託児所の事業計画書は、日本政策金融公庫の創業計画書の様式で書けます。ただし、収支の根拠は保育に固有のルールで決まります。売上の上限は定員と保育料で、人件費の下限は認可外保育施設指導監督基準の配置基準で決まります。しかも、配置人数や勤務体制は、開業後1か月以内に出す設置届にも同じ数字を書くことになります。
この記事では、託児所の大半が該当する「認可外保育施設」を前提に、届出の義務、創業計画書の記入欄ごとの書き方、配置基準から人件費と損益分岐を逆算する手順を設例で示します。無償化と消費税の扱い、企業主導型・事業所内保育で開業する場合の違いも扱います。
まとめ:託児所の事業計画書で押さえる要点
- 託児所の多くは認可外保育施設です。認可は要りませんが、事業開始日から1か月以内に都道府県知事(指定都市・中核市などは市長)への届出が必要で、怠ると50万円以下の過料の対象になります(児童福祉法59条の2・62条の5)。
- 事業計画書は公庫の創業計画書の様式で足ります。託児所の収支説明では、「保育料×在籍児童数」の売上根拠と、配置基準から積算した人件費を示します。加えて、経歴・自己資金・資金使途・返済見通しも説明できるようにします。
- 1日に6人以上を保育する施設の主たる開所時間では、保育従事者は乳児おおむね3人、1・2歳児6人、3歳児20人、4歳以上児30人につき1人以上で、原則2人以上です。5人以下の施設や居宅訪問型には別の基準があります。認可保育所の基準(3歳児15人、4歳以上児25人)とは数字が違います。
- 0〜2歳児の比率が人件費を大きく左右します。本記事の定員15名の設例では、0〜2歳児中心の構成と3歳以上児中心の構成を比べると、常勤換算で1.2人分、月32万円ほどの人件費差があります。
- 無償化は原則として指導監督基準への適合が必要ですが、指定施設には経過措置があります。消費税の非課税には、基準を満たす旨の証明書の交付など所定の条件を満たす必要があります。料金表と資金計画に織り込みます。
- 企業主導型保育事業は令和4年度以降、新規開設の助成募集が行われていません。認可保育所や小規模保育事業を目指す場合は市区町村の公募・認可が入口になり、計画書の提出先も様式も変わります。
以下、制度区分の確認から順に、計画書のどの欄に何を書くかを説明します。
託児所の事業計画書を書く前に決める制度区分
「託児所」は法令上の用語ではありません。どの制度で開くかによって、開設の手続き、収入の構造、計画書の提出先が変わります。最初にこれを決めないと、収支計画の前提が定まりません。
| 区分 | 開設の手続き | 主な収入 | 計画書の提出先 |
|---|---|---|---|
| 認可外保育施設(施設型) | 開始後1か月以内に届出 | 保育料 | 金融機関 |
| 認可外の居宅訪問型(ベビーシッター) | 開始後1か月以内に届出 | 利用料 | 金融機関 |
| 事業所内保育施設(認可外) | 開始後1か月以内に届出 | 企業からの運営費・委託料 | 設置企業 |
| 企業主導型保育事業 | 新規の助成募集は停止中 | 助成金+利用料 | 設置者(受託時) |
| 認可保育所・小規模保育事業 | 市区町村の公募・認可 | 委託費(私立保育所)・地域型保育給付等 | 市区町村 |
この記事が扱うのは上の4区分で、いずれも届出で開業する認可外保育施設です。認可保育所や小規模保育事業は自治体の整備計画と公募に合わせて計画書を作るため、別記事「開業を目指す事業者が保育園の事業計画書で最初に押さえる全体像」で扱っています。
届出で開業する認可外保育施設に課される義務
認可を受けずに保育を行う施設の設置者は、事業開始日から1か月以内に、施設の名称・所在地、建物と設備の規模・構造、管理者などを都道府県知事に届け出ます(児童福祉法59条の2第1項)。届出事項には、開所時間、サービス内容と利用料、入所定員、届出日の前日時点で保育している乳幼児の人数と職員の配置数・勤務体制、今後の配置数と勤務体制の予定も含まれます(同法施行規則49条の3)。前日時点の実績と予定は別の欄なので、計画書の予定値を実績欄にそのまま写さないよう注意します。
