jQuery 4.0.0とは何か?約10年ぶりに登場した新バージョンの概要と進化したポイントを解説
目次
- 1 jQuery 4.0.0とは何か?約10年ぶりに登場した新バージョンの概要と進化したポイントを解説
- 2 jQuery 4.0.0の主な新機能とは何か?Ajaxの進化やセキュリティ強化など最新アップデートを紹介
- 3 jQuery 4.0.0での主な変更点を徹底解説!廃止API削除やESモジュール移行、フォーカスイベント仕様変更など
- 4 非推奨APIの削除と影響範囲:長年Deprecatedだった機能の廃止による影響と対応策を詳しく解説
- 5 対応ブラウザとサポート終了した環境:jQuery 4.0.0で切り捨てられた旧ブラウザとサポート対象環境を解説
- 6 フォーカス関連イベントの仕様変更:ブラウザごとに異なっていたイベント発生順序の統一とその影響を詳しく解説
- 7 Ajax・JSONPまわりの仕様変更:FormData対応や自動JSONP機能の廃止など通信機能の改良点
- 8 Slim版(スリムビルド)の提供と特徴:不要機能を省いた軽量版jQuery 4.0の内容を詳しく紹介
- 9 jQuery 3.xから4.0.0への移行ポイント:互換性の注意点とスムーズなアップグレードのためのガイド
- 10 これからのjQueryの位置づけと活用シーン:モダン環境での役割と引き続き有効な活用場面を考察する。
jQuery 4.0.0とは何か?約10年ぶりに登場した新バージョンの概要と進化したポイントを解説
jQuery 4.0.0は、JavaScriptの定番ライブラリjQueryとして約10年ぶりのメジャーバージョンアップとなった最新版です。前バージョン3.xの初版リリース(2016年)以来、継続的なマイナーアップデートはありましたが、大規模な変更は控えられてきました。2026年1月にリリースされた4.0.0では、長年の課題だったレガシーコードの一掃とモダン環境への適応が図られており、ちょうどjQuery公開から20周年という節目のタイミングでの登場となりました。
現在でもウェブサイトの約7割がjQueryを利用しているとの統計もあり、jQueryは依然としてWeb開発で大きな存在感を持っています。もっとも、近年はReactやVue.jsといったモダンフレームワークの台頭により、新規開発でjQueryを採用するケースは減少しています。しかし、既存プロジェクトの保守や小規模なスクリプト実装では依然jQueryが重宝されており、4.0.0へのアップデートにより「現代でも使いやすいjQuery」へと進化を遂げています。
なぜ10年ぶりの大型アップデートとなったjQuery 4.0.0が登場したのか、その背景と意義を解説
jQuery 4.0.0が約10年ぶりに登場した背景には、長期にわたる保守と互換性維持の限界があります。jQueryは長年にわたり後方互換性を重視して3.x系の中で改善を続けてきました。しかし、古いブラウザへの対応コードや非推奨APIが蓄積し、ライブラリが肥大化・複雑化していたのも事実です。そこで開発チームはメジャーバージョンを上げるこの機会に、大胆な整理とモダン化を行いました。10年ぶりの大型アップデートとなった4.0.0のリリースは、レガシーの清算と現代の開発事情への適応という意義を持っています。
jQuery 3.xまでの歩みとjQuery 4.0.0が目指すもの
jQuery 3.x系までは、IE9+を含む非常に広範なブラウザ互換性を維持しつつ細かな改良が重ねられてきました。例えば3.5.0ではセキュリティ向上のためHTMLメソッドの仕様変更が行われるなど、可能な範囲で現代化は進められてきました。しかし根本的な設計は2000年代後半のWebを前提としており、内部的には古いモジュールローダー(AMD)や独自のDeferred実装などが残っていました。jQuery 4.0.0では、これらを刷新して「モダンなJavaScriptライブラリへ生まれ変わらせる」ことが目指されています。そのために不要となった機能の削除や、新しい仕組みへの移行といった大胆な変更が盛り込まれました。
モダンJavaScript時代におけるjQueryの現在の立ち位置
フロントエンド開発が著しく進化した現在、jQueryの位置づけも変化しています。かつてはDOM操作やAjaxといえばjQuery一強でしたが、今ではブラウザ標準で同等の機能が提供され、さらにSPAフレームワークが隆盛を極めています。その中でjQueryは、「古いサイトや小規模スクリプトで引き続き使われるレガシーな便利ツール」という側面が強まっています。しかしjQueryは依然非常に広く使われているため(全ウェブサイトの70%以上で利用)、その開発が継続する意義は小さくありません。4.0.0リリースにより、jQueryは現代の標準技術と整合しつつその豊富な資産を活かし続ける道を選んだと言えるでしょう。
jQuery 4.0.0の特徴:モダン化とレガシー互換性の両立
jQuery 4.0.0の開発方針は、モダン化とレガシー互換の両立にあります。モダン化とは、例えばソースコードを従来のAMD形式からES Modules形式に移行したこと、Promiseなどブラウザネイティブの機能を積極的に採用したことなどに表れています。一方でレガシー互換にも配慮しており、IE11のサポートは次期メジャーまで維持する、移行プラグインを提供して既存コードのアップグレードを支援する、など開発者がスムーズに移行できるような措置も取られています。このようにして、jQuery 4.0.0は過去の遺産を整理しつつ将来への橋渡しをするバージョンとなっています。
エンジニアにとってのjQuery 4.0.0:利用メリットと留意点
現代のエンジニアにとってjQuery 4.0.0を利用するメリットは、既存のjQueryコード資産を活かしながらセキュリティやパフォーマンスを向上できる点です。たとえばファイルアップロードでFormDataが使えるようになるなど、利便性が向上しています。また不要な機能削除によりファイルサイズが削減され読み込みが速くなるメリットもあります。一方の留意点として、古いプラグインの中には4.0.0非対応のものも出てくる可能性があります。後述するように削除されたAPIもあるため、既存コードをアップグレードする際には変更点を把握してテストを十分行う必要があります。ただし公式からは「多くのプロジェクトでは最小限の修正でアップデート可能」と案内されており、適切に対応すれば恩恵が大きいアップデートと言えるでしょう。
jQuery 4.0.0の主な新機能とは何か?Ajaxの進化やセキュリティ強化など最新アップデートを紹介
jQuery 4.0.0では開発チームが「新機能」と位置付ける、ユーザーにとってメリットの大きい改良がいくつも導入されています。中でも注目すべきはAjax機能の拡張やセキュリティ強化、そして開発環境への適応といったポイントです。ここではjQuery 4.0.0の新機能として挙げられている主な項目を紹介し、その利点を見ていきます。
