上です。大阪府の基準で保育室を53㎡×3室、遊戯室を100㎡とすると、それだけで259㎡になり、残り161㎡に職員室・保健室・便所・手洗い場などを収めます。園舎は2階建て以下が原則で、保育室・遊戯室・便所は1階に置きます。2階に置けるのは、耐火建築物で幼児の待避に必要な施設を備える場合です(第8条第1項)。必要な施設は職員室・保育室・遊戯室・保健室・便所・飲料水用設備・手洗用設備・足洗用設備です(第9条)。このうち保育室と遊戯室、職員室と保健室は、特別の事情があれば兼用できます。
幼稚園の施設計画に、保育所の園児1人あたりの面積基準をそのまま当てはめることはできません。幼稚園設置基準の算式と設置予定地の審査基準で確認します。幼稚園の面積は学級数で決まり、園児1人あたりの面積ではありません。
新設の学校法人に課される資産・負債・運用資金の要件
幼稚園の資金計画では、施設の所有形態、借入の可否、運用資金の保有額が審査されます。一般の創業計画と違い、「借りて建てて、保育料で返す」という組み立ては多くの都道府県で認められていません。
園地・園舎の自己所有と負債の制限
大阪府の基準は、園地・園舎その他の施設を原則として自己所有とし、借用は20年以上の賃借権を登記する場合などに限っています。設置に係る負債は「ないこと」が原則で、例外は国や地方公共団体から交付予定の補助金に相当する額、日本私立学校振興・共済事業団からの借入金、独立行政法人福祉医療機構からの借入金の3つです。既に学校を設置している学校法人に限り、園地取得費と園舎建築費の3分の2以下で、借入後の負債比率が総資産の30%以下などの条件を満たせば金融機関から借りられます。
東京都の学校法人設立認可取扱内規はさらに狭く、新たに幼稚園を設置する学校法人の負債を、私学事業団または東京都私学財団の貸付に限り、園舎の建築費の2分の1の範囲で認めるとしています。自己所有で整備する場合は、認められる借入以外の財源を確保する必要があります。別途、園地・園舎の借用を認める規定もあります。
新設時の借入先として残る日本私立学校振興・共済事業団の融資は、学校法人のほか「これから学校法人化するもの」も対象とし、幼稚園の学校法人化は相談に応じるとしています。個人立の学校は利用できません。園舎の建築や園地の買収は一般施設費の対象で、学校の新設のための事業は設置等の認可を受けた年度の事業が対象です。原則として土地と建物を担保に入れ、事業団を第1順位の抵当権者とすることが条件になります。理事会の承認も必要なため、計画書の資金計画には借入額・担保物件・償還計画を理事会の議決と合わせて書きます。
運用資金の保有額と開設後の収支予算
施設とは別に、開園後の運営に必要な運用資金の保有も審査されます。和歌山県では国債等の有価証券も認められます。基準は都道府県で大きく違います。
| 都道府県 | 保有を求める運用資金 | 収支予算の期間 |
|---|---|---|
| 大阪府 | 開設年度の人件費の3分の1 | 開設から2年間 |
| 和歌山県 | 開設から1年間の人件費 | 開設から3年間 |
| 東京都 | 年間経常経費の4分の1以上の現金 | ― |
園地・園舎を借りる場合は、要件が重くなります。和歌山県は開設年度から完成年度(開設年度の入園児が卒園する年度)までの経常的経費に相当する運用資金(国債等の有価証券を含む)を求めています。東京都は、園地・園舎の両方を借りる場合は年間経常経費の修業年限分以上、片方だけなら開設年度の年間経常経費1年分と残る修業年限分の賃借料を、現金で持つよう求めています。仮に年間経常経費を5,000万円とし、園地と園舎の両方を借りて3年保育で開くと、東京都の基準では1億5,000万円の現金が必要になります。自己所有なら4分の1の1,250万円です。借りて始める案は初期費用が軽く見えますが、現金の要件で逆転することがあります。
収支予算は、大阪府なら開設から2年、和歌山県なら3年の期間で、保育料・入園料などの経常的な収入で収支が均衡することを示します。3歳児だけで開設して学年を積み上げる計画なら、完成年度までは学級数も教員数も少ない一方、園舎と運動場を開設時にどこまで整備する必要があるかは、完成年度の学級編制を示して所管庁に確認します。初年度は施設規模に対して収入が小さくなるため、収支均衡の見通しと月次の資金不足を分けて示し、不足への対応後も必要な運用資金を確保できるかを確認します。
施設型給付か私学助成かで変わる幼稚園の収入計画
