GPT-Realtime-2とは|OpenAI音声3モデルの仕様・料金とgpt-realtime-2.1の違い
OpenAIは2026年5月7日、Realtime API向けにGPT-Realtime-2(推論型の音声対話)、GPT-Realtime-Translate(同時通訳)、GPT-Realtime-Whisper(ストリーミング文字起こし)の3モデルを同時公開した。さらに2026年7月6日には後継のgpt-realtime-2.1と低コスト版gpt-realtime-2.1-miniが追加され、現在の主力は2.1系に移っている。本記事は3モデルの仕様・料金・接続方法を実装目線で整理し、「gpt-realtime-2と2.1のどちらを使うか」「Whisperはazureで使えるか」「WER(認識精度)は公表されているか」といった実クエリに事実ベースで答える。
まとめ:3モデルの役割と現行の選び方
- 役割は明確に分業。会話+ツール実行はGPT-Realtime-2系、同時通訳はGPT-Realtime-Translate、文字起こしはGPT-Realtime-Whisper。1つのRealtime APIで併用できる。
- 新規実装なら2.1系を選ぶ。gpt-realtime-2.1が現行フラッグシップ(p95遅延を旧比25%短縮)、gpt-realtime-2.1-miniは音声出力が2.1の約1/3の価格でコスト優先向け。gpt-realtime-2は同系の一つ前の版という位置づけ。
- 料金は課金単位が違う。GPT-Realtime-2/2.1は音声トークン課金(入力$32・出力$64/100万トークン)、Translateは$0.034/分、Whisperは$0.017/分(Azureは時間課金)。
- Whisperはazureでも利用可。Microsoft FoundryでGlobal Standard(従量課金)として提供され、Realtime API(WebSocket/WebRTC)から呼び出す。
- 公式のWERは言語別の単一値が非公表。自社の実音源で測るのが前提。
GPT-Realtime-2と関連3モデルの全体像
3モデルは「1つの巨大モデルで全部やる」構成ではなく、用途ごとに遅延とコスト特性を振り分けた分業型で提供された。同時にRealtime APIが正式版(GA)へ昇格し、音声を入出力の第一級モダリティとして扱う設計に切り替わっている。
推論・通訳・文字起こしを分担する3モデルの位置づけ
| モデル | 役割 | 入出力 | 課金単位 |
|---|---|---|---|
| GPT-Realtime-2 / 2.1 | 音声対話・ツール実行(エージェント) | 音声・テキスト・画像入力/音声出力 | トークン |
| GPT-Realtime-Translate | 同時通訳(会話エージェントではない) | 音声入力/訳出音声 | 分 |
| GPT-Realtime-Whisper | ストリーミング文字起こし | 音声入力/逐次テキスト | 分(Azureは時間) |
WhisperとTranslateは会話モデルと並走させる前提で、たとえばTranslateで訳出しつつWhisperで原語の字幕を同時生成する、といった組み合わせが公式想定になっている。SIPテレフォニー、リモートMCPサーバー、画像入力もRealtimeのGAで利用可能になり、音声・電話・外部ツール・画像を1つのAPIで扱える。
gpt-realtime-2.1・2.1-miniへの更新(2026年7月・現行最新)
2026年7月6日に追加されたgpt-realtime-2.1は、キャッシュ機構の改良でRealtime系全体のp95遅延を25%以上短縮した。あわせて注文番号・電話番号・確認コードのような英数字の読み取り精度、無音・雑音の扱い、ユーザーが被せて話したときの割り込み処理が改善している。gpt-realtime-2.1-miniは推論とツール呼び出しに対応した小型・低価格版で、音声出力単価は2.1の約1/3。速度とコストを優先する用途はmini、最大の推論力・指示追従・エージェント挙動が要る用途は2.1、というのがOpenAIの使い分け指針だ。gpt-realtime-2はこの系列の一つ前の版として引き続き利用できるが、新規に選ぶ理由は薄い。
GPT-4o RealtimeからGPT-Realtime-2.1までの系譜
音声モデルの流れは、2024年のGPT-4o Realtime Preview、2025年8月のgpt-realtime(GA)、gpt-realtime-1.5、2026年5月のgpt-realtime-2、そして2026年7月のgpt-realtime-2.1/2.1-miniへと続く。GPT-Realtime-2の主眼は、GPT-5クラスの推論を音声対話へ持ち込んだこと、コンテキストウィンドウを32Kから128Kへ4倍に拡大したこと、推論強度を5段階(minimal / low / medium / high / xhigh)で選べるようにしたことの3点にある。
