Qwen3.5-397B-A17Bは、AlibabaのQwenチームが2026年2月16日に公開したMoE(Mixture of Experts)型のモデルです。Qwen3.5世代で最初に出た、いちばん大きいモデルにあたります。総パラメータは397Bで、1トークンの推論で動くのはそのうち17B(名前の「A17B」)です。テキストのほかに画像と動画も入力でき、重みはApache 2.0ライセンスで商用利用できます。
この記事では、商用利用の条件、必要な機材、API料金を中心に、モデルの仕様と起動手順を説明します。数値はHugging Faceのモデルカードと設定ファイル、Alibaba Cloudの料金表、vLLM・llama.cpp・Ollamaの公式情報から取りました。0.8Bから122BまでのQwen3.5ファミリー全体の選び方も載せました。数値は2026年10月25日に確認したものです。
まとめ:Qwen3.5-397B-A17Bの要点
- 仕様:60層のうち45層が線形注意のGated DeltaNet、15層が通常の注意機構です。エキスパートは512個で、1トークンごとに10個と共有エキスパート1個が動きます。コンテキスト長はネイティブで262,144トークン、YaRNで1,010,000トークンまで伸ばせます。
- ライセンス:Apache 2.0です。後継のQwen3.6・Qwen3.8世代にこれより大きいApache 2.0の重みは無く、Qwen3.5以降で最大のApache 2.0モデルのままです。
- 重みの容量:BF16が806.8GB、公式FP8が406.2GB、公式GPTQ-Int4が235.7GB、GGUFのQ4_K_Mが244.1GB、3bitのUD-Q3_K_XLが178.7GBです。
- 動かせる構成:vLLMの動作確認はFP8版のH200×8枚です。Macなら4bit版にユニファイドメモリ512GB、3bit版に256GBが目安です。
- Ollama:
qwen3.5のタグは122bまでで、397B用は無く、クラウド版のqwen3.5:397b-cloudも404です。 - APIの料金:Model Studioのシンガポールで入力$0.60・出力$3.60(100万トークンあたり)です。ホスト版のQwen3.5-Plusは入力$0.40・出力$2.40です。ただしQwenCloudは、この2つのAPIを2027年1月19日に停止すると告知しており、これから組み込むならAPIは後継を選びます。
Qwen3.5-397B-A17Bの仕様と構成
Hugging FaceのモデルカードのAPIでsafetensorsのパラメータを数えると、403,397,928,944個(約4,034億)あります。視覚エンコーダとMTP(複数トークン予測)用の層を含む数なので、名前の397Bより少し多くなります。モデルカードとconfig.jsonの値は次のとおりです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 公開日 | 2026年2月16日 |
| 総パラメータ/活性パラメータ | 397B/17B |
| 層数 | 60(Gated DeltaNet 45+Gated Attention 15) |
| 隠れ層の次元 | 4,096 |
| エキスパート | 512個(ルーティング10+共有1が稼働) |
| 注意ヘッド(Gated Attention) | Q 32/KV 2(head_dim 256) |
| コンテキスト長 | 262,144(YaRNで1,010,000) |
| 語彙数 | 248,320 |
| 対応言語 | 201の言語・方言 |
| 入力 | テキスト・画像・動画 |
| ライセンス | Apache 2.0 |
MoEの仕組みはMoE(Mixture of Experts)とは?疎活性化とルーターの仕組み・VRAM要件と採用判断を実装者向けに解説で説明しています。ここで押さえるべきなのは、活性が17Bでも512個のエキスパートを全部メモリに載せる必要がある点です。17Bで減るのは1トークンあたりの計算量で、必要なメモリは減りません。
Gated DeltaNetとGated Attentionを3対1で重ねる構成
モデルカードは層の並びを「15 × (3 × (Gated DeltaNet → MoE) → 1 × (Gated Attention → MoE))」と書いています。config.jsonのfull_attention_intervalも4で、4層に1層だけ通常の注意機構が入ります。Gated DeltaNetは、過去のトークンを固定サイズの状態に圧縮して持つ線形注意です。Gated DeltaNet層では、文脈が伸びても状態の大きさと1トークンのデコードに必要な計算量は増えません。ただし、モデル全体では通常の注意層のKVキャッシュと計算量が文脈長に応じて増えます。この構成は2025年9月のQwen3-Next-80B-A3Bとは|仕組み・必要VRAM・動かし方とCoder-Next・3.8-Flash-Nextとの違いで先に試され、Qwen3.5で主力モデルに採用されました。
