Blacksmith(blacksmith.sh)は、GitHub Actionsのジョブを自社のベアメタル上で実行する外部ランナーのサービスです。CIそのものを置き換える製品ではなく、ワークフローは引き続きGitHub Actionsで書き、runs-on のラベルだけをBlacksmithのものに変えて使います。この記事では2026年10月時点の公式ドキュメントと料金ページをもとに、GitHub公式ランナーとの単価差、対応OS、移行手順、Dockerビルドのキャッシュ設定、権限の範囲、そして選ばないほうがよい条件までを整理します。
まとめ:Blacksmithの要点と向いているチーム
- 正体:GitHub Actions用のマネージドランナー。GitHubの組織にGitHub Appを入れ、
runs-on: blacksmith-2vcpu-ubuntu-2404のように書き換えるだけで切り替わります。個人アカウントのリポジトリでは使えません。 - 料金:Ubuntu x64の2vCPUが1分0.004ドル。GitHubの同等ランナー(2026年1月改定後0.006ドル)より33%安く、ARMは半額です。毎月3,000分(x64 2vCPU換算)が組織ごとに無料です。
- 対応OS:Ubuntu 22.04/24.04(x64・ARM)に加え、Windows Server 2025(Public Beta)とApple M4のmacOS 15/26/27(27はPublic Beta)に対応しています。旧来の「Linux専用」という説明はもう当てはまりません。
- 速さの根拠:シングルスレッド性能の高いゲーミングCPUと、3秒未満で起動するFirecracker microVM。キャッシュはランナーと同じデータセンターに置かれ、
actions/cacheは書き換え不要です。 - 向いているチーム:プライベートリポジトリで毎月GitHubの無料枠を超えており、ジョブの大半がLinuxで、待ち時間やDockerビルドが遅いチーム。パブリックリポジトリだけならGitHubの標準ランナーは無料なので、移行するとBlacksmithの無料枠3,000分を超えた分がそのまま新たな費用になります。
以下、仕組み、料金、対応OS、移行手順、キャッシュ設定、権限、選ばない条件の順に説明します。
Blacksmithの仕組みとGitHub Actionsとの関係
Blacksmithを入れても、ワークフローの定義・トリガー・シークレット・ログの保管場所はGitHubのままです。変わるのはジョブを実行するマシンだけです。この関係を押さえると、「blacksmith vs github actions」という比較が成り立たない理由もわかります。比べる相手はGitHub Actionsではなく、GitHubが用意する標準ランナー(GitHub-hosted runner)です。
ゲーミングCPUとFirecracker microVMによる2倍速の主張
公式のInstance Typesページによると、Blacksmithはサーバー向けCPUよりシングルスレッド性能が高いゲーミングCPUの物理マシン群でジョブを動かし、LinuxとWindowsのジョブは3秒未満で起動するFirecracker microVM上で実行します。同じページは「多くのCIジョブでGitHubの約2倍速い」と書いていますが、これはBlacksmith自身の主張で、第三者の測定ではありません。コンパイルやテストのようにCPUで詰まるジョブほど差が出やすく、外部APIの応答待ちが長いジョブではほとんど縮みません。
同時実行数には上限がなく、2・4・8・16・32vCPUのどのサイズもオンデマンドで用意されると公式FAQは説明しています。空きがあるときは追加料金なしで一段上のサイズに自動で格上げされる仕組み(Free Upgrades)もあります。
GitHubの課金上はセルフホストランナー扱いになる点
BlacksmithのGitHub Appがランナーの登録に使う組織権限は「Administration of self-hosted runners」で、ランナーをジャストインタイムで登録・解除してジョブを受け取ります(GitHub Appの権限一覧)。つまりGitHubから見ると、Blacksmithのマシンは組織のセルフホストランナーです。
GitHubの課金ドキュメントは2026年10月時点で「セルフホストランナーの利用は無料」と明記しているため、今はBlacksmithの料金だけを払えば済みます。ただしGitHubは2025年12月16日、セルフホストランナーの利用に1分0.002ドルのプラットフォーム料金を2026年3月1日から課すと発表し、その後に延期しています。Blacksmith自身も同日のブログで、Blacksmith上のジョブもこの料金の対象になると説明していました。GitHubは「再検討のため延期」としており、撤回とは書いていません。発表どおりなら対象はプライベートリポジトリだけで、GitHubプランの無料枠から消費され、超えた分はBlacksmithの単価に0.002ドルが上乗せされます。再開された場合の額も試算しておくと安全です。セルフホストランナーそのものの仕組みはGitHubセルフホストランナーとは?導入手順とhosted版の違いで詳しく扱っています。
