弁護士が独立して法律事務所を開くとき、事業計画書は弁護士会への届出には要りません。一方で、日本政策金融公庫や銀行から開業資金を借りるとき、事務所を借りるとき、共同経営者と経費の分担を決めるときには、数字の裏付けが求められます。
この記事では、公庫の創業計画書の記入欄に沿って、法律事務所ならではの書き方を整理します。取扱分野と報酬基準の示し方、受任ルートの数え方、着手金と報酬金の入金時期のずれ、弁護士会費や預り金口座といった独特の経費、弁護士法が集客計画に引く線までを扱います。
まとめ:法律事務所の事業計画書で押さえる要点
- 弁護士登録や法律事務所の開設届(弁護士法21条)に事業計画書は不要です。計画書が要るのは融資、物件の入居審査、共同経営の合意の場面です。
- 公庫への融資申込みでは、創業計画書(記入欄1〜10)に沿って書くと、提出内容を整理できます。司法修習の期と登録年、取扱分野、個人事件の受任実績を数字で書きます。
- 売上は、分野ごとに「着手金単価×受任件数」「報酬金単価×報酬が発生する終結件数」「月額顧問料×契約先数」を計算して合算します。報酬金は事件が終わるまで入らないため、開業後半年ほどは着手金と顧問料だけで経費を払う前提で資金繰りを作ります。
- 経費には弁護士会費、賠償責任保険、判例データベースなど法律事務所特有の項目を入れます。依頼者からの預り金は、売上にも手元資金にも数えません。
- 集客計画は日弁連の業務広告規程と弁護士法27条(非弁提携の禁止)の範囲で書きます。紹介料を払って事件を回してもらう前提の計画は成り立ちません。
- 弁護士が少ない地域で開業するなら、日弁連の無利息貸付(上限350万円、特別独立開業等支援対象地区は650万円)を資金計画に組み込めます。
法律事務所の開業で事業計画書が求められる場面
弁護士法20条は、弁護士の事務所を「法律事務所」と称し、所属弁護士会の地域内に設けること、いかなる名義でも二箇以上の法律事務所を設けられないことを定めています。21条は、法律事務所を設けたり移転したりしたら直ちに所属弁護士会と日本弁護士連合会(日弁連)に届け出る義務です。どちらの条文にも、事業計画を審査する定めはありません。
計画書が必要になるのは、第三者に資金や信用を出してもらう場面です。相手によって見る点が違うので、同じ計画書でも強調する箇所を変えます。日弁連の弁護士白書2025年版では、2025年3月31日現在の法律事務所18,591のうち1人事務所が11,558(62.17%)を占めます。1人で開くなら読み手は金融機関と貸主が中心で、共同で開くなら共同経営者との合意文書としての役割が加わります。
| 提出先 | 見られる点 | 計画書で厚くする箇所 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 返済できるか | 創業計画書・月次の収支 |
| 銀行・自治体の制度融資 | 返済原資と保証 | 収支計画・自己資金 |
| 事務所物件の貸主 | 賃料を払い続けられるか | 固定費と運転資金 |
| 共同経営者 | 経費分担と利益配分 | 経費予算・配分ルール |
外国法事務弁護士の承認申請と事業計画の審査書類
例外は外国法事務弁護士です。外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(外弁法)12条1項3号は、承認の基準として「適正かつ確実に職務を遂行するための計画、住居及び財産的基礎を有するとともに、依頼者に与えた損害を賠償する能力を有すること」を挙げています。法務省の承認・指定申請の手引及び書式のページには、参考書式4「事業計画書(個人で単独開業する場合)」と参考書式5「事業計画書(本国ローファームの支援を受け、単独開業する場合)」が掲載されています。
参考書式4の記載項目は、活動分野、活動予定期間、事務所の場所、事務所の名称、事務所の体制、事務所の運営計画の6つです。運営計画の欄には、用意した自己資金の額、開業に係る費用、事務所の運営経費の見込み月額(事務所賃料と、弁護士会費を含むその他経費)を書きます。日本の弁護士が融資用に作る計画書でも、骨格は同じです。「月の固定費はいくらか」と「自己資金で赤字の何か月分をまかなえるか」の2点を最初に固めると、残りの欄が埋めやすくなります。
公庫の創業計画書の記入欄と法律事務所での書き方
個人で開業する弁護士の資金調達先は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」が第一候補です。公庫が各種書式ダウンロードページで配布している創業計画書は、次の10の記入欄で構成されています。