もう一つの変更は、画像とテキストを最初から一緒に学習するEarly Fusionです。Qwen3世代では視覚言語モデルがQwen3-VLとして別系列でしたが、Qwen3.5では同じモデルが画像と動画も扱います。
Qwen3.5の全モデル一覧と必要メモリ
「Qwen3.5」で調べる人の多くは、397Bではなく手元で動くサイズを探しています。Qwen3.5の公開重みは8サイズで、397B-A17Bが2月16日、122B-A10B・35B-A3B・27Bが2月24日、9B・4B・2B・0.8Bが3月2日に公式GitHubで告知されました。すべてApache 2.0です。7Bや72Bというサイズはありません。
次の表は、各モデルのconfig.jsonから計算したKVキャッシュと、Ollamaのタグ一覧の既定タグのサイズを並べたものです。KVキャッシュはBF16・1系列で、ネイティブ上限の262,144トークンを使い切ったときの値です。
| モデル | 総/活性 | 層(うち注意層) | Ollama既定タグ | 262KのKV |
|---|---|---|---|---|
| 0.8B | 0.87B(密) | 24(6) | 1.2GB(Q8_0) | 3.0GiB |
| 2B | 2.27B(密) | 24(6) | 2.7GB(Q8_0) | 3.0GiB |
| 4B | 4.66B(密) | 32(8) | 3.3GB(Q4_K_M) | 8.0GiB |
| 9B | 9.65B(密) | 32(8) | 6.6GB(Q4_K_M) | 8.0GiB |
| 27B | 27.8B(密) | 64(16) | 17GB(Q4_K_M) | 16.0GiB |
| 35B-A3B | 36.0B/3B | 40(10) | 22GB(Q4_K_M) | 5.0GiB |
| 122B-A10B | 125.1B/10B | 48(12) | 81GB(Q4_K_M) | 6.0GiB |
| 397B-A17B | 403.4B/17B | 60(15) | タグ無し | 7.5GiB |
総パラメータはHugging FaceのAPIが返すsafetensorsの合計で、視覚エンコーダを含みます。表のKVキャッシュ容量は「注意層の数×KVヘッド数×head_dim×2(KとV)×2バイト×262,144トークン」で計算しました。0.8B・2B・35B-A3B・122B-A10B・397B-A17BはKVヘッドが2本、4B・9B・27Bは4本です。
この表で意外なのは、密モデルの27Bが262Kで16GiBと、397Bの2倍以上のKVキャッシュを使うことです。27Bは注意層が16層あり、KVヘッドも4本だからです。長い文書を扱う用途で27Bを選ぶなら、重み17GBにKVの16GiBを足して、GPU1枚で24GBでは足りない前提で見積もります。同じ用途で35B-A3Bを選べば、重みは22GBでもKVは5GiBで済みます。
手元の機材とサイズの対応は次のように考えます。8GB級のPCやスマートフォン相当なら0.8B〜4B、16GBのPCなら9B、24GBのGPUなら35B-A3Bか27B(文脈を短めに)、96GB以上なら122B-A10Bです。397Bは次の章のとおりサーバー級の機材が前提になります。後継のQwen3.6-35B-A3Bとは|必要VRAM・GGUFサイズ・Ollama/vLLMの動かし方とベンチ比較とQwen3.6-27Bとは|必要スペック・メモリ(VRAM)・FP8/GGUFサイズと動かし方、ベンチ比較も同じ構成なので、24GB級ならそちらと並べて評価してください。
Ollamaによる小型モデルの起動と日本語応答の検証
小型モデルなら、Ollamaでそのまま動かせます。既定タグの中身はモデルサイズや実行バックエンドで異なります。以下は今回確認したllama.cppバックエンド向けの構成です。Ollamaのレジストリのmanifestを見ると、qwen3.5:0.8bはQ8_0の重みにMTP用のドラフト層(0.30GB)が付いた0.8b-mtp-q8_0と同じ構成でした。qwen3.5:2bはQ8_0、4b・9b・27b・35b-a3b・122bはQ4_K_Mの重みです。qwen3.5(latest)は9bを指します。
ollama run qwen3.5:9b
ollama run qwen3.5:35b-a3b
Ollama 0.40.5で、0.8bと2bの既定タグを手元のIntel Mac(Core i9-9880H・メモリ16GB・GPUなし)で動かしました。「日本の四季をそれぞれ一文で説明してください」に対し、0.8bはThinkingを切ると毎秒3.5〜3.8トークンで回答しましたが、「雪や氷が溶けて枯れ果実も咲く」のような意味の通らない日本語が混ざり、一文の指定も守りませんでした。2bは毎秒2.8〜3.2トークンで、2回目は四季ではなく1月から順に月ごとの説明を始めました。測定はThinkingなしが各モデル2回、Thinkingありが0.8bの2回で、コンテキスト長は8,192、最大出力は1,024トークンです。同じ機械で別の処理も動いていたため、速度はこの条件での参考値です。