AjaxでFormDataをサポート:バイナリファイル送信が可能に
従来のjQueryでは、フォームデータ送信の際にFormDataオブジェクトを用いてファイルをアップロードしようとすると、正常に送信できないケースがありました。例えば画像ファイルなどバイナリデータが文字列に変換されてしまっていたのです。jQuery 4.0.0の新機能としてAjaxがFormDataに正式対応し、バイナリファイルを含むフォームデータをそのまま送信できるようになりました。これにより、従来は手動で行っていたファイルアップロード処理が簡潔なコードで実現でき、フォーム送信機能の利便性が向上しています。
安全性向上:Trusted Types/TrustedHTMLの導入でXSS対策を強化
近年問題視されるブラウザ上のXSS脆弱性に対応するため、jQuery 4.0.0ではTrusted Typesという新たなセキュリティ機構をサポートしました。Trusted Typesとは、ブラウザのコンテンツセキュリティポリシー(CSP)で指定されたtrusted-typesポリシーに従い、信頼されたオブジェクトしかDOM操作に渡せなくする仕組みです。jQuery 4.0.0ではこれに対応し、例えば信頼済みのHTML文字列(TrustedHTMLオブジェクト)だけを受け付けることで、悪意あるスクリプト混入を防ぎやすくなっています。また、非同期スクリプトの読み込み方法も見直され、可能な限り動的な<script>タグ経由でスクリプトを挿入する方式に変更されました(XHRでスクリプトを取得する場合はCSPエラーを招きやすいため)。これらの対応により、jQuery経由のDOM操作やスクリプト挿入におけるセキュリティが強化されています。
モジュール対応:ソースコードをES Modules化しRollup採用でビルド刷新
jQuery 4.0.0ではライブラリ内部の構成も現代的に刷新されています。その代表例がES Modulesへの対応です。従来jQueryはモジュールローダーとしてAMD (RequireJS)を使用していましたが、4.0.0ではソースコードをESモジュール形式に移行しました。これにより、WebpackやRollupといったモダンなバンドラでもjQueryを自然に取り込めるようになっています。実際、jQuery 4.0.0のビルドにはRollupが採用されており、従来よりも効率的なパッケージ生成が行われています。またnpm経由でのインポート時にはimport $ from "jquery"のようにESモジュールとして読み込めるため、スクリプトをグローバル汚染せずに利用できるという利点もあります(ただし従来通りCDNから<script>タグで読み込む場合は全域に$が定義されます)。このように、jQueryは内部から最新の開発手法に適合する形へと生まれ変わりました。
標準機能の活用:PromiseやネイティブAPI移行でモダンな実装へ
jQuery 4.0.0では、新機能という形ではないものの「内部実装を標準APIで置き換える」大きな変更がなされています。例えば、従来jQuery独自のDeferred/Callbackといった非同期制御機能を提供してきましたが、4.0.0ではこれら独自非同期APIを廃止し、ネイティブのPromiseへ全面移行しました。PromiseはES6で標準化された機能であり、非同期処理の記述がシンプルになります。jQueryもこれに合わせることで一貫性を高めました。ただしIE11はPromiseをサポートしないため注意が必要です(この点は後述の移行ガイドでも触れます)。また他にも、jQuery.isArrayやjQuery.trimなどの独自APIを廃止し、それぞれArray.isArrayやString.prototype.trimなどネイティブ関数への置き換えを促しています。これらの変更により、ライブラリ利用者はJavaScript標準機能を違和感なく活用でき、jQueryの存在自体がモダンJSと調和するものとなりました。
軽量化と性能改善:非推奨API廃止や旧ブラウザ対応終了でファイルサイズ削減
上記のような機能追加・変更の結果として、jQuery 4.0.0はライブラリの軽量化も実現しています。長年使われていなかったAPIや古いブラウザ向けのコードを削除したことで、圧縮後のファイルサイズは3.x系よりgzip圧縮時で3KB以上も削減されたと報告されています。特にDeferredやCallbacksといった大きなモジュールの削除はサイズ減に大きく貢献しました。この軽量化は単に通信量削減による読み込み速度向上だけでなく、コード全体がシンプルになることで実行性能や保守性の向上にも寄与しています。開発チームも「jQuery 4.0.0は20KB以下(gzip時)のサイズになった」とアピールしており、モダンなライブラリと遜色ないフットプリントを実現しています。
jQuery 4.0.0での主な変更点を徹底解説!廃止API削除やESモジュール移行、フォーカスイベント仕様変更など
jQuery 4.0.0では新機能だけでなく、多くの破壊的変更(後方互換性を破る変更)が導入されています。ここではその主な変更点をカテゴリごとに整理し、何が変わったのかを把握しましょう。主な変更は「サポート環境の変化」「非推奨APIの削除」「イベント挙動の修正」「内部実装の刷新」の4つに大別できます。以下、それぞれの概要を解説します。
旧ブラウザのサポート終了:IE10以下や古いEdge/Firefox/iOSを対象外に
まず環境面での大きな変更として、対応ブラウザの見直しがあります。jQuery 4.0.0ではInternet Explorer 10以前のサポートがついに終了し、さらに旧Microsoft Edge(Chromium以前のEdgeHTML版)、Firefox 64以前、iOS 10以前のSafari、Android標準ブラウザ、そして開発終了済みのPhantomJSといった古い環境がサポート対象外となりました。この結果、jQuery 4.0.0は事実上モダンブラウザ専用のライブラリへとシフトしています。ただしIE11については今回残されており(次期5.0でサポート終了予定)、企業内システムなどでどうしてもIE11を使い続けるケースにはもうしばらく対応可能です。一方、これら古い環境をどうしてもサポートしなければならない場合は、引き続きjQuery 3.x系を使い続けることが推奨されています。
非推奨APIの削除:不要な機能整理とMigrateプラグインによる互換サポート
次に、長年「非推奨」とされながら残っていた機能が一挙に削除されました。13種類にも及ぶ非推奨APIが今回のアップデートで削除対象となり、jQueryプロトタイプに密かに存在していた内部用メソッドも消されています。これら削除による影響を緩和するため、公式からはアップグレードガイドおよびjQuery Migrateプラグインが提供されています。Migrateプラグインを読み込めば、削除されたAPIを仮実装して古いコードを動作させたり、コンソールに警告を出してどの箇所を修正すべきかを知ることができます。開発者はこのプラグインを活用しつつ、自分のコードで廃止APIを使っていないか確認し、必要に応じて代替の標準機能へ書き換える作業が求められます。