Blacksmithの料金とGitHub公式ランナーの単価比較(2026年改定後)
どちらも分単位の課金です(GitHubは1ジョブごとに1分未満を切り上げます)。旧版の記事や2024〜2025年の解説には「GitHubの0.008ドルに対して半額の0.004ドル」と書かれたものが多いのですが、GitHubは2026年1月1日に標準ランナーを値下げしており、比較の前提が変わっています。下の表はBlacksmithの料金ページとGitHubのランナー単価表を2026年10月16日に突き合わせたものです。
| ランナー | Blacksmith(1分) | GitHub(1分) | 分単価の差 |
|---|---|---|---|
| Ubuntu x64 2vCPU | 0.004ドル | 0.006ドル | 33%安い |
| Ubuntu x64 4vCPU | 0.008ドル | 0.012ドル | 33%安い |
| Ubuntu x64 8vCPU | 0.016ドル | 0.022ドル | 27%安い |
| Ubuntu x64 32vCPU | 0.064ドル | 0.082ドル | 22%安い |
| Ubuntu ARM 2vCPU | 0.0025ドル | 0.005ドル | 50%安い |
| Windows 2vCPU | 0.008ドル | 0.010ドル | 20%安い |
| macOS 6vCPU(M4) | 0.08ドル | 0.062ドル(3〜4コア) | 29%高い |
| macOS 6vCPU(M4) | 0.08ドル | 0.102ドル(M2 Pro 5コア) | 22%安い |
GitHub側の4vCPU以上は大型ランナーの扱いで、プランの無料枠が使えず、パブリックリポジトリでも課金されます。Blacksmithの料金ページが掲げる「Ubuntu x64で67%削減」は、分単価33%減に「実行時間が半分になる」という仮定を掛け合わせた数字です(0.67×0.5≒0.33)。実行時間が縮まないジョブでは、削減は分単価の差である22〜33%にとどまります。macOSは標準のM1ランナーと比べると1分あたりはむしろ高く、速さで元を取れるかどうかが判断の分かれ目です。なお公式ドキュメントのInstance Typesページには今も「GitHubのちょうど半額」という旧い記述が残っており、料金ページの数字と食い違っています。金額は料金ページを正としてください。
無料枠3,000分の消費レート(ARM・Windows・macOS)
無料枠は組織ごとに毎月「x64 2vCPUで3,000分」です。大きいランナーやほかのOSで使うと、次の倍率で枠を消費します(公式FAQの換算式)。
- x64の4vCPUで10分:20分ぶん(vCPU比2倍)
- ARMの4vCPUで10分:12.5分ぶん(2倍×0.625)
- Windowsの4vCPUで10分:40分ぶん(2倍×2.0)
- macOSの6vCPUで10分:200分ぶん(1分=20分換算)
macOSのジョブは15分を月10回回すだけで3,000分を使い切ります。無料枠でmacOSを試す場合は、対象をリリースビルドなど一部のワークフローに絞るのが現実的です。
アドオンの料金とEnterpriseプラン
Dockerレイヤーキャッシュとsticky diskは1GBあたり月0.50ドル、固定IPは1IPあたり月100ドルです。料金ページ上、この2つのキャッシュ系アドオンが載っているのはUbuntuだけで、Windowsは固定IPのみ、macOSにはアドオンの記載がありません。依存関係のキャッシュ、SSH接続、CIの分析画面、Dockerイメージのキャッシュ(後述)は追加料金がかかりません。Enterpriseプランは99.9%のSLA、24時間365日の優先サポート、専用Slackチャンネルが付く問い合わせ制です。従業員100人未満・調達額5,000万ドル未満・創業5年未満のスタートアップ向け割引と、OSS向けの支援枠も料金ページに載っています。
月2万分を使う組織での試算
GitHub Team(無料枠3,000分)の組織が、プライベートリポジトリでLinux 2コアのジョブを月20,000分回している場合で比べます。
- GitHubのまま:(20,000−3,000)×0.006ドル=102ドル
- Blacksmith、実行時間が変わらない場合:(20,000−3,000)×0.004ドル=68ドル
- Blacksmith、実行時間が半分になった場合:(10,000−3,000)×0.004ドル=28ドル
移行するとGitHubプランに含まれる3,000分は使われずに残ります(セルフホスト課金が始まればこの枠から消費されます)。WindowsやmacOSのジョブをGitHubに残す構成なら、その無料枠をそちらに回せます。GitHub側の単価や無料枠の細かな計算はGitHub Actionsの料金|2026年改定後の分単価・無料枠とコスト削減の判断基準にまとめています。