GPT-Realtime-2の技術仕様と前世代からの進化
GPT-Realtime-2は今回の中核となる音声推論モデルで、ASR・LLM・TTSを直列につなぐカスケード方式ではなく、音声をネイティブに処理するエンドツーエンド構成を採る。以下、コンテキスト・ベンチマーク・エージェント機能の順に具体を確認する。
128Kコンテキストと5段階の推論強度・応答遅延
推論強度の既定値はlowで、応答性を優先する設計になっている。第三者の計測では、既定のlowで最初の音声が返るまで約1.12秒、最も重いxhighでは約2.33秒とされ(計測条件により変動)、強度を上げるほど指示追従は向上するが初動が遅くなるトレードオフがある。OpenAI公式はミリ秒値そのものを製品ページで明示していないため、reasoning.effortはlowから始め、失敗が出た局面だけhigh以上へ動的に引き上げる段階的最適化が実務の定石になる。128Kへ拡大したコンテキストにより、長い対話の途中で過去の発言や共有画像の参照を保持し続けられる。
Big Bench Audio 96.6%とAudio MultiChallengeの測定結果
公式が示した指標はBig Bench Audio(音声知能)とAudio MultiChallenge(指示追従)の2軸で、いずれも前世代のgpt-realtime-1.5を明確に上回った。
| ベンチマーク | gpt-realtime-1.5 | gpt-realtime-2 | 差分 |
|---|---|---|---|
| Big Bench Audio(high) | 81.4% | 96.6% | +15.2pt |
| Audio MultiChallenge(xhigh) | 34.7% | 48.5% | +13.8pt |
Big Bench Audioは飽和に近い水準まで達した一方、Audio MultiChallengeは依然50%未満で、複雑な多ターン会話の指示追従には改善余地が残る。いずれも本番既定のlowではなく強い推論強度での測定値である点に注意したい。実利用の裏付けとしては、Zillowが音声エージェントの通話成功率をプロンプト最適化後に69%から95%(26ポイント改善)へ引き上げ、住宅広告で必須のFair Housing遵守も強化したと公表している。
並列ツール呼び出し・プリアンブル発話・Cedar/Marin音声
GPT-Realtime-2はparallel_tool_callsによる複数ツールの並列呼び出しに対応し、外部API待ちの間に「少々お待ちください」といった短いプリアンブル発話を挟んで会話を止めない。音声はRealtime専用の新音声Cedar(落ち着いた中立トーン。サポート・案内向き)とMarin(やや温かく活発。オンボーディングや誘導向き)が追加され、既存8音声(alloy、ash、ballad、coral、echo、sage、shimmer、verse)も品質が更新された。voiceはセッション開始後の初回音声出力で固定されるため、話者属性を切り替える設計は新規セッションで対応する。プロンプトは「Role」「Tools」「Unclear Audio」など短いラベル付きセクションに分けると保守しやすい。
GPT-Realtime-Whisperの文字起こし精度とAzure提供状況
GPT-Realtime-Whisperは、発話が終わるのを待たずに逐次テキストを返すストリーミング型の文字起こしモデルだ。ライブ字幕、会議メモ、通話モニタリングなど低遅延の転写を狙う。バッチ型のWhisperを使用したリアルタイム文字起こしの実現方法で扱う従来手法とは、逐次配信という点が根本的に異なる。
認識精度(WER)の考え方と公表状況
OpenAI・Microsoftとも、言語別の単一WER値は公式には公表していない。Microsoftのモデル説明でも「精度は言語・音質・発話条件で変動する」と明記され、本番相当の音源で事前検証することが推奨されている。したがって「gpt-realtime-whisperのWERは何%か」という問いへの実務的な答えは、汎用ベンチの数値を鵜呑みにせず、コールセンター・会議室・屋外など自社の利用環境で固有名詞・数字・日付の認識率を個別に測る、が正解になる。ISO-639-1の言語ヒント(例:en)を渡すと精度が安定しやすい。話者分離まで要る場合は、Realtimeのストリーミング転写ではなくgpt-4o-transcribe-diarizeとは?OpenAIの話者分離対応音声認識モデルで扱うバッチ系モデルが向く。
Azure(Microsoft Foundry)での提供状況
