バランススコアカード(Balanced Scorecard、略してBSC)は、財務の数字だけでは見えない「将来の業績をつくる要因」を、顧客・業務プロセス・学習と成長の3つの視点と合わせて測り、戦略を実行に移すための経営管理の手法です。ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・S・キャプランと、経営コンサルタントのデビッド・P・ノートンが1992年に発表しました。
この記事では、キャプラン自身が経緯をまとめた論文(HBS Working Paper 10-074「Conceptual Foundations of the Balanced Scorecard」、2010年)をもとに、4つの視点が原典でどんな問いとして定義されているか、戦略マップを先に作る理由、作り方の手順、そして導入が失敗する原因を整理します。なお、がん医療で使われる「BSC」はBest Supportive Care(ベストサポーティブケア)の略で、本記事の経営手法とは別の用語です。
まとめ:バランススコアカードで押さえるべき要点
- BSCは、財務指標を最終成果として残したまま、顧客・業務プロセス・学習と成長の3視点を「長期的な価値を生む原因」として加えた枠組みです。
- 原典の図では、各視点に「目標・指標・目標値・施策」の4列を置きます。指標を並べた表ではなく、戦略を翻訳する道具です。
- キャプランの2010年の論文では、戦略目標の因果関係を図にした戦略マップを先に作り、指標は後から選ぶ順番が示されています。
- キャプランは、BSCが失敗した組織の原因を「設計の欠陥」ではなく「経営トップの主導の欠如」にさかのぼれると述べています。
- 行政・非営利組織では財務を最上位に置かず、ミッションや社会的な成果を最上位に置き換えます。
以下では、成り立ち、作り方、導入を見送る条件を順に説明します。
バランススコアカードが生まれた経緯と「バランス」の意味
BSCの成立:1990年の共同研究と1992年のHBR論文
BSCの出発点は、ノーラン・ノートン研究所が1990年に実施した複数企業の共同研究プロジェクトです。無形資産が価値創造の中心にある企業で、業績をどう測っているかを調べるものでした。その成果が、Harvard Business Review 1992年1-2月号の論文「The Balanced Scorecard: Measures That Drive Performance」です。
キャプランは2010年の論文で、無形資産の管理を改善したいなら、無形資産の測定を経営管理の仕組みそのものに組み込む必要があったと振り返っています。発表から約15年のあいだに、民間・公的機関・非営利組織の数千の組織に採用されたとも記しています。
品質指標は改善、株価は約70%下落:アナログ・デバイセズの教訓
「財務だけでも、現場の指標だけでも足りない」という発想を決定づけたのが、半導体メーカーのアナログ・デバイセズの事例です。1990年の研究会で、同社の品質・生産性担当副社長アーサー・シュナイダーマンは、社内スコアカードの品質指標がすべて大きく改善したと報告しました。
ところが同じ発表のなかで、過去3年間に同社の株価が70%近く下がったことも明かしました。製造と納期の改善が、売上と利益率の向上につながっていなかったのです。キャプランは、品質改善を顧客への価値提案や顧客の成果に結びつけていなかったことが、株主価値の損失につながった可能性が高いと分析しています。
ここから導かれるのが、現場の改善を顧客と財務の成果に因果でつなぐという、BSCの中核の考え方です。「バランス」とは4つの指標を均等に扱うことではなく、先行指標(業務の改善)と遅行指標(財務の成果)を1枚でつなぐことを指します。
先行例としての1950年代GEの8指標
非財務指標で業績を測る発想そのものは、BSCが最初ではありません。1950年代にゼネラル・エレクトリック(GE)の本社スタッフが、分権化した事業部の業績を1つの財務指標と7つの非財務指標で測るよう提言しています。収益性、市場シェア、生産性、製品リーダーシップ、社会的責任、人材開発、従業員の意識、短期と長期のバランスの8つです。
