MinerUとは?PDFをMarkdownに変換するOSS文書解析ツールの使い方
MinerUは、PDFや画像、Officeファイルを大規模言語モデル(LLM)が扱いやすいMarkdown・JSONへ変換する、OpenDataLab製のオープンソース文書解析ツールです。中国の大規模言語モデルInternLMの事前学習でPDFを機械可読データに変換する必要から生まれた経緯があり、単に文字を抜き出すのではなく、見出し・段落・表・数式・読み順といった文書構造を保ったまま構造化できる点が他のPDF抽出ツールと大きく異なります。この記事では、MinerUが実際に何をするツールなのか、主な機能、pipやCLIでの導入・使い方までを、公式リポジトリの情報に沿って整理します。
まとめ:MinerUの要点
- MinerUはPDF・画像・DOCX・PPTX・XLSXをMarkdown/JSONに変換するOSS。RAGやLLMの前処理として文書を機械可読化する用途に向く。
- 数式はLaTeX、表はHTMLで保持し、ヘッダー・フッター・脚注を除去して人間の読み順どおりに出力する。109言語のOCRでスキャンPDFにも対応する。
- 導入は
pip install -U "mineru[all]"。Python 3.10〜3.13・メモリ16GB以上が目安で、Windows・macOS・Linuxで動く。 - 使い方はCLI(
mineru -p 入力 -o 出力)・Python SDK・FastAPI・Gradio製WebUIの4通り。試すだけならインストール不要の公式オンライン版mineru.netもある。 - 汎用の表抽出ツールではなく「LLMに食わせる前提の文書パーサ」。単純な表だけ抜きたい用途なら軽量な別ツールの方が適する場面もある。
MinerUとは何か:OpenDataLab製のオープンソース文書解析エンジン
MinerUは、上海AI Lab傘下のOpenDataLabが公開している文書解析ツールで、GitHubリポジトリ(opendatalab/MinerU)で開発が続けられています。対応する入力はPDFのほか、画像、DOCX、PPTX、XLSX、Webページなど。出力はMarkdownとJSONで、いずれも文書中の要素を読み順どおりに並べ替えたうえで書き出します。「mineru pdf to markdown」という検索が示すとおり、中心的な役割はPDFをMarkdownへ変換することにあります。
誕生の背景には、LLMの事前学習で大量のPDFを高品質なテキストに変換する必要があったという事情があります。学習データの整形という厳しい要件から生まれているため、罫線のない表や複数段組みのレイアウト、数式混じりの論文といった「従来ツールが崩しやすい文書」に強いのが特徴です。生成AIの回答根拠となるドキュメントを整える工程は、LangChainを使ったRAG(検索拡張生成)の概要と実践方法で扱うRAG構築の前段そのものであり、MinerUはこの前処理を担うツールと位置づけると理解しやすくなります。
MinerUの主な機能:Markdown変換・数式・表・OCR
PDF・画像・OfficeをMarkdown/JSONへ構造化
MinerUの出力は、見出し・本文・リストをMarkdownの記法で表現したファイルと、要素の座標や種別を含むJSONの2系統です。ページ番号やヘッダー・フッター、脚注といった本文の意味を壊すノイズを自動で除去し、複数段組みのページでも左段→右段という人間の読み順に並べ替えて出力します。ここが「テキストは抜けるが順序がバラバラ」という従来型抽出との決定的な差です。なお現行のissoh旧版で説明していたCSV出力やGUIのテンプレート機能は実態と異なるため、Markdown/JSONを前提に読み替えてください。
数式はLaTeX、表はHTMLで保持
論文やレポートに含まれる数式は、画像化せずLaTeX形式へ変換します。これにより、抽出後もそのまま数式として再利用・検索できます。表については、セルの結合や罫線なしレイアウトを解析したうえでHTMLの表として書き出すため、行と列の対応関係が崩れにくくなっています。数式と表の構造保持は、論文や技術文書をRAGに取り込む際に精度を左右する要素で、MinerUが研究用途で選ばれる主な理由です。
109言語のOCRと多段組の読み順復元
スキャンされた画像PDFや手書きを含む文書に対しては、OCR(光学文字認識)で文字を起こします。対応言語は109言語で、日本語や英語はもちろん、混在した文書にも対応します。OCRエンジンの精度そのものを深掘りしたい場合は、Tesseract 5で変わるOCR精度とLSTMエンジン刷新の全体像も参考になります。MinerUは文字認識だけでなく、認識した文字を文書構造に沿って配置し直すところまでを一括で行う点が、単体のOCRツールとの違いです。
VLMとpipelineの2バックエンド
MinerUは処理エンジンを用途で切り替えられます。GPUを使い画像理解モデル(VLM)で高精度に解析するVLMバックエンドと、CPUだけで動かせるpipelineバックエンドの2系統があり、VLMモデルとしてMinerU2.5系が搭載されています。GPUが無い環境ではpipelineを選ぶことで、精度と引き換えにCPUのみでの実行が可能です。バージョンは活発に更新されているため、最新の対応状況は公式リポジトリで確認してください。
MinerUのインストール手順(Windows・Mac・Linux)
動作要件とPythonバージョン
MinerUはWindows・macOS・Linuxのいずれでも動作します。ただし旧版が説明していたEXEや.dmgのインストーラー形式ではなく、Pythonパッケージとして導入するのが基本です。要件はPython 3.10〜3.13。必要リソースはバックエンドで異なり、CPUだけで動かすpipelineバックエンドはメモリ16GB以上・ディスク20GB程度、GPUを使うVLMバックエンドではVRAM 8GB以上が目安です。「mineru windows」「mineru mac」で検索して来た場合も、まずはPython環境を用意する前提になります。
pip/uvでのインストール
依存関係を含めた一括インストールは、以下のコマンドで行います。高速なパッケージ管理ツールuvを使う例です。
uv pip install -U "mineru[all]"