対応OSとランナーラベル一覧(Ubuntu・Windows・macOS・ARM)
ラベルは blacksmith-<vCPU数>vcpu-<OS> の形です。代表的なものを抜き出すと次のとおりです(Instance Typesより)。
| ラベルの例 | vCPU | メモリ | ストレージ |
|---|---|---|---|
blacksmith-2vcpu-ubuntu-2404 |
2 | 8GB | 80GB |
blacksmith-8vcpu-ubuntu-2404 |
8 | 32GB | 160GB |
blacksmith-32vcpu-ubuntu-2404 |
32 | 128GB | 1.5TB |
blacksmith-2vcpu-ubuntu-2404-arm |
2 | 6GB | 75GB |
blacksmith-2vcpu-windows-2025 |
2 | 7GB | 130GB |
blacksmith-6vcpu-macos-latest |
6 | 24GB | 150GB |
blacksmith-12vcpu-macos-latest |
12 | 48GB | 250GB |
Ubuntuは22.04(末尾 2204)と24.04(2404)を選べ、どちらも2〜32vCPUの5段階です。UbuntuのイメージはGitHub公式のrunner-imagesと同じものから起動するため、プリインストールのツールはGitHubの標準ランナーとそろいます。実行場所はus-east(アッシュバーン)、us-west(フェニックス)、eu-west(アムステルダム)、eu-central(フランクフルト)の4リージョンで、アジアにはありません。
Windows Server 2025(Public Beta)で使えないもの
WindowsランナーはGitHub公式のWindows 2025イメージを基にしていますが、Visual StudioのフルIDE(代わりにBuild Tools 2022を収録)、EdgeDriver、WinAppDriver、Azure Cosmos DB Emulatorは入っていません。入れ子の仮想化の制約で、Linuxコンテナも動きません。ホストと同じWindows Server 2025のWindowsコンテナは、プロセス分離モードで動きます。services: でPostgreSQLなどのLinuxコンテナを立てるWindowsジョブは、GitHubのランナーに残す必要があります。
macOS M4ランナーとXcodeの選び方
macOSはApple M4(ARM64)の6vCPUと12vCPUの2種類で、最小が6vCPUです。blacksmith-6vcpu-macos-latest は2026年10月時点でmacOS 26を指し、版を固定したい場合は macos-15・macos-26・macos-27(Public Beta)を指定します。macOS 26のランナーにはXcode 26(既定)とXcode 27が入っていて、xcode-select か DEVELOPER_DIR で切り替えます。
GitHub ActionsからBlacksmithへ移行する手順
公式のQuickstartは「5分以内」をうたっています。手順は、GitHub Appを入れる、runs-on を書き換える、必要ならキャッシュ設定を変える、の3段です。
GitHub Appのインストールと組織の条件
app.blacksmith.shにGitHubアカウントでサインインし、対象の組織に「blacksmith.sh」のGitHub Appを入れます。Quickstartは「GitHubの組織に限られ、個人リポジトリでは使えない」と明記しています。個人アカウントのリポジトリで試したい場合は、無料の組織を作ってリポジトリを移す必要があります。
組織にSSOがかかっているとダッシュボードに組織が表示されないことがあり、その場合はGitHub側でSSO認証を済ませてから再読み込みします。組織でIP許可リストを使っているなら、BlacksmithのコントロールプレーンのIPを許可リストに足さないとランナーを登録できません。
runs-onの書き換えとMigration Wizard
ダッシュボードのMigration Wizardは、ワークフローファイルの runs-on をBlacksmithのラベルに置き換えるプルリクエストを作ります。手で直す場合の対応は、ubuntu-latest → blacksmith-2vcpu-ubuntu-2404、windows-latest → blacksmith-2vcpu-windows-2025、macos-latest → blacksmith-6vcpu-macos-latest です。
on: [push, pull_request]
jobs:
test:
# runs-on: ubuntu-latest
runs-on: blacksmith-2vcpu-ubuntu-2404
steps:
- uses: actions/checkout@v7
- uses: actions/setup-node@v7