Thinkingを有効にした0.8bは、最大出力を1,024トークンにした2回とも、思考だけで1,024トークンを使い切って回答が空でした。小型モデルを既定のThinkingありで動かすと、短い質問でも回答に届かないことがあります。チャット用途ではAPIのthinkをfalseにするか、出力上限を十分に取ります。今回の四季説明の試験では、0.8Bと2Bに日本語表現や指示追従の問題が見られました。自由文生成を主用途にする場合は、9Bや35B-A3Bも同じ業務課題で比較してください。
後継世代(Qwen3.6・3.7・3.8)との関係
2026年4月以降、世代はQwen3.6、Qwen3.7、Qwen3.8と進んでいます。ただし公開重みとして出たのは一部のサイズだけです。Hugging FaceのQwen公式アカウントと公式GitHubの告知で確認した状況は次のとおりです。
| 世代 | 公開されている重み | ライセンス |
|---|---|---|
| Qwen3.5 | 0.8B〜397B-A17Bの8サイズ | Apache 2.0 |
| Qwen3.6 | 35B-A3B(4月16日)/27B(4月22日) | Apache 2.0 |
| Qwen3.7 | なし(APIのみ) | ― |
| Qwen3.8 | 27B(8月14日) | Apache 2.0 |
| Qwen3.8 | 2.4T-A95B(8月12日)/Flash-Next(8月) | 独自(other) |
Qwen3.8-2.4T-A95Bは397Bより大きく、Apache 2.0ではありません。Flash-Nextも独自ライセンスですが、本体125Bにn-gram埋め込み51BとMTP 4Bを加えた規模で、397Bを下回ります。Apache 2.0でこの規模が必要なら、2026年10月の時点でも397B-A17Bが選択肢になります。Qwen3.8の最上位はQwen3.8-Maxとは|2.4兆MoEの必要VRAM・GPU台数・ライセンスと27Bの選び方で扱っています。
Apache 2.0ライセンスで許される商用利用の範囲
Hugging FaceのリポジトリにあるLICENSEはApache License 2.0の原文です。社内システムへの組み込み、SaaSとしての提供、ファインチューニングしたモデルの再配布のいずれも、ライセンス料なしで行えます。Llama系のような月間アクティブユーザー数の上限もありません。
守るべき条件は第4条の表示義務です。重みを再配布するならライセンスの写しを付け、変更したファイルには変更した旨を書きます。派生物をソース形式で配布するときは、元の著作権・特許・商標・帰属の表示を残します。リポジトリにNOTICEファイルは無いので、NOTICEの引き継ぎは発生しません。APIの出力を自社サービスで使うだけなら再配布に当たりません。
間違えやすい点が2つあります。1つ目は、Model Studio経由でqwen3.5-plusやqwen3.5-397b-a17bを使う場合、適用されるのはApache 2.0ではなくAlibaba Cloudの利用規約だという点です。データの保存先とリージョンは契約条件として確認します。2つ目は、後継が同じライセンスとは限らない点です。Qwen3.8-2.4T-A95Bのライセンス欄はotherで、名称はqwen3.8-maxです。「Qwenの重みはApache 2.0」と考えて差し替えると、法務確認をやり直すことになります。
必要VRAMとメモリ:量子化ごとのファイルサイズ
ローカル実行の容量計画では、重みに加えてKVキャッシュ、実行時のバッファ、OSの使用量を見積もります。次の表は、2026年10月25日にHugging FaceのAPI(/api/models/<repo>/tree/main)から各形式の重みファイルだけを合計した値です(1GB=10億バイト)。GGUFはUnslothの配布で、画像入力にはこれとは別にmmproj(F16で約0.9GB)が要ります。
| 形式 | 配布元 | ファイル合計 |
|---|---|---|
| BF16 | Qwen公式 | 806.8GB |
| GGUF Q8_0 | Unsloth | 421.5GB |
| FP8 | Qwen公式 | 406.2GB |
| GGUF UD-Q5_K_XL | Unsloth | 294.9GB |
| NVFP4 | NVIDIA | 251.2GB |
| GGUF UD-Q4_K_XL | Unsloth | 245.3GB |
| GGUF Q4_K_M | Unsloth | 244.1GB |
