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ストックオプションと新株予約権の関係から押さえる会社法上の基本的な位置づけ

目次

ストックオプションと新株予約権の関係から押さえる会社法上の基本的な位置づけ

ストックオプションの発行手続きを正しく理解するには、まず会社法上の位置づけを押さえる必要があります。本章では、新株予約権との関係や報酬規制との関わりなど、手続き全体の前提となる基本事項を整理します。

会社法238条が定める新株予約権としてのストックオプションの法的性質

ストックオプションは、会社法上は新株予約権として位置づけられます。新株予約権とは、あらかじめ定められた価額を払い込むことで、会社から株式の交付を受けられる権利のことです。会社法238条以下に募集新株予約権の発行手続きが定められており、役員や従業員へのインセンティブ目的で付与される新株予約権が、一般にストックオプションと呼ばれています。つまりストックオプションという独立した制度が会社法に存在するわけではありません。

このため、発行にあたっては新株予約権の発行手続きをそのまま踏むことになります。具体的には、募集事項の決定、引受けの申込みと割当て、新株予約権原簿への記載、登記という流れです。インセンティブ目的だからといって手続きが簡略化されることはなく、決議機関や決議要件も通常の新株予約権と同じ基準で判断されます。この前提を誤ると、後述する有利発行規制や登記義務への対応を見落とす原因になるため注意が必要です。

無償発行と有償発行で異なる取扱いと役員報酬規制との関係を整理する視点

ストックオプションには、付与対象者から金銭の払込みを受けない無償発行と、オプションの公正価値に相当する払込みを受ける有償発行の2つの構成があります。無償発行は従業員や役員への報酬として位置づけられることが多く、税務上は給与課税の対象となり得ます。一方の有償発行は、対象者が自己資金でオプションを購入する投資としての性格を持つため、報酬規制の枠外で設計しやすい点が特徴です。

役員に無償でストックオプションを付与する場合、それは職務執行の対価すなわち報酬等に該当します。そのため会社法361条に基づく報酬決議が別途必要になるのです。従業員への付与であれば報酬規制は適用されませんが、発行手続き自体は同様に必要となります。無償か有償か、対象者が役員か従業員かという2つの軸で必要な決議を整理しておくと、手続きの抜け漏れを防ぎやすくなるでしょう。近年は権利確定条件を付した有償構成を採用する上場会社も増えており、自社の資本政策と付与目的に合う構成を最初の段階で固めておくことが重要です。

通常の新株予約権とストックオプションを区別する付与対象者の判断基準

法律上は同じ新株予約権であっても、誰に付与するかによって実務上の論点は大きく変わります。一般に、自社や子会社の取締役、執行役、従業員に対してインセンティブ目的で付与するものがストックオプションと呼ばれます。これに対し、投資家や金融機関に資金調達目的で発行する新株予約権は、ストックオプションとは区別して扱われるのが通常です。社外の協力者や顧問に付与するケースもありますが、この場合は後述する税制適格の要件を満たせない点に注意してください。

付与対象者の判断基準として重要なのは、会社との間に委任契約または雇用契約があるかどうかという点です。取締役であれば報酬決議の要否、従業員であれば労働条件との関係、社外協力者であれば税制上の取扱いと、対象者の属性ごとに検討事項が異なります。発行手続きに入る前に、付与対象者のリストを作成し、属性ごとに必要な決議と契約を整理しておくことが実務上の出発点となります。対象者が混在する場合は、属性別に付与契約のひな形を分けて管理すると確認が容易になるはずです。

令和元年会社法改正で導入された取締役報酬規制が手続きに与える影響

令和元年の会社法改正により、取締役の報酬としてストックオプションを付与する場合の規律が明確化されました。改正後の会社法361条1項では、報酬等のうち当該株式会社の新株予約権については、その数の上限その他法務省令で定める事項を定款または株主総会決議で定めることが求められています。つまり役員向けの無償ストックオプションでは、新株予約権の発行決議とは別に、報酬としての内容を定める決議が必要になるのです。

さらに上場会社では、改正により取締役への株式報酬について払込みを要しない発行が可能となりました。これにより、いわゆる無償交付型の株式報酬の設計の幅が広がっています。非上場のスタートアップには直接の影響が小さい改正項目もありますが、報酬決議と発行決議の関係はすべての株式会社に共通する論点です。改正前の書式や議事録のひな形をそのまま流用すると、決議事項に不足が生じるおそれがあるため見直しをおすすめします。

スタートアップ実務で多い信託型や株式報酬型など類型ごとの手続き上の違い

ストックオプションと一口に言っても、実務ではいくつかの類型が使い分けられています。代表的なのは、税制適格要件を満たす税制適格ストックオプション、公正価値で発行する有償ストックオプション、信託を通じて配分する信託型ストックオプションの3つです。いずれも会社法上は新株予約権の発行であり、基本的な手続きの骨格は共通しています。ただし、信託型では受託者への割当てや信託契約の締結など追加の法律関係が発生する点が異なります。