キャプランはこの8指標にBSCの源流を見ています。一方で、GEではこの指標が事業部の管理制度や報酬の仕組みに根づかず、のちに複数の事業部が価格カルテルで有罪になったことも指摘しています。指標を掲げるだけでは行動は変わらない、という反省がBSCの設計に反映されています。
4つの視点:原典の問いと戦略目標・KPIの例
キャプランの2010年の論文の図1では、中心に「ビジョンと戦略」を置き、その周りに4つの視点を配置しています。各視点には次の問いが付いています。
| 視点 | 原典の問い(日本語訳) | 戦略目標の例 | KPIの例 |
|---|---|---|---|
| 財務 | 財務的に成功するため、株主にどう映るべきか | 既存顧客からの収益拡大 | 既存顧客売上高、既存顧客粗利益額 |
| 顧客 | ビジョン達成のため、顧客にどう映るべきか | 重点顧客層の継続利用 | 継続率、顧客満足度 |
| 業務プロセス | 株主と顧客を満足させるため、どの業務に秀でるべきか | 受注から納品までの短縮 | リードタイム、不良率 |
| 学習と成長 | ビジョン達成のため、変化し改善する能力をどう保つか | 多能工化の推進 | 複数工程の技能認定者数 |
表の「戦略目標の例」「KPIの例」は、製造業を想定した説明用の例示です。各視点の欄には「目標(Objectives)・指標(Measures)・目標値(Targets)・施策(Initiatives)」の4列を持たせるのが原典の形です。
財務の視点が最上位に置かれる理由
BSCは財務指標を捨てた手法ではありません。原典の構造は、財務指標を企業の成功を示す最終的な成果指標として残し、残り3つの視点を長期的な株主価値を生む原因として補う形です。キャプランは、ステークホルダー理論と違ってBSCは株主価値を最上位の指標に置いたと明言しています。
財務の視点に入れるべきなのは、戦略の成否が最後に表れる数字です。収益の拡大を狙う戦略なら新規事業の売上比率、コストで勝つ戦略なら単位あたりコストのように、戦略によって選ぶ指標が変わります。
顧客の視点:戦略に基づく顧客層と価値提案の選定
顧客の視点で最初に決めるのは、満足度の測り方ではありません。どの顧客層に、どんな価値提案で選ばれるかです。キャプランは、サウスウエスト航空の顧客とブリティッシュ・エアウェイズのビジネスクラス・ファーストクラスの顧客では期待する水準が違うという例を挙げ、顧客満足度や顧客ロイヤルティの指標を定める前に戦略を決めなければならないと書いています。
すべての顧客の期待に応えようとすると、コストも高く差別化もない「どっちつかず」の状態に陥ります。戦略マップの原典図では、顧客への価値提案を価格・品質・入手しやすさ・品揃え・機能・サービス・パートナーシップ・ブランドの8要素に分けています。自社がどの要素で差別化するのかを決めてから指標を選びます。
業務プロセスの視点:4つのプロセス群
業務プロセスの視点は、顧客への価値提案と財務目標を実現するために、社内で何に秀でるべきかを示します。戦略マップの原典図では、次の4群に分けています。
- 業務管理プロセス:調達、生産、流通、リスク管理
- 顧客管理プロセス:顧客の選定、獲得、維持、取引拡大
- イノベーション・プロセス:新たな機会の発見、研究開発ポートフォリオの選定、設計・開発、市場投入
- 規制・社会プロセス:環境、安全衛生、雇用、地域社会
全部の群に目標を置く必要はありません。コスト優位の戦略なら業務管理プロセス、製品で勝つ戦略ならイノベーション・プロセスに目標を集中させます。サプライヤーが競争優位の源泉である企業(キャプランはウォルマート、ナイキ、トヨタを例示)は、サプライヤーの成果もこの視点に入れます。
学習と成長の視点:人的資本・情報資本・組織資本
4つ目の視点は、戦略マップの原典図で人的資本、情報資本、組織資本(文化、リーダーシップ、戦略との整合、チームワーク)の3つに分かれています。
キャプランは、この視点をあえて「従業員の視点」と名づけず、「学習と成長」という一般的な名前にしたと説明しています。従業員の目標は必ずこの視点に入りますが、それは戦略に必要だからであり、「ステークホルダーだから」ではない、という立場を示すためです。研修時間を増やすこと自体を目標にするのではなく、戦略に必要な職種の能力が揃ったかを測るのが本来の使い方です。
戦略マップとBSCの違いと、作る順番
