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ストックオプションの株主総会決議|特別決議が要る場合と不要なケースを会社法で整理

ストックオプションの株主総会決議|特別決議が要る場合と不要なケースを会社法で整理

ストックオプションは会社法上は新株予約権なので、発行するには新株予約権の募集事項を決議しなければなりません。決議するのが株主総会か取締役会かは、会社が公開会社かどうか、払込金額が特に有利かどうか、付与先に取締役が含まれるか、種類株式を発行しているかの4点で決まります。

この記事では、会社法の条文(2026年10月時点の現行版)をもとに、決議機関の判定、株主総会決議を省ける範囲、取締役会への委任、取締役に付与するときの報酬決議、割当から登記までの期限を整理します。

まとめ:ストックオプション発行に必要な決議の要点

  • 非公開会社(全株式に譲渡制限がある会社)は、募集事項を株主総会の特別決議で決める。特別決議は議決権の過半数が出席し、出席議決権の3分の2以上の賛成
  • 公開会社は取締役会決議で発行できる。ただし払込金額が特に有利な有利発行に当たれば、公開会社でも株主総会の特別決議と取締役の理由説明が要る
  • 非公開会社でも、株主総会で上限を決めて取締役会に委任すれば、個々の発行は取締役会で決められる。委任の効力は割当日が決議から1年以内の発行に限られる
  • VC出資後の種類株式発行会社では、目的となる普通株式が譲渡制限株式なら、定款に排除規定がない限り普通株主の種類株主総会決議も要る
  • 取締役への報酬としての付与には、原則として361条の報酬決議も要る。ただし定款に必要事項の定めがある場合や指名委員会等設置会社は別扱い。従業員だけへの付与には361条の報酬決議は不要
  • 株主全員の同意による書面決議(319条)を使えば総会を開かずに済むが、決議そのものが不要になるわけではない

会社の区分と付与先で決まるストックオプションの決議機関

新株予約権の募集事項は、原則として株主総会の決議で定めます(会社法238条2項)。この決議は309条2項6号で特別決議とされています。公開会社だけは240条1項で決議機関が取締役会に読み替えられ、有利発行の場合はこの読替えが外れます。組み合わせを表にすると次のとおりです。

会社と発行の条件 募集事項の決定 追加で要る決議 根拠条文
非公開会社 株主総会の特別決議 有利発行なら理由説明 238条2項・3項
非公開会社で委任する場合 総会で上限を決め取締役会へ委任 割当日は決議から1年以内 239条1項・3項
公開会社で有利発行でない 取締役会決議 割当日の2週間前までに株主へ通知か公告 240条1項〜4項
公開会社で有利発行 株主総会の特別決議 取締役の理由説明 240条1項・238条3項
目的株式が譲渡制限の種類株式 上記に加え種類株主総会 定款で排除していれば不要 238条4項・239条4項
付与先に取締役を含む 上記に加え報酬決議 相当とする理由の説明 361条1項4号・4項

非公開会社は株主総会の特別決議が原則

株式に譲渡制限を付けているスタートアップの多くは非公開会社です。会社法2条5号の公開会社は「発行する全部又は一部の株式の内容として」譲渡制限を設けていない会社なので、一部の種類だけでも譲渡制限のない株式があれば公開会社になります。上場しているかどうかでは決まりません。

非公開会社の特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1まで下げられる)を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上で可決します(309条2項)。定款に加重要件がなければ、創業者が行使可能な議決権の3分の2以上を持つ場合は単独で可決できます。可決に必要な賛成数は、定款の定足数・賛成割合・株主数の要件と、当日の出席議決権数を確認して判断します。

公開会社は取締役会決議と2週間前の通知

公開会社では、有利発行に当たらない限り取締役会決議で募集事項を決められます(240条1項)。その代わり、割当日の2週間前までに募集事項を株主へ通知するか公告しなければなりません(同条2項・3項)。株主が差止め(247条)を検討する時間を確保するためです。割当日の2週間前までに金融商品取引法の有価証券届出書を出している場合など、株主の保護に欠けるおそれがないときは通知を省けます(同条4項)。

ストックオプションの株主総会決議が不要になるケースと省ける範囲

「株主総会は不要か」という問いには、どの決議を指すかで答えが分かれます。会社法上、株主総会の決議そのものを要しないのは次の3つです。

  • 公開会社で有利発行に当たらない発行:募集事項は取締役会決議だけで決まる(240条1項)。ただし取締役に付与するなら報酬決議は別途要る
  • 非公開会社で委任を受けた後の個々の発行:委任決議の範囲内なら、委任後の初回から募集事項を取締役会で決定できる(取締役会非設置会社では取締役が決定。239条1項)。委任の決議自体は総会の特別決議
  • 従業員だけに付与する場合の報酬決議:361条は取締役の報酬の規定なので、従業員への付与に報酬決議は不要。発行決議は会社区分どおりに要る