また、信託型については令和5年に国税庁が給与課税の対象となる見解を示したことで、税務上の前提が大きく変わりました。これから導入する場合は、最新の課税関係を確認したうえで類型を選択する必要があります。どの類型でも株主総会または取締役会での募集事項の決定と登記は避けて通れません。類型ごとの違いは主に契約設計と税務にあり、会社法上の手続きの厳格さは変わらないと理解しておくとよいでしょう。

株主総会決議から割当てまで会社法が定めるストックオプション発行手続きの全体像

ここからは、実際の発行手続きを時系列で確認します。募集事項の決定から割当て、契約締結までの流れを把握すれば、自社のスケジュールに落とし込みやすくなります。

募集事項の決定から割当てまで標準的な発行手続き5つのステップの流れ

ストックオプションの発行は、会社法が定める募集新株予約権の手続きに沿って進めます。標準的な流れは次の5つのステップに整理できます。

  1. 株主総会または取締役会で募集事項を決定する
  2. 付与対象者に募集事項を通知し引受けの申込みを受ける
  3. 割当決議を行い割当てを受ける者と個数を確定する
  4. 付与対象者と新株予約権割当契約を締結する
  5. 割当日から2週間以内に変更登記を申請する

非公開会社では原則として株主総会の特別決議が必要となるため、総会の招集手続きから逆算すると全体で1か月程度を見込むのが現実的です。役員に無償で付与する場合は、これに報酬決議が加わります。各ステップで作成する議事録や契約書は登記の添付書類にもなるため、最初に全体像を把握してから着手することで手戻りを防げるでしょう。なお総数引受契約を用いる場合は申込みと割当ての手続きを省略できます。決議から登記までの担当者と期限を一覧化した工程表を最初に作成し、各書類の作成状況を都度更新していくと進捗管理がしやすくなります。割当日と登記期限の関係も同じ表で管理すれば、期限徒過の予防にも役立つでしょう。

会社法238条1項で決定が必要な募集事項7項目の具体的な内容

発行手続きの中核となるのが募集事項の決定です。会社法238条1項では、次の事項を定めることが求められています。

  • 募集新株予約権の内容および数
  • 無償発行とする場合はその旨
  • 有償発行の場合は払込金額またはその算定方法
  • 割当日
  • 払込期日を定める場合はその期日
  • 新株予約権付社債に関する事項(該当する場合)
  • 社債に付された新株予約権の買取請求に関する事項(該当する場合)

このうち「新株予約権の内容」には、目的となる株式の数、行使価額、行使期間、譲渡制限、取得条項などが含まれます。実務ではこの内容部分が最も分量が多く、税制適格要件やベスティング条件もここに反映させることになるのです。決議の段階で内容に漏れがあると、契約書や登記とも不整合が生じます。議案を作成する際は、7項目を網羅したチェックリストを用いて確認することをおすすめします。とくに行使条件や取得条項は記載が長文化しやすく、別紙として発行要項を添付する形式も実務では珍しくありません。別紙方式とする場合も、決議の対象であることが議事録上明確になるよう引用方法を統一しておくべきでしょう。

申込みと割当て方式と総数引受契約方式を選択する際の実務上の比較ポイント

募集事項の決定後の手続きには、申込みと割当てを経る原則的な方式と、総数引受契約による簡略な方式の2つがあります。両者の違いは次のとおりです。

比較項目 申込み・割当て方式 総数引受契約方式
会社法上の根拠 242条・243条 244条
通知・申込手続き 必要 不要
割当決議 必要 契約承認決議で代替
適した場面 付与対象者が多数の場合 対象者が少数で確定済みの場合

総数引受契約方式は、引受人全員と1つの契約を結ぶことで申込みと割当ての手続きを省略できるため、付与対象者が数名程度のスタートアップでは広く利用されています。ただし譲渡制限新株予約権を総数引受契約で発行する場合には、契約について株主総会または取締役会の承認が必要です。対象者が多数にのぼる場合や付与の諾否が未確定の場合は、原則どおり申込みと割当てを経る方式が適しているでしょう。なお総数引受契約書も登記の添付書類となるため、契約締結日と割当日の前後関係に矛盾がないかを提出前に確認してください。どちらの方式でも、決議された募集事項と書面の記載内容の一致が手続き全体の生命線となります。

付与対象者との新株予約権割当契約書に盛り込むべき必須条項の実務例

割当てが確定したら、会社と付与対象者との間で新株予約権割当契約を締結します。契約書には募集事項で定めた内容を正確に反映させることが大前提です。実務でとくに重要なのは、行使価額と行使期間、譲渡禁止条項、退職時の取扱い、行使条件の4点になります。たとえば「権利行使時まで継続して取締役または従業員の地位にあること」という行使条件は、退職者によるオプション保持を防ぐ標準的な条項です。