戦略マップは、4つの視点にまたがる戦略目標を矢印でつなぎ、因果関係を1枚の図にしたものです。BSC(スコアカード)は、その戦略目標ごとに指標・目標値・施策を割り当てた管理表です。キャプランとノートンは、2000年のHBR論文と2001年・2004年の書籍で戦略マップを体系化しました。
作る順番にも根拠があります。キャプランは2010年の論文で、当時のBSCプロジェクトはすべて、まず戦略目標の戦略マップを作り、その後で目標ごとに指標を選んでいると書いています。指標から先に集めると、測りやすい数字が並ぶだけで、戦略との因果が抜け落ちるからです。
因果のつながりの例として、キャプランは次のサービス・プロフィット・チェーン(Heskettら、1994年)を引いています。
- 従業員研修への投資がサービス品質を高める(学習と成長)
- サービス品質の向上が顧客満足度を高める(業務プロセス→顧客)
- 顧客満足度の向上が顧客ロイヤルティを高める(顧客)
- 顧客ロイヤルティの向上が売上と利益率を伸ばす(財務)
無形資産は売上や利益に直接効くことが少なく、2〜3段階の中間成果を経て財務に表れる、というのがこの図の意味です。戦略マップの矢印1本ごとに「この改善は、何か月後にどの指標に効くはずか」を書き込んでおくと、レビューの場で仮説が外れたかどうかを検証できます。
バランススコアカードの作り方5ステップ
原典の「目標・指標・目標値・施策」の構造と、戦略マップを先に作る順番に沿うと、作成手順は次の5段階になります。
- ビジョンと戦略を1〜2文で言語化する(現状分析にはSWOT分析などを使う)
- 4つの視点ごとに戦略目標を置き、戦略マップで因果の矢印をつなぐ
- 戦略目標ごとに指標(KPI)を1〜2個選ぶ
- 指標ごとに目標値と期限を決める
- 目標値と現状の差を埋める施策(予算・担当者つき)を割り当て、定期レビューで見直す
手順2で目標が多すぎると、4視点の表がただの指標一覧になります。目標を絞る基準には、競合と差がつく要因だけを残すKFS(重要成功要因)の考え方が使えます。手順3の指標は、定義・計算式・データの出どころまで決めてから採用します。KPIそのものの定義や計算方法はKPIの意味と設定・計算方法の解説、目標値の書き方はSMARTの法則を参照してください。
記入例:部品メーカーの「納期短縮で重点顧客を維持する」戦略
説明用の架空の例です。以下の目標値はすべて次年度末を達成期限とし、重点顧客の継続率は「前年度の重点顧客のうち次年度も取引を継続した顧客数÷前年度の重点顧客数」で計算します。
| 視点 | 戦略目標 | 指標 | 目標値 | 施策 |
|---|---|---|---|---|
| 財務 | 重点顧客の売上拡大 | 重点顧客売上高 | 前年比110% | 重点顧客への提案会 |
| 顧客 | 納期で選ばれ続ける | 重点顧客の継続率 | 95%以上 | 納期回答の即日化 |
| 業務プロセス | 受注から出荷の短縮 | 平均リードタイム | 10日→7日 | 段取り替え時間の削減 |
| 学習と成長 | 多工程を担える人材 | 多能工の人数 | 各ライン2名以上 | 工程間ローテーション |
下の行が上の行の原因になっている点を確認してください。多能工化が段取り替え時間とリードタイムの短縮を促し、その改善が重点顧客の継続率を高める、という仮説の連鎖です。どこか1段の指標が改善しても上の段が動かなければ、その矢印の仮説を疑います。
KPI・KGI・OKR・MBOとの違いと併用の考え方
BSCはKPIやOKRと競合する手法ではなく、扱う範囲が違います。BSCは戦略全体を4視点の因果で設計する枠組みで、KPIはその中で使う個々の指標です。
| 手法 | 主な単位 | 扱う範囲 | BSCとの関係 |
|---|---|---|---|
| BSC | 全社・事業部 | 戦略目標の因果と指標 | 枠組み本体 |
| KGI・KPI | 指標 | 最終目標と中間指標 | BSCの「指標」列に入る |
| OKR | 全社・チーム・個人 | 目標と主要な成果 | 戦略上の重点目標を展開 |
| MBO | 個人 | 目標設定と人事評価 | BSC目標を個人に展開 |
