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新経済連盟の2026年度税制改正提言とは?令和8年度大綱で実現した項目と2027年度提言の論点

新経済連盟の2026年度税制改正提言とは?令和8年度大綱で実現した項目と2027年度提言の論点

新経済連盟(新経連)は2025年9月10日に「2026年度税制改正提言」を公表し、法人実効税率を20%程度へ、所得税・住民税の最高税率を40%程度へ引き下げることを柱に、暗号資産の分離課税やAI・研究開発への税制支援を求めました。同年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱では、暗号資産の20%分離課税や研究開発税制の「戦略技術領域型」など個別の要望が多く採用された一方、税率の引下げは盛り込まれず、高所得者への追加課税はむしろ強化されています。この記事では、提言の中身を大綱と項目ごとに突き合わせ、2026年9月11日に公表された2027年度提言で何が変わったかまで整理します。

まとめ:新経連の2026年度税制改正提言と大綱の要点

  • 提言の柱:「税率を引き下げて日本経済活性化を促し、税収を増やして再び国内投資へ」を基本に、国内投資の促進/スタートアップ支援・生産性向上/国内産業の競争力強化の3本柱で構成。
  • 大綱で実現:暗号資産の申告分離課税(所得税15%+住民税5%)と3年の損失繰越、研究開発税制の戦略技術領域型(控除率40%)、大胆な設備投資促進税制、少額減価償却資産の40万円未満への引上げ、食事支給で非課税となる使用者負担の上限を月7,500円へ引上げなど。
  • 見送り・逆方向:法人税・所得税・相続税の税率引下げは無し。極めて高い所得への追加課税は特別控除額の1億6,500万円への引下げと税率30%で強化され、賃上げ促進税制の大企業向け措置は2025年度末で廃止。
  • 暗号資産の適用開始:改正金融商品取引法の施行日が属する年の翌年1月1日以後の譲渡から。施行日は政令で定めるため、開始年は施行日の確定を待つ必要があります。
  • 2027年度提言:ミニマムタックス(極めて高い所得への追加課税)の撤廃を筆頭に掲げ、3本目の柱を「経済情勢の変化に対応した税制のアップデート」に組み替えました。

以下、提言の各項目を確認したうえで、大綱との対照表と2027年度提言の変更点を順に見ていきます。

提言の基本方針と税率引下げの数値目標

新経連は、楽天グループの三木谷浩史氏が代表理事を務める経済団体で、IT・スタートアップ系の企業が多く加盟しています。2026年度提言は全70ページで、本体は「国内投資の促進」「スタートアップ支援/生産性向上」「国内産業の競争力強化」の3章、残りは各国比較などの付録です。

「税と成長の好循環」と3本柱の役割

提言の冒頭は、税率を下げて国内外から投資を呼び込み、経済が伸びて増えた税収を再び国内投資に回すという循環を描いています。3本柱の役割は次のとおりです。

柱 狙い 主な項目
1 国内投資の促進 投資の呼び込み・仮想経済型の産業振興 税率引下げ、AI、研究開発税制
2 スタートアップ支援/生産性向上 イノベーションと生産性の底上げ エンジェル税制、SO、スマート青色申告
3 国内産業の競争力強化 海外企業との条件格差の是正 グループ通算、越境課税、暗号資産

法人税・所得税・相続税で示した具体的な水準

税率については数値の目標が示されています。法人実効税率は当時の29.74%から20%程度へ、所得税と住民税を合わせた最高税率は55%から40%程度へ引き下げ、相続税率も引き下げるべきとしました。2025年分から始まった「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」も、挑戦への負のメッセージになるとして撤廃を求めています。提言はこの措置の対象を「合計所得金額が約30億円超」と説明していますが、実際に追加税が生じるかは基準所得金額と基準所得税額による計算で決まります。

あわせて、法人税と配当課税の二重課税をオーストラリアやニュージーランドの「インピュテーション方式」で調整する案、金融所得課税の強化への反対も盛り込まれました。減税で不足する財源は、行政の効率化と歳出削減を前提に「消費税率の見直しの是非を検討すべき」という書き方にとどめています。