また、税制適格を目指す場合には、譲渡禁止と年間行使価額の制限などの要件を契約書に明記しなければなりません。M&Aや株式分割が生じた場合の調整条項、会社による取得条項も忘れずに盛り込みます。契約書の文言が決議内容と食い違っていると、登記や税務調査の場面で問題が表面化しかねません。ひな形を流用する場合でも、自社の決議内容と1条ずつ突き合わせて確認する作業が欠かせないのです。弁護士のレビューを受ける場合も、決議書類一式を渡して整合性まで確認してもらうと安心でしょう。電子契約で締結する際は締結日付の管理にも注意が必要です。

払込期日の設定と無償発行時に払込みが不要となる条件の確認手順

有償ストックオプションでは、引受人は割当日または別途定めた払込期日までに、払込金額の全額を払い込む必要があります。払込みがなければ新株予約権を行使できず、設計によっては権利自体が失効します。払込期日を割当日と同日にするか、別日にするかは資金移動のスケジュールに合わせて決定してください。払込先口座の準備や入金確認の体制も、決議前に整えておくと手続きが滞りません。

一方、無償発行の場合は払込み自体が不要です。ただし無償で発行できるのは、募集事項において「金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨」を明示的に決議した場合に限られます。この記載を欠いたまま無償構成で進めると、決議と実態の不一致が生じるおそれがあるのです。確認手順としては、議事録の募集事項に無償の旨が明記されているか、契約書の記載と一致しているか、登記申請書類に正しく反映されているかを順に点検するとよいでしょう。点検結果はチェックリストに記録し、登記申請の担当者へ引き継ぐ運用にしておくと、書類間の齟齬を早期に発見できます。

募集事項の決定で誤りやすい有利発行該当性と決議機関の判断基準

ストックオプション発行で最も判断を誤りやすいのが有利発行の論点です。該当性の判断基準と必要な決議を正しく理解しておきましょう。

有利発行に該当するかを分ける公正な払込金額の算定方法と判断基準

会社法238条3項は、払込金額が新株予約権を引き受ける者に特に有利な金額である場合、株主総会の特別決議を要すると定めています。判断の基準となるのは、新株予約権そのものの公正な価値です。株式の時価ではなく、オプションとしての理論価値と払込金額を比較する点がポイントになります。公正価値を大きく下回る払込金額で発行すれば、既存株主の持分が希釈化されるため、厳格な決議が求められるのです。

公正な価値の算定では、株価、行使価額、行使期間、ボラティリティなどの要素が考慮されます。非上場会社では株価自体の評価も必要となるため、算定の客観性を確保することが容易ではありません。実務では、第三者評価機関による算定書を取得し、払込金額の合理性を裏づける方法が定着しています。有利発行に該当するか微妙なケースでは、あえて特別決議を取得しておくという保守的な対応も選択肢となるでしょう。算定書の取得には2週間から1か月程度かかることが多いため、決議日から逆算して早めに評価機関へ打診しておくべきです。

無償構成と有償構成それぞれで有利発行と判断されるケースの比較整理

有利発行の判断は、無償構成か有償構成かで考え方が異なります。両者の整理は次のとおりです。

構成 有利発行と判断されるケース 実務上の一般的な整理
無償構成 職務執行の対価性がなく無償で交付する場合 報酬等として相当であれば有利発行に当たらないとする見解が有力
有償構成 払込金額がオプションの公正価値を下回る場合 第三者評価による公正価値で発行すれば有利発行を回避可能

無償構成のストックオプションは、役員や従業員の職務執行の対価として付与されるため、対価性が認められる限り有利発行には該当しないという整理が実務では広く採用されています。ただし非公開会社では、そもそも募集事項の決定に株主総会特別決議が必要なため、有利発行該当性を厳密に切り分ける実益は限定的です。一方、有償構成では払込金額が公正価値に達しているかが直接問われます。評価の根拠資料を残しておくことが、後日の紛争予防につながるのです。構成の選択に迷う場合は、付与目的と対象者の資金負担力を起点に検討し、税務上の取扱いまで含めて総合的に判断するとよいでしょう。

有利発行に必要な株主総会特別決議と取締役の説明義務の具体的内容

有利発行に該当する場合、公開会社であっても取締役会決議だけでは発行できず、株主総会の特別決議が必要になります。特別決議の要件は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得ることです。定款で定足数を3分の1まで緩和している会社もあるため、自社の定款規定を事前に確認しておきましょう。

さらに会社法238条3項は、取締役に対し、株主総会で有利な金額により募集を行うことを必要とする理由を説明する義務を課しています。説明内容としては、付与の目的、対象者の貢献度、希釈化の程度、払込金額の算定根拠などが挙げられます。この説明が不十分なまま決議を経ると、決議方法の法令違反として決議取消事由になり得るのです。議事録には説明の要旨を具体的に記録し、株主からの質疑があった場合はその応答も残しておくことが望ましい対応となります。説明資料として評価機関の算定書の要約を添付すれば、株主の理解も得やすくなるはずです。総会後の問い合わせに備えて根拠資料一式を保管しておきましょう。