届出が要らないのは、店舗の顧客の子だけを預かる施設、設置者の4親等内の親族の子だけを保育する施設、半年を限度として臨時に設置する施設などに限られます(施行規則49条の2)。保育する人数が少ないことは除外の理由になりません。1人を預かるベビーシッターも届出の対象です。
開業後の義務もあります。サービス内容や利用料の掲示とインターネットでの公表(法59条の2の2)、契約成立時の書面交付(59条の2の4)、毎年の運営状況報告(59条の2の5)です。都道府県等による立入調査は届出施設に対して年1回以上が原則で、夜8時以降の保育・宿泊を伴う保育・一時預かり中心の運営のいずれかを常時行う「ベビーホテル」は、必ず年1回以上の対象になります(こども家庭庁「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」)。
指導監督基準の配置・面積・2階以上の条件
計画書の施設と人員の欄は、こども家庭庁の認可外保育施設指導監督基準(令和6年3月29日こ成保第206号、令和8年4月2日第2次改正)に合わせて書きます。1日に保育する乳幼児が6人以上の施設の主な基準は次のとおりです。
- 保育従事者の数:主たる開所時間の11時間は、乳児おおむね3人に1人以上、1・2歳児6人に1人以上、3歳児20人に1人以上、4歳以上児30人に1人以上。原則2人以上で、11時間を超える時間帯も児童が1人の場合を除き常時2人以上。6〜19人の施設には、複数の乳児を保育する時間帯を除き、1人配置の時間帯を必要最小限にするなど安全面に配慮した場合の例外がある。
- 資格:保育従事者のおおむね3分の1以上(2人の施設では1人以上)が保育士または看護師(准看護師を含む)。
- 面積:保育室はおおむね乳幼児1人当たり1.65㎡以上。乳児の保育場所は幼児と区画する。
- 2階:転落防止設備が必要。耐火・準耐火建築物と避難設備の条件を満たさない場合の取扱いも基準に定められているため、建築・消防法令と自治体の基準を含め、物件契約前に所管課へ確認する。3階以上は条件が加わり、避難設備が無い施設は事業停止命令等の対象になり得る。
注意したいのは、認可保育所の基準とのずれです。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準33条2項は2024年度の改正で3歳児15人に1人、4歳以上児25人に1人になりましたが、認可外の指導監督基準は20人と30人のままです。認可保育所と認可外では適用基準が異なるため、最低必要数の算定根拠を区別します。認可外で最低基準より手厚く配置すること自体は問題なく、計画書と届出書にはそれぞれの定義に沿った人数を記載します。また、自治体が独自の基準を上乗せしている場合があるため、物件を契約する前に所管課へ事前相談に行き、図面と配置計画を見せておくのが確実です。
託児所向け公庫創業計画書の記入項目と根拠資料
日本政策金融公庫の創業計画書は、公庫の各種書式ダウンロードページから無料で入手できます。託児所の記入例は用意されていないため、欄ごとに保育の事情を当てはめて書きます。融資の制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」が中心で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。
創業の動機と経営者の略歴:保育経験の数値化
公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、回答した開業者の81.1%が、現在の事業に関連する仕事をした経験(斯業経験)を持っていました。審査で略歴が重視されるのは、経験の有無が事業の継続性を測る材料になるからです。託児所では、保育士・看護師の資格の有無、勤務した施設の種別(認可・認可外・企業主導型)、担当した年齢、主任や施設長の経験年数を、勤務先ごとに年月で書きます。