| GGUF MXFP4_MOE | Unsloth | 237.4GB |
| GPTQ-Int4 | Qwen公式 | 235.7GB |
| GGUF UD-IQ4_XS | Unsloth | 189.7GB |
| GGUF UD-Q3_K_XL | Unsloth | 178.7GB |
| GGUF UD-IQ2_XXS | Unsloth | 114.9GB |
| GGUF UD-IQ1_M | Unsloth | 106.8GB |
Unslothのドキュメントのメモリ表は、397Bの4bitを214GBとし、256GBのM3 Ultraに載ると書いています。しかし2026年3月5日に再アップロードされた現在のUD-Q4_K_XLは245.3GBです。256GBのMacでは、OSとKVキャッシュに残るのが約11GBしかありません。メモリ計画はドキュメントの表ではなく実ファイルのサイズで立てます。量子化形式の違いはGGUFとは?量子化モデルフォーマットの仕組みとGPTQ・AWQとの違い・採用判断を解説【2026年版】で説明しています。
KVキャッシュが小さい理由と262Kトークンでの見積もり
KVキャッシュを持つのは60層のうち通常の注意機構を使う15層だけです。KVヘッド2本、head_dim 256から計算すると、BF16のKVキャッシュは1トークンあたり30,720バイトで、262,144トークンを使い切っても1系列あたり約7.5GiBです。60層すべてが通常の注意機構なら約30GiBになります。Gated DeltaNetの45層が持つ固定サイズの状態は、mamba_ssm_dtypeがfloat32の場合で1系列あたり約180MiBで、文脈の長さでは変わりません。
モデルカードは、Thinkingの性能を保つためにコンテキスト長を128K以上にするよう勧めています。この構成なら、その推奨はメモリの面でほとんど負担になりません。重みが245GBなのに対し、128Kで約3.75GiBだからです。同時に処理する系列数を増やすときは、この値を系列数倍して足します。
機材の構成別に見た現実的な選択肢
- H200×8枚(合計1,128GB):vLLMのQwen3.5レシピが動作を確認している構成で、推奨は公式FP8版です。H100(80GB)×8枚の640GBにはBF16版が載りません。
- GB200×4 GPU:レシピはNVIDIAのNVFP4版(251.2GB)を勧めています。
- AMD MI355X×2枚:レシピにFP8版をテンソル並列2で動かす例があります。MTPによる投機的デコーディングはAMDでは開発中と注記されています。
- RTX 4090×4枚+メインメモリ800GB:KTransformersのQwen3.5手順が示す最小構成です。BF16の重みをCPU側に置き、AVX512Fに対応したx86 CPU(Sapphire Rapids等)が条件です。
- ユニファイドメモリ512GBのMac:4bit版(約245GB)が余裕をもって載ります。MacでのMLX系の実行はMLXとは?mlx-lmの使い方|生成・量子化・サーバ・LoRAの手順とApple Siliconでの採用判断【2026年10月】を参照してください。
- ユニファイドメモリ256GBのMac:現実的なのは3bitのUD-Q3_K_XL(178.7GB)です。
- 24GBのGPU+256GBのメインメモリ:エキスパートをCPU側に置く構成です。Unslothは毎秒25トークン以上と書いていますが、これは同社の公表値です。
量子化による精度の低下
Unslothのドキュメントは、Benjamin Marie氏による計測を転載しています(元データは同氏のX投稿で、数値はUnslothの転載に基づきます)。LiveCodeBench v6、MMLU-Pro、GPQA、Math500の750問で、元の重みは81.3%、UD-Q4_K_XLは80.5%、UD-Q3_K_XLは80.7%でした。転載された値では、どちらも低下は1ポイント未満です。ただし、この集計値だけでは3bitと4bitの差が統計的に有意かは判断できず、評価に使われた重みのリビジョンが現在の配布物と同じかも確認できていません。日本語とツール呼び出しはこの750問に入っていないので、自社の用途で確かめる必要があります。量子化の一般論はLLM量子化とは?仕組みとGPTQ・AWQ・GGUFの違い・企業の採用判断を解説【2026年版】にまとめています。
Qwen3.5-397Bのローカル・自社GPUでの実行手順
llama.cppによるGGUFの起動設定
Macや、GPUとメインメモリを組み合わせる構成ではllama.cppを使います。-hfでリポジトリと量子化形式を指定すると、分割ファイルがまとめてダウンロードされます。次の例は、GPUのメモリが足りない構成向けにエキスパートをCPU側に置く指定です。
./llama.cpp/llama-server \