オプション評価でブラックショールズモデルを用いる場合の算定実務例

有償ストックオプションの公正価値算定では、ブラックショールズモデルや二項モデル、モンテカルロシミュレーションといったオプション評価モデルが用いられます。ブラックショールズモデルは、株価、行使価額、満期までの期間、ボラティリティ、無リスク金利、配当利回りの6つの変数から理論価値を導く手法です。上場会社であれば市場株価とヒストリカルボラティリティを利用できるため、比較的算定しやすいといえます。

非上場のスタートアップでは、まず株式価値そのものをDCF法や類似会社比較法で評価し、そのうえでオプション価値を算定する2段階の作業が必要です。業績条件付きの有償ストックオプションでは、条件達成の確率を織り込むためモンテカルロシミュレーションが採用される例が多くみられます。算定実務は高度に専門的であり、自社のみで完結させることは現実的ではありません。評価機関への依頼費用は数十万円からが目安となるため、発行スケジュールと予算に組み込んでおきましょう。

有利発行の判断を誤った場合に生じる決議取消しなど失敗パターンの整理

有利発行に該当するにもかかわらず特別決議を経ずに発行した場合、いくつかの法的リスクが現実化します。まず、株主は新株予約権発行の差止めを請求できます。発行後であっても、非公開会社では発行無効の訴えによって発行自体が覆されるおそれがあるのです。また、公正な払込金額との差額について、取締役が会社に対する損害賠償責任を追及される可能性も否定できません。

実務でみられる失敗パターンとしては、株式の時価と行使価額だけを比較してオプション価値の評価を省略したケース、無償構成であることを理由に決議要件の検討自体を怠ったケース、過去の発行例を踏襲して算定根拠を更新しなかったケースが典型です。とくに資金調達の直後は株式価値が上昇しているため、以前と同じ条件での発行が有利発行に転化しやすくなります。発行のたびに最新の株価評価を取得し、判断の根拠を文書で残すことが失敗を防ぐ基本動作といえるでしょう。判断に迷った時点で弁護士へ相談すれば、特別決議の要否を早期に確定でき、後工程の手戻りや再決議のコストを防げます。

公開会社と非公開会社で異なる決議要件と取締役会への委任範囲の整理

どの機関の決議で発行できるかは、会社が公開会社か非公開会社かで大きく異なります。本章では決議要件と委任の仕組みを整理します。

非公開会社で原則となる株主総会特別決議と議決権3分の2の要件

発行する全株式に譲渡制限が付されている非公開会社では、募集新株予約権の募集事項は株主総会の特別決議で決定するのが原則です。スタートアップを含む中小企業の大半は非公開会社に該当するため、実務上はこのパターンが最も多くなります。特別決議の成立には、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席と、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

創業者が議決権の大半を保有している段階であれば、決議の成立自体は難しくありません。ただし、資金調達を重ねて投資家の持株比率が高まると、投資契約上の事前承諾条項とあわせて、総会決議の成立可能性を慎重に確認する必要が出てきます。また、株主全員の同意があれば書面決議によって総会の開催を省略することも可能です。株主数が少ない会社では、書面決議を活用してスケジュールを短縮する運用が広く行われています。書面決議では株主全員の同意書または電磁的記録による同意が必要となるため、株主名簿を最新の状態に保ち、連絡先を整備しておくことが前提条件になるでしょう。

公開会社で取締役会決議により発行できる範囲と有利発行となる例外

譲渡制限のない株式を発行できる公開会社では、募集事項の決定は原則として取締役会決議で足ります。これは、公開会社では資金調達の機動性が重視され、授権資本の枠内での発行が取締役会に委ねられているためです。上場会社がストックオプションを発行する場合、多くはこの枠組みを利用して取締役会決議のみで手続きを進めています。ただし役員への報酬としての付与であれば、報酬決議として株主総会の関与が別途必要になります。

例外となるのが有利発行の場合です。払込金額が特に有利な金額に当たるときは、公開会社であっても株主総会の特別決議を経なければなりません。このため上場会社の実務では、公正価値での有償発行とするか、報酬としての無償構成を採用することで、有利発行規制に抵触しない設計が選択されています。取締役会決議で進める場合でも、算定根拠となる評価書を取得し、有利発行に該当しないことを確認したうえで決議する運用が定着しているのです。

会社法239条に基づく取締役会への委任で定めるべき上限と1年の期限

非公開会社であっても、毎回株主総会を開くのは負担が大きいという場合には、会社法239条に基づき募集事項の決定を取締役会に委任できます。委任にあたっては、株主総会の特別決議で、委任に基づいて決定できる募集新株予約権の内容および数の上限と、払込金額の下限を定めなければなりません。無償発行とする場合には、その旨も委任決議で定める必要があります。

