MUFG FinTech Festival(略称MFF)は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がシンガポールで開く招待制のイベントです。MUFGが出資するアジアのフィンテック企業と、提携する現地銀行(パートナーバンク)の関係者を1日に集め、出資先同士の協業を仕掛ける場として2023年に始まりました。公式サイトや一般向けの申込ページは無く、日程はSingapore FinTech Festival(SFF)の公式プログラムに「MUFG FinTech Festival」として載る形で公開されています。この記事では、MUFGの公表資料とSFF公式サイトで確認できた事実だけを使い、開催実績・参加条件・SFFとの違いを整理します。
まとめ:MUFG FinTech Festivalの要点
- MFFはMUFGのデジタルエコシステム施策「MODE」の一環で、出資先とパートナーバンクが対象のクローズドなイベント。一般参加の枠はない
- 開催実績は2023年11月14日(約120名)、2024年11月5日(50社・200名超)、2025年11月10日(200名)の3回。いずれもSFF本体の直前にシンガポールで開催
- 2026年はSFF公式サイトに11月16日(月)9:00〜18:00、Sands Expo & Convention Centreでの開催予定が掲載(2026年10月5日時点)
- 一般の人がMUFGのアジア戦略を聞けるのは、同じ週のSFF 2026(11月18〜20日、Singapore EXPO)のほう
以下、MFFが生まれた経緯から順に、各回の中身、参加条件、出資先の顔ぶれ、情報を追うときの注意点を説明します。
MUFG FinTech Festival(MFF)の位置付けとMODE
主催の狙い:出資先同士を横につなぐMODE
MFFは、MUFGのデジタルエコシステム施策「MODE(MUFG Openly-connected Digital Ecosystem)」の一環として始まりました。MODEは、三菱UFJ銀行のグローバルコマーシャルバンキング企画部とデジタルサービス企画部が「アジア×デジタル」をテーマに立ち上げたもので、出資先のコンシューマーファイナンスとデジタルの知見を集約することを目的としています。
MUFG公式サイトの担当者インタビュー(2024年3月18日公開)では、担当者が背景を次のように説明しています。これまでの出資先との関係は「出資先とMUFG間の縦のコミュニケーション」が中心だった。今後は出資先同士の横連携を促し、ある国の出資先の知見を別の国の出資先が使える場をつくりたい。MFFはこの横連携を対面で起こすための場です。
同じインタビューでは、横連携の具体例として2つの型が挙がっています。ひとつはMUFGが間に入り、出資先とパートナーバンクをつなぐ型で、タイではアユタヤ銀行(Krungsri)の資金を使い、Grabのドライバーや飲食加盟店に小口ローンを提供しています。もうひとつは出資先同士をつなぐ型で、海外進出を計画する出資先Aに、進出先の国の出資先Bを紹介するものです。
「MFF」という略称の同名異義
「MFF」は他の分野でも使われる略称です。EU(欧州連合)の予算の枠組み「多年度財政枠組み(Multiannual Financial Framework)」もMFFと略されます。金融・フィンテックの文脈でMUFGと並んで出てくるMFFは、ここで扱うMUFG FinTech Festivalを指します。
開催実績と2026年の予定:日程・会場・規模
| 回 | 開催日 | 会場 | 規模(公表値) | 同じ週のSFF本体 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年(初回) | 11月14日(火) | シンガポール(施設名は非公表) | 約120名 | 11月15〜17日 |
| 2024年(第2回) | 11月5日(火) | Sands Expo & Convention Centre | 50社・200名超 | 11月6〜8日 |
| 2025年(第3回) | 11月10日(月) | Sands Expo & Convention Centre | 200名 | 11月12〜14日 |
| 2026年(予定) | 11月16日(月) | Sands Expo & Convention Centre | 未公表 | 11月18〜20日 |
2024年以降の3回は、SFF本体(会場はSingapore EXPO)の直前に、マリーナベイ地区のSands Expo & Convention Centreで招待制の会合が集中する日に組まれています。2024年はGFTNと組み、SFFの招待制会議「Insights Forum」の中で開かれました。2025年と2026年は、SFF公式サイトのFestival Overviewに「MUFG FinTech Festival」の名前で終日(9:00〜18:00)の併催イベントとして載っています。MUFGはMFFの日程をニュースリリースで告知していないため、日程はこのページで確認します。
規模の数字は出典で表現が異なります。初回は、MUFGの担当者インタビューが「約120名」、三菱UFJ銀行のアジア太平洋地域のリリース(2023年11月17日)が「100名超」としています。第2回の50社・200名超とビジネスマッチング50件以上は、MUFG公式LinkedInの開催報告(2024年11月12日)と、MUFGが2025年7月15日に開いたグローバルコマーシャルバンキング事業本部の説明資料の両方に載っています。2025年の回は、MUFG公式LinkedInが2025年11月14日に「3回目の年次イベントに200名のビジネスリーダーと関係者が集まった」と報告しました。