-hf unsloth/Qwen3.5-397B-A17B-GGUF:UD-Q3_K_XL \
-ngl 99 --cpu-moe \
-c 131072 \
--temp 0.6 --top-p 0.95 --top-k 20 --min-p 0.00
--cpu-moeは全層のエキスパート、--n-cpu-moe Nは先頭N層のエキスパートをCPUに置きます。ユニファイドメモリのMacでは--cpu-moeを外します。実行ファイルは、Unslothの手順どおりbuild/binからllama.cpp直下にコピーした前提です。-c 131072は、モデルカードの「128K以上」に合わせた値です。Thinkingを切るときは--reasoning offを付けます。2026年10月15日公開の正式版v0.7.0のcommon/arg.cppでは、従来の--chat-template-kwargs '{"enable_thinking":false}'は動くものの「deprecated. Use –reasoning on / –reasoning off instead」と警告が出ます。古い手順書を写すときはここを書き換えます。
vLLM v0.32.0によるFP8版の起動設定
複数GPUで提供するならvLLMです。vLLMのQwen3.5レシピはuv pip install -U vllm --torch-backend=autoで入る安定版を前提にしています。2026年10月25日時点の最新リリースは10月18日公開のv0.32.0です。スループットを重視する構成は次のとおりです。
vllm serve Qwen/Qwen3.5-397B-A17B-FP8 \
-dp 8 \
--enable-expert-parallel \
--language-model-only \
--reasoning-parser qwen3 \
--enable-prefix-caching \
--enable-auto-tool-choice --tool-call-parser qwen3_coder
--language-model-onlyは視覚エンコーダを読み込まず、その分をKVキャッシュに回します。画像を入れる用途では外し、代わりに--mm-encoder-tp-mode dataと--mm-processor-cache-type shmを付けます。同時接続が少なく応答の速さを優先するなら、-dp 8を外し、--enable-prefix-cachingを--no-enable-prefix-cachingに置き換え、-tp 8と--speculative-config '{"method": "mtp", "num_speculative_tokens": 1}'でモデル内蔵のMTP層による投機的デコーディングを使います。同時接続が多いと、ドラフトのトークンがKVキャッシュを使うぶんスループットは落ちます。MTPの仕組みはMTP(Multi-Token Prediction)とは?LLMの複数トークン予測の仕組みと投機的デコーディングでの使い方、速くなる条件はSpeculative Decoding(投機的デコーディング)とは?仕組みと速くなる条件、LM Studio・llama.cpp・vLLMでの設定で扱っています。
モデルカードの例は公開当時のままで、"method":"qwen3_next_mtp"と書かれています。v0.32.0のvllm/config/speculative.pyでは、この名前は「deprecated and replaced with mtp」という警告を出してmtpに読み替えられます。動きはしますが、新しく書く設定はmtpにしておきます。
262,144トークンを超える入力を扱うときは、モデルカードのYaRN指定を起動時に渡します。
VLLM_ALLOW_LONG_MAX_MODEL_LEN=1 vllm serve Qwen/Qwen3.5-397B-A17B-FP8 -tp 8 \
--reasoning-parser qwen3 \
--hf-overrides '{"text_config": {"rope_parameters": {"mrope_interleaved": true, "mrope_section": [11, 11, 10], "rope_type": "yarn", "rope_theta": 10000000, "partial_rotary_factor": 0.25, "factor": 4.0, "original_max_position_embeddings": 262144}}}' \
--max-model-len 1010000
モデルカードは、主要なフレームワークのYaRNは入力長に関係なく倍率が固定(静的YaRN)で、短い文の性能が落ちることがあると注記しています。普段の入力が50万トークン前後ならfactorを2.0にするよう勧めており、長文が要らないサーバーでは指定しないほうが安全です。