国内投資の柱:AI・研究開発・ソフトウェア投資の要望

1本目の柱で分量が最も多いのが、AIと研究開発の税制です。提言は、AIを研究開発税制の「戦略技術領域」に位置づけ、試験研究費を増やした企業の税額控除率を最大14%から50%程度へ引き上げるよう求めました。AI関連のソフトウェア投資には、取得価額の200%程度まで減価償却を認める「ハイパー償却税制」を提案しています(2019年度までイタリアで170%の例があると付記)。

研究開発税制の運用面では、次の3点が中心です。

  • 「専ら」要件の撤廃:研究専従者の人件費しか試験研究費に入れられない要件は、開発と運用が一体のDevOps型の現場に合わないため、従事時間の人工(にんく)按分で計上できるようにする。
  • 繰越・還付付き税額控除:控除しきれない額の繰越制度を設け、赤字が続く企業には現金還付も認める(OECDの第二の柱モデルルールを参照)。
  • ソフトウェアの区分見直し:クラウド提供のソフトウェアが税務上「自社利用」に区分される扱いを改め、会計上費用処理した制作費は損金算入を認める。

このほか、中小企業の少額減価償却資産の基準額引上げ、従業員への食事支給の非課税上限(月3,500円)の引上げ、交際費の定額控除限度額(800万円)の引上げなど、物価上昇で実質的な増税になっている閾値の見直しも「税制のインフレ対応」としてまとめられています。

スタートアップ支援の柱:エンジェル税制・SO・青色申告

2本目の柱は、上場までの期間が長くなっているスタートアップへの資金供給と、中小企業の記帳のデジタル化が主題です。

制度 提言の内容
エンジェル税制 対象企業の設立年数要件を15年未満まで延長
オープンイノベーション促進税制 所得控除25%→50%、恒久化、吸収合併等も対象に
ストックオプション税制 権利行使価額の年間限度額を撤廃
株式報酬(RS・RSU) 権利確定時に給与課税せず売却時の譲渡課税のみとする企業ごとの選択制
スマート青色申告 デジタル記帳・電子申告にインセンティブ付きの新区分

ストックオプションは、手元資金の少ないスタートアップが人材を採る手段として位置づけられています。現行の税制適格要件の考え方は税制適格ストックオプションとセーフハーバールールの解説で整理しています。

働き方の面では、長期勤続ほど有利になる退職所得課税の見直しや配偶者控除など「年収の壁」の撤廃、リカレント教育への税額控除、高度外国人材への税制優遇も挙げられています。

競争力強化の柱:グループ通算・越境課税・暗号資産

グループ通算制度の対象拡大

グループ通算制度は100%の支配関係がある法人だけが対象で、法人住民税・法人事業税には適用されません。提言は対象を米国並みの80%以上の支配関係に広げ、地方の法人課税にもグループ全体で通算した所得を使うよう求めました。AI開発での合弁会社設立や事業のカーブアウト時に、赤字が出る段階で税務上の不利が生じる点を理由に挙げています。

海外デジタルプラットフォームと少額輸入貨物への課税

越境経済への対応では、海外デジタルプラットフォームが日本法人から海外親会社へのロイヤルティ支払いで国内の税負担を減らしているとの指摘を踏まえ、政府にタックスギャップ(本来の課税額と実際の課税額の差)の推計・公表と、一定の事業者への決算・納税状況の開示義務化を求めました。消費税では、課税価格1万円以下の少額輸入貨物の免税と、個人輸入の課税価格を小売価格の6割とする扱いによって、国内事業者が価格面で不利になっている点の見直しを要望しています。

暗号資産の分離課税と損失繰越

暗号資産については、取引の利益を申告分離課税(一律20%)とし、損失を暗号資産の所得から繰越控除できるようにすることを「早急に実施すべき」と書いています。デリバティブ取引の分離課税、相続税評価で相続開始日の時価と過去3か月の月平均のうち最も低い額を選べるようにすること、暗号資産同士の交換時ではなく法定通貨に換えた時点でまとめて課税すること、暗号資産による寄附を阻害しない扱いも含まれます。

令和8年度税制改正大綱に反映された項目と見送られた項目

2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱と、提言の主な項目を対照すると次のようになります。新経連自身も2026年3月に公表した「政策提言実績」資料で、暗号資産、研究開発税制、少額減価償却資産などを反映された項目として挙げています。

