Siv3D v0.8は、C++のゲーム・クリエイティブコーディング用フレームワーク「Siv3D」の次世代版です。2026年9月15日時点で公式サイトはv0.8を「開発中」と表示しており、正式版も体験版SDKも公式サイトと開発リポジトリ「Siv3D/siv8」のリリース欄には出ていません。ソースコードの更新は続いています。この記事では、v0.8がいつ使えるようになるのか、今の安定版v0.6.16と何が変わるのか、今から作品を作るならどちらを選ぶべきかを、作者の公開資料とリポジトリの記述から整理します。Siv3Dそのものの特徴やv0.6.16のインストール手順はSiv3Dの特徴・インストール・使い方の解説記事にまとめています。
まとめ:Siv3D v0.8の現状と選び方
- v0.8は未リリースです。siv8リポジトリのリリース・タグは0件で、2026年初頭に予定されていた体験版SDKも公式サイトには掲載されていません。
- 作者はリリース時期を「最も順調なら2026年7月、現実的には2026年秋〜2026年末」と見積もっています(2025年12月時点)。
- 今から作品を作るなら安定版のv0.6.16を使います。作者自身がv0.6からv0.8への移植を「基本的には推奨しません」と書いています。
- v0.8の開発環境はVisual Studio 2026 18.0、Xcode 26.4とApple Silicon搭載Macです。Linuxは未定(TBA)です。
- 主な変更点は、Rangesとconstexprを使ったAPI、高速ライブラリへの置き換え、可変フォントとカラーフォント(COLRv1)への対応、macOSの描画APIのMetal化です。
Siv3D v0.8の開発状況とリリース時期(2026年9月時点)
v0.8は、Siv3D v0.6系のリポジトリ(Siv3D/OpenSiv3D)とは別の「Siv3D/siv8」で開発されています。リポジトリの作成は2022年7月13日で、2026年は月ごとの開発ブランチをまとめてマージする形で進んでいます。直近では2026年9月8日に「v8_develop_2026_09」(#84)がマージされました。一方、GitHubのリリースとタグは1件もありません。v0.8を試すには、自分でソースコードからビルドする必要があります。
作者のRyo Suzuki氏が2025年12月2日に公開した「Siv3D v0.8 の開発進捗(2025 年 12 月)」には、分野ごとの実装率が載っています。
| 分野 | 2025年11月時点 | 2026年3月の目標 |
|---|---|---|
| ファイルシステム | 90% | 95% |
| 基盤クラス | 80% | 90% |
| フォント・テキスト描画 | 80% | 90% |
| 2Dグラフィックス | 75% | 90% |
| ウィンドウ | 60% | 80% |
| 入力デバイス | 50% | 80% |
| 設定ファイル(JSON・INI・XML) | 40% | 80% |
| 画像ファイル・画像処理 | 30% | 80% |
| GUI | 20% | 60% |
| ネットワーク・通信 | 10% | 50% |
| オーディオ | 0% | 50% |
| OpenAI API連携 | 0% | 50% |
| 3Dグラフィックス | 0% | 0% |
注目すべきは3Dグラフィックスで、2026年3月の目標も0%です。作者は2025年12月の記事で、光源の拡充、標準のシャドウ、スカイボックス、水面エフェクトを3Dの計画として挙げたうえで、3Dには開発終盤に着手する予定と説明しています。この計画を踏まえると、3D機能の強化を理由に制作の開始をv0.8まで延ばすことは勧めません。オーディオも2025年11月時点では0%でした。
リリース時期について、同じ記事は体験版SDKを「2026年初頭にWindows版とmacOS版」で出す予定とし、正式版は「最も順調に開発が進んだ場合は、2026年7月のリリースが目標」「現実的な予想としては2026年秋~2026年末になる可能性が高い」と書いています。2026年9月時点で公式サイトとsiv8に体験版SDKは掲載されておらず、最速シナリオの7月は過ぎました。v0.6系については「1 か月以内に v0.6.17 をリリースする予定」とされていましたが、公式リリースノートの最新は現在もv0.6.16(2025年4月7日)です。予定日はずれやすいので、使い始める前に公式リリースノートとsiv8のリリース欄で配布状況を確認してください。
v0.6.16とv0.8の違い(開発環境・描画API・C++規格)
v0.8では開発環境の要件が大きく上がります。v0.6.16の値は公式ダウンロードページ、v0.8の値はsiv8のREADMEと開発進捗記事から取りました。
| 項目 | v0.6.16(安定版) | v0.8(開発中) |
|---|---|---|