| 記入欄 | 法律事務所で書く中身 |
|---|---|
| 1 創業の動機 | 独立の理由と狙う依頼者層 |
| 2 経営者の略歴等 | 期・登録年・所属事務所・取扱分野 |
| 3 取扱商品・サービス | 分野別の報酬体系と売上シェア |
| 4 従業員 | 事務員・勤務弁護士の採用予定 |
| 5 取引先・取引関係等 | 顧問先・紹介元と回収条件 |
| 6 関連企業 | 本人・法人代表者・配偶者が経営する企業 |
| 7 お借入の状況 | 奨学金・貸与金・住宅ローン等 |
| 8 必要な資金と調達方法 | 設備資金・運転資金と調達先 |
| 9 事業の見通し(月平均) | 売上・経費・利益と算定根拠 |
| 10 自由記述欄 | 強み・リスクへの備え |
様式には、この書類に代えて自分で作成した計画書を出してもよい旨が書かれています。WordやExcelで作り込んだ計画書を出す場合も、この10項目が揃っているかを突き合わせると面談での聞き漏れを防げます。スライド形式で作る場合の構成は事業計画書をパワーポイント(パワポ)で作る方法で解説しています。
経営者の略歴等:期・登録年と個人事件の受任実績
弁護士という資格だけでは審査の決め手になりません。審査担当者が知りたいのは、独立後に依頼が来る根拠です。略歴欄には司法修習の期と登録年、勤務した事務所の規模と主な取扱分野、自分が主任で担当した事件の件数を書きます。「離婚・相続を中心に年40件を主任として担当」のように、分野と件数を並べると売上予測の根拠と一本につながります。
勤務弁護士時代に個人事件の受任が認められていたなら、その件数と依頼経路が最も強い材料になります。所属事務所の依頼者は事務所の顧客であり、独立後も付いてくるとは限りません。既存案件の売上は独立後の受任を確認できたものに絞り、新規案件の売上は相談件数と受任率の根拠を分けて見積もります。
取扱商品・サービス:分野別の報酬体系と報酬基準
弁護士報酬に全国一律の基準はありません。2004年4月1日に施行された日弁連の「弁護士の報酬に関する規程」は、報酬が経済的利益、事案の難易、時間及び労力などに照らして適正かつ妥当であることを求めたうえで(2条)、弁護士ごとに報酬基準を作って事務所に備え置くよう定めています(3条)。取扱商品欄には、この報酬基準から分野ごとの着手金・報酬金・顧問料・法律相談料を拾い、売上に占める割合を書きます。
セールスポイントの欄は「丁寧な対応」では判断材料になりません。企業法務なら業種(建設、医療、IT)、個人向けなら分野と地域(市内の離婚・相続、交通事故の被害者側)のように、誰のどの問題を扱うかで絞ります。総合型の看板を掲げる場合も、売上の柱になる分野を1つか2つ明示します。
取引先・取引関係等:経路別の相談件数と受任件数
取引先欄には、顧問先候補の社名(承諾があれば)と、依頼が来る経路を書きます。法律事務所の受任経路は、既存の依頼者や知人からの紹介、他士業(税理士・司法書士)からの紹介、ホームページや検索広告、弁護士会の法律相談や国選弁護の配点、法テラスの民事法律扶助に分かれます。経路ごとに「月に何件の相談が来て、そのうち何件を受任するか」を分けて書くと、売上予測の根拠がそのまま説明になります。
国選弁護や法テラスの事件は報酬の支払いが確実な反面、報酬額は国や法テラスの基準で決まり、自分では設定できません。開業初期の下支えとして件数を見込むのは妥当ですが、売上の大半をここに頼る計画は単価の低さが数字に表れます。チャネルごとの獲得単価と着手順序は士業の集客とは?チャネル別の獲得単価と着手順序で整理しています。
売上予測:分野別の単価×受任件数と入金のずれ
法律事務所の売上は、顧問料・着手金・報酬金・相談料・日当などに分け、自分の報酬体系に合わせて集計します。このうち毎月決まって入るのは顧問料だけで、着手金は受任時、報酬金は事件の終結時に入ります。訴訟や調停は終結まで1年以上かかることが珍しくないため、開業から半年ほどは報酬金がほとんど入らない前提で組みます。
次の表は、売上予測の組み方を示すための試算です。単価と件数はすべて仮定で、実際の計画では自分の報酬基準と受任実績に置き換えてください。
| 売上の種類 | 前提(仮定) | 開業当初の月額 | 1年後の月額 |
|---|---|---|---|
| 顧問料 | 月3万円×顧問先 | 3社=9万円 | 8社=24万円 |