uvを使わない場合は、通常のpipでも同じ指定でインストールできます。
pip install -U "mineru[all]"
[all]はOCRやVLMを含む全機能を入れる指定です。vLLM/LMDeployによる高速化を除いた構成でよければ、より軽量なmineru[core]を指定する方法もあります。
モデルの取得先(ModelScope・HuggingFace)
MinerUは解析用のモデルを別途ダウンロードして使います。取得元はModelScopeとHuggingFaceに対応しており、実行環境に応じて自動で選択されます。国内からHuggingFaceへの接続が不安定な場合はModelScope側を指定するなど、ダウンロード元を切り替えられる点は、初回セットアップでつまずきにくいポイントです。
MinerUの使い方:CLI・Python API・WebUI・オンライン版
CLIでPDFをMarkdownに変換する
もっとも手軽なのはコマンドライン(CLI)です。入力ファイルと出力先を指定するだけで変換できます。
mineru -p input.pdf -o ./output
GPUが無い環境でCPUのみで実行したい場合は、pipelineバックエンドを明示します。
mineru -p input.pdf -o ./output -b pipeline
入力にはファイル単体だけでなくディレクトリも指定でき、フォルダ内のPDFをまとめて変換する定期処理にも組み込めます。
Python API・FastAPIでの組み込み
「mineru python」「mineru api」で検索されるとおり、MinerUはPython SDKとして自作スクリプトから呼び出せます。さらにFastAPIベースのサーバーとして起動すれば、社内システムからHTTP経由で変換を依頼する構成も作れます。RAGの取り込みパイプラインに組み込み、アップロードされたPDFをMarkdown化してベクトルデータベースへ渡す、といった自動化がしやすい設計です。生成AIの回答品質を担保する観点は、ハルシネーションを防止するための具体的な対策と運用上の工夫も合わせて押さえておくと、前処理の狙いが明確になります。
WebUI(Gradio)とインストール不要のオンライン版
コマンドに不慣れな場合は、Gradio製のWebUIをローカルで起動し、ブラウザからPDFをアップロードして変換結果を確認できます。まず動きだけ試したいなら、インストール不要の公式オンライン版mineru.netを使う方法もあります。まずはオンライン版で出力品質を確かめ、業務で使うと決めたらローカルへ導入する、という順序が現実的です。サーバー運用ではDockerイメージが用意されているほか、AIエージェントから直接呼び出すためのMCPサーバーも公開されており、環境を汚さずに組み込めます。
他のPDF抽出ツールとの違いと、向かない使い方
MinerUは「PDFからデータを抜くツール」と一括りにされがちですが、狙いはTabulaやCamelot、pdfplumberのような表抽出ライブラリとは異なります。それらが表を構造化してCSV等に落とすことに特化しているのに対し、MinerUは文書全体をLLMが読める形(Markdown)へ再構成することを目的にしています。したがって、次のような整理で選ぶのが実務的です。
| 目的 | 向くツール | 理由 |
|---|---|---|
| 論文・レポートをRAGに取り込む | MinerU | 数式・表・読み順を保ったMarkdown化 |
| スキャンPDFの文字起こし | MinerU | 109言語OCR+構造復元を一括処理 |
| 整った表だけをCSVで抜く | pdfplumber等 | 軽量・依存が少なく高速 |
LLM前処理を狙う文書パーサという点では、markerやDoclingが同じ土俵の比較対象になります。MinerUは数式のLaTeX化と多段組の読み順復元、109言語OCRを1つのパイプラインでまとめて処理できる点が選択理由になりやすい一方、これらは機能や精度が近接しており、扱う文書の種類で実際に試して選ぶのが確実です。逆に言えば、GPUもPython環境も用意せず、罫線のはっきりした表を1つだけ抜きたいといった用途では、モデルのダウンロードを伴うMinerUはオーバースペックです。RAGやLLM連携を前提に、レイアウトの複雑な文書をまとめて機械可読化したいときにこそ効果を発揮します。こうしたエージェント連携での文書活用は、Agentic RAGのアーキテクチャと構成要素を詳しく解説で扱う構成の入り口にあたります。
MinerUに関するよくある質問
MinerUは無料で使えますか?ライセンスは?
MinerUはオープンソースとして公開されており、リポジトリから無料で導入できます。ライセンスは当初のAGPL-3.0から、v3.1.0でApache 2.0をベースにした独自ライセンス(MinerU Open Source License)へ変更され、商用利用のハードルが下がりました。ただし追加条件が付くため、商用利用や再配布の可否は導入前に公式リポジトリのLICENSEファイルで最新の条件を必ず確認してください。
WindowsやMacでも動きますか?
Windows・macOS・Linuxのいずれでも動作します。ただしインストーラーを実行する形ではなく、Python環境にpipで導入する形式です。Python 3.10〜3.13を用意したうえでインストールしてください。
GUIはありますか?
デスクトップアプリ型のGUIではありませんが、Gradio製のWebUIをローカルで起動すればブラウザ上で操作できます。インストールせずに試したい場合は、公式オンライン版mineru.netが使えます。
出力形式はCSVですか?
いいえ。標準の出力はMarkdownとJSONです。表はHTMLとして(Markdown出力内に埋め込まれる形で)、数式はLaTeXとして保持されます。CSVを前提にしていた情報は古い説明であり、LLMやRAGへ渡すことを想定した形式である点に注意してください。
Pythonから呼び出せますか?
はい。Python SDKとして自作コードから利用でき、FastAPIサーバーとして立ち上げてAPI経由で呼び出すこともできます。CLIでのバッチ処理と組み合わせれば、PDF取り込みの自動化に組み込めます。