gpt-realtime-whisperはMicrosoft FoundryでGlobal Standard(従量課金)のデプロイとして提供され、モデルカタログから配備する。呼び出しは他のRealtimeモデルと同じくRealtime API経由で、WebSocketまたはWebRTCで接続し、デプロイ名にgpt-realtime-whisperを指定する。Translateと並走させて「訳出+原語字幕」を1フローで返す構成が公式ユースケースに挙がっている。Azure側の料金は時間課金で、最新のリージョン対応と単価はAzure OpenAIの料金ページで確認する。データ所在地やプライベートネットワーク要件が厳しい組織は、機能提供時期がOpenAI本家よりやや遅れる点を織り込みつつAzure経由を選ぶ判断になる。
whisper-1・large-v3からの移行時の注意点
従来のwhisper-1やwhisper-large-v3はバッチ型のファイル転写だ。gpt-realtime-whisperへ移すときの差分は3つに集約できる。第1に接続方式がPOST /v1/audio/transcriptionsからWebSocket/WebRTCへ変わり、リアルタイム前提の呼び出しに書き直す。第2に結果が増分配信になるため、確定テキストと暫定テキストを分けて管理するロジックが要る。第3に課金が分・時間単位になり、長時間連続稼働のコスト試算を見直す。録音済みファイルを一括で処理したい用途は、依然としてバッチ型のwhisper-1やlarge-v3が適する。
GPT-Realtime-Translateによる同時通訳
GPT-Realtime-Translateは、話者が文を言い終えるのを待たず発話途中から訳出音声を生成する、同時通訳特化のモデルだ。会話エージェントではなく翻訳専用である点に注意する。
70入力言語・13出力言語とストリーミング訳出のトレードオフ
対応は入力70言語以上・出力13言語という非対称構成で、多言語の入力を受けつつ出力は主要言語に絞ることで品質とコストのバランスを取る。ASR→機械翻訳→TTSのカスケードではなく音声から音声への一体処理を志向し、中間段階での意味のロスと遅延蓄積を抑える。ただしストリーミング訳出には、文末まで聞かないと意味が確定しない言語ペアで訳の修正が発生するという構造的な弱点がある。とりわけ述語が文末に来る日本語から英語へ訳す場合は前倒し訳の上書きが起きやすく、句読点や息継ぎを区切りに訳出を始める遅延起点の設計や、想定ユーザーに近いサンプル音源での事前評価が要る。会議用途は遅延を許容して品質を優先し、コールセンター用途は応答性を優先する、といったユースケース別の調整が現実的だ。声質そのものを再現するボイスクローンは本モデルの公式機能ではないため、話者の声を再現したいならElevenLabs等の合成基盤との併用になる。
3モデルとgpt-realtime-2.1の料金体系
料金は課金単位が2系統に分かれる。GPT-Realtime-2/2.1系はトークン課金、TranslateとWhisperは時間・分課金だ。2026年7月28日に追加されたgpt-live-transcribeも分課金で単価は0.017ドル毎分、内訳と実装はGPT-Live-Transcribeの実装手順と料金の使い分けで扱う。
モデル別の料金早見
| モデル | テキスト入力 | 音声入力 | キャッシュ音声入力 | 音声出力 | 分/時課金 |
|---|---|---|---|---|---|
| gpt-realtime-2 / 2.1 | $4.00 / 1M | $32 / 1M | $0.40 / 1M | $64 / 1M | — |
| gpt-realtime-2.1-mini | $0.60 / 1M | $10 / 1M | $0.30 / 1M | $20 / 1M | — |
| GPT-Realtime-Translate | — | — | — | — | $0.034 / 分 |
| GPT-Realtime-Whisper | — | — | — | — | $0.017 / 分(Azureは時間課金) |
単位は100万トークンあたりのUSD。miniは音声出力が2.1の約1/3で、推論を残したままコストを大きく下げられる。
分単位課金の試算とトークン課金のキャッシュ最適化
分課金は試算が単純だ。Translateを月1,000分(約16.7時間)使えば$34、月10,000分で$340。Whisperはその半額(月10,000分で$170)。トークン課金のGPT-Realtime-2/2.1は会話の長さと話速で消費が変動するため、代表シナリオを実測して1分あたりのトークン係数を掴んでおく。コスト最適化の主軸はバッチ割引(Realtime系は対象外)ではなくプロンプトキャッシュで、キャッシュ済み音声入力は$0.40/100万トークンと通常入力の80分の1にあたる。固定的なシステムプロンプト・ツール定義を安定化させてキャッシュヒット率を上げ、頻繁に変わる動的情報はキャッシュ対象外に分離するのが基本設計になる。
接続方式の選定と競合との比較