出典:新経済連盟「2026年度税制改正提言」「2024年以降の政策提言実績」、財務省「令和8年度税制改正の大綱」

提言 令和8年度大綱の措置 結果
暗号資産の分離課税20% 所得税15%+住民税5%、損失3年繰越 実現
AIの戦略技術領域化 戦略技術領域型を創設(控除率40%) 実現
研究開発税制の繰越控除 戦略技術領域型等で3年繰越 一部実現
大胆な国内投資税制 即時償却か税額控除7%の選択制 実現
少額減価償却資産の基準引上げ 30万円未満→40万円未満 実現
食事支給の使用者負担上限引上げ 月3,500円→7,500円(税抜) 実現
少額輸入貨物の免税見直し 物品販売のPF課税を新設(2028年4月) 実現
スマート青色申告 一定の電子帳簿で控除75万円枠 一部実現
オープンイノベーション税制50%・恒久化 2年延長と対象行為の追加 一部実現
法人・所得・相続税率の引下げ 措置なし 見送り
極めて高い所得への追加課税の撤廃 特別控除1.65億円・税率30%へ強化 逆方向
賃上げ促進税制の繰越拡大 大企業向けを2025年度末で廃止 逆方向

暗号資産・研究開発・設備投資・越境ECの改正内容と適用時期

暗号資産は、登録業者を通じて譲渡した「特定暗号資産」の譲渡所得等を他の所得と分離し、20%(所得税15%・個人住民税5%)で課税します。控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せます。適用開始は「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」以後の譲渡で、改正金融商品取引法は2026年7月に公布、施行日は政令で定められます。施行が2027年中であれば分離課税は2028年1月1日からになるため、この想定では、2026年・2027年分の取引による所得は従来どおり原則として総合課税の雑所得となりますが、事業所得等に区分される場合もあります。現行の経費の範囲は仮想通貨(暗号資産)の経費の解説、分離課税の仕組みは申告分離課税の対象となる所得の解説を参照してください。

研究開発税制の戦略技術領域型は、AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙の6分野が対象です。認定計画に基づく試験研究費の40%(認定研究開発機関との共同・委託研究は50%)を、既存措置とは別枠で法人税額の10%まで控除でき、控除限度超過額は3年間繰り越せます。ただし、繰越税額控除を使えるのは、その事業年度の試験研究費が前期を上回る場合です。提言が求めた「AIを戦略技術領域に」「控除率50%」にかなり近い形です。

大胆な設備投資促進税制は、産業競争力強化法の確認を受けた計画に基づく投資額35億円以上(中小企業者等は5億円以上)、投資利益率(ROI)15%以上の設備投資が対象で、即時償却か税額控除7%(建物等は4%、上限は法人税額の20%)を選べます。財務省の試算では平年度4,100億円の減収で、今回の法人課税の減税項目では最大です。中小企業のソフトウェア投資で使える既存制度との違いは中小企業経営強化税制の解説で比較できます。少額減価償却資産の40万円未満への引上げは少額減価償却資産の40万円特例の解説で扱っています。

越境ECについては、少額輸入貨物の販売者に消費税の納税義務を課し、それをプラットフォーム事業者に転換する物品販売のプラットフォーム課税が新設され、2028年4月1日から適用されます。提言が求めた「国内事業者とのイコールフッティング」に沿う改正です。

食事支給の7,500円は食事の価額ではなく使用者が負担する額(税抜)の上限で、非課税になるには役員や従業員が食事の価額の半分以上を負担していることも必要です。

税率引下げの見送り・高所得者課税の強化・賃上げ税制の縮小

提言の中心だった税率の引下げは、どの税目でも採用されていません。法人課税では、2026年4月1日以後に開始する事業年度から防衛特別法人税が課税され、方向は逆です。新経連の2027年度提言は、現在の法人実効税率を30.64%と記載しています。

撤廃を求めた高所得者への追加課税(特定の基準所得金額の課税の特例)は、令和9年分から、基準所得金額から差し引く特別控除額を3億3,000万円から1億6,500万円へ引き下げ、計算に用いる税率を22.5%から30%へ引き上げる改正になりました。追加納税が生じるかは、計算額と基準所得税額の比較で決まります。財務省は、現行分と合わせて平年度4,000億円の増収を見込んでいます。