| Windowsの開発環境 | VC++ 2022 17.14 または 2026 | Visual Studio 2026 18.0 |
| macOSの開発環境 | Xcode 14.3以降 | Xcode 26.4 |
| Apple Silicon | Rosetta経由 | ネイティブ対応 |
| macOSの描画API | OpenGL 4.1 | Metal 3 |
| Linux | Ubuntu 20.04・22.04 | TBA(未定) |
| C++規格 | C++20 | C++20と一部のC++23・C++26 |
Windowsで最も影響が大きいのは、v0.8がVisual Studio 2022に対応しない点です。v0.6.16はVisual Studio 2022と2026の両方でプロジェクトを作れますが、v0.8はVisual Studio 2026 18.0を前提にしています。Visual Studio 2026の変更点はVisual Studio 2026の新機能とVS2022との違いで確認できます。
開発進捗記事によると、v0.8のWindows版の描画APIはDirect3D 11です。macOSでは、v0.6.16がOpenGL 4.1で描画し、Apple Silicon搭載MacではRosettaで動かす構成でした。v0.8はMetal 3で描画し、READMEの要件はApple Siliconだけです。Intel MacでSiv3Dを使っている場合、v0.8には移れない前提で考えてください。Linuxについては、開発進捗記事にUbuntu 24.04とOpenGL 4.5の記載がありますが、2026年9月時点のREADMEは「TBA」のままです。
Siv3D v0.8の主な新機能
RangesとconstexprによるAPIの書き換え
作者の登壇資料「次期 Siv3D(Siv3D v0.8)で採用した技術」(C++ breaktime 2025/Summer)によると、v0.8はAPIの主要部分でC++20のRangesを使います。資料では、画像の特定列のピクセルを image.column(100) のように範囲として扱う例が示されています。多くの関数がconstexprに対応したことで、テストコードの多くが static_assert で書けるようになったとも説明されています。
文字列・メモリ・乱数を担う内部ライブラリの刷新
同じ資料は、内部で使うライブラリの置き換えを挙げています。2026年9月時点でsiv8のThirdParty.mdに記載されている版は次のとおりです。
| ライブラリ | 用途 | siv8の記載版 |
|---|---|---|
| simdutf | Unicode変換・検証 | 9.0.0 |
| fast_float | 文字列から数値への変換 | 8.2.10 |
| mimalloc | メモリアロケータ | v3.3.2 |
| xxHash | ハッシュ関数 | v0.8.2 |
| pcg-cpp | 疑似乱数生成 | 記載なし |
2025年夏の資料ではmimallocを「v2」と紹介していましたが、現在のリポジトリはv3.3.2を使っています。開発中のライブラリ構成は登壇時点から変わるため、依存関係はThirdParty.mdで確認するのが確実です。
可変フォントとCOLRv1カラーフォントへの対応
v0.8は、1つのファイルで太さを連続的に変えられる可変フォント(Variable Font)に対応します。登壇資料では、Zstandard圧縮後の容量で、同梱の日本語フォントが合計5.7MBから1.8MBに、Google Noto Color Emojiが9.3MBから2.3MBに縮んだと紹介されています。後者はベクター形式のカラーフォント「COLRv1」への対応によるものです。作者の記事「ゲームエンジンを自作する際のテキスト描画機能」(2025年12月24日)には、COLRv1の描画は「FreeType 単体ではできない」ため、v0.8ではSkiaを使って実装したとあります。
図形の模様塗りつぶしとQuadWarpによる四角形への変形描画
図形の塗りつぶしに「模様」が加わります。テクスチャ画像を使わず、シェーダの数学関数だけでパターンを描く方式です。siv8のヘッダーには Pattern フォルダがあり、Checker・Grid・HexGridなどの模様が定義されています。登壇資料では、テクスチャを自由な四角形にパース変形して描くQuadWarpも texture.drawQuadWarp(四角形) の形で紹介されました。siv8のヘッダーには、文字を四角形にワープさせるテキスト描画エフェクト TextEffect::QuadWarp も含まれています。
v0.6からv0.8への移行判断(クラス名の変更と移植の可否)