注意すべきは委任の有効期限です。この委任決議は、割当日が決議の日から1年以内の募集についてのみ効力を有します。つまり、総会で枠を設定しても、1年を経過すれば再度の決議が必要になるのです。実務では、定時株主総会で年間の発行枠を委任決議し、その枠内で取締役会が随時付与を決定する運用がみられます。委任枠の残数管理を怠ると、枠を超過した発行が無効リスクを抱えることになるため、付与のたびに残枠を記録する管理表を整備しておくと安全です。管理表には決議日、上限個数、払込金額の下限、付与済み個数を記載し、取締役会の議案資料へ毎回添付する運用が確実といえます。

取締役や監査役へ付与する場合に必要となる報酬決議との関係整理

取締役に無償でストックオプションを付与する場合、新株予約権の発行決議に加えて、会社法361条に基づく報酬等の決議が必要です。報酬決議では、付与する新株予約権の数の上限のほか、行使価額や行使期間など法務省令で定める事項を株主総会で定めます。既存の報酬枠が金銭報酬のみを想定している場合、その枠とは別に株式報酬としての決議を取得しなければなりません。

監査役に付与する場合も同様に、会社法387条に基づく監査役の報酬等の決議が必要となります。ただし監査役の独立性の観点から、業績連動性の強いストックオプションの付与には慎重な見解もあるため、付与の要否自体を検討すべきでしょう。実務の進め方としては、同一の株主総会で報酬決議と募集事項の決議をあわせて行うのが効率的です。議案を分けて上程し、それぞれの決議要件を満たすことを議事録上も明確にしておくことが、登記や後日の確認の場面で役立ちます。報酬決議の内容は事業報告での開示にも関わるため、決議文言は将来の開示実務まで見据えて整えておくと安心です。

株主総会の招集通知から決議までのスケジュールで失敗しやすい注意点

非公開会社の株主総会では、原則として開催日の1週間前までに招集通知を発する必要があります。取締役会非設置会社では定款でさらに短縮することも可能です。一方、書面または電磁的方法による議決権行使を認める場合は2週間前までの通知が必要となります。割当日から逆算すると、招集通知の発送、総会決議、契約締結、登記申請という工程をすべて収める必要があるため、最低でも3週間から1か月程度の準備期間を確保するのが安全です。

スケジュール面の失敗で多いのは、招集手続きの期間不足のまま総会を開催してしまうケースです。招集手続きの瑕疵は決議取消事由となり、発行の効力に影響しかねません。株主全員の同意があれば招集手続きを省略できるため、株主数が少ない会社では同意書を取得する方法が確実といえます。また、割当日を先に対外的に約束してしまい、決議が間に合わなくなる例も見受けられます。決議日から割当日までの順序が逆転しないよう、最初に全体工程表を作成して関係者と共有しておきましょう。

税制適格ストックオプションを目指す場合に発行手続きで注意すべき設計要件

発行手続きと並行して検討すべきなのが税制適格要件です。要件は契約書と募集事項に反映する必要があるため、決議前の設計段階で確認しておきましょう。

権利行使価額を付与時の株価以上とする税制適格要件と契約書への反映

税制適格ストックオプションの中心的な要件のひとつが、権利行使価額を付与契約締結時の株式の時価以上に設定することです。この要件を満たすと、権利行使時の課税が繰り延べられ、株式売却時に譲渡所得として約20%の税率で課税されます。非適格の場合は行使時の経済的利益が給与所得等として最大55%程度の税率で課税されるため、付与対象者の手取りに大きな差が生じるのです。

非上場会社における時価の算定については、令和5年度税制改正を受けた通達改正により、財産評価基本通達に基づく算定方法が明確化されました。種類株式で資金調達をしていても、普通株式の評価額を低く算定できる場合があり、行使価額を抑えた設計が可能になっています。算定した行使価額は、募集事項と割当契約書の双方に正確に記載してください。契約書の行使価額が時価を下回っていると、その契約は適格要件を満たさなくなるため、評価資料の保存もあわせて徹底しましょう。

付与から2年経過後10年以内という権利行使期間の設計と例外規定

税制適格の要件として、権利行使は付与決議の日から2年を経過した日から10年を経過する日までの間に行わなければなりません。つまり契約書の行使期間がこの範囲に収まっていない場合、その時点で適格性を失います。たとえば行使期間の開始を付与決議の翌日からと定めてしまうと、2年経過要件に反するため非適格となるのです。決議日と契約書の行使期間の整合性は、ドラフト段階で必ず照合してください。

この行使期間には例外規定があります。設立から5年未満の非上場会社が付与する場合、行使期間は付与決議の日から2年を経過した日から15年を経過する日までに延長されています。これは令和5年度税制改正で導入された措置で、上場までの期間が長期化しているスタートアップの実情に対応したものです。延長要件を利用する場合は、付与決議時点で設立5年未満かつ非上場であることを確認し、その証跡を残しておくことが望ましいでしょう。登記簿の履歴事項全部証明書で設立年月日を確認し、付与決議の議事録とあわせて保管しておけば証明は容易です。