幼稚園の収入の柱は、子ども・子育て支援新制度に移行するかどうかで変わります。どちらを選ぶかは、収支計画の前提として計画書に明記します。
| 項目 | 新制度に移行(施設型給付) | 移行しない(私学助成) |
|---|---|---|
| 主な公費 | 市町村の施設型給付+都道府県の私学助成(特別補助) | 都道府県の私学助成(一般補助・特別補助) |
| 必要な手続き | 市町村長の確認(利用定員を定める) | 施設等利用費の対象として市町村長の確認 |
| 保育料 | 市町村が定める利用者負担(3〜5歳は無償) | 園が定める(保育料と月額換算した入園料の合計で月28,000円まで無償化) |
| 預かり保育 | 一時預かり事業(幼稚園型)など・保育の必要性の認定で月12,300円まで無償化 | 保育の必要性の認定で月12,300円まで無償化 |
施設型給付は、市町村長が「確認」した教育・保育施設が受けられる給付です(子ども・子育て支援法第27条・第31条)。確認の際に利用定員を定めるため、市町村の子ども・子育て支援事業計画との整合が問われます。移行しない幼稚園は、都道府県の私学助成と、園が定める保育料で運営します(こども家庭庁の制度説明資料)。保護者には子育てのための施設等利用給付として、利用料が上限額まで支給されます(同法第30条の11)。
上限額は2026年10月1日の利用分から引き上げられました。こども家庭庁の資料によると、新制度に移行していない幼稚園は月25,700円から28,000円へ、3〜5歳児の預かり保育は月11,300円から12,300円へ上がっています。2019年10月の無償化から据え置かれていた額の見直しです。広島市の案内では、満3歳児で住民税非課税世帯の預かり保育の上限を月17,700円としています。保育料が国の無償化上限額を超える部分は原則として保護者負担ですが、自治体独自の上乗せ補助で軽減される場合があります。
旧版の計画書でよく見る「就園奨励費補助」は、2019年10月の幼児教育・保育の無償化で施設等利用給付に置き換わっています。今の計画書に収入として書くと、制度を把握していない計画と受け取られます。
園児数の需要を立地と幼児人口で裏付ける方法
審査基準の多くは、立地の必要性を問います。大阪府は「幼稚園設置のための地域的な必要性が認められること」「既存の国公私立幼稚園と過度に近接しないこと及び地域の幼児人口の動向等を考慮していること」を求めています。青森県の基準は、収容定員を満たす幼児数を将来にわたり確保できることを、区域内の既設の幼稚園・保育所の充足率などから示すよう求めています。
全国の数字は厳しい方向を示しています。令和8年度学校基本調査の速報では、2026年5月1日現在の幼稚園は7,922園、在園者は62万7,450人で、前年度より6万2千人減りました。私立は5,706園・55万6,724人です。一方で、幼保連携型認定こども園の在園者は88万2千人と過去最多になっています。新設の幼稚園は、減っていく幼児を既存の幼稚園や認定こども園と取り合う前提で需要を示すことになります。
計画書には、通園圏(大阪府の基準なら通園バスで40分程度)の範囲の3〜5歳人口の推計、既存の幼稚園・認定こども園・保育所の定員と充足率、市町村の子ども・子育て支援事業計画が見込む教育ニーズ(1号認定)の量を並べます。定員は、この需要から既存施設の供給を差し引いた範囲に収めます。根拠が市町村の計画と食い違うと、施設型給付の確認で利用定員を定める段階でも説明に困ります。
新設より承継や認定こども園への移行を選ぶべき条件
幼稚園を一から新設する計画は、次のいずれかに当てはまるなら見直した方が現実的です。
- 寄附・補助金・認められる借入を組み合わせても施設整備費を確保できない
- 通園圏の3〜5歳人口が減っていて、既存園の充足率が低い(地域的な必要性を示せない)
- 設置予定地の計画書提出期限に間に合わず、事前相談や施設整備の日程も確保できない
この場合の選択肢は2つあります。1つは、後継者のいない既存の幼稚園を学校法人ごと引き継ぐ方法です。学校法人の役員を交代して運営を引き継ぐ形なら、設置者は変わらないため、幼稚園の設置認可を取り直す必要はありません。もう1つは、保育所を運営している社会福祉法人などが、幼保連携型認定こども園に移行して3〜5歳児の教育を担う方法です。0〜2歳児の保育需要も取り込めますが、その年齢層の人口・利用希望と追加の職員配置費を確認し、移行後の収支を比較します。