第1回(2023年)と第2回(2024年)のプログラム
2023年:テックセッションからディナーまでの4部構成
当日のプログラムが最も詳しく公表されているのは初回です。MUFGの担当者インタビューによると、2023年11月14日のMFFは4部構成でした。
- MUFGテックセッション:参加企業のうち技術の専門家を集め、デジタルサービス企画部のAI与信モデル開発チーム(ACMD-T)の取り組みと、デジタルレンディングの知見を共有する枠組みを説明
- 本編:出資先企業による自己紹介ピッチ
- パネルディスカッション:GoogleとTemasek(シンガポール政府が所有する投資会社)が参加し、AI活用の安全性を議論
- ディナーセッション:立食形式で、MUFG・グループ会社・パートナーバンク・出資先が名刺交換と情報交換
テックセッションを担ったACMD-Tは、デジタルサービス企画部が連携を検討してきた外部フィンテック企業の与信モデルについて、その有用性を判断し、ゆくゆくは与信モデルの開発力を内製化するために始めた取り組みです。外部企業が開発したモデルはMUFGから見ると中身がブラックボックスで、MFFは出資先がどんなデータで審査しているかを聞く場としても使われました。終了後のアンケートでは「来年も続けてほしい」という声があり、実際に出資先同士の紹介が発生したと担当者は述べています。
2024年:新規出資先の登壇と50件超の面談
第2回の中身は、MUFG公式LinkedInの開催報告で確認できます。登壇したのは当時の新しい出資先であるGCash、Ascend Money、Neo Wealth Managementで、Grab、DMI Finance、Home Credit(フィリピン・インドネシア)、Akulakuが個別のセッションを担当しました。出資先とエコシステムのパートナーの間では50件を超える面談が組まれ、主な論点の一つに生成AIの活用が挙げられています。初回にはなかった出資先同士の個別面談が、件数として報告されるようになった点が第2回の違いです。
参加条件:招待制の対象と一般参加の可否
招待の対象:出資先企業とパートナーバンク
MUFGの担当者はMFFを「MUFGファミリーが集まったクローズドなイベント」と説明しています。SFF公式のプログラム説明も「MUFGの出資先企業とASEAN各地のパートナーバンクを集める非公開の会合」という書き方で、一般向けのチケットや応募フォームは公開されていません。招待状の出し方や選考条件も公表されていません。参加者の範囲は回ごとに少しずつ広がっており、初回には国内の消費者金融会社が参加し、2025年の報告では参加者を「パートナーバンク、デジタル関連の出資先、法人顧客」と表現しています。参加を望む企業が確認できる窓口は、取引のあるMUFGの担当部署です。
ただし、対象が今後も固定とは限りません。2024年のインタビューで担当者は、将来はMUFGが出資していないフィンテック企業にも門戸を開きたい、と話しています。2026年時点でこの方針が招待範囲に反映されたかどうかは公表されていません。
一般の人がMUFGの話を聞ける場:SFF 2026
MFFに参加できない人が、MUFGのアジア戦略やフィンテック投資の話を聞ける現実的な場はSFFです。SFF 2026は2026年11月18〜20日にSingapore EXPOで開催され、シンガポール金融管理局(MAS)とGlobal Finance & Technology Network(GFTN)が主催し、シンガポール銀行協会(ABS)が協力します。公式サイトでは展示会場への入場はTrade Visitorパスで可能と案内されていますが、目的の登壇セッションをそのパスで聴講できるかは、登録前に公式サイトのパス区分で確認してください。
MUFGはSFFに出展・登壇を続けています。2023年はMUFG、アユタヤ銀行のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)であるKrungsri Finnovate、MUFGのCVCである三菱UFJイノベーション・パートナーズの3社で共同出展しました。2025年は三菱UFJ銀行のアジア太平洋地域の責任者であるNobuya Kawasaki氏らがSFFの各フォーラムに登壇し、AIの導入とガバナンス、次世代の金融サービス、グローバルサウスの金融包摂といったテーマで話しています。
MODEを構成する主な出資先とパートナーバンク
MFFに集まるのは、MUFGがアジアで出資してきたデジタル金融事業者です。三菱UFJ銀行が2024年8月2日のリリースで挙げた出資の流れを、各社の発表時期と金額で並べると次のとおりです。
| 出資先 | 主な国 | 事業 | 発表時期 | 出資額 |
|---|---|---|---|---|
| Grab | 東南アジア | 配車・決済のスーパーアプリ | 2020年2月 | 最大7億600万米ドル |
| Home Credit | フィリピン・インドネシア | 消費者金融 | 2022年11月 | 約5億9,600万ユーロ |
| Akulaku | インドネシア | デジタル金融 | 2022年12月 | 2億米ドル |
| DMI Finance | インド | デジタルレンディング | 2023年4月 | 約317億円 |
| Ascend Money | タイ | 電子マネー・決済 | 2024年6月 | 1億9,500万米ドル |