Deferred/Callback廃止:Promise標準化による非同期処理の見直し
jQuery独自のDeferredオブジェクトとCallbacks機能も4.0.0で廃止されました。これらはPromiseが登場する前に複雑な非同期処理を扱うため用意された仕組みですが、現在ではほぼ完全にPromiseで代替可能となっています。実際jQueryは既に3.x系でPromise/A+規約に準拠した実装へDeferredをアップデートしていましたが、ついに4.0.0で完全に姿を消すことになりました。この変更により、jQuery内部から相当量のコードが削減され、先述のとおりライブラリの軽量化に直結しています。開発者にとっては、今後は標準のPromiseを用いることでjQueryの非同期処理を扱うことになります。ただ注意点として、IE11環境ではネイティブPromiseをサポートしていないため、もしIE11を対象に含む場合はポリフィルの検討が必要です。
イベント処理の改善:フォーカスイベントの順序統一など仕様準拠に変更
jQuery 4.0.0ではイベント周りの挙動にも変更があります。中でも大きいのがフォーカス関連イベントの発火順序です。従来ブラウザ間で順序に一貫性がなかったfocusやblur等のイベントについて、jQuery 3までは独自に順序を決めて強制的に統一していました。具体的には、旧来のjQueryはfocusin→focus→focusout→blurの順になるよう挙動を上書きしていたのですが、実はこの順序は現在のW3C標準とは異なっています。jQuery 4.0.0ではこの仕様を改め、ネイティブのブラウザ挙動を上書きしない実装に変更しました。その結果、すべてのブラウザで最新の標準仕様どおりblur→focusout→focus→focusinの順でイベントが発生するようになります。この変更は古いコードに影響を与える可能性があります。例えば従来の順序に依存したフォームバリデーションなどの実装をしている場合、動作が変わるかもしれません。開発者は自分のコードでフォーカス関連イベントを使用している箇所を確認し、問題がないかテストすることが推奨されます。
開発環境の近代化:ソースコードES Modules化やRollup導入によるモダン化
内部的な変更点として、開発環境・手法の近代化も重要です。前述したようにソースコードをES Modulesに移行したことやビルドツールにRollupを採用したことは、ライブラリの開発・利用双方にメリットをもたらします。モジュール化により余計なコードを含めず必要な部分だけを取り込める道が開け、ツリーシェイキング等にも対応しやすくなりました。またGitHub上でのソース管理も従来のgrunt/AMD中心から、ESM対応のプロジェクト構成へと刷新されています。これらは直接ライブラリ利用者には見えない変更ですが、jQueryが現代的なオープンソース開発フローに追従している証でもあります。将来的な機能追加やバグ修正が進めやすくなり、開発コミュニティにとっても有益なアップデートと言えるでしょう。
非推奨APIの削除と影響範囲:長年Deprecatedだった機能の廃止による影響と対応策を詳しく解説
jQuery 4.0.0における大きな変更の一つが、長年非推奨とされてきたAPIの削除です。これらは過去のバージョンで既に使用が推奨されなくなっていた機能で、代替手段が提供されていたものでもあります。4.0.0で遂に完全削除されたことにより、該当APIに依存していた古いコードは修正が必要になります。ここでは削除された主なAPIとその代替、影響範囲および対応策について解説します。
削除された主な非推奨API一覧とその代替となるネイティブ機能
まず、削除対象となった主なAPIを列挙します。以下はjQuery 4.0.0で廃止された代表的な関数と、推奨される代替手段です。
jQuery.isArray– 代替:Array.isArray(ES5標準)jQuery.trim– 代替:String.prototype.trim(ES5標準)jQuery.parseJSON– 代替:JSON.parse(ES5標準)jQuery.now– 代替:Date.now(ES5標準)jQuery.isFunction– 代替:typeof演算子 などjQuery.isNumeric– 代替:Number.isFinite等(ES6以降)jQuery.type– 代替:typeof演算子 などjQuery.camelCase– 代替: 自前実装または不要jQuery.nodeName– 代替: プロパティnodeNameの直接利用jQuery.cssNumber– 代替: 廃止(用途に応じCSSOM活用)jQuery.cssProps– 代替: 廃止(同上)jQuery.isWindow– 代替:window instanceof WindowなどjQuery.fx.interval– 代替: 廃止(アニメーション間隔調整は不要)
以上が主な削除APIです。多くはES5以降で標準機能として導入されたものと機能が重複しており、jQueryとして独自に持っている必要がなくなったものです。今後はそれらネイティブ機能を使うことで同等の処理が可能となります。
配列関連メソッドの変更:push・sort・spliceのjQueryプロトタイプからの削除
上記リストに直接現れませんが、jQueryオブジェクトが配列ライクな動作をすることに関連してpush, sort, spliceメソッドもプロトタイプから削除されました。これらは元々jQuery内部でのみ使用を想定した特殊な実装でしたが、削除に伴い今後jQueryオブジェクトに対しては標準の配列メソッドを適用する必要があります。例えば、$elems.push(elem)と直接呼び出していた処理は、代わりに[].push.call($elems, elem)のようにしてネイティブのArray.prototype.pushを借用する形に書き換えが必要です。もっとも一般的なjQueryの使い方ではこれらメソッドを直接呼ぶ機会は少ないため影響は限定的ですが、古いプラグインなどで利用されている可能性もあるため注意が必要です。
開発者への影響:削除API利用コードはエラーに、代替への書き換え必須
これら非推奨APIが削除された影響として、該当する関数を使用しているコードはjQuery 4.0.0環境下で動作しなくなります。例えばjQuery.trim(str)で前後空白を除去していたコードはエラーとなるため、str.trim()へと書き換える必要があります。またjQuery.parseJSONでJSON文字列をパースしていた箇所はJSON.parseに置換する、といった対応が必須です。幸い、代替手段はいずれも標準JSの機能で賄えるため、モダンブラウザ環境であれば互換関数を自作する必要はありません。開発者としては、自身のコードや依存しているプラグインがこれら廃止APIを使っていないか確認し、使っていれば早急に修正することが求められます。