動機の欄には、地域で預け先が足りていない層を具体的に書きます。「認可保育所に入れない0〜2歳児」「土日や夜間に働く医療・介護職の家庭」「短時間だけ預けたい家庭」など、対象を絞るほど、料金表と開所時間の設計に説得力が出ます。待機児童数や保育所の空き状況は市区町村が公表しているので、数字で添えます。
取扱商品・サービス:料金表と売上シェア
月極保育、一時預かり、延長保育を分けて書き、それぞれの料金と売上シェアの見込みを示します。入園料、給食費、教材費、キャンセル料を別途とる場合は、ここで明記します。指導監督基準は、利用料のほか食事代や入会金、キャンセル料を加算する場合にその料金を利用者に明示するよう求めています。料金表がそのまま契約書面と掲示の内容になるので、計画書の段階で確定させておきます。
競合施設の料金は、各施設が掲示とインターネットで公表している利用料を集めて比較します。同じ年齢・同じ時間で並べないと比較になりません。
従業員:配置数は勤務延べ時間を8で割った数
従業員の欄には、常勤とパートの人数に加え、資格者の人数と勤務体制を書きます。設置届の「配置数」は、職員それぞれの1日の勤務延べ時間数を8で割った数と定義されています(施行規則49条の3第5号)。公庫様式の従業員数には継続雇用予定の実人数を記入し、設置届の配置数や人件費積算に使う常勤換算値は別に示します。実人数・1日当たりの配置数・月間の必要労働量を区別してください。次の章の設例はこの数え方で計算しています。
設備・運転資金の調達計画と創業前後の収支見通し
必要な資金は、内装や安全設備の設備資金と、人件費・家賃を賄う運転資金に分けます。設備資金は見積書の金額を書き、運転資金は「何か月分の固定費か」を根拠にします。事業の見通しの欄には、開業直後と軌道に乗った後の2時点で、売上高・売上原価・人件費・家賃・支払利息・その他経費・利益を書きます。借入元金の返済は経費に含めず、資金繰り表で別に確認します。開業直後から満員を見込む場合は、申込状況や法人契約などの根拠を示し、定員未達の場合の収支も用意します。
配置基準から人件費と損益分岐を逆算する手順
託児所の収支は、売上より先に人件費が決まる構造です。在籍児童の年齢構成と開所時間が決まれば、同時に配置すべき人数が決まり、そこから人件費の下限が出ます。以下は、定員15名、開所時間7時30分〜18時30分(11時間)、月25日開所という設例で計算したものです。給与水準や家賃は地域で大きく違うため、自分の見積もりに置き換えてください。
年齢構成で変わる同時配置人数
| 年齢 | 基準 | 設例A 人数 | A 必要数 | 設例B 人数 | B 必要数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0歳児 | 3人に1人 | 3 | 1.00 | 0 | 0 |
| 1・2歳児 | 6人に1人 | 8 | 1.33 | 6 | 1.00 |
| 3歳児 | 20人に1人 | 2 | 0.10 | 4 | 0.20 |
| 4歳以上児 | 30人に1人 | 2 | 0.07 | 5 | 0.17 |
| 合計 | 2人を下回らない | 15 | 2.50→3人 | 15 | 1.37→2人 |
同じ15名でも、0〜2歳児が中心の設例Aは日中3人、3歳以上が中心の設例Bは最低基準の2人で足ります。基準は「おおむね」と書かれていますが、端数を切り捨てて計画すると立入調査で指摘を受ける余地が残るため、設例では切り上げています。資格者は、どちらも保育従事者のおおむね3分の1以上、つまり1人以上を常に含めます。
開所時間・シフトに基づく常勤換算と代替要員の積算
設例Aでは、登園前後の7時30分〜9時と降園が進む17時〜18時30分は在園児が少ないとして2人、9時〜17時は3人を置きます。1日の勤務延べ時間は、2人×1.5時間+3人×8時間+2人×1.5時間=30時間で、設置届の配置数は30÷8=3.75人です。