with:
node-version: 22
cache: npm
- run: npm ci
- run: npm test
1つのファイルに複数のジョブがあるときは、すべての runs-on を書き換えます。Wizardがどこまで置き換えるかは公式ドキュメントに明記がないため、再利用ワークフローを別リポジトリに置いている場合や、ラベルを変数や matrix で渡している場合は、プルリクエストの差分を見て置き換え漏れがないか確かめてください。ラベルの記法自体はGitHub Actionsのruns-on|ラベル指定の記法と-latest更新・arm64への備えで解説しています。
Appを入れていないリポジトリでラベルを使うとキューが詰まる
移行で起きやすい失敗が、App未インストールのリポジトリで runs-on: blacksmith-* を書いてしまうことです。Blacksmithのランナーは組織単位で登録されるため、GitHubは同じラベルを持つ組織内のどのジョブでもそのランナーに割り当てます。一方Blacksmithが需要を見てランナーを用意するのは、Appを入れたリポジトリの分だけです。その結果、Appを入れたリポジトリ用のランナーが他のリポジトリのジョブに横取りされ、本来のジョブが待たされます(公式FAQ「Why are my jobs queuing」)。ラベルを書いたリポジトリには、必ずAppのアクセス権も付けてください。
GitHub Enterprise Server・GHE.comで使う場合
GitHub Enterpriseのページによると、Enterprise Serverと、データレジデンシー版のEnterprise Cloud(*.ghe.com)にも対応しています。サポートに登録すると7日間有効で1回限りのセットアップリンクが届き、自分のインスタンス上にBlacksmithのGitHub Appを作って組織に入れる流れです。Enterprise Serverは既定でgithub.comのアクションを使えないため、useblacksmith/setup-docker-builder などを参照するジョブは、サイト管理者がGitHub Connectで有効にするか手動で同期するまで失敗します(これらのアクションを使わなければ、ジョブ自体はBlacksmithで動きます)。
キャッシュとDockerビルドを速くする設定
Blacksmithの速さのうち、CPUの差はラベルを変えるだけで得られます。キャッシュの差は、使っているアクションによって設定が要るものと要らないものに分かれます。
actions/cacheは書き換え不要(1リポジトリ週25GB・7日で削除)
actions/cache(公式ドキュメントの例はv5)や setup-node・setup-python・setup-go・setup-java の cache 指定は、Blacksmithのランナー上では自動的にランナーと同じデータセンターのキャッシュへ向きます。公式は読み出しが約400MB/sで、GitHubのキャッシュ(Azure Blob Storage)の約4倍としています。容量は1リポジトリにつき週25GB、7日以上使われないエントリから順に削除。GitHubのキャッシュは1リポジトリ10GBまでが無料で、2025年11月からは上限を引き上げる設定をした場合に限り、超えた分が1GBあたり月0.07ドルで課金されます(GitHubの課金ドキュメント)。
注意点が2つあります。旧版の解説で紹介されていた useblacksmith/cache や useblacksmith/setup-node などのフォークはアーカイブされ、保守されていません。元の公式アクションに戻してください。また、Rustの sccache と docker/build-push-action の type=gha キャッシュは、今もGitHubのキャッシュ側に送られます(4x Faster Actions Cache)。
Dockerレイヤーキャッシュの設定(setup-docker-builder@v2)
Dockerのレイヤーを実行をまたいで残すには、Buildxのセットアップとビルドの2つのアクションをBlacksmith版に差し替えます。v2では cache-key が必須で、ビルドするDockerfileのパスを入れるのが基本です。
- name: Log in to GHCR
uses: docker/login-action@v4
with:
registry: ghcr.io
username: ${{ github.actor }}
password: ${{ secrets.GITHUB_TOKEN }}
- name: Set up Docker builder
uses: useblacksmith/setup-docker-builder@v2
with:
cache-key: services/api/Dockerfile
- name: Build and push
uses: useblacksmith/build-push-action@v2
with:
context: .