起動時にcausal_conv1d_updateの中でassert num_cache_lines >= batchが出て止まることがあります。レシピによると、CUDA Graphのキャプチャサイズ(既定512)がMambaのキャッシュより大きいのが原因で、--max-cudagraph-capture-sizeを下げると回避できます。vLLM自体の構成はvLLMとは?PagedAttentionの仕組み・使い方とOllama・TensorRT-LLMとの違いを実装者目線で解説で説明しています。
SGLang・KTransformersによる起動設定
SGLangでは、モデルカードの基本形がpython -m sglang.launch_server --model-path Qwen/Qwen3.5-397B-A17B --tp-size 8 --mem-fraction-static 0.8 --context-length 262144 --reasoning-parser qwen3です。MTPを使うなら--speculative-algo NEXTN --speculative-num-steps 3 --speculative-eagle-topk 1 --speculative-num-draft-tokens 4を足します。GPUのメモリが足りずCPUのメモリと組み合わせるなら、KTransformersがSGLangのフォークと組み合わせる手順を公開しています。例はRTX 4090×4枚で、--kt-method BF16、--kt-num-gpu-experts 1、--max-total-tokens 32000を指定しています。この例は文脈を3.2万トークンに絞っているので、128K以上という推奨とは両立しません。
ThinkingのON/OFFと推奨サンプリング値
Qwen3.5は既定で回答の前に<think>ブロックを出します。無効にする指定は実行環境ごとに違います。
| 実行環境 | Thinkingを無効にする指定 |
|---|---|
| vLLM・SGLang(リクエストごと) | chat_template_kwargs内のenable_thinkingをfalse |
| vLLM(サーバー全体) | –default-chat-template-kwargs |
| llama.cpp | –reasoning off |
| Ollama | APIのthink: false |
| Model Studio | extra_bodyのenable_thinking |
モデルカードのクイックスタートの推奨値は、Thinkingありがtemperature=0.6, top_p=0.95, top_k=20, min_p=0.0, presence_penalty=0.0、なしがtemperature=0.7, top_p=0.8, top_k=20, min_p=0.0, presence_penalty=1.5です。Best Practicesの節は、presence_penaltyを0〜2で調整すると繰り返しが減る一方、上げすぎると言語が混ざったり性能が少し落ちたりすると注記しています。出力長はほとんどの質問で32,768トークン、数学やプログラミングの難問で81,920トークンが推奨です。複数ターンの会話では、履歴に<think>の中身を入れません。
Ollamaで397Bが見つからない理由
2026年10月25日時点で、Ollamaのqwen3.5のタグは0.8bから122bまでです。397B用は無く、2026年9月14日のWeb Archiveに残るクラウド版qwen3.5:397b-cloud(入力$0.60・出力$3.60)のページは404で、ollama.com/api/tagsのクラウドモデル一覧にもありません。397Bを手元で動かすならllama.cppの手順を、APIで使うなら次の章のModel StudioかOpenRouterを選びます。
API料金とQwen3.5-Plusとの違い
Alibaba CloudのModel Studioでは、公開重みと同じqwen3.5-397b-a17bと、それをホストしたqwen3.5-plusを選べます。Model Studioの料金ページ(2026年10月22日更新)から取った単価は次のとおりで、ThinkingのON/OFFで出力単価は変わりません。
| モデルID | リージョン | 入力トークン数 | 入力 | 出力 |
|---|---|---|---|---|
| qwen3.5-397b-a17b | シンガポール | 256Kまで | $0.60 | $3.60 |
| qwen3.5-plus | シンガポール | 256Kまで | $0.40 | $2.40 |
| qwen3.5-plus | シンガポール | 256K超〜1M | $0.50 | $3.00 |