月の延べ時間は30時間×25日=750時間です。常勤1人の月の実働を168時間(8時間×21日)と置くと、750÷168=約4.46人となり、概算では常勤換算4.5人です。ただし、4.5人分の756時間と必要な750時間との差は月6時間しかありません。有給休暇・研修・欠勤の代替に必要な時間と費用は別途積み増します。設例Bは2人×11時間=22時間で、月550時間、常勤換算3.3人です。
常勤1人当たりの人件費を法定福利費込みで月27万円と仮定すると、設例Aは月121.5万円、設例Bは月89.1万円です。差は常勤換算1.2人分の月32.4万円です。ただし、設例AとBでは0歳児だけでなく1・2歳児と3歳以上児の人数も変えているため、年齢構成全体を変更した場合の比較です。全年齢を同一料金にする場合も、その料金と在籍人数で年齢構成に応じた費用を賄えるかを確認します。
損益分岐となる平均保育料と在籍児童数
家賃を月18万円、給食材料・消耗品・保険料・水道光熱費などを月15万円で一定と仮定すると、計上した月額費用は設例Aで154.5万円、設例Bで122.1万円です。給食材料費などは本来、利用人数に応じて変動します。以下の料金は支払利息・減価償却費・休暇代替費等を含めない簡易試算で、実際の損益分岐には追加計上が必要です。借入の元金返済はこれとは別に手元資金から払います。満員の15名で割った損益分岐の平均保育料は、設例Aで月約10.3万円、設例Bで月約8.1万円です。開業直後の在籍が12名(80%)なら、それぞれ約12.9万円、約10.2万円に上がります。
この金額を、競合調査で集めた地域の認可外保育施設の料金と比べます。届かないなら、計画書を出す前に組み替えます。手段は、0歳児の定員を絞る、開所時間を短くして延べ時間を減らす、一時預かりや延長保育の料金を設定して月極以外の売上を作る、企業と法人契約を結んで従業員枠を買ってもらう、の4つです。保育料を相場より高く置いて数字だけ合わせる計画は、融資面談で根拠を問われたときに崩れます。
料金表と資金計画に効く無償化と消費税の扱い
認可外の託児所でも、条件を満たせば保護者の負担が公費で軽くなり、保育料に消費税がかからなくなります。無償化には基準適合とみなす経過措置があり、消費税の非課税には証明書の交付等が必要です。それぞれの適用条件を確認し、料金表と資金計画に反映します。
幼児教育・保育の無償化の上限額(令和8年10月改定)と対象条件
認可外保育施設の利用料は、市区町村から「保育の必要性」の認定を受けた子どもについて、3〜5歳児は月40,300円まで、住民税非課税世帯の0〜2歳児は月45,700円まで無償化の対象になります。この上限額は令和8年10月に引き上げられたもので、9月までは月37,000円と42,000円でした(こども家庭庁の令和8年度予算資料「子育てのための施設等利用給付交付金」)。施設側は、都道府県等への届出をしたうえで、市区町村から無償化の対象施設としての「確認」を受け、指導監督基準を満たしている必要があります。旧経過措置は2024年9月30日で終了しました。ただし、地域の保育提供体制の確保に必要な施設として都道府県知事が個別に指定する施設には、2030年3月末まで基準適合とみなす新経過措置があります。食材料費や送迎費は無償化の対象外で、引き続き保護者の負担です。
事業計画書では、無償化を「保育料の値下げ」ではなく「保護者が選ぶ理由」として書きます。施設の売上は保育料のままで、利用者の自己負担が減るだけだからです。3〜5歳児を受け入れる計画なら、指導監督基準を満たすことを開業時の前提として明記し、満たせない項目がある計画は融資の前に直します。
保育料の消費税が非課税になる条件