jQuery Migrateプラグインを活用した削除API検出と移行
削除APIへの対応を助ける心強いツールが、公式提供のjQuery Migrateプラグインです。このプラグインを読み込んだ上でアプリケーションを実行すると、コンソール上に非推奨APIに関する警告が表示され、どのコードで廃止済みAPIを使っているかを把握できます。また一部のAPIについてはMigrateプラグインが代替実装を提供し、jQuery 4.0.0環境でも動作するようにフォールバックしてくれます。これにより、大規模なコードベースでも一気に4.0.0へ移行しやすくなっています。ただしMigrateはあくまで移行補助ツールであり、本番環境で恒久的に使うものではありません。警告を参考にコードを書き換え、最終的にはMigrateプラグインなしでも動くように修正を完了させることが目標です。
なぜ非推奨APIを削除したのか:ライブラリ軽量化と保守容易化
ここまで見てきたように、非推奨APIの削除は利用者にコード修正を強いる変更です。それでもあえて削除に踏み切った理由は、ライブラリの将来を見据えた軽量化と保守性向上にあります。役目を終えた古いAPIを残し続けることはファイルサイズ増大の要因となるだけでなく、開発者が間違って使い続けてしまうリスクも孕みます。jQueryは広範なユーザーベースを持つため後方互換性を重視してきましたが、メジャーアップデートのタイミングでこれらを整理しなければ、今後さらに技術的負債が積み上がってしまいます。実際、これら削除によってjQueryのgzip後サイズは20KBを切るまでに縮小しました。またコードが減ることで不具合の温床も減り、メンテナンスもしやすくなります。つまり、非推奨API削除は一時的な痛みを伴うものの、将来的なメリットが大きい判断だったと言えるでしょう。
古いコードベースへの対処:jQuery 3.xの継続利用かコード修正かの判断
非推奨API削除の影響範囲として、どうしてもコード修正が困難なケースも考えられます。例えば大量の旧式プラグインに依存しているなどで4.0.0へ上げられない場合、無理にアップデートせずjQuery 3.x系を使い続ける判断もあり得ます。jQuery 3.7.1(2023年リリース)までの最新版はしばらくサポートが継続するとみられ、古い環境を抱えるシステムでは延命措置として3.xを継続利用する選択肢も現実的です。ただし新機能や性能改善の恩恵は受けられないため、可能であれば時間をかけてでもコードの修正を行い4.x系へ移行することが望ましいでしょう。どちらにせよ、プロジェクトの状況に応じて適切な判断を下す必要があります。
対応ブラウザとサポート終了した環境:jQuery 4.0.0で切り捨てられた旧ブラウザとサポート対象環境を解説
jQuery 4.0.0ではサポート対象とするブラウザ環境が大きく見直されました。これはライブラリの軽量化や近代化に直結する重要な変更点です。ここでは、サポートが終了したブラウザやプラットフォーム、引き続きサポートされる環境、およびその影響について説明します。
サポート対象外になったブラウザ:IE10以前、旧Edge、古いFirefox/iOS等
今回のアップデートでサポート対象外となった主なブラウザは以下のとおりです。
- Internet Explorer 10 およびそれ以前(IE11は今回残存)
- 旧Microsoft Edge(EdgeHTML版のレガシーEdgeブラウザ)
- Firefox 64 およびそれ以前のバージョン
- iOS 10 およびそれ以前のSafariブラウザ
- Android標準ブラウザ(AOSPブラウザ)
- PhantomJS(ヘッドレスブラウザ。開発停止済み)
これらはいずれも2020年代前半までに主流の座を降りた古い環境です。jQuery 3.xまでは驚くべきことにこれら超旧式ブラウザをもサポートしていましたが、4.0.0でようやく対応を打ち切った形です。特にIE10以下や旧Edgeはもはや利用者がごく僅かであるため、影響は限定的と考えられます。Firefox 64は2018年リリース、iOS10搭載のiPhoneは2016年発売が最終であり、いずれも一般的にはアップグレードが進んでいるはずです。
IE11は継続サポート:ただしjQuery 5でのサポート終了予定
古いブラウザ対応の縮小に関連して、Internet Explorer 11について触れておきます。IE11は2022年にMicrosoftのサポート自体が終了し、既に事実上のレガシーブラウザとなっています。しかし企業ユーザを中心に一定の利用が残っている事情から、jQuery 4.0.0ではIE11対応コードが温存されました。開発チームによればIEサポートは段階的に縮小する方針であり、次のメジャーバージョンであるjQuery 5.0ではIE11サポートを削除する計画とのことです。つまり4.x系はIE11を含む最後のバージョンとなる見込みで、長期的にはjQueryも完全にIEから卒業することになります。
なぜ古いブラウザを切り捨てたか:モダン開発への舵切りと保守負担軽減
jQuery 4.0.0が古いブラウザ互換を切り捨てた理由は明確で、モダン開発へ舵を切るためです。レガシーなブラウザをサポートし続けることは、それだけでコードに分岐や回避策を抱え込むことになり、開発効率やパフォーマンスの面で負担となります。特にIE対応コードは近年のフロントエンド開発において重荷でしかなく、モダンなブラウザ向けに最適化を図るには障害となっていました。利用者のほとんどが最新のChrome/Firefox/Edge、あるいはSafariといったモダンブラウザを使用する時代においては、思い切って対応環境を絞ることで得られるメリットが大きいと言えます。実際、古いブラウザコードを削除したことで約1KB弱のサイズ削減にも成功しています。また保守の面でも、特殊な環境を考慮しなくて済む分バグ修正や機能追加が容易になります。jQuery 4.0.0の決断は、時代の流れに合わせた合理的な舵切りだと言えるでしょう。
旧ブラウザユーザーへの対応策:jQuery 3.xの利用継続という選択肢
もっとも、開発者の中には「それでも古いブラウザをサポートしなければならない」という状況の方もいるでしょう。その場合の対応策としては、jQuery 3.x系を当面使い続けるという選択肢があります。jQuery 3.7.1は安定した最終バージョンであり、IEや旧ブラウザを含む環境では引き続きこれを利用することで動作を維持できます。jQuery 4.0.0以降に追加された新機能は使えませんが、既存サイトが問題なく動くことを優先するならば現実的な策です。ただし将来的に公式サポートやバグ修正が受けられなくなる可能性もあるため、可能であれば根本的に対応環境の見直し(例えば「IE11をサポート対象から外す」など)を検討することが望ましいでしょう。
対応ブラウザ環境:現行の主要ブラウザでの互換性と動作確認状況