賃上げ促進税制は、提言が大法人・中堅法人にも控除限度超過額の繰越を認めるよう求めたのに対し、大企業向け措置を令和7年度末で廃止し、教育訓練費の上乗せ措置も同時に廃止しました。中堅企業向けも適用期限(令和8年度末)をもって廃止されます。

2027年度税制改正提言で変わった論点

新経連は2026年9月11日に「2027年度税制改正提言」(全80ページ)を公表しました。基本的な考え方は前年と同じですが、3本柱の構成と優先順位が変わっています。

  • 柱の組み替え:「国内投資と競争の促進」「スタートアップ支援/生産性向上」「経済情勢の変化に対応した税制のアップデート」の3本に再編。暗号資産、越境経済、インフレ対応は3本目にまとまりました。
  • ミニマムタックス撤廃が筆頭:令和8年度大綱で強化された追加課税を、具体策の最初に置いて撤廃を要求。撤廃が難しい場合はスタートアップへの投資額や寄附金控除相当額を課税所得から差し引くよう求めています。
  • 相続税は「撤廃に向け検討」:前年の「税率引下げ」から一段踏み込みました。食料品の消費税減税には反対と明記しています。
  • 研究開発税制は評価に転換:AI分野などが戦略技術領域に位置づけられたことを「高く評価できる」としたうえで、赤字企業でも使える予見可能性の高い制度への改善を求めています。
  • 暗号資産は対象範囲へ:大綱の分離課税は登録業者を通じた譲渡が対象のため、個人間で直接行った取引も20%分離課税の対象にするよう求めています。相続税評価、交換時の課税、寄附税制の要望は前年から継続です。

税制改正提言と成立法令の違い・実務判断の基準

新経連の提言は経済団体の要望書であり、決定した税制ではありません。毎年9月前後に各団体・各省庁の要望が出そろい、12月に与党の大綱がまとまり、翌年の通常国会で税制改正法案が成立して初めて制度になります。実務では成立・公布された法令、施行日、適用要件を確認します。大綱は改正方針を、提言は「次に何が議論されそうか」を読む材料です。

特に、提言の「減税すれば成長で税収が増える」という主張は新経連の立場であり、政府の見積もりとは別物です。財務省は大綱ごとに税目別の増減収見込額を公表しており、令和8年度改正では大胆な設備投資促進税制で平年度4,100億円の減収、賃上げ促進税制の見直しで6,750億円の増収と試算しています。減税の効果を語るなら、この公式の見積もりと並べて読むのが筋です。

暗号資産の分離課税を前提に、利益確定のタイミングを決めるのは避けるべき場面です。適用開始日は改正金融商品取引法の施行日に連動し、施行日を定める政令がまだ出ていない段階では、開始年を断定できません。2026年分の申告は現行の総合課税で計算し、施行日が公布された時点で計画を見直す順番が安全です。

新経連の税制改正提言に関するよくある質問

新経済連盟の2026年度税制改正提言はいつ公表されましたか?

2025年9月10日です。2027年度の提言は2026年9月11日に公表されています。いずれも新経済連盟の公式サイトで全文のPDFが公開されています。

暗号資産の20%分離課税はいつから始まりますか?

改正金融商品取引法の施行日が属する年の翌年1月1日以後の譲渡から適用されます。施行日は政令で定めるため、2026年10月時点では開始年は確定していません。施行が2027年中なら2028年1月1日からです。

2026年度の税制改正で法人税率は下がりましたか?

下がっていません。令和8年度大綱に法人税率の引下げは無く、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税が加わります。新経連は2027年度提言でも法人実効税率を20%程度へ引き下げるよう求めています。

新経連の提言のうち大綱で実現したものは何ですか?

暗号資産の申告分離課税と3年の損失繰越、研究開発税制の戦略技術領域型、大胆な設備投資促進税制、少額減価償却資産の40万円未満への引上げ、食事支給で非課税となる使用者負担の上限の月7,500円への引上げなどです。税率の引下げは実現していません。

2027年度税制改正提言の一番の論点は何ですか?

極めて高い所得への追加課税(ミニマムタックス)の撤廃です。令和8年度大綱で特別控除額が1億6,500万円に下がり、税率が30%に上がったことを受け、具体策の最初に置かれています。

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