認可外保育施設の保育料は、都道府県知事等から指導監督基準を満たす旨の証明書の交付を受けた施設であれば、認可保育所と同じく消費税が非課税になります(国税庁 質疑応答事例「認可外保育施設の利用料」)。非課税になるのは保育の対価で、延長保育・一時保育・病児保育の料金のほか、入園料や送迎料、保育に必要不可欠な給食費なども含まれます。一方、利用者の選択で付加的に受けるクリーニング代やおむつサービス代、習い事の講習料、教材の販売代金は課税です。
証明書を受けていない施設の保育料は原則として課税売上です。課税事業者の納付税額は、原則として売上税額から控除できる仕入税額を差し引いて計算するため、売上の10%とは限りません。料金表に「税込」か「非課税」かを書き分け、証明書の交付を受ける時期を開業スケジュールに入れておきます。追加料金の項目を作るときは、課税か非課税かを項目ごとに分けて請求できるようにしておきます。
初期費用と開業までの資金計画
公庫の2025年度新規開業実態調査では、公庫融資先の回答企業における開業費用は平均975万円、中央値600万円でした。託児所に限った統計ではなく、不動産賃貸業は調査対象外です。託児所は、内装と安全設備に加えて、開業前の採用・研修と、在籍児童が埋まるまでの人件費を運転資金として厚めに持つ必要があります。
託児所の初期費用の内訳(設例)
| 費目 | 設例の金額 | 根拠の置き方 |
|---|---|---|
| 物件取得費(保証金・仲介手数料) | 150万円 | 家賃18万円の約8か月分 |
| 内装工事(床・手洗い・トイレ・区画) | 400万円 | 施工業者の見積書 |
| 安全設備(柵・ベビーフェンス・消火器) | 60万円 | 見積書・指導監督基準 |
| 備品(午睡用品・遊具・調理器具) | 80万円 | 購入リスト |
| 開業前の人件費・採用費 | 100万円 | 研修期間×人数 |
| 運転資金 | 460万円 | 設例Aの固定費の3か月分 |
| 合計 | 1,250万円 | ― |
金額は見積もりを取る前の置き方を示す例で、物件の状態で大きく変わります。保育室を2階以上に置く場合は、避難設備の工事費が上乗せになります。運転資金を固定費の何か月分持つかは、開業から在籍が埋まるまでの見込み期間で決め、月別の資金繰り表で裏付けます。
自己資金と公庫融資の組み合わせ
同じ調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、うち金融機関等からの借入が平均827万円(67.9%)、自己資金が平均279万円(22.9%)でした。設例の1,250万円なら、自己資金で300万円前後、残りを公庫の新規開業・スタートアップ支援資金で賄う形がひとつの目安になります。設備資金と運転資金は返済期間の上限が違うので、計画書でも分けて申し込みます。
月別の資金の出入りは「資金繰り表の作り方:エクセルで組む5手順と入金予定日の計算式、自動化の判断【2026年版】」の手順で作れます。保育料の入金日と給与の支払日のずれを、資金繰り表で必ず確認してください。
企業主導型保育・事業所内保育で開業する場合の計画書
企業の従業員の子を預かる施設は、誰が費用を負担するかで計画書の作り方が変わります。運営者として受託する場合、計画書の読み手は金融機関ではなく、設置企業や助成機関です。
企業主導型保育事業の新規助成募集の停止状況
企業主導型保育事業は、子ども・子育て支援法に基づく「仕事・子育て両立支援事業」で、公益財団法人児童育成協会が整備費と運営費を助成してきました。施設としては認可外保育施設の扱いなので、都道府県等への届出も必要です。
ただし、令和3年度の募集で整備目標の定員11万人をおおむね確保したことから、令和4年度以降は新規募集と定員の増加が行われていません(こども家庭庁の令和8年度予算資料「企業主導型保育事業」)。これから託児所を開く計画で、企業主導型の整備費や運営費の助成を収入に置くことはできません。企業主導型に関わる方法は、既存施設の運営受託が中心で、計画書は助成を受けている設置者への提案書になります。設置者の変更を伴う事業譲渡も児童育成協会の承認手続きがありますが、現在の設置者による運営継続が基本で、特にやむを得ない事情がある場合に限って承認の可否が検討されます(児童育成協会「令和7年度下半期事業譲渡等の手続きについて」)。募集の再開があれば児童育成協会の企業主導型保育事業ポータルに要項が載るので、計画前に確認してください。