最後に、jQuery 4.0.0が対応している現行ブラウザ環境について確認します。基本的には最新または直近数年間の主要ブラウザであれば問題なく動作します。具体的にはChromeやEdge(Chromium版)、Firefox ESRを含む最新版、Safari(iOS/iPadOS含む最新)など現役のブラウザはすべてサポート対象です。これらの環境でjQuery 4.0.0の動作検証が行われており、例えば先述のフォーカスイベント順序の変更も、すべてのモダンブラウザが現在のW3C仕様に揃ったことを受けてのものでした。したがって一般的なウェブアプリ開発において、jQuery 4.0.0を導入して対応ブラウザで困ることはまずないと考えて良いでしょう。
フォーカス関連イベントの仕様変更:ブラウザごとに異なっていたイベント発生順序の統一とその影響を詳しく解説
jQuery 4.0.0で開発者が注意すべき変更点の一つに、フォーカス関連イベントの挙動変更があります。これは特定のケースでしか表面化しない細かな仕様ですが、フォーム操作やUI実装によっては影響が出る可能性があります。ここでは、フォーカスイベントの仕様変更内容とその背景、影響範囲や対策について詳しく解説します。
従来のフォーカスイベント順序:jQuery 3.xまでの挙動
まず変更前の挙動を押さえておきましょう。ブラウザ上で要素にフォーカスが当たったり外れたりする際には、focusやblurといったイベントに加え、jQuery独自のエイリアスイベントであるfocusin(フォーカスが当たった時)とfocusout(フォーカスが外れた時)が発火します。しかしこれらイベントの発生順序は、ブラウザごとにまちまちでした。そこで旧来のjQuery(3.xまで)は、ブラウザ間の違いを吸収するため独自に発火順序を定義していました。具体的には「要素からフォーカスが外れる際にfocusoutを先に、blurを後に発火させる」「要素にフォーカスが入る際はfocusinを先、focusを後に発火させる」という順序です。このルールにより、どのブラウザでもfocusout → blur → focusin → focusの順でイベントが発生するよう統一されていました。
W3C準拠への変更:jQuery 4.0.0での新しいフォーカスイベント発生順
時代が下り、主要ブラウザ間でフォーカスイベントの順序に関するW3C仕様が策定・変更されました。そして現在ではすべてのモダンブラウザが同一の順序でイベントを発生させるようになっています(かつて唯一仕様通りだったIEも、最新仕様から見ると特殊な挙動となっていたほどです)。jQuery 4.0.0では独自の順序付けをやめ、ネイティブの挙動を尊重するように変更されました。その結果、デフォルトのフォーカスイベント発生順序は以下のようになります。
blur(要素からフォーカスが外れる)focusout(フォーカスが外れたことをバブリングで通知)focus(要素にフォーカスが当たる)focusin(フォーカスが当たったことをバブリングで通知)
つまりjQuery 3.xまでとはfocusoutとblur、focusinとfocusの順序がそれぞれ逆転した形になります。この順序は最新のブラウザ実装に完全に合わせたものであり、今後jQueryがブラウザの挙動を上書きすることはありません。
変更による影響:フォーカス関連の既存コードへの潜在的な不具合
この変更によって懸念されるのは、既存コードへの副作用です。例えば、以前の順序に依存してイベントハンドラで特定の処理をしていた場合、順序変更により予期せぬ挙動となる可能性があります。典型例はフォーム入力項目での検証処理でしょう。旧挙動ではfocusout→blurの順で発火していたため、両者で役割分担していたコードがあったかもしれません。4.0.0ではblurが先に来るため、期待した順序で関数が実行されず不具合が起こる可能性があります。
もっとも、多くの場合focusin/focusoutを明示的に使っていなければ影響は限定的です。またfocusとblurだけを使っている分には順序変更はありません。しかしjQuery特有のイベントを活用しているケースでは注意が必要です。影響箇所を探すには、jQuery Migrateプラグインを用いるのも有効でしょう。この変更に関してはMigrateプラグインが警告を出す可能性があるため、移行時にはコンソールログを確認すると安心です。
IEブラウザでの特別対応廃止:全ブラウザで統一された挙動へ
フォーカスイベント順序の変更は、裏を返せば「IEなど特定ブラウザ向けの特殊対応コードの削除」でもあります。前述のように、かつてのW3C仕様ではfocusoutとfocusinを先に発火させる定義でしたが、当時これに忠実だった唯一のブラウザがIEでした。他のブラウザ(ChromeやFirefox等)は独自実装で順序が逆だったため、jQueryはそちらに合わせていた経緯があります。つまり旧jQueryは実質「非IE」の挙動に合わせていたのですが、4.0.0でIE10以下サポートを切ったこともあり、この特別扱いをする必要がなくなりました。IE11自体も最新仕様とは異なる挙動だったため、結局4.0.0では全ブラウザで統一した順序に変更されています。開発者としては、もはやブラウザごとの差異を考慮せずコーディングできる点でプラスと捉えることもできます。
開発者が取るべき対策:新仕様に合わせたコードの確認ポイント
フォーカスイベント仕様変更への具体的な対策として、まず自分のコードを洗い出すことが挙げられます。on(“focusin”, …)やon(“focusout”, …)のような記述がある場合、それがfocus/blurと組み合わさって順序依存の動きをしていないかチェックしましょう。もし順序に依存した実装になっているなら、イベントハンドラ内でタイマーを使って順序に左右されない処理に変更する、あるいは単に使用するイベントをfocus/blurに統一するといった修正が考えられます。また、先述のjQuery Migrateプラグインを使えば、4.0.0で変更になった点を検出できますので、移行前にテスト環境でMigrateプラグインを適用し、警告ログを確認するのも有効です。総じて大きな変更ではありませんが、UIの細部に影響し得るため、アップデート時には注意しておきたいポイントです。
Ajax・JSONPまわりの仕様変更:FormData対応や自動JSONP機能の廃止など通信機能の改良点
jQueryと言えばAjaxというほど、通信機能はライブラリの重要な柱です。jQuery 4.0.0ではAjax関連にもいくつか変更が加えられています。特にFormData対応やJSONP周りの仕様見直しは、開発者が知っておくべきポイントです。ここではAjax機能に関する変更点とその背景について説明します。
フォームデータ送信の改善:AjaxでFormDataを使ったファイルアップロードに対応