| 着手金 | 平均25万円×受任件数 | 2件=50万円 | 4件=100万円 |
| 報酬金 | 平均30万円×終結件数 | 0件=0円 | 2件=60万円 |
| 相談料・その他 | 弁護士会相談・国選等 | 10万円 | 10万円 |
| 合計 | - | 69万円 | 194万円 |
この試算で見るべきは、開業当初と1年後の差の大半が報酬金と顧問料から来ている点です。創業計画書の「事業の見通し」欄は「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」の2時点を書く形式なので、当初の数字に報酬金を入れていないこと、1年後の報酬金は当初の受任件数から終結見込みを数えたことを、算定根拠の欄に書き添えます。
受任件数の上限は弁護士1人が並行して抱えられる事件数で決まります。分野ごとの平均処理期間と手持ち件数の上限を置き、それを超える件数を売上予測に入れないことが、過大計上を避ける一番の歯止めです。
経費と開業資金:法律事務所に特有の項目
経費予算は、自分の事務所の家賃、人件費、会費などを積み上げて作ります。参考になる全体像として、日弁連が2023年に全会員を対象に実施した弁護士実勢調査(2022年1年間が対象・有効回答率7.28%)では、回答した弁護士の収入の中央値が1,500万円、所得の中央値が800万円でした(弁護士白書2023年版)。中央値同士の差は経費の中央値ではありませんが、収入のかなりの部分が経費に回る前提で予算を組みます。家賃と人件費に加え、法律事務所には一般の事業にない固定費があります。
| 経費項目 | 法律事務所での中身 |
|---|---|
| 弁護士会費 | 日弁連会費+所属弁護士会の会費 |
| 家賃・保証金 | 相談室の確保・裁判所への距離 |
| 人件費 | 事務員・勤務弁護士(本人分は除く) |
| 保険 | 弁護士賠償責任保険 |
| 調査・システム | 判例DB・案件管理・会計 |
| 広告 | ホームページ・検索広告 |
弁護士会費は、日弁連会則95条で日弁連の会費が月額10,200円(修習を終えて2年を経過しない会員は月額5,100円)と定められ、これに少年・刑事財政基金の特別会費(月額1,300円)と法律援助基金の特別会費(月額800円)が加わります。2つの特別会費の徴収期間は令和7年7月から令和10年6月までです。さらに所属する弁護士会(単位会)の会費が別にかかり、金額は弁護士会ごとに違うため、所属予定の弁護士会の会費規程で確かめて計上します。
公庫の創業計画書の計算方法では、個人営業の場合、人件費に事業主本人の分を含めません。本人の生活費と借入の元金返済は「利益」から払う前提で読まれるため、利益の額が生活費と返済額を上回っているかを必ず確かめます。
預り金の分別管理と運転資金からの除外
和解金や示談金、保証金として依頼者から預かるお金は、事務所の売上ではありません。日弁連の「預り金等の取扱いに関する規程」は、預り金だけを管理する預り金口座の開設を求め、口座名義に「預り金」「預り口」など預り金口座であることを示す文字を使うこと、口座情報を所属弁護士会に届け出ることを定めています。1つの事件または1人の依頼者について預り金が50万円以上となり、それを14営業日以上保管するときは、うち50万円以上を預り金口座で保管しなければなりません(4条2項)。
資金繰り表では、預り金の入金と払い出しを売上・経費の欄から外して別行で管理します。預り金が一時的に積み上がると手元資金が厚く見えますが、運転資金の算定に入れてはいけません。会計や案件管理で預り金をどう分けて記録するかは法律事務所のシステムとは?6領域の全体像と既製品/受託開発の判断基準で詳しく扱っています。
開業資金と運転資金の見積もり
公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、公庫の融資先を対象とする業種横断の集計で、開業費用は平均975万円、中央値600万円となり、250万円未満が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%でした。法律事務所は在庫や大型設備が要らないため、主な支出は事務所の保証金と内装、什器・複合機・パソコン、ホームページ制作です。自宅開業や事務所内独立採算(ノキ弁)から始めれば、開業費用は小さく抑えられます。