事業所内保育施設の委託料積算と運営体制
自社の従業員向けに企業が設置する事業所内保育施設は、従業員の子だけを預かる場合も届出の対象です。運営を保育事業者に委託するのが一般的で、受託する側の事業計画書は、委託料の積算書と運営体制の提案書が中心になります。委託料の積算は、前の章で示した配置基準からの人件費の計算がそのまま使えます。企業側から見ると、委託先を切り替えるときは、届出の変更(管理者や職員体制)と保護者への説明の時期を契約に入れておく必要があります。
融資面談の前に点検する託児所の計画書の欠陥
次の項目に1つでも当てはまる計画書は、面談で根拠を問われたときに答えに詰まります。提出前に自分で点検してください。
- 開業月から定員いっぱいの在籍で売上を置いている。
- 人件費を「保育士○人×月給」で置き、開所時間と年齢構成から出した常勤換算になっていない。
- 適用される配置基準と実際のシフトを区別せず、計画書の実人数・常勤換算と届出書の配置数の関係を説明できない。
- 0歳児を受け入れた場合の追加人件費を計算せず、保育料収入で費用を賄えるか確認していない。
- 無償化の対象になる前提で集客を見込んでいるが、指導監督基準を満たす根拠(面積・資格者数)が書かれていない。
- 保育料を税込で計算しているのか非課税で計算しているのかが書かれていない。
登園管理や保育料の請求をどう回すかも、運営体制の欄で聞かれることがあります。手作業で始める場合でも、在籍児童が増えたときにどの業務を仕組みに移すかを書いておくと、人員計画の説明がしやすくなります。
よくある質問
託児所の開業に保育士資格は必要ですか?
設置者であることだけを理由に保育士資格が必要になるわけではありません。1日に6人以上を保育する施設では、原則として保育従事者のおおむね3分の1以上が保育士または看護師である必要があります。5人以下の施設や居宅訪問型には別の資格・研修基準があり、本人が保育する場合も確認が必要です。本人が無資格なら有資格者を雇う人件費が計画書に入り、審査では保育経験の説明がより重く問われます。
託児所の事業計画書のテンプレートはありますか?
融資用の計画書には、日本政策金融公庫の創業計画書の様式がそのまま使えます。ただし公庫の記入例に託児所はないため、本記事の「配置基準から人件費と損益分岐を逆算する手順」で出した数字を、従業員と事業の見通しの欄に転記してください。
託児所の開業資金はいくら必要ですか?
物件と定員で大きく変わります。本記事の設例(定員15名・賃貸・1階)では、固定費3か月分の運転資金を含めて1,250万円でした。公庫の2025年度新規開業実態調査では、公庫融資先の開業費用は平均975万円、中央値600万円です(託児所に限った統計ではありません)。託児所は在籍が埋まるまでの人件費を運転資金として厚めに見込む必要があります。
個人事業主でも託児所を開業できますか?
認可外保育施設は個人でも届出をして開業できます。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金も個人事業主が対象に含まれます。一方、認可保育所や小規模保育事業の公募は、法人格を応募資格にする自治体が多くあります。将来認可への移行を考えるなら、法人化の時期を計画書に書いておきます。
託児所と認可保育所の事業計画書は何が違いますか?
提出先と収入の構造が違います。託児所(認可外)は金融機関に出す融資用の計画書が中心で、収入は保育料です。認可保育所では自治体の整備方針や募集条件に沿った計画書が必要で、私立保育所の収入は公定価格に基づく市区町村からの委託費が中心になります。配置基準の数字も3歳以上で異なるため、認可保育所向けの資料を流用しないでください。