file: services/api/Dockerfile
push: true
tags: ghcr.io/example/api:latest
GHCRへpushするには、ジョブに permissions: packages: write も必要です。レイヤーはsticky diskに保存されるので、これまで書いていた cache-from/cache-to(type=gha や type=registry)は外せます。エクスポート型のキャッシュと違い、RUN --mount=type=cache の中身もジョブをまたいで残るのが利点です。初回は必ずキャッシュなしで走り、2回目から効きます。7日間Dockerビルドがなければ、cache-key ごとのディスク自体が削除されます。ディスクが残っていても、8日間使われなかったレイヤーはBuildKitのガベージコレクションで消えます(40x Faster Docker Builds)。
関係のないイメージを同じ cache-key で共有すると、互いのレイヤーを追い出し合ってキャッシュなしより遅くなることがあると公式は注意しています。キーはDockerfileごとに分けるのが無難です。マルチアーキテクチャのイメージは、QEMUでエミュレートせず、matrix でx64とARMのランナーに振り分けてそれぞれネイティブでビルドする構成が推奨されています。
sticky disk・checkoutキャッシュ・コンテナキャッシュの使い分け
| 機能 | 対象 | 設定 | 料金 | 削除まで |
|---|---|---|---|---|
| sticky disk | node_modules等の任意ディレクトリ | useblacksmith/stickydisk@v1 |
月0.50ドル/GB | 未使用7日 |
| checkoutキャッシュ | Gitリポジトリ | useblacksmith/checkout@v1 |
sticky diskと同じ | 未使用7日 |
| コンテナキャッシュ | services:・docker pull |
不要(既定で有効) | 無料 | 未使用8日 |
sticky diskは1ジョブで5個まで使え、ジョブの開始時に前回の確定スナップショットが複製されてマウントされます。公式の比較では6GBのキャッシュの取得にGitHubのキャッシュで約1分6秒、Blacksmithのキャッシュで約15秒、sticky diskで約3秒です。数GBあるモノレポのクローンが遅いならcheckoutキャッシュ、データベースなどのサービスコンテナの起動が遅いならコンテナキャッシュ、と詰まっている箇所に合わせて選びます。コンテナキャッシュは組織内でリージョンとアーキテクチャごとに1つのディスクを共有し、他の組織からは見えません。
権限とセキュリティ:GitHub Appが要求する範囲とキャッシュ汚染対策
外部のマシンにCIを任せる以上、何を渡すかは導入前に確認すべき点です。公式の権限一覧によると、ランナーを動かすだけなら組織の「セルフホストランナーの管理」とWebhookイベントで足り、コードへのアクセスは要りません。ただしAppはインストール時に、ContentsやActionsの読み書き権限もまとめて要求します。コンテンツ・ワークフロー・プルリクエストへの書き込み権限は、Migration Wizardと、Blacksmithのコーディングエージェント[code]smithがプルリクエストを作るためのものです。Actionsのシークレット・変数・Environments、リポジトリや組織のAdministration権限は要求しません。
見落としやすいのはsticky diskの汚染です。sticky diskはリポジトリのすべての実行で共有されるため、既定では pull_request で走った信頼できないコードの書き込みも、次の実行に引き継がれます。ダッシュボードの設定でBranch Protectionを有効にすると、既定ブランチへの push・schedule・workflow_dispatch で走ったジョブの変更だけが確定され、それ以外のジョブの変更は終了時に捨てられます。外部からのプルリクエストを受けるリポジトリでは、最初に有効にしておくべき設定です。Dockerレイヤーキャッシュとcheckoutキャッシュもこの保護の対象になります。
実行中のジョブへのSSH接続は組織の管理者がオンにしたときだけ使え、接続できるのはジョブを起動したユーザー本人のGitHubのSSH鍵に限られます。ダッシュボードの閲覧権限はGitHubのリポジトリ権限をそのまま引き継ぎ、課金情報や組織設定を変えられるのは組織の管理者だけです。
Blacksmithを選ばないほうがよい条件
次のどれかに当てはまるなら、Blacksmithへの移行は見送るか、対象のジョブを絞るのが妥当です。
- パブリックリポジトリだけを運用している:GitHubの標準ランナーはパブリックなら無料で、Blacksmithに移すと無料枠を超えた分が新たな費用になります。速さが必要ならOSS支援枠への申請を先に検討します。
- 個人アカウントのリポジトリしかない:Blacksmithは組織専用です。
- CIの実行場所を国内やアジアに置く必要がある:リージョンは米国2か所と欧州2か所だけで、自社のクラウドアカウント内で動かす構成も公式ドキュメントと料金ページには載っていません。データの所在地に要件があるなら、自社のAWS上で動かすRunsOnや、WarpBuildの自社クラウド版(BYOC)、あるいはActions Runner Controllerによるセルフホストのほうが合います。