一方、株主が少ない会社で使える次の2つは、総会を開く手間を省く方法であって、決議を不要にするものではありません。

  • 書面決議(319条):議決権を持つ株主全員が書面または電磁的記録で提案に同意すると、可決の決議があったものとみなされる。同意書は10年間本店に備え置く義務がある。1人でも同意しなければ使えない
  • 招集手続の省略(300条):株主全員の同意があれば招集通知を出さずに総会を開ける。ただし、書面または電磁的方法による議決権行使を認める場合は省略できない。総会自体は開催して決議する

書面決議には、エンジェル投資家やVCを含め、その議案について議決権を行使できる株主全員の同意が必要です。株主数にかかわらず、予定日までに全員の同意を得られる見込みがない場合は、書面決議だけを前提にせず、招集通知を出して総会を開催する日程も検討します。

取締役会への委任で決める3項目と1年の期限

非公開会社が付与のたびに総会を開かずに済ませる方法が、239条の委任です。株主総会の特別決議で次の3項目を定め、具体的な募集事項の決定を取締役会(取締役会を置かない会社では取締役)に任せます。

  • 委任に基づいて発行できる新株予約権の内容と数の上限(239条1項1号)
  • 金銭の払込みを要しない(無償で発行する)場合はその旨(同項2号)
  • 有償で発行する場合は払込金額の下限(同項3号)

注意が要るのは期限です。委任の決議は、割当日がその決議の日から1年以内の募集にしか効力を持ちません(239条3項)。2026年6月25日の定時株主総会で委任を受けたなら、割当日を2027年6月25日より後にする発行には使えません。翌年の定時総会の開催日とは連動しないので、採用のたびに付与する設計なら、毎年の定時総会で委任決議を取り直す前提で日程を組みます。

この1年の制限を外せるのが、産業競争力強化法のストックオプション・プール制度です。設立15年未満の株式会社が経済産業大臣と法務大臣の確認を受けると、委任決議に239条2項(理由説明)と3項(1年の期限)が適用されず、行使価額と行使期間の決定も取締役会に任せられます(産業競争力強化法21条の19)。その代わり、取締役会が募集事項を決めたら割当日の2週間前までに株主へ通知しなければなりません(同条3項)。

委任の範囲を超えた発行にも注意が要ります。委任決議で「上限100個」と定めたのに、取締役会が採用の追加で120個を割り当てた場合、超えた部分は総会の決議を欠く発行になります。委任で発行した累計個数は、取締役会議事録ごとに台帳で管理してください。

有利発行に当たるかの判断と理由説明の義務

株主総会で取締役が理由を説明しなければならないのは、次のどちらかに当たる場合です(238条3項、委任のときは239条2項)。

  • 払込みを要しないこと(無償発行)が、引き受ける者に「特に有利な条件」であるとき
  • 有償発行の払込金額(委任のときは下限)が、引き受ける者に「特に有利な金額」であるとき

条文は「無償であること」ではなく「無償が特に有利な条件であること」を要件にしています。無償のストックオプションが有利発行に当たるかは、職務提供の対価という説明だけでは決まりません。取締役への報酬としての付与か従業員等への付与かを区別し、対価関係と発行条件から判断します。付与対象者の職務と釣り合わない大量の付与や、オプションの公正な評価額を大きく下回る払込金額での有償発行は、有利発行の判断が必要になります。公正な評価額の算定はストックオプションの評価単価とは?公正な評価単価の計算方法と6つの基礎数値で扱っています。

判断に迷う場合は、有利発行に当たる前提で理由を説明して特別決議を取るのが安全側です。非公開会社ではもともと特別決議が要るので、理由説明を加えても手続きの重さはほとんど変わりません。公開会社で有利発行を見落とすと、取締役会決議だけで発行した新株予約権に、本来必要な総会決議が欠けることになります。

VC出資後の種類株式発行会社で要る種類株主総会と取締役会承認

VCから優先株式で出資を受けた会社は種類株式発行会社です。この場合、ストックオプションの目的となる普通株式に譲渡制限が付いていると、通常の決議に加えて普通株主による種類株主総会の決議がなければ、募集事項の決定は効力を生じません(238条4項)。取締役会への委任も同じ扱いです(239条4項)。

例外は2つあります。定款に「種類株主総会の決議を要しない」旨の定めがある場合と、その種類株主総会で議決権を行使できる株主がいない場合です。シリーズA以降の会社は、まず定款にこの排除規定があるかを確認してください。規定がなければ、株主総会とは別に普通株主の種類株主総会を開くか、書面決議を取ります。