| qwen3.5-397b-a17b | 北京・フランクフルト・バージニア | 128Kまで | $0.172 | $1.032 |
| qwen3.5-397b-a17b | 北京・フランクフルト・バージニア | 128K超〜256K | $0.43 | $2.58 |
| qwen3.5-plus | 北京・フランクフルト・バージニア | 128Kまで | $0.115 | $0.688 |
| qwen3.5-plus | 北京・フランクフルト・バージニア | 128K超〜256K | $0.287 | $1.72 |
単価はいずれも100万トークンあたりです。シンガポールには100万トークンの無料枠があり、Model Studioの有効化日・モデルの公開日などのうち遅い日から90日間使えます。同じ料金表では、ファミリーのqwen3.5-122b-a10bが入力$0.40・出力$3.20、qwen3.5-27bが$0.30・$2.40、qwen3.5-35b-a3bが$0.25・$2.00です(シンガポール)。OpenRouterでは10事業者が提供しており、最安はAlibabaの入力$0.39・出力$2.34、DeepInfra(FP8)が$0.45・$3.00でした。
注意すべきなのは提供期限です。Qwen公式のAPI基盤であるQwenCloudの告知は、qwen3.5-plus(スナップショットの-2026-02-15・-2026-04-20を含む)とqwen3.5-397b-a17bを、2026年11月18日に販売終了、2027年1月19日10時(UTC+8)に推論停止とし、代替にqwen3.8-flash(入力$0.15・出力$0.47)を挙げています。停止後は呼び出しても応答が返りません。Alibaba Cloud側の料金表には10月22日更新の時点でまだ両モデルが載っていますが、Model Studioで契約している場合は、アカウントのService Noticesで同じ告知が出ていないかを確かめ、停止日を前提に移行先を決めておきます。重みはApache 2.0で公開されたままなので、自社GPUで動かす使い方はこの期限の影響を受けません。
qwen3.5-plusとqwen3.5-397b-a17bの使い分け
モデルカードでは、Qwen3.5-Plusは397B-A17Bに対応するホスト版で、既定のコンテキスト長が100万トークン、公式の組み込みツールと、ツールを自動で使い分ける機能が付くとされています。単価はシンガポールでも北京・フランクフルト・バージニアでもPlusが約3分の2です。2027年1月19日まで使う検証や既存システムなら、Plusのほうが安く済みます。
qwen3.5-397b-a17bを選ぶ理由が残るのは、自社GPUで動かす重みとまったく同じモデルを、停止日までの間にAPIで先に検証したい場合です。北京・フランクフルト・バージニアでもPlusのほうが安いので、料金を理由に397bを選ぶ場面はありません。
月の試算として、1リクエストで入力2,000・出力1,000トークンを月10万回呼ぶと、シンガポールのqwen3.5-397b-a17bは$480、qwen3.5-plusは$320です。バージニアではqwen3.5-397b-a17bが約$138、qwen3.5-plusが約$92になります。Thinkingを有効にすると推論の過程も出力トークンとして課金されるので、最終回答の長さではなく、用途ごとに測った総出力トークン数で上限を決めます。後継のQwen3.6-Plusはシンガポールで入力$0.50・出力$3.00です(Qwen3.6-Plusとは|1Mコンテキスト・階梯課金・3.7世代との選び分けを実装目線で解説【2026年7月時点】)。
ベンチマークで見る得意分野と弱点
モデルカードの言語系ベンチマークから比較の軸になる項目を抜き出しました。いずれも公開元が自社で計測した値で、比較相手は公開当時のGPT-5.2、Claude 4.5 Opus、Gemini 3 Proです。
| ベンチマーク | GPT-5.2 | Claude 4.5 Opus | Gemini 3 Pro | Qwen3.5-397B |
|---|---|---|---|---|
| MMLU-Pro | 87.4 | 89.5 | 89.8 | 87.8 |
| GPQA | 92.4 | 87.0 | 91.9 | 88.4 |
| IFBench | 75.4 | 58.0 | 70.4 | 76.5 |
| MultiChallenge | 57.9 | 54.2 | 64.2 | 67.6 |
| LiveCodeBench v6 | 87.7 | 84.8 | 90.7 | 83.6 |
| SWE-bench Verified | 80.0 | 80.9 | 76.2 | 76.4 |
| Terminal Bench 2 | 54.0 | 59.3 | 54.2 | 52.5 |
| BFCL-V4 | 63.1 | 77.5 | 72.5 | 72.9 |