- WindowsジョブでLinuxのサービスコンテナを使っている:前述の制約で動きません。
- macOSのジョブが中心で、標準のM1ランナーで足りている:1分あたりはBlacksmithのほうが29%高く、速さで差額を取り返せるかを実測してから決めるべきです。
- 月の利用が数百分で、待ち時間にも困っていない:削減額は月数ドルにとどまり、外部サービスを1つ増やす管理の手間に見合いません。
逆に、プライベートリポジトリでLinuxのビルドとテストを月に数万分回し、8vCPU以上の大きいランナーの待ち時間やDockerビルドの遅さに困っているチームでは、ラベルを変えるだけで試せる手軽さが効きます。まず1つのワークフローだけを切り替え、Blacksmithの分析画面とGitHubの実行時間を1〜2週間並べて比べるのが確実です。CI/CD全体の設計やランナー選定から相談したい場合は、DevOps・CI/CD導入支援でも承っています。
GitHub Actionsを速くするほかの選択肢との違い
「github actions 代替」で探している場合、候補は大きく3つに分かれます。GitHub Actions以外のCIへ乗り換える選択肢(CircleCIやGitLab CIなど)はCI/CDツール比較|主要11製品の無料枠・料金と選び方で比べています。
| 選択肢 | マシンの持ち主 | 課金 | 運用の手間 |
|---|---|---|---|
| GitHubの大型ランナー | GitHub | 分単価(常に課金) | 小さい |
| Blacksmith・Depot・WarpBuild | 各社 | 各社の分単価 | 小さい |
| RunsOn | 自社のAWS | 年額ライセンス+AWS費用 | 中くらい |
| セルフホスト(ARC等) | 自社 | 自社のインフラ費 | 大きい |
GitHubの大型ランナー(larger runners)は、固定IPやAzureのプライベートネットワーク、カスタムイメージ、GPUが使え、契約や支払いをGitHubに一本化できるのが強みです。ただしパブリックリポジトリでもプランの無料枠が残っていても必ず課金され、8コアは1分0.022ドルとBlacksmithの8vCPU(0.016ドル)より高くなります。Blacksmithと同じ「runs-onを変えるだけ」の外部ランナーとしては、DockerビルドのサービスもあるDepotや、自社クラウドで動かす版を持つWarpBuildがあり、速さの数字はどれも各社が自分で公表しているものです。候補を2つに絞ったら、同じワークフローを両方で走らせて比べるのが確実です。
よくある質問
Blacksmithとは何ですか?
GitHub Actionsのジョブを実行する外部のマネージドランナーです。米サンフランシスコのBlacksmith Software Incが提供しており(2026年3月にPeak XV主導で4,500万ドルのシリーズBを調達)、ワークフローの書き方はGitHub Actionsのまま、runs-on にBlacksmithのラベルを書くとそのジョブがBlacksmithのマシンで動きます。英単語の「blacksmith」は鍛冶屋を意味しますが、CIの文脈ではこのサービスを指します。料金はUbuntu x64の2vCPUで1分0.004ドル、組織ごとに毎月3,000分が無料です。
BlacksmithはGitHub Actionsの代わりになりますか?
代わりにはなりません。BlacksmithはGitHub Actionsの上で動くランナーで、トリガー、ワークフローの記法、シークレット、ログはGitHubのものをそのまま使います。置き換わるのはGitHubが用意する標準ランナーの部分だけです。GitHub Actionsをやめて別のCIに移りたい場合は、CircleCIやGitLab CIなど別製品の比較になります。
Blacksmithの料金はGitHubとどれくらい違いますか?
Ubuntu x64の2vCPUで比べると、Blacksmithは1分0.004ドル、GitHubは2026年1月改定後で0.006ドルで、分単価は33%安くなります。ARMは0.0025ドル対0.005ドルで半額、Windowsは0.008ドル対0.010ドルで20%安です。料金ページの「最大67%削減」は実行時間が半分になる前提を含む数字で、ジョブが速くならなければ削減は分単価の差にとどまります。
個人のリポジトリでもBlacksmithを使えますか?
使えません。公式のQuickstartは、BlacksmithはGitHubの組織に限られ、個人リポジトリでは利用できないと明記しています。試すには、GitHubで無料の組織を作り、対象のリポジトリを組織へ移したうえでBlacksmithのGitHub Appを入れます。無料枠の3,000分も組織単位で付与されます。
BlacksmithでmacOSやWindowsのジョブは動きますか?
動きます。macOSはApple M4の6vCPUと12vCPUで、macOS 15・26・27(27はPublic Beta)を選べます。WindowsはWindows Server 2025の2〜32vCPUがPublic Betaで提供されています。ただしWindowsではLinuxコンテナが動かず、Visual StudioのフルIDEも入っていません。macOSは1分0.08ドルで、GitHubの標準macOSランナー(0.062ドル)より高い点にも注意してください。