年間1200万円の権利行使価額制限と設立5年未満の会社の特例

税制適格ストックオプションには、権利行使価額の年間合計額に上限が設けられています。従来は一律1200万円でしたが、令和6年度税制改正により大幅に拡充されました。改正後は、設立5年未満の会社では年間2400万円まで、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満の会社では年間3600万円までに上限が引き上げられています。それ以外の会社は従来どおり1200万円が上限です。

この上限を超えて権利行使した場合、超えた部分だけでなく、その行使全体が非適格として課税される点に注意が必要です。たとえば上限1200万円の会社で、年内にすでに1000万円分を行使した人が新たに500万円分を行使すると、超過した200万円ではなく、その500万円分の行使全体が給与課税の対象となり得ます。なお上限を超える前に行った行使分の適格性までは失われません。複数年にわたって付与を受けている役職員は、行使のタイミングを分散させる管理が欠かせません。会社側でも、付与時に行使スケジュールのシミュレーションを示し、上限超過を防ぐ案内をしておくと親切です。

大口株主に該当して適格要件を満たせなくなる持株比率の判断基準

税制適格ストックオプションは、付与対象者が大口株主またはその特別関係者に該当する場合には利用できません。大口株主とは、非上場会社では発行済株式総数の3分の1超を保有する株主を指し、上場会社では10分の1超を保有する株主が該当します。このため、創業者自身に税制適格ストックオプションを付与することは、持株比率の面で不可能なケースがほとんどです。

判断にあたっては、本人の保有分だけでなく、配偶者など特別関係者の保有分にも注意が必要となります。また、付与時点では3分の1以下であっても、その後の自己株式取得などで比率が変動する可能性も考慮しておくべきでしょう。共同創業者が複数いる会社では、各人の持株比率を確認し、適格付与が可能な対象者を整理したうえで設計するのが実務の手順です。大口株主に付与したい場合は、有償ストックオプションなど別の構成を検討することになります。持株比率の確認は付与契約の締結時点を基準に行い、株主名簿と突き合わせた記録を残しておくと税務調査の際にも説明しやすいでしょう。

譲渡禁止条項の欠落など税制非適格となる契約設計の失敗パターン

税制適格要件は、その大部分を付与契約書の条項で満たす必要があります。なかでも見落としやすいのが、新株予約権の譲渡を禁止する旨の定めです。会社法上の譲渡制限を定款や発行要項に置いただけで、契約書への記載を欠いたために適格性が争われる例があります。契約書には譲渡禁止条項を明記し、募集事項の内容とも一致させておかなければなりません。

そのほかの失敗パターンとしては、行使期間の開始日を誤って2年経過前に設定したケース、権利行使で交付される株式の管理要件への手当てを欠いたケース、社外の協力者へ付与したものの認定要件を満たさず非適格となったケースが挙げられます。なお株式の管理要件については、令和6年度税制改正により、証券会社等への保管委託に代えて発行会社自身による株式管理も選択できるようになっています。社外高度人材への付与は中小企業等経営強化法に基づく計画認定が前提となるため、手続きの順序を誤ると救済が困難です。契約書のドラフト段階で、租税特別措置法29条の2の要件を一覧化したチェックリストと突き合わせる確認作業を必ず挟みましょう。

登記申請と新株予約権原簿の作成まで含めた発行後に必要な法定対応

ストックオプションの手続きは割当てで終わりではありません。登記と原簿作成という法定の対応を完了して、はじめて一連の発行手続きが完結します。

発行日から2週間以内に必要となる新株予約権の変更登記の申請手順

新株予約権を発行した会社は、割当日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請しなければなりません。登記事項には、新株予約権の数、目的である株式の種類と数、行使価額または払込金額、行使期間、行使条件などが含まれます。登記簿は誰でも閲覧できるため、ストックオプションの発行内容は対外的に公開される点も理解しておきましょう。

申請手順としては、まず議事録や契約書など決議内容を証する書面を整え、登記申請書に登記すべき事項を記載して提出します。オンライン申請または法務局窓口への持参、郵送のいずれの方法でも申請可能です。申請後、補正がなければ1週間から2週間程度で登記が完了します。なお令和3年3月施行の改正会社法では、払込金額の算定方法を定めた場合の登記の取扱いが見直されるなど、登記事項の細部は法改正で変わることがあります。判断に迷う点は申請前に法務局へ事前相談を行うと手戻りを減らせるでしょう。申請書の「登記すべき事項」はオンライン提出用のデータとしても作成でき、文字数の多い行使条件は別紙やデータ添付で対応するのが一般的です。記載例は法務局の公開様式が参考になります。

登録免許税9万円など登記申請にかかる費用と必要書類の一覧整理

新株予約権の発行による変更登記には、申請1件につき9万円の登録免許税がかかります。資本金の額に応じて変動する募集株式の発行と異なり、新株予約権の登記は定額です。発行を複数回に分けると、そのたびに9万円が必要となるため、付与をまとめて行うことでコストを抑えられます。必要書類の標準的な構成は次のとおりです。