| TAU2-Bench | 87.1 | 91.6 | 85.4 | 86.7 |
| BrowseComp | 65.8 | 67.8 | 59.2 | 69.0 |
| HLE | 35.5 | 30.8 | 37.5 | 28.7 |
4モデルで首位なのは、指示追従のIFBenchとMultiChallenge、検索エージェントのBrowseCompです。BrowseCompの69.0は、ツールの応答が一定量を超えたら古いものから捨てる単純な方式の値で、DeepSeek-V3.2やKimi K2.5と同じ「全部捨てる」方式では78.6だったとモデルカードは注記しています。一方、LiveCodeBench v6とTerminal Bench 2は4モデルで最下位、SWE-bench Verifiedは3位、HLEも最下位です。この比較では、指示追従と検索エージェントの指標が相対的に良好です。コーディング性能を最優先する場合は、比較対象の上位モデルを先に評価し、自社課題で採否を決めます。
397Bを採用すべき場面と、ほかのモデルを選ぶべき場面
2026年10月に397B-A17Bを新しく採用する理由は、「Apache 2.0で、この規模のモデルを自社の設備で動かせること」に絞られます。この条件が要らないなら、Plus系のAPIか小さいサイズを選ぶほうが合理的です。
- 397Bを選ぶ場面:データを外に出せず、H200×8枚相当のGPUかユニファイドメモリ512GBのMacがあり、ライセンスもApache 2.0でないと社内承認が通らない場合です。
- APIで使うだけの場合:qwen3.5-plusとqwen3.5-397b-a17bは2027年1月19日に止まるので、新しく組み込むなら代替に挙がっているqwen3.8-flashか、Qwen3.6-Plusなどの後継を選びます。
- GPU1〜2枚で動かしたい場合:24GB級を1〜2枚使う構成では397BはCPUメモリへのオフロードが前提になり、速度が落ちます。GPUに収めたいなら35B-A3Bか27B、後継のQwen3.6-35B-A3B・Qwen3.6-27Bを先に評価します。
- コーディングエージェントが主用途の場合:397BはLiveCodeBench v6とTerminal Bench 2で4モデル中最下位です。自社で動かす前提なら、Qwen3.6世代と並べて測ってから決めます。
- Qwen3.8-2.4T-A95Bに乗り換える場合:重みは公開されていますが独自ライセンスです。性能だけで差し替えず、ライセンスの審査から始めます。
オープンウェイトのモデルを社内に置くか、APIで使うかの判断と、その後の環境構築は、一創の生成AI導入支援でも扱っています。Qwen3世代との違いを確かめたい場合はQwen3とは?読み方・モデル一覧・72Bの有無・商用利用と動かし方が参考になります。
よくある質問
Qwen3.5-397B-A17Bは商用利用できますか?
できます。重みはApache 2.0なので、社内利用、SaaSへの組み込み、ファインチューニングしたモデルの再配布まで可能です。再配布するときはライセンスの写しを付け、変更した旨を明記します。Model StudioのAPIで使う場合は、Alibaba Cloudの利用規約が適用されます。
Qwen3.5-397Bを動かすにはVRAMやメモリがどれくらい必要ですか?
重みはBF16で806.8GB、FP8で406.2GB、4bitのGGUFで約245GB、3bitのUD-Q3_K_XLで178.7GBです。これにKVキャッシュが加わりますが、262,144トークンでも1系列あたり約7.5GiBです。H200×8枚ならFP8版、ユニファイドメモリ512GBのMacなら4bit版、256GBのMacなら3bit版が目安です。
Ollamaでqwen3.5:397bは使えますか?
2026年10月25日時点では使えません。Ollamaのqwen3.5のタグは122bまでで、クラウド版のqwen3.5:397b-cloudも404です。手元で動かすならllama.cppでUnslothのGGUFを読み込みます。
Qwen3.5に7Bのモデルはありますか?
ありません。Qwen3.5の公開重みは0.8B・2B・4B・9B・27B・35B-A3B・122B-A10B・397B-A17Bの8サイズです。7B前後を探しているなら9Bが近く、OllamaのQ4_K_Mで6.6GBです。
Qwen3.5-PlusとQwen3.5-397B-A17Bの違いは何ですか?
Qwen3.5-Plusは、397B-A17BをAlibaba Cloudがホストしたものです。既定のコンテキスト長が100万トークンになり、組み込みツールも付きます。料金はシンガポールでPlusが入力$0.40・出力$2.40、qwen3.5-397b-a17bが入力$0.60・出力$3.60で、ほかのリージョンでもPlusのほうが安く設定されています。どちらもQwenCloudでは2027年1月19日に提供を終える予定です。