新機能の項でも触れましたが、Ajax部分での大きな改善としてFormDataオブジェクトへの対応強化があります。従来、$.ajaxでFormDataを送信すると、含まれるファイルが文字列に変換されて送られる問題がありました。jQuery 4.0.0ではこれが解消され、バイナリファイルを含むFormDataをそのまま送信可能になっています。これにより、例えば画像アップロードフォームでも簡潔なコードで実装でき、サーバ側でも従来通りフォームデータとして受け取れます。実装上はprocessData: falseやcontentType: falseの指定が必要な点は変わりませんが、余計な前処理なしにファイルが送れるため非常に便利です。開発者にとって、この変更はAjax利用時の利便性向上として歓迎できるものです。
JSONP自動変換の廃止:dataType: ‘json’でもクロスドメインJSONPに切り替わらなくなった
一方で、JSONPの自動利用機能が廃止されました。これは挙動の変更点です。従来のjQueryでは、$.ajaxのdataType: "json"を指定してクロスドメインのURLにリクエストを送ると、自動的にJSONPリクエストにフォールバックする仕様がありました。開発者が意識せずとも<script>タグを使ったJSONPを実行していたわけです。しかし現在ではクロスオリジンのデータ取得はCORSが主流であり、JSONPはほとんど使われなくなっています。むしろ意図せず遠隔スクリプトを実行してしまう危険もあるため、jQuery 4.0.0ではこの自動JSONPプロモーション(勝手にJSONPに切り替える挙動)を削除しました。今後は、JSONPを利用したい場合は開発者がdataType: "jsonp"と明示的に指定する必要があります。これにより、「知らないうちにJSONPになっていた」という予期せぬ挙動を避け、セキュリティと一貫性を高めています。
背景:CORS普及に伴うJSONP利用減少と予期せぬ動作防止
上記JSONP機能の変更の背景には、Web業界全体のトレンドがあります。かつてクロスドメインでAPI通信を行うにはJSONPが便利でしたが、現在ではCORS (Cross-Origin Resource Sharing) が標準的に使われています。サーバ側で適切なヘッダを設定すればXHRでも他ドメインのデータ取得が可能になったため、わざわざJSONPで<script>タグを挿入する必要がなくなりました。またJSONPは任意のJavaScriptを実行できてしまうため、セキュリティ上は避けるべき手法です。こうした状況から、jQueryも時代に合わせて不要となった自動JSONP切替えを捨て去ったと言えます。この変更は裏を返せば「古い慣習的な機能の整理」であり、現在の開発者にとってはむしろ分かりやすく健全な動作と言えるでしょう。
Ajax機能の現状:fetchなど代替の台頭とjQueryにおける役割
2020年代の現在、Ajax通信について語る際にはブラウザ標準のfetch関数の存在を無視できません。fetchはPromiseベースで使いやすく、モダンな開発では多用されています。そのため「jQueryでAjaxしなくてもよい」という場面も増えています。jQuery開発チームもその点は認識しており、実際jQuery 3.x以降でSlim版(Ajax機能を省いたビルド)を提供していたのは、fetch等を使う開発者向けの配慮でした。4.0.0でもSlim版が提供されており、Ajaxを使わないのであればそちらを選ぶことで無駄を省けます。もっともjQueryのAjaxは依然多くのサイトで使われており、$.ajaxの簡潔さや$.getJSONなどユーティリティの便利さは健在です。jQuery 4.0.0はそのAjax機能を進化させつつ不要な部分は整理することで、モダン環境でも十分利用に耐える通信手段を提供していると言えるでしょう。
開発者への注意点:Ajaxオプションやデータ形式周りの変更点と移行方法
Ajax関連の変更を踏まえ、開発者が留意すべきポイントをまとめます。まず、FormData対応強化により送信時の挙動が若干変わったため、以前は送れていなかったファイルが送信されるようになります。これは基本的に良いことですが、文字列に変換されていた前提でサーバ側ロジックを書いていた場合は調整が必要かもしれません。またJSONP自動切替の廃止により、古いコードでクロスドメイン通信をしている部分は意図した型でデータが返ってくるか確認しましょう。場合によってはdataType: “jsonp”へ変更する、あるいはサーバ側でCORS対応するなどの対応が必要です。さらに、細かな部分では、4.0.0でAjax周りの内部実装が変わったことでエラーメッセージやコールバック呼び出し順序に影響がある可能性もゼロではありません(基本的には後方互換を維持するよう配慮されていますが)。移行時には、重要な通信処理について一通りテストを行い、挙動に問題がないことを確認するようにしましょう。
Slim版(スリムビルド)の提供と特徴:不要機能を省いた軽量版jQuery 4.0の内容を詳しく紹介
jQuery 4.0.0では通常版の他にSlim版と呼ばれる軽量ビルドが提供されています。Slim版は一部機能を省略することでファイルサイズをさらに削減したビルドで、近年のjQueryではおなじみとなっています。ここでは4.0.0におけるSlim版の内容や特徴、それを使うメリット・注意点について説明します。
Slim版jQueryとは:Ajaxやエフェクト等を省いた軽量ビルド
Slim版jQueryとは、ライブラリの中から比較的サイズを占める機能モジュールを除外したミニマム構成のビルドです。具体的にはAjax機能と、アニメーション関連のエフェクト機能($.ajaxや$.animateなど)を取り除いたものがSlim版となります。これら機能を使わない場合、通常版を読み込むのは無駄が多いため、Slim版を使えば効率的です。jQuery 3.x系からこのSlim版は提供されており、4.0.0でも公式サイトやCDNから入手できます。ファイル名に.slim.jsと付いているのが目印です。
Slim版で省かれた主な機能:Deferred/CallbacksやAjaxモジュールなど不要部分を削除
jQuery 4.0.0のSlim版で省略されている機能は、上記のAjax・エフェクトに加え、DeferredとCallbacksも除外対象となっています。もっともDeferred/Callbacks自体は4.0.0通常版でも廃止されているため、実質的にはAjax・エフェクト部分が主な削減対象です。アニメーション機能としてはslideToggleやfadeInなど視覚効果関連のメソッドがごっそり省かれます。またAjax関連では$.ajaxの他、$.getや$.postといったヘルパー、$.getJSONや$.ajaxSetupなど付随するAPIも含めて削除されます。簡単に言えば、「DOM操作やイベント周りなどコアな部分だけ残したjQuery」がSlim版です。こうした不要部分の削除によって、大幅なサイズ削減が実現されています。
ファイルサイズと性能:通常版よりさらに軽量化され読み込みが高速に