KGIとKPIの関係やKPIツリーの作り方はKGI・KPIの違いとKPIツリー・OKRとの使い分けで詳しく解説しています。OKRはOKRの基本的な意味と概念、個人評価との結びつけ方はMBO(目標管理制度)の目標例と評価への反映で扱っています。
併用するときの注意点は、BSCの目標を個人のMBOへ展開する際に報酬と直結させすぎないことです。次章のとおり、キャプランは報酬制度の変更を主目的にしたBSC導入を失敗の典型に挙げています。
BSC導入が失敗する原因と、採用しないほうがよい場面
キャプランが挙げた失敗の根本原因は経営トップの不在
キャプランは、初期に導入したロックウォーター、FMC、モービル、ケミカル・バンク、シグナ損害保険、AT&Tカナダ、ウェルズ・ファーゴ・オンライン・サービス、シャーロット市には優れたリーダーがいたと振り返っています。そのうえで、BSCが失敗した組織の原因は、戦略マップやスコアカードの設計の欠陥ではなく、経営トップのリーダーシップの欠如にたどれることが多かったと述べています。
失敗は、次のような導入のされ方で起きていました。
- スタッフ部門や機能部門の役員が、事業部トップの黙認はあっても主導なしに導入した
- 導入目的が戦略の実行ではなく、報酬制度の変更だった
- 品質管理の仕組みを補強するためだった
- 管理者が業務情報を見やすくする報告制度の変更だった
キャプランは、これらの目的はどれも妥当だが、どれ一つとして単独では組織を戦略実行に向けて変えられないと書いています。
戦略実行に必要な5原則と戦略管理室
キャプランとノートンは、2001年の書籍『The Strategy-Focused Organization』で、戦略実行を成功させる5つの原則をまとめました。
- 経営トップのリーダーシップで変革を起こす
- 戦略を現場の言葉に翻訳する
- 組織を戦略に整合させる
- 戦略を全員の日常業務にする
- 戦略を継続的なプロセスとして統治する
さらに2005年のHBR論文では、戦略マップの作成、組織への展開、戦略レビュー会議の運営を担う専任組織として「戦略管理室(Office of Strategy Management)」を提案しています。BSCの運用が経営企画の片手間になっているなら、まずこの役割を誰が担うかを決めます。
BSCを採用しないほうがよい場面
次の条件に当てはまる場合、BSCの導入は見送るか、範囲を絞るべきです。
- 社長や事業部長が自ら戦略マップの議論に参加しない(上記の失敗原因そのもの)
- 戦略が「売上を伸ばす」程度にしか言語化されておらず、誰を顧客に選ぶかが決まっていない
- 目的が人事評価の刷新だけである(まず評価基準やMBOの運用を見直し、OKRを人事評価制度の代替として扱わない)
- 指標のデータを毎月集める仕組みが無く、レビューが年1回しか開けない
小規模組織での開始案として、全社1枚の戦略マップと10個前後の指標を置き、四半期ごとに因果の仮説を検証する運用が考えられます。指標数とレビュー頻度は、集計負担と意思決定の周期に合わせて調整します。
医療・看護・行政でのBSC:ミッションを最上位に置く設計と医療安全の事例
BSCは民間企業向けに開発されましたが、早い段階で非営利・公的組織に広がりました。初期導入例にシャーロット市が含まれているのはそのためです。
キャプランは、非営利・公的組織では財務的な成功が主目的ではないため、財務目標を最上位に置く標準の戦略マップは使えないと説明しています。代わりに、貧困や疾病の削減、健康や教育の改善といった社会的な成果とミッションに関わる目標を最上位に置きます。社会的成果の改善は表れるまで何年もかかるため、他の視点の指標が年度ごとの管理に使う短中期の目標になります。顧客の視点も拡張し、資金を出す寄付者・納税者と、サービスを受ける市民・受益者の両方を戦略マップの最上位に置くとしています。
日本では医療分野での利用が目立ちます。清水孝氏の文献整理(医療バランスト・スコアカード研究、2022年)は、国内のBSC文献を企業、医療、政府自治体・大学、農業の各領域に分けて発表の推移を確認しています。看護部や病棟単位でBSCを作る実務書も出ています。企業が従業員の健康づくりを経営課題と結び付ける健康経営でも、戦略マップの考え方が使われています。具体的な書き方は健康経営戦略マップの書き方を解説した記事を参照してください。