v0.6.16で作ったプロジェクトは、v0.8が出てもそのまま移さない前提で計画してください。作者は開発進捗記事で、v0.6からv0.8への移植を「基本的には推奨しません」と書いています。理由として挙げているのは、関数名やクラス名の変更に加えて、文字描画のパラメータなどが大きく変わっていることです。名前が変わる主なAPIは次のとおりです(開発進捗記事の記載)。
| v0.6 | v0.8 |
|---|---|
BinaryReader |
BinaryFileReader |
BinaryWriter |
BinaryFileWriter |
HashTable |
HashMap |
OrderedTable |
BTreeMap |
FileSystem::ModulePath() |
FileSystem::GetExecutablePath() |
名前の変更以外に、動作が変わる機能もあります。v0.6のTOMLReaderでは config[U"Window.title"] と書くと「Window」の下の「title」キーを読めましたが、作者の開発メモによると、v0.8の新しいTOMLクラスではこのドット区切りのアクセスが廃止される予定です。設定ファイルを多用するプロジェクトほど書き換える箇所が増えます。
選び方は用途で決まります。締め切りのあるゲームジャム、授業の課題、高専プロコンのように今年中に完成させる作品は、v0.6.16一択です。v0.8にはリリースもタグもなく、月次のマージでAPIが変わり続けているため、途中で追従の手間が発生します。作者も、v0.6系はv0.8のリリースまでバグ修正と小規模な機能追加を続けるとしています。
v0.8を触る価値があるのは、エンジン開発にフィードバックを送りたい人と、Apple Silicon搭載MacでRosettaを使わずに動かしたい人です。ただし配布する作品をsiv8で作り始めるのは避けてください。リリースもタグもないため、ある月のマージ時点のコードを固定して使うことになり、不具合修正を取り込む更新にAPIの変更が含まれていれば、作品側のコードも直す必要があります。なお、siv8の各ソースファイルの冒頭には「Licensed under the MIT License」と書かれていますが、2026年9月時点でリポジトリのルートにLICENSEファイルはなく、GitHub上のライセンス欄も空です。
C++で2Dゲームを作るライブラリをv0.8待ちの間に比べたい場合は、Windows向けのDXライブラリの導入と使い方も選択肢になります。
OpenSiv3DとSiv3Dの名称の違い
「OpenSiv3D」と「Siv3D」は同じ系譜のフレームワークです。v0.6系のGitHubリポジトリ名は今もSiv3D/OpenSiv3Dですが、そのREADMEは「Siv3D (formerly known as OpenSiv3D)」と書いており、現在の正式な呼び名はSiv3Dです。公式ダウンロードページではv0.6.16のSDKが「OpenSiv3D v0.6.16」と表示されるため、2つの名前が混在しています。
v0.8では開発リポジトリの名前が「siv8」になり、READMEの見出しも「Siv3D v0.8」です。検索で「siv8」を見かけたら、このv0.8の開発リポジトリを指していると考えてください。なお、OpenSiv3Dより前には「Siv3D August 2016」のような日付付きの版がありました。その旧Siv3Dのリファレンスは、別リポジトリのSiv3D/Reference-JPに残っています。
Siv3D v0.8に関するよくある質問
Siv3D v0.8はいつリリースされますか?
正式な日付は発表されていません。作者の2025年12月の記事では、最も順調なら2026年7月、現実的には2026年秋から2026年末と見込まれています。2026年9月15日時点で、公式サイトとsiv8のリリース欄に正式版・体験版SDKは掲載されていません。
Siv3D v0.8は今すぐ使えますか?
GitHubのSiv3D/siv8からソースコードを取得し、自分でビルドすれば試せます。必要なのはWindowsならVisual Studio 2026 18.0、macOSならXcode 26.4とApple Silicon搭載Macです。インストーラーはまだありません。
v0.6.16で作ったプロジェクトはv0.8に移行すべきですか?
作者は基本的には推奨しないとしています。クラス名や関数名に加えて文字描画のパラメータも変わっているためです。完成が近い作品はv0.6.16のまま仕上げてください。
Siv3D v0.8はVisual Studio 2022で使えますか?
siv8のREADMEが要件に挙げているのはVisual Studio 2026 18.0です。Visual Studio 2022を使い続ける場合は、2022と2026の両方に対応しているv0.6.16を使います。
siv8とは何ですか?
Siv3D v0.8の開発用GitHubリポジトリの名前です。v0.6系のSiv3D/OpenSiv3Dとは別のリポジトリで、2026年9月時点でリリースやタグはありません。