気になるSlim版のファイルサイズですが、jQuery 4.0.0正式版においては通常版より約8KB小さいと報告されています。gzip圧縮後のサイズは約19.5KB程度で、従来の3.x系Slim版(約27KB程度)から大きくスリム化されています。このサイズ差は、前述のAjax/エフェクト機能に加えDeferred等のコード除去によるものです。ファイルサイズが小さいほどHTTP経由の配信も速くなるため、Slim版を使うことでページロードの高速化に僅かながら寄与します。また不要な機能が入っていない分、パースや初期化に要するCPU時間もわずかに減ります。もっともjQuery自体のサイズは既に小さい部類であり、Slim版と通常版で体感できる速度差はほとんどないでしょう。それでも「少しでも無駄を省きたい」「コードをシンプルにしたい」という場合、Slim版の存在意義はあります。
Slim版を使うメリット:必要な機能のみで構成された効率的なスクリプト
Slim版を利用する最大のメリットは、必要な機能だけで構成された効率性にあります。最近の開発ではAjax通信はfetchを使い、アニメーションはCSSで済ませるケースも多くなっています。そうしたプロジェクトでは、jQueryのこれら機能は文字通り無用の長物です。Slim版ならそれらが含まれないため、明確に用途が限定された軽量ライブラリとしてjQueryを活用できます。例えば「DOM操作とイベント処理だけを手軽に使いたい」という場合、Slim版を読み込めば十分です。結果として読み込み時間やメモリ消費をわずかながら節約でき、スクリプトの依存関係も整理されます。また心理的にも「余計な部分が入っていない」という安心感が得られるでしょう。特に性能にシビアなモバイル向けサイトや、通信量を極限まで削りたいプロジェクトでは、Slim版の選択が有効です。
Slim版利用時の注意:Ajaxが使えない場合の代替策や互換性への考慮
一方、Slim版を使う際には注意すべき点もあります。それは言うまでもなく「除外された機能は使えない」ということです。例えばjQuery Slim版を読み込んだ環境では、$.ajaxや$.postを呼び出すとエラーになります。このため、Slim版利用時にAjax通信を行いたい場合は、代替としてネイティブのfetchや他のライブラリ(Axios等)を用いる必要があります。またエフェクト系メソッド(fadeInなど)も動作しないため、CSSのトランジションやWeb Animations APIなどで代替することになるでしょう。さらに、Slim版と通常版で機能差があることに注意して、プロジェクトメンバー内でどちらを使っているか認識を共有することも重要です。誤って通常版の機能を使ってしまうとバグの原因になります。最後に、既存のプラグインによってはSlim版だと依存機能が無くエラーになる場合もあるため、使用ライブラリとの兼ね合いも考慮しましょう。
jQuery 3.xから4.0.0への移行ポイント:互換性の注意点とスムーズなアップグレードのためのガイド
既にjQuery 3.x系でサイトを構築している場合、4.0.0へのアップグレードを検討する際にはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。変更内容が多岐にわたるため、事前に知識を整理し適切な移行手順を踏むことで、トラブルを最小限に抑えることができます。ここでは、jQuery 3から4への移行時に注意すべき点と、スムーズにアップグレードするためのガイドラインを紹介します。
移行前の準備:jQuery Migrateを使った非推奨機能の検出とテスト
jQuery 4.0.0へ移行する第一歩として、現在のコードベースで廃止予定の機能を使っていないか確認することが重要です。そのために活用したいのが前述したjQuery Migrateプラグインです。3.x環境で最新のMigrateプラグインを読み込み、サイトを一通り操作してみましょう。コンソール上に警告メッセージが表示されれば、それが4.0.0で削除・変更されたAPIを使っている箇所です。このようにして問題点をあらかじめ洗い出し、対応策を考えておきます。またMigrateプラグイン導入下で動作テストを行うことで、潜在的な不具合を事前に発見できます。移行前の準備段階として、このステップを踏むことで後々のデバッグ工数を減らすことができるでしょう。
コード修正ポイント:削除APIの代替への置き換えや動作仕様変更への対応
次に、実際のコード修正ポイントです。Migrateプラグインの警告などを参考に、削除されたAPIの代替実装を用意します。具体的には、jQuery.trimを使っていればString.prototype.trimに書き換える、jQuery.parseJSONをJSON.parseに置換する、といった具合です。前述のリストを参照しつつ確実に修正しましょう。またDeferredを直接使っているコードがあれば、Promiseを使った書き方にリファクタリングします。さらに動作仕様が変わった点、例えばフォーカスイベントの順序やAjaxのJSONP挙動などで自分のコードに影響が出そうな箇所も点検します。フォーカスイベントについては、既存コードでのfocusin/focusout使用状況を確認し、必要なら順序非依存な実装へ見直すことが推奨されます。これら修正ポイントを洗い出し、一通りコードに反映させることが移行の中心作業となります。
IE11サポートの場合の対処:Promise未対応へのPolyfill導入検討
コード修正に関連して、対応ブラウザ要件にも目を向けます。もしプロジェクトがIE11をサポート対象に含んでいる場合、jQuery 4.0.0本体はIE11上でも動作しますが、留意点があります。それは、前述したPromise未サポート問題です。jQuery 4.0.0自身はPromiseを必要とする実装に切り替わっているため、IE11環境ではPromiseがグローバル定義されていないとエラーになる可能性があります。このため、IE11をサポートする場合はPromiseのポリフィル(例えばcore-jsやes6-promise等)を導入することを強く検討してください。またFetch API等、他にもIE11で欠けている機能を新たに使う場合は同様にポリフィルが必要です。逆にIE11を切り捨てられるなら、これらの心配は不要になります。移行に際して、自プロジェクトの対応ブラウザ範囲を再確認し、それに応じた対処を行いましょう。
段階的なアップグレード:jQuery 3.7.xから4.0.0へのスムーズな移行手順
大規模なプロジェクトほど、jQueryのアップグレードは慎重に進めるべきです。一気に本番環境を4.0.0へ上げるのではなく、段階的なアップグレード戦略を取りましょう。まず最新の3.x版(3.7.1等)を使っていない場合はそこへ更新します。3.7.1は4.0への橋渡しを考慮して安定化されています。その上でMigrateプラグインを組み込み、先述のように問題箇所を修正します。テストが十分できたら、ステージング環境などでjQuery 4.0.0本体へ切り替えてみます。この際Migrateプラグインは引き続き有効にし、コンソールエラーが出ないか確認します。問題なければMigrateプラグインを外して最終確認し、本番に適用します。万一不具合が見つかった場合は即座に3.xへロールバックできるよう準備しつつ、徐々に問題を潰していくと安全です。このようにステップを踏めば、リスクを抑えてスムーズに移行できます。