  • 株主総会議事録または取締役会議事録
  • 株主リスト
  • 募集新株予約権の引受けの申込みを証する書面または総数引受契約書
  • 払込みがあったことを証する書面(有償発行の場合)
  • 委任状(司法書士へ依頼する場合)

役員への報酬として付与した場合には、報酬決議に関する議事録の添付を求められることもあります。書類の不備は補正や取下げの原因となり、2週間の期限を圧迫しかねません。申請前に管轄法務局の案内を確認し、添付書類を一覧表で点検する運用が確実です。提出書類はPDF化して社内でも保管し、次回発行時のひな形として整備しておくと、2回目以降の準備期間を大幅に短縮できます。補正の連絡は法務局から電話で届くため、申請書には日中つながる連絡先を記載しておきましょう。

会社法249条が定める新株予約権原簿の記載事項と作成時の実務例

会社法249条は、新株予約権を発行した会社に対し、遅滞なく新株予約権原簿を作成することを義務づけています。記載事項は、新株予約権者の氏名または名称と住所、保有する新株予約権の内容と数、取得日などです。証券を発行しない通常のストックオプションであれば、これらの事項を一覧化した帳簿を作成すれば足ります。書面でも電磁的記録でも作成可能なため、実務ではスプレッドシートで管理する例が一般的です。

原簿は本店に備え置き、株主や債権者から請求があれば閲覧に供する必要があります。作成を怠っても登記のように外部から発覚しにくいため、後回しにされがちですが、過料の対象となる法定義務であることに変わりはありません。実務例としては、付与対象者ごとに付与日、個数、行使価額、行使期間、退職等による消滅の有無を記録し、行使や放棄が生じるたびに更新する形式が管理しやすいでしょう。資本政策表と連動させておくと、潜在株式数の把握にも役立ちます。

登記懈怠で科される100万円以下の過料と申請遅延の失敗パターン

変更登記を2週間の期限内に申請しなかった場合、会社法976条に基づき、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。過料は会社ではなく代表取締役個人に課される制裁であり、損金算入もできません。実際の金額は遅滞期間などの事情を踏まえて裁判所が決定します。過料の通知は会社宛てではなく代表者個人宛てに裁判所から届くため、突然の通知に驚く経営者も少なくありません。期限を過ぎても登記申請自体は受理されるため、遅れに気づいた時点で速やかに申請することが被害を最小化する対応です。

遅延の失敗パターンとして多いのは、割当日を契約書ごとに分散させた結果、登記期限の管理が複雑化したケースや、決議だけ済ませて登記を担当者間で押し付け合ったまま放置したケースです。また、ストックオプションの行使や消滅に伴う変更登記を見落とす例も少なくありません。発行時に登記期限をカレンダーへ登録し、司法書士へ依頼する場合も依頼日と申請予定日を明確に合意しておくことが、懈怠を防ぐ実務的な工夫といえます。

権利行使や退職による消滅など発行後に発生する登記と原簿管理の手順

ストックオプションは発行して終わりではなく、その後のライフサイクルに応じた対応が続きます。付与対象者が権利を行使すれば、会社は新株を発行するか自己株式を交付し、行使があった月の末日から2週間以内に資本金の額や発行済株式総数、新株予約権の数の変更登記を申請します。行使価額の払込確認、株主名簿への記載、原簿の更新という一連の手順をセットで処理する体制を整えておきましょう。

一方、付与対象者が退職した場合、行使条件により新株予約権が行使できなくなるのが一般的です。会社が取得条項に基づいて取得し消却するか、放棄書を取得して消滅させた場合には、新株予約権の数が減少するため変更登記が必要となります。退職処理の際に登記まで意識が及ばず、登記簿上の個数と実態が乖離している会社は珍しくありません。上場準備の審査やデューデリジェンスで指摘される典型論点でもあるため、人事イベントと登記事項を連動させるチェック体制を構築しておくことをおすすめします。

手続き不備による無効リスクと専門家へ依頼する場合の費用相場の比較

最後に、手続き不備が招く法的リスクと、専門家へ依頼する場合の費用感を整理します。自社対応と外部依頼の判断材料としてご活用ください。

決議を欠いた発行で生じる新株予約権発行無効の訴えと6か月の提訴期間

必要な決議を欠いたまま新株予約権を発行した場合、株主等は新株予約権発行無効の訴えを提起できます。提訴期間は、公開会社では発行の効力発生日から6か月以内、非公開会社では1年以内です。判例上、非公開会社における株主総会特別決議の欠缺は無効事由になると解されており、決議の不存在は発行自体を覆しかねない重大な瑕疵となります。無効判決が確定すると、その新株予約権は将来に向かって効力を失うのです。