目的株式または新株予約権自体に譲渡制限がある場合は、原則として割当ての決定にも機関決定が要ります。申込みと割当ての方式なら割当先と個数の決定を、ストックオプションで一般的な総数引受契約の方式なら契約の承認を、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で行います(243条2項、244条3項)。定款で別に定めていればそれに従います。種類株式の有無にかかわらず、非公開会社のほぼすべてが対象です。

会社法とは別に、投資契約で新株予約権の発行を投資家の事前承諾事項にしている場合があります。これは会社法上の決議とは別の契約上の義務なので、総会や種類株主総会の決議が揃っていても、承諾がなければ契約違反の問題が残ります。決議の準備と並行して投資契約の承諾事項を確認してください。

取締役に付与するときの報酬決議と従業員との違い

取締役に職務執行の対価として付与するストックオプションは、会社法361条の「報酬等」に当たります。以下は指名委員会等設置会社以外の説明であり、指名委員会等設置会社では404条3項・409条により報酬委員会が個人別の報酬等を決定します。定款に定めがない限り、発行決議とは別に株主総会の報酬決議が要ります。令和元年の会社法改正(2021年3月1日施行)で、新株予約権を報酬とする場合の決議事項が独立した号として定められました。

付与の構成 報酬決議の根拠 決議で定める主な事項
新株予約権を直接付与 361条1項4号 個数の上限・内容・行使条件の概要
金銭報酬で新株予約権を引き受け 361条1項5号ロ 引き受ける個数の上限・内容

決議で定める事項は会社法施行規則98条の3(5号ロは98条の4第2項)に列挙されています。目的株式の数や行使価額などの新株予約権の内容、一定の資格を持つ者だけが行使できる場合はその旨、行使条件の概要、取締役に割り当てる条件の概要です。議案を出した取締役は、総会でその内容を相当とする理由を説明しなければなりません(361条4項)。報酬決議は普通決議ですが、非公開会社では同じ総会で特別決議の発行決議(または委任決議)とあわせて付議するのが通例です。

取締役ごとの配分を取締役会設置会社で取締役会に委ねる場合は、報酬決議の範囲内で取締役会が決定します。ただし、監査等委員である取締役の個人別報酬は361条3項の協議による場合があります。監査役に付与する場合は387条の報酬規定になり、決議事項や税制の扱いが取締役と異なります(監査役にストックオプションは付与できる?報酬決議・税制・議決権行使基準を解説)。取締役への付与の税務や損金算入は役員へのストックオプション付与|報酬決議・税制適格・損金算入で従業員と違う点【2026年】で扱っています。

従業員への付与では報酬決議は要りませんが、労働法上の整理が別にあります。旧労働省の通達(平成9年6月1日基発412号)は、ストックオプションから得られる利益は発生の時期も額も労働者の判断に委ねられるため、労働基準法11条の賃金に当たらないとしています。同じ通達で、ストックオプションは労働条件の一部であり、制度を設けた場合は労基法89条10号により就業規則に定める必要があるともしています(東京都「使用者のための就業規則作成ガイド」第4章)。従業員向けの付与を始めるときは、就業規則の改定も手続きの一部に入れてください。

発行決議から割当・登記までのスケジュールと期限

取締役会を置く非公開会社が、取締役と従業員に無償のストックオプションを総数引受契約で付与する場合の流れです。表には会社法上の通知期限・登記期限と税務上の提出期限を示しています。所要日数には、書類作成と株主の同意取得に必要な期間も見込んでください。

手順 期限・要件 根拠
1 取締役会で総会の招集を決定 議題に募集事項と報酬 298条
2 招集通知の発送 原則1週間前まで(公開会社・書面投票等を採用する場合は2週間前まで) 299条1項
3 株主総会(特別決議・報酬決議) 全員同意なら書面決議で代替可 238条2項・319条
4 種類株主総会(該当時) 定款に排除規定がなければ 238条4項
5 取締役会で総数引受契約を承認 目的株式が譲渡制限株式の場合 244条3項
6 割当契約の締結と割当日 割当日に新株予約権者になる 245条1項
7 新株予約権原簿の作成 発行日以後遅滞なく 249条
8 変更登記の申請 割当日から2週間以内 915条1項
9 付与調書の提出(税制適格) 付与した年の翌年1月31日 措置法29条の2

総数引受契約の方式を使うと、申込みと割当ての通知(242条・243条)を省けます(244条1項)。付与先と個数が決まっているストックオプションでは、この方式が一般的です。登記の添付書面や登録免許税はストックオプションの登記|新株予約権の発行・行使・消滅の期限と必要書類・登録免許税にまとめています。