具体例として、能代厚生医療センターは2015年からBSCを医療安全のマネジメントツールとして導入し、到達目標をQuality Indicatorとして設定しました。櫻庭・杉山(日本医療マネジメント学会雑誌、2018年)によると、独自の「危険度分類ABC」を作った結果、インシデント報告は814件増えて総数2,689件となり、患者への影響がないレベル0の報告は30.8%と、目標値の30%を上回りました。この事例では、報告件数とレベル0の報告割合を確認し、BSCとQIによる職員への周知が医療安全活動の促進に寄与したと著者らは考察しています。
BSCは古いのか:批判への回答と現在の位置づけ
BSCに対しては、ステークホルダー理論の立場から「サプライヤーの視点が無い」という批判があります。キャプランの回答は、サプライヤーが戦略に不可欠な企業ではサプライヤーの成果が業務プロセスの視点に入るので、独立した視点は要らない、というものです。視点の数や名前は固定ではなく、戦略に必要な対象を必要な視点に入れるのが原典の立場です。
もう一つの変化は、BSCの役割そのものです。キャプランは、同僚ロバート・サイモンズの「コントロールのレバー」の枠組みを使い、BSCは当初は業績を点検する診断型の仕組みとして構想されたが、戦略管理システムへ発展したことで、経営陣が繰り返し議題にする対話型の仕組みに変わったと説明しています。
指標を並べた表として使うなら、BSCは古い手法に見えます。戦略の仮説を因果の図に書き、毎月のレビューで仮説を検証する仕組みとして使うなら、OKRやKPIツリーと役割を分けて併用できます。評価を分けるのは道具の新旧ではなく、仮説検証の場として運用しているかどうかです。
よくある質問
BSCとは何の略ですか?
経営管理の文脈でのBSCは、Balanced Scorecard(バランスト・スコアカード)の略です。日本語では「バランススコアカード」「バランスト・スコアカード」の両方の表記が使われ、同じものを指します。財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの視点で戦略目標と指標を管理する手法で、1992年にキャプランとノートンがHarvard Business Reviewの論文で発表しました。
医療用語のBSCとは何ですか?
がん医療でカルテや説明の場に出てくるBSCは、Best Supportive Care(ベストサポーティブケア)の略です。がんそのものに対する積極的な治療を行わず、痛みなどの症状を和らげて生活の質を保つことを中心にした方針を指し、「BSC方針」のように使われます。経営手法のバランススコアカードとは別の用語です。一方、病院経営や看護管理の文脈で「BSC」と書かれている場合は、バランススコアカードを指すことが一般的です。
バランススコアシートやBSCカードは同じものですか?
「バランススコアシート」「BSCカード」「BSCシート」という呼び方を見かけた場合は、経営管理のBalanced Scorecardを指しているか、資料の定義を確認してください。原語はBalanced Scorecardで、日本語では「バランスト・スコアカード」や「バランススコアカード」と表記されます。社内で配布する記入用紙を「BSCシート」と呼ぶ組織もありますが、記入項目は組織や資料によって異なるため、本記事で示した4つの視点と目標・指標・目標値・施策の構成に照らして確認します。
バランススコアカードの4つの視点とは何ですか?
財務の視点、顧客の視点、業務プロセス(内部ビジネスプロセス)の視点、学習と成長の視点の4つです。原典では財務の成果を最終目標に置き、学習と成長が業務プロセスを改善し、業務プロセスが顧客の評価を高め、顧客の評価が財務成果につながるという因果の順に並べます。非営利組織や行政では、財務の代わりにミッションや社会的な成果を最上位に置きます。
BSCとOKRはどちらを使えばよいですか?
目的で使い分けます。BSCは全社や事業部の戦略を4視点の因果で設計し、中長期で追う枠組みです。OKRは全社・チーム・個人の目標と主要な成果を結び付ける仕組みで、年度や四半期などの周期で運用します。戦略そのものが言語化されていない段階ならBSCの戦略マップから始め、戦略マップの重点目標をOKRの「目標」に落として四半期で回す、という併用が無理のない組み合わせです。