付与対象者の立場からみれば、入社の動機にもなったストックオプションが無効となれば、会社への信頼は大きく損なわれます。また、すでに権利行使されて株式が交付された後では、株主構成の巻き戻しという更に困難な問題に発展しかねません。M&Aや上場審査の場面では過去の発行手続きが遡って精査されるため、瑕疵が発覚した場合には再発行や追認決議などの治癒措置を検討することになります。発行時点での決議の確実な取得が、最も安価な予防策といえるでしょう。

株主への通知漏れや議事録不備など実務で多い手続きミスの失敗パターン

無効事由に至らないまでも、実務では細かな手続きミスが頻発します。代表的なのは、株主総会の招集通知の期間不足や通知漏れ、議事録における決議事項の記載漏れ、出席者や賛成数の記録不備です。議事録は登記の添付書類であると同時に、決議の存在を証明する唯一の証拠でもあります。募集事項の7項目が議事録に正確に記載されていなければ、登記が通らないだけでなく、決議内容自体の立証が困難になるのです。

そのほか、契約書と決議内容の不一致、割当日より後に決議を行ってしまう順序の逆転、報酬決議の取得漏れ、委任決議の1年期限の徒過などもよくみられる失敗です。これらの多くは、チェックリストの整備と工程表による日付管理で防止できます。とくに複数回の付与を重ねる会社では、過去の書式を機械的に流用することで古い決議内容が紛れ込む事故が起きやすくなります。発行のたびに最新の決議と契約のセットをゼロから照合する習慣をつけましょう。

弁護士と司法書士と税理士それぞれに依頼できる業務範囲の比較整理

ストックオプションの発行は、法務と税務と登記の3領域にまたがるため、専門家ごとに依頼できる範囲が異なります。役割分担の目安は次のとおりです。

専門家 主な業務範囲 依頼が適する場面
弁護士 スキーム設計・契約書や議事録の作成・適法性の検証 制度設計から任せたい場合や投資家対応が絡む場合
司法書士 登記申請の代理・議事録等の登記添付書類の作成支援 決議内容が固まっており登記を確実に済ませたい場合
税理士 税制適格要件の確認・株価算定・課税関係の助言 適格性の判断や行使価額の設定に不安がある場合

実際の案件では、弁護士が設計と書類作成を担い、司法書士が登記を申請し、税理士が適格要件と株価を確認するという分業が一般的です。1人の専門家にすべてを依頼できるわけではない点に注意してください。窓口を一本化したい場合は、提携先を持つ事務所やストックオプション支援に特化したサービスを選ぶと、調整の手間を減らせます。依頼前に、誰がどの書類を作成するのかを役割分担表で明確にしておくと、抜け漏れの防止につながるでしょう。

専門家への依頼費用30万円から100万円程度となる相場の内訳整理

専門家へ一連の手続きを依頼した場合の費用は、案件の複雑さにもよりますが、総額でおおむね30万円から100万円程度が目安となります。内訳のイメージとしては、弁護士によるスキーム設計と契約書・議事録作成が20万円から60万円程度、司法書士の登記手続きが5万円から10万円程度、これに登録免許税9万円が加わる構成です。税制適格性の確認や株価算定を税理士・評価機関へ依頼すると、さらに10万円から数十万円が上乗せされます。

有償ストックオプションで第三者評価機関の算定書を取得する場合や、信託型のような複雑なスキームでは、総額が100万円を大きく超えることも珍しくありません。一方、ひな形の提供と手続き案内を中心とした定額型の支援サービスでは、10万円台から利用できるものも登場しています。費用を比較する際は、契約書のカスタマイズ範囲、税務面の確認の有無、登記までの一気通貫対応かどうかという3点を確認すると、見積もりの差の理由を把握しやすいでしょう。

自社対応と専門家依頼を分ける判断基準と発行規模ごとの使い分け実務例

すべてを専門家に依頼すべきとは限りません。判断基準となるのは、付与対象者の人数と属性、税制適格を狙うかどうか、社内に法務経験者がいるかどうかの3点です。たとえば、創業初期に従業員数名へ標準的な税制適格ストックオプションを付与するケースであれば、信頼できるひな形と専門家のスポット確認を組み合わせ、費用を20万円前後に抑える運用も現実的といえます。逆に、役員への付与で報酬決議が絡む場合や、有償・信託型を採用する場合は、設計段階から弁護士を関与させるべきです。

発行規模ごとの使い分けとしては、付与対象10名未満かつ発行済株式の10%以内の標準的な付与なら書式活用と司法書士への登記依頼で対応し、投資家との調整や上場準備が視野に入る段階では法律事務所へのフル依頼に切り替えるのが一例です。重要なのは、自社対応を選ぶ場合でも、決議、契約、登記、原簿という4点セットの完了を必ず確認することにあります。手続きの瑕疵は後から治癒するほどコストが膨らむため、迷う論点が1つでもあれば早めに専門家へ相談する姿勢が結果的に安上がりとなるでしょう。

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