| Mynt(GCash) | フィリピン | 電子マネー・デジタル融資 | 2024年8月 | 3億9,300万米ドル |
Home Creditはフィリピン法人の100%とインドネシア法人の85%を取得した案件で、出資というより買収です。Myntは、フィリピンで電子マネー「GCash」を運営する会社で、三菱UFJ銀行はこの出資で同社を「MUFGのデジタルエコシステムの新たな中核企業」と位置付けました。
もう一方の参加者であるパートナーバンクは、タイのアユタヤ銀行(Krungsri)、インドネシアのダナモン銀行、ベトナムのVietinBank、フィリピンのSecurity Bankの4行です。MUFGのIR資料では、2012〜2019年のこの4行への出資額を約1.4兆円としています。MUFGの担当者がインタビューで語った「東南アジアで約2兆円規模の投資」は、こうした商業銀行への出資を含む数字で、フィンテック企業への出資額だけを指すものではありません。
MFFとSingapore FinTech Festival(SFF)の違い
名前が似ているうえに同じ週・同じ都市で開かれるため、MFFをSFFの一部や前夜祭と説明する記事があります。実際には主催も参加資格も別のイベントです。
| 項目 | MUFG FinTech Festival(MFF) | Singapore FinTech Festival(SFF) |
|---|---|---|
| 主催 | MUFG | MAS・GFTN(協力ABS) |
| 参加資格 | 招待制(出資先・パートナーバンク) | パス登録で参加可(招待不要) |
| 期間 | 1日 | 3日間 |
| 2026年の日程 | 11月16日(予定) | 11月18〜20日 |
| 2026年の会場 | Sands Expo & Convention Centre | Singapore EXPO |
| 目的 | MUFG出資先同士の協業 | 政策・金融・技術の国際会議と展示 |
関係としては、SFFが公式プログラムの中に、外部組織の終日イベントを「併催イベント」として載せている形です。SFF側の告知ページに載るので日程は外から確認できますが、MFFの中身や登壇者はSFFのプログラムには公開されません。
MFFの一次情報の所在と年次の照合方法
MFFには専用の公式サイトが無く、一次情報は次の3系統に分散しています。
- 日程と会場:SFF公式サイトのFestival Overview(対象年の表記を確認)
- 規模と成果:MUFG公式LinkedInの開催報告(開催の数日後)と、MUFGのIR説明資料(2024年の回の数字は2025年7月の資料に掲載)
- 目的と当日の中身:MUFGのINNOVATION HUBの記事(初回のみ詳しい)
出典が分かれているため、年をまたいだ取り違えが起きやすくなります。たとえば、GoogleとTemasekのAI安全性パネルは2023年の初回の出来事です。「AI導入とガバナンス」「次世代金融サービス」「グローバルサウスの金融包摂」は、2025年にMUFGの役員がSFF本体のフォーラムで話したテーマで、MFFの議題として紹介するのは正確ではありません。参加企業も、公表されているのは2024年の登壇企業名などの一部で、完全な一覧やオンライン配信の情報は出ていません。他の記事でMFFの記述を見たときは、書かれている年と、その年のSFF公式サイトの日程・MUFGの開催報告を突き合わせると、取り違えを見分けられます。
出資先として商談に関わる立場なら、日程はSFF公式サイトで、招待の有無は取引のあるMUFGの担当部署で確認するのが確実です。第三者として動向を追うなら、開催直後のMUFG公式LinkedInの報告で参加者数を、翌年のIR資料で参加社数とビジネスマッチング件数を確認します。
よくある質問
MFFとは何の略ですか?
フィンテックの文脈ではMUFG FinTech Festivalの略で、三菱UFJフィナンシャル・グループが出資先とパートナーバンクを集めてシンガポールで開く招待制イベントを指します。EUの多年度財政枠組み(Multiannual Financial Framework)も同じくMFFと略されます。
MUFG FinTech Festival 2026はいつ開催されますか?
SFF公式サイトには、2026年11月16日(月)9:00〜18:00にシンガポールのSands Expo & Convention Centreで開催予定と掲載されています(2026年10月5日時点)。同じ週の11月18〜20日にSFF 2026が開かれます。
MUFG FinTech Festivalに一般参加・個人参加はできますか?
できません。MUFGの出資先企業とパートナーバンクを対象にしたクローズドなイベントで、一般向けのチケットや応募フォームはありません。MUFGの登壇を聞きたい場合は、招待なしでパスを登録して参加できるSFF本体を選びます。
MUFG FinTech Festivalには何人くらい参加していますか?
初回の2023年は約120名、2024年の第2回は50社から200名超で、50件以上のビジネスマッチングが行われたとMUFGが公表しています。2025年の第3回は200名が集まったと、MUFG公式LinkedInが報告しています。
MUFGカードの「インビテーション」と関係はありますか?
関係ありません。MFFの招待はMUFGの出資先企業やパートナーバンクなど法人の関係者に向けたもので、クレジットカード会員向けの招待(インビテーション)とは別の仕組みです。