保育の実態がない幼児教室や、預かり時間の短いプリスクールとして始め、需要を確かめてから法人化を考える順番もあります。この場合は幼稚園の名称を使えず、幼稚園としての無償化の対象にもなりません。認可外保育施設として対象になるには、届出に加え、原則として指導監督基準への適合、市町村の確認、利用児童の保育の必要性の認定などが必要です。収支の組み立ては「幼児教育の事業計画書の書き方」の在籍数×月謝の考え方に近くなります。
既設の学校法人が毎年作る事業計画との違い
「幼稚園の事業計画」には、新設のための計画書とは別に、既に幼稚園を運営している学校法人が毎年作る事業計画があります。私立学校法第99条は「学校法人は、毎会計年度、予算及び事業計画を作成しなければならない」と定めています。予算と事業計画の作成・変更は理事会が決め(第36条第3項第6号)、決める前に評議員会の意見を聴かなければなりません(同条第4項)。
年度の事業計画は、設置認可の計画書のように面積や資金の要件を証明する書類ではありません。その年度の教育目標、学級編制と園児数の見込み、教職員の採用と研修、施設の修繕、予算の重点を、前年度の決算と学校評価の結果につなげて書きます。新設時の計画書で示した2〜3年の収支予算は、開園後はこの年度事業計画と予算に引き継がれていきます。
認可審査で差し戻される幼稚園事業計画書の失敗パターン
- 保育所の基準で書いている:面積を園児1人あたりで計算する、職員を年齢別の配置比で数えるなど。幼稚園は学級数が基準です。
- 改正前の35人で学級を組んでいる:2026年4月以降に新設するなら、国の基準でも30人以下が原則です。都道府県の上乗せ(3歳児25人以下など)も確認します。
- 金融機関の借入で園舎を建てる資金計画:新設法人の負債は私学事業団などに限る基準が多く、銀行や日本政策金融公庫の融資を見込む場合は、交付予定補助金相当額の借入など、設置予定地で認められる例外に該当するかを確認します。
- 完成年度の面積を確保していない:学年を積み上げる計画では、完成年度の学級数に対応する施設計画と、所管庁が認める整備時期を確認します。
- 廃止済みの制度を収入に入れている:就園奨励費補助は無償化に置き換わっています。施設型給付と私学助成の一般補助を重複して見込むのは誤りです。ただし、施設型給付を受ける園でも、対象事業に応じた私学助成の特別補助を受けられます。
- 定員の根拠が市町村の計画と合わない:子ども・子育て支援事業計画の教育ニーズの見込みと食い違う定員は、需要の根拠として弱くなります。
収支の数字そのものの組み方は、「損益分岐点の計算方法」で固定費と園児数の関係を、「資金繰り表の作り方」で開園前後の現金の動きを確認できます。
よくある質問
幼稚園は個人や株式会社でも開設できますか?
原則は学校法人による設置です。学校教育法附則第6条には学校法人以外の設置を認める例外があり、株式会社についても構造改革特区の特例があります。ただし新設を認めるかは都道府県の審査基準によります。例えば大阪府は学校法人に、埼玉県は学校法人または保育所等を設置する社会福祉法人に、新設の設置者を限定しています。個人や株式会社で開設する場合は、自治体の審査基準や特区の適用を確認し、認可外保育施設や幼児教室という形も検討します。
幼稚園の1学級の人数は何人までですか?
幼稚園設置基準第3条で、2026年4月1日から30人以下が原則です。それ以前から存在する幼稚園は、2032年3月31日まで従前の35人以下で編制できます。大阪府のように、3歳児は25人以下とする都道府県もあります。
幼稚園の園長は専任でなければいけませんか?
国の設置基準は専任を義務にしていませんが、専任でない園長を置く場合は、学級数分の教員とは別に副園長・教頭・教諭などを1人置くのが原則です(第5条第3項)。埼玉県の審査基準は、園長を原則として専任とするよう求めています。
幼稚園を新設するのに融資は使えますか?
新設の学校法人が使えるのは、主に日本私立学校振興・共済事業団などの公的な貸付です。大阪府は福祉医療機構からの借入と補助金相当額も認めています。東京都は私学事業団と東京都私学財団に限り、園舎建築費の2分の1までです。大阪府・和歌山県の基準では、金融機関からの借入は既に学校を設置している学校法人に条件付きで認められています。
幼稚園の事業計画書はいつまでに提出しますか?
多くの都道府県で、開設年度の前々年度に計画書を出します。大阪府は前々年度の9月30日、和歌山県は前々年度の11月末日、青森県は前々年度の1月31日が期限です。園舎を新築しない場合は期限が遅くなる県もあるため、所管の私学担当課に確認してください。