税制適格を狙う場合、決議の日付は税務にも影響します。権利行使は「付与決議の日」から2年を経過した日以後でなければならず(租税特別措置法29条の2第1項1号)、起算点は割当日ではなく決議の日です。国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)」は、付与決議の日を割当てに関する決議の日とし、総数引受契約の方式では238条2項の決議の日、その後に契約承認の決議(244条3項)を行う場合はその承認決議の日としています。上の表の手順どおり総会のあとに取締役会で契約を承認するなら、起算点は手順5の取締役会の日です。行使期間の開始日は、この日から2年後以降に設定してください。要件の全体は税制適格ストックオプションとセーフハーバールール|非上場株の権利行使価額と1円SOの実務で確認できます。

決議を欠いた発行で起きる効力の問題と救済手段

決議の不備は、発行後に資金調達や上場審査のデューデリジェンスで見つかることが多い論点です。会社法上の効果は不備の種類で異なります。

  • 種類株主総会の決議漏れ:238条4項は「その効力を生じない」と定めるため、募集事項の決定そのものが効力を持たない
  • 委任の期限切れ・上限超過:割当日が委任決議から1年を超えた発行や上限を超えた部分は、総会決議を欠く発行になる
  • 発行前の差止め:法令・定款違反や著しく不公正な方法による発行で株主が不利益を受けるおそれがあれば、株主は発行の差止めを請求できる(247条)
  • 発行無効の訴え:提訴期間は発行の効力が生じた日から、公開会社で6か月、非公開会社で1年(828条1項4号)。原告は株主等または新株予約権者(同条2項4号)
  • 不存在確認の訴え:発行の実体がない場合は期間制限なく確認を求められる(829条3号)

決議の重さを示したのが最高裁平成24年4月24日判決です。非公開会社で株主総会の特別決議を経ずに株主割当て以外の方法で募集株式を発行した瑕疵は、発行の無効原因になると判断しました。同じ判決は、平成17年改正前商法に基づく総会の委任を受けた取締役会が、新株予約権の発行後に行使条件を変更する決議について、変更できる旨の明示の委任がない限り、細目的な変更を除いて無効だとしています。上場時期が延びたからといって、取締役会決議だけで「上場後に行使可」などの条件を外すことはできません。また、取締役と通じて著しく不公正な条件で新株予約権を引き受け行使した者は、公正な価額との差額を会社に支払う義務を負います(285条1項)。過去の発行に不備が見つかった場合は、追認の決議や再発行で治癒できるかを専門家と検討してください。

上場準備の段階では、ストックオプションの発行枠・決議・登記の管理を資本政策と並行して進めます。規程や管理体制の整備を含めて検討する場合はIPO準備・内部統制システム支援も参考にしてください。

ストックオプションの株主総会決議に関するよくある質問

ストックオプションの発行に株主総会は不要にできますか?

公開会社で有利発行に当たらない場合、募集事項は原則として取締役会で決定できます。ただし、取締役の報酬決議や、支配株主の異動を伴う割当てについて会社法244条の2に基づく株主総会承認が必要になる場合があります。非公開会社では少なくとも委任のための特別決議が要ります。株主全員が同意すれば書面決議(319条)で総会を開かずに済みますが、決議があったものとみなす制度で、決議そのものは省けません。

ストックオプションの決議は普通決議と特別決議のどちらですか?

募集事項の決定と取締役会への委任は特別決議です(309条2項6号)。取締役に付与する場合の報酬決議(361条)は普通決議です。同じ総会で両方を付議するときは、議案ごとに可決要件を分けて議事録に残します。

新株予約権とストックオプションの違いは何ですか?

ストックオプションは、役員や従業員に報酬・インセンティブとして付与する新株予約権の呼び名です。会社法に「ストックオプション」という手続きはなく、発行の決議や登記は新株予約権の規定に従います。目的・課税・会計の違いは新株予約権とストックオプションの違い|関係・目的・課税・会計を比較表で整理で比較しています。

株式分割をしたときの登記期限はいつですか?

株式分割で発行済株式の総数が変わるので、効力発生日から2週間以内に変更登記をします(915条1項)。発行済みのストックオプションは、要項の調整条項で目的株式の数と行使価額が分割比率に応じて調整されるのが一般的です。目的株式の数は登記事項(911条3項12号)なので、登記した内容が変わるかどうかを登記簿の記載と照らして確認し、同じ期限で申請してください。

従業員だけに付与する場合も株主総会は必要ですか?

報酬決議は不要ですが、発行決議は会社区分どおりに要ります。非公開会社なら、従業員だけへの付与でも株主総会の特別決議(または委任決議)が必要です。あわせて、通達上ストックオプションは労働条件の一部とされるため、就業規則への記載も確認してください。

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