開業費用より重く見るべきなのは運転資金です。前の章のとおり報酬金の入金は事件の終結まで遅れるので、「着手金と顧問料の月額」が「月の固定費」に届かない不足額と、本人の生活費を分けて、報酬金が入り始めるまでの月数分をそれぞれ数えます。事業の不足額は運転資金として自己資金と借入で用意し、生活費は融資の使途に含めず自己資金などで別に確保します。
資金調達:公庫の融資と日弁連の偏在解消貸付
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の対象と融資条件
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める人と事業開始後おおむね7年以内の人が対象です。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。女性、35歳未満または55歳以上の人などは特別利率の対象になります。
対象者の注記には「適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」とあり、創業計画書の提出などで事業計画の内容を確認すると書かれています。かつての新創業融資制度にあった「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という要件は、2024年度の制度見直しでなくなりました。ただし、自己資金を貯めてきた経緯は計画性を示す材料として面談で聞かれるので、通帳の動きと説明を揃えておきます。
弁護士が少ない地域での開業に使える日弁連の無利息貸付
日弁連は、弁護士1人あたりの人口が3万人を超える地区(地裁支部単位)や、法律事務所が2か所以上ない地区(簡裁単位)などを「偏在解消対策地区」と定めています。この地区で独立開業する弁護士には、事務所開設費用と当面の運営費用として350万円を上限に無利息で貸し付けます。法律事務所が3以下で国選弁護・当番弁護・法律扶助を受任する弁護士が1名以下の地域などは「特別独立開業等支援対象地区」とされ、上限は650万円に上がり、うち300万円は、申請により、公益的事件を積極的に受任した場合に返済の免除を受けられます(日弁連「弁護士偏在解消のための経済的支援」)。
登録直後に独立する場合は、日弁連の独立開業支援チューター制度も使えます。第78期の新規登録弁護士で即時・早期に独立した人やノキ弁などが対象で、登録後5年〜15年程度の弁護士を中心とするチューター2名が担当し、原則1年間、事件処理や事務所運営の相談に乗ります。計画書の自由記述欄に、こうした相談先を確保していることを書くと、経験年数の浅さを補う材料になります。
弁護士法・日弁連規程による集客と報酬設定の制限
法律事務所の創業計画では、紹介料、広告、報酬契約の規制を集客方法と単価の見積もりに反映します。次の3点は、売上や集客の数字そのものを左右します。
集客計画における紹介料の禁止
弁護士法27条は、72条から74条に違反する者から事件の周旋を受けることを禁じ、違反には77条1号で2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が科されます。72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件の周旋をすることを業とするのを禁じる規定です。つまり、弁護士でない業者に紹介料を払って事件を回してもらう仕組みは、売上予測の根拠になりません。弁護士職務基本規程13条も、依頼者の紹介を受けたことへの謝礼その他の対価の支払いと、紹介したことへの対価の受け取りの両方を禁じています。相手が弁護士や他士業でも、紹介料を払う前提の計画は成り立ちません。集客経路の欄に「提携先からの紹介」と書く場合は、紹介元が誰で、対価のやり取りがないことを説明できるようにしておきます。
業務広告規程による広告表現と勧誘方法の制限
日弁連の「弁護士等の業務広告に関する規程」は、3条で事実に合致しない広告、誤導又は誤認のおそれのある広告、誇大又は過度な期待を抱かせる広告、特定の弁護士や事務所と比較した広告などを禁じ、4条で訴訟の勝訴率の表示を禁じています。顧問先や依頼者の名前は、書面か電磁的方法による同意がなければ表示できません。5条は、面識のない人への訪問や電話による広告を原則禁止しています。営業計画に「地域の企業へ電話で顧問契約を提案」と書くと、規程に反する計画になります。