ここは公式の機能一覧では判断しづらい、選定の実務論点をまとめる。結論から言えば、新規のブラウザ音声UIはWebRTC、サーバー間はWebSocket、既存電話網はSIPが既定の割り当てになる。
WebRTC・WebSocket・SIPの使い分け
接続先はwss://api.openai.com/v1/realtimeで、ブラウザからの低遅延双方向音声はWebRTCが有利だ。実装は、サーバーで短命キー(ephemeralキー)を発行→ブラウザでgetUserMedia→RTCPeerConnectionに音声トラックを追加→SDPオファー交換→session.updateでモデル名・音声・ツールを設定、という流れになる。サーバー間の常時接続やバックエンド処理はWebSocket、既存PBX・電話はrealtime.call.incoming Webhookを起点にしたSIPが向く。OpenAIは@openai/agents/realtime SDKも提供しており、RealtimeAgent/RealtimeSession経由で低レイヤを抽象化できる。APIキーの扱いやクライアント初期化はOpenAI Python SDKの使い方で扱う手順と共通する。ブラウザ側のマイク入力UIはClaude Codeの音声入力(Voice Mode)とはのような音声入力機能の設計とも通じる。
Deepgram・Google・Azure・ElevenLabsとの比較と選定基準
| サービス | 強み | ストリーミング転写の単価目安 |
|---|---|---|
| OpenAI GPT-Realtime系 | 3機能を1APIで統合 | Whisper $0.017 / 分 |
| Deepgram Nova-3 | 低価格な専用ASR | 約$0.005 / 分〜(プランで変動) |
| Google Cloud STT | 多言語・ドメイン特化 | Standard $0.016 / 分 |
| ElevenLabs | 音声合成・ボイスクローン | (合成中心) |
転写単体の単価だけを見ればDeepgramやGoogle Standardが安い。だが複数サービスを連携させると接続・保守・監視の工数が積み上がるため、推論から音声出力までを一体で回すなら統合型のRealtime APIが総保有コストで逆転することは多い。判断基準は明快で、転写だけが要るなら専用ASR、会話+ツール実行+(必要なら)通訳・字幕を一体で回すならGPT-Realtime系、特定話者の声質再現が要件ならElevenLabs併用。安さで専用ASRを選ぶ前に、連携先の数と運用体制を必ず勘定に入れるべきだ。
よくある質問
GPT-Realtime-2とは何ですか?前世代との違いは?
OpenAIが2026年5月7日に公開した、GPT-5クラスの推論を持つ音声対話モデルです。前世代gpt-realtime-1.5から、コンテキストが32K→128Kへ拡大、推論強度が5段階(minimal/low/medium/high/xhigh)で選択可能に、Big Bench Audioが81.4%→96.6%へ向上、といった点が変わりました。
gpt-realtime-2とgpt-realtime-2.1はどう違い、どちらを使うべき?
gpt-realtime-2.1は2026年7月6日公開の後継で、p95遅延を旧比25%以上短縮し、英数字の読み取り・無音/雑音・割り込み処理を改善しています。新規実装は2.1系が既定です。最大の推論力が要るなら2.1、速度とコストを優先するなら音声出力が約1/3価格のgpt-realtime-2.1-miniを選びます。gpt-realtime-2は一つ前の版として引き続き使えます。
gpt-realtime-whisperはazureで使えますか?
使えます。Microsoft FoundryでGlobal Standard(従量課金)として提供され、他のRealtimeモデルと同じくRealtime APIをWebSocketまたはWebRTCで呼び出します。デプロイ名にgpt-realtime-whisperを指定し、Translateと並走させて原語字幕を同時取得する構成が公式に想定されています。料金はAzure側では時間課金です。
gpt-realtime-whisperのWER(認識精度)は公表されていますか?
言語別の単一WER値は、OpenAI・Microsoftとも公式には公表していません。精度は言語・音質・発話条件で変動するため、本番相当の音源で事前検証することが推奨されています。固有名詞・数字・日付の認識率を自社の利用環境で個別に測るのが実務的な確認方法です。
GPT-Realtime-Translateの料金は?
$0.034/分の分単位課金です。月1,000分で約$34、月10,000分で約$340という単純計算になります。トークン課金のGPT-Realtime-2/2.1と違い、予算が読みやすいのが特徴です。