公式リソースの活用:アップグレードガイドやコミュニティ情報を参考に
最後に、公式のアップグレードリソースを最大限活用しましょう。jQuery公式ブログには4.0.0リリースに伴う詳細な変更点や移行手順が記載された記事が公開されています。またGitHub上にもアップグレードガイドやChangelog、さらにはコミュニティによる知見の共有があります。英語情報が中心にはなりますが、重要なポイントは日本語でもQiita記事やブログ等で紹介されています。本記事で挙げた点以外にも細かな変更が存在するため、公式発表とコミュニティ情報を突き合わせて確認することをおすすめします。不明点があればStack Overflowやフォーラムで質問するのも手です。jQueryは歴史が長くユーザも多いので、情報源には事欠きません。こうしたリソースを参考にしながら、確実なアップグレード作業を進めてください。
これからのjQueryの位置づけと活用シーン:モダン環境での役割と引き続き有効な活用場面を考察する。
jQuery 4.0.0のリリースを受けて、改めてこれからのjQueryの位置づけについて考えてみましょう。Web開発の主流がフレームワークへ移行した現在でも、jQueryにはjQueryにしかない強みと役割があります。ここではモダン環境におけるjQueryの役割や、どのような場面で引き続き有効に活用できるかを考察します。
依然根強いjQueryの存在感:今なおWebサイトの大半で利用される実情
まず押さえておきたいのは、jQueryはいまだ非常に広く使われているという事実です。W3Techsの調査によれば、2026年1月時点で全Webサイトの約70.9%が何らかの形でjQueryを利用しています。これはJavaScriptライブラリとしてダントツのシェアです。多くの既存サイトでjQueryが動いており、例え新規開発では使わなくともウェブ全体から姿を消すことは当面ないでしょう。jQuery 4.0.0のリリースも、この膨大な既存ユーザーの存在があるからこそ意義があります。現在主流のReactやVueといったSPAフレームワークは、Web全体から見れば採用率はまだ数%台に過ぎません。圧倒的普及度を持つjQueryは今なおWebの基盤技術の一つであり、今後もしばらくはその座を保ち続けると考えられます。
モダンフレームワーク全盛時代におけるjQueryの役割の変化
とはいえ、新規開発の文脈ではjQueryの役割は以前とは大きく異なっています。かつては「とりあえずjQuery」が合言葉になるほど新規プロジェクトで重宝されましたが、現代ではまずReact/Angular/Vue等のフレームワーク採用が検討され、その補助的な位置付けとしてjQueryが使われる程度です。例えばサーバサイドレンダリング主体のWebアプリで、一部のUI操作だけにjQueryを使う、といったケースです。また企業のデザインシステムやUIコンポーネント集にjQueryプラグインが組み込まれており、その資産を活かすためにプロジェクトでもjQueryを入れる、ということもあります。つまりモダンフレームワーク全盛の時代において、jQueryは「黒子的なユーティリティ」の役割へシフトしています。4.0.0でモダン化が進んだことで、そうした最新環境にも溶け込みやすくなりました。もはや主役ではないかもしれませんが、縁の下の力持ちとしてjQueryが果たす役割はまだ残っています。
既存資産での活用:レガシーシステムやプロトタイプ開発での有用性
jQueryが今後も活きる場面として、既存資産の活用とプロトタイプ開発が挙げられます。前者については、何年も前から動いているレガシーなWebシステムにjQueryが組み込まれている場合です。そういったシステムを一からReact等に書き換えるのは現実的でないため、jQuery 4.0.0へのアップデートで延命を図りつつ安定稼働させるという戦略が取り得ます。実際、今回提供されたMigrateプラグインや詳細なアップグレードガイドは、このような既存資産を大切にする開発者に向けた支援と言えます。
また、プロトタイプ開発や一時的なツール作成には、相変わらずjQueryは最適です。ちょっとした動的操作やAjaxを素早く実装するのに、重厚なフレームワークを用意するまでもないケースは多々あります。短期間でUIを作り込みたいプロトタイピングでは、jQueryの手軽さが武器になります。CDNから<script>タグ1本で導入でき、数行のコードでDOM操作や通信ができる手軽さは他に代え難いものです。4.0.0になってもその手軽さは健在であり、むしろ不要なものが削ぎ落とされた分扱いやすくなっています。
jQueryを引き続き使うべきケース:学習コストやプロジェクト規模に応じた選択
ではどのような場合に「それでもjQueryを使おう」と判断すべきでしょうか。ポイントとなるのはプロジェクトの規模と要求される学習コストです。大規模で複雑なSPAであれば間違いなくReact等のフレームワークに軍配が上がります。しかし、小~中規模でサーバレンダリング主体、あるいは静的サイトにちょっとした動きを付ける程度なら、jQueryで十分なことも多いです。フレームワーク導入は学習・セットアップコストが高く、開発者全員がその知識を身につける必要があります。一方jQueryなら基本的なDOM APIの延長線で使え、理解もしやすいです。また既存にjQueryのノウハウが蓄積している組織なら、無理に流行に乗らずともjQueryで堅実に作る選択もあります。要は使い分けで、React等が万能というわけではありません。要求に応じて適材適所でjQueryを引き続き活用する価値は十分にあります。
将来の展望:jQuery 5.0以降の予定と継続的なメンテナンス
最後に、jQueryの将来展望にも触れておきます。公式の発表によれば、次のメジャーリリースであるjQuery 5.0ではIE11のサポートを切り捨て、さらにモダン化を推し進める計画です。おそらく不要となったコードのさらなる削減や、場合によっては機能追加も検討されるでしょう。ただし昨今の状況から見て、jQuery自体に大きな新機能が加わる可能性は低く、どちらかと言えば既存機能の整理や改善が中心となりそうです。jQueryは成熟期を迎えており、「いかに安定して既存サイトを支えるか」がテーマになっています。そのため、開発者コミュニティによる継続的なメンテナンスが重要です。幸いjQueryはオープンソースプロジェクトとして今も活発にissue対応やプルリク受け入れが行われています。20年以上の歴史を持つプロジェクトが今なお現役でいられるのは驚異的ですが、それを支えるコミュニティの存在があります。私たち開発者も引き続きjQueryを必要に応じて使い支えていくことで、このレガシーかつ現役のライブラリを末長く活かしていけるでしょう。