2026年2月19日に改正された「業務広告に関する指針」は、誤導・誤認のおそれのある表現の例として、「着手金0円~」のような報酬の曖昧な表示、実際には表示額を大きく超える着手金を受け取っているのに「着手金○万円~」と表示すること、相談体制が整っていないのに「24時間365日相談対応」と表示すること、入力するだけで減額の可否が分かるかのような「借金減額診断」などを挙げています。集客計画で広告単価や問い合わせ数を見込むときは、この指針に沿った表示で集まる数を前提にします。ホームページの構成と表示の注意点は士業のホームページ制作とは?必要な構成・費用相場と業務広告規程を外さない依頼先の選び方で解説しています。
報酬基準と委任契約書による単価の根拠
「弁護士の報酬に関する規程」は、報酬基準に報酬の種類、金額、算定方法、支払時期などを明示するよう求め(3条2項)、受任時には報酬とその他の費用を説明し、報酬に関する事項を含む委任契約書を作るよう定めています(5条)。弁護士職務基本規程30条1項も、事件を受任するときに弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作ることを原則として求めています。委任契約書には、受任する法律事務の範囲、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期、中途で終わった場合の清算方法を書きます。法律相談や顧問契約などの継続的な契約に基づく事務は、作成を要しない場合があります。
この報酬基準と委任契約書のひな形は、創業計画書の単価の根拠としてそのまま使えます。事業計画書に「着手金平均25万円」と書くなら、報酬基準のどの区分から出した数字かを示せるようにしておくと、面談での説明が短く済みます。
審査で弱く見える計画書の典型と直し方
- 受任件数に上限がない:1年後の受任件数が、弁護士1人で抱えられる事件数を超えている。分野別の平均処理期間から手持ち件数の上限を置き、それに収まる件数に直します。
- 報酬金を初月から計上している:着手と同時に報酬金が入る前提になっている。終結見込みの月から計上し、それまでの赤字を運転資金で埋める形に直します。
- 勤務先の依頼者を自分の顧客として数えている:独立後の受任を約束していない依頼者は売上の根拠になりません。既存案件は独立後の受任を確認できたものに絞り、新規案件は相談件数と受任率から別途見積もります。
- 弁護士会費と保険が経費にない:一般の業種の記入例を写すと抜けやすい項目です。会費は所属弁護士会の金額で入れます。
- 預り金を手元資金に含めている:預り金口座の残高を運転資金に数えると、資金繰りが実態より厚く見えます。別行に分けます。
- 取扱分野が「一般民事全般」:分野が広いほど集客の打ち手と単価の根拠がぼやけます。売上の柱になる分野を明示し、ほかの分野は付随業務として書きます。
よくある質問
法律事務所の開業に事業計画書は必須ですか?
弁護士会や日弁連への法律事務所の届出に事業計画書は不要です。融資を受ける、事務所を借りる、共同経営者と経費を分担するといった場面で求められます。外国法事務弁護士の承認申請では、外弁法12条1項3号の「計画」の審査に関連して事業計画書を提出します。
弁護士は日本政策金融公庫の融資を受けられますか?
受けられます。新規開業・スタートアップ支援資金の対象は、新たに事業を始める人と事業開始後おおむね7年以内の人です。審査では資格よりも、独立後に依頼が来る根拠と月次の収支が見られます。
法律事務所の開業資金はいくら必要ですか?
事務所の形態で大きく変わります。公庫の2025年度調査では、公庫融資先の業種横断集計で開業費用が平均975万円・中央値600万円でしたが、法律事務所は大型設備が要らないため、主な支出は保証金・内装・什器・ホームページです。開業費用よりも、報酬金が入り始めるまでの数か月分の固定費と生活費を運転資金として確保できるかが重要です。
即独(司法修習後すぐの独立)でも事業計画書は書けますか?
書けます。受任実績がない分、修習中や登録前に確保した顧問先候補、弁護士会の法律相談や国選弁護の配点見込み、日弁連のチューター制度など相談先の確保を具体的に書きます。売上は控えめに置き、運転資金を厚めに見込むと審査で説明しやすくなります。
法律事務所の事業計画書のテンプレートはどこで手に入りますか?
日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードページで創業計画書(PDF・Excel)と記入例を入手できます。外国法事務弁護士の場合は、法務省の承認・指定申請の書式ページに参考書式4・5の事業計画書があります。