リフォーム費用を所得税から差し引くには、最初の年に確定申告が必要です。差し引ける制度は2系統あります。返済期間10年以上のローンで工事費100万円超の増改築をした人が使う「ローン型」(住宅ローン控除の増改築)と、自己資金でも耐震・省エネ・バリアフリーなどの工事をした人が使う「投資型」(リフォーム促進税制)です。どちらも令和8年度税制改正で期限が延び、投資型は令和10年12月31日まで(耐震改修は工事の期限、それ以外は居住開始の期限)、ローン型は令和12年12月31日までに居住を始めた分が対象です。この記事では、控除を受けられる工事の条件、いくら戻るかの計算例、確定申告に必要な書類、2年目以降の年末調整の扱いを、国税庁タックスアンサーNo.1211-4などの令和8年4月1日現在の記載と、国土交通省のリフォーム促進税制のページをもとに整理します。
まとめ|リフォームの確定申告で押さえる要点
- ローン型は年末残高等×0.7%を10年間差し引きます。借入限度額は2,000万円で、1年あたりの上限は14万円です。
- 投資型は工事の標準的な費用の10%を1回だけ差し引きます。耐震・省エネ・多世帯同居・子育て対応は250万円、バリアフリーは200万円までが10%の対象で、超えた部分と併せて行う工事は5%の対象です。
- 耐震改修以外はローン型と投資型のどちらか一方しか使えません。一度選んで申告すると、後から選び直せません。
- 最初の年は必ず確定申告が必要です。会社員でもローン型の2年目以降は年末調整で受けられますが、投資型はその年分だけで終わります。
- 固定資産税の減額は別の手続で、工事完了日から3か月以内に市区町村へ申告します。
確定申告で控除を受けられるリフォームの条件
控除の対象になるかは、工事の場所ではなく工事の中身と資金の出どころで決まります。浴室やトイレの交換でも、手すりの設置や段差の解消を伴えばバリアフリー改修になり、窓の断熱改修を含めば省エネ改修になります。同じ浴室の入れ替えでも、設備を新しくするだけなら投資型の対象外です。
| 工事の例 | 投資型の区分 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 耐震補強 | 耐震改修 | 昭和56年5月31日以前の建築 |
| 手すり・段差解消・浴室や便所の改良 | バリアフリー改修 | 50歳以上・要介護等 |
| 窓の断熱改修(必須)と床・壁・天井の断熱 | 省エネ改修 | 窓の改修を含む |
| キッチン・浴室・便所・玄関の増設 | 多世帯同居改修 | 2つ以上の室が複数になる |
| 対面式キッチン・防音・間取り変更など | 子育て対応改修 | 40歳未満の夫婦等 |
| 壁本体を直さないクロス張替え・設備の単体交換 | 対象外 | ローン型でも対象外 |
投資型の共通要件と工事ごとの対象者
耐震改修以外の投資型(住宅特定改修特別税額控除)は、国税庁No.1219・1220によると、次のすべてを満たす必要があります。
- 自分が所有し、住んでいる家屋の工事であること
- 工事の標準的な費用の額(補助金を差し引いた額)が50万円を超えること
- 工事の日から6か月以内に住み始めること
- 改修後の床面積が50㎡以上で合計所得金額2,000万円以下、または40㎡以上50㎡未満で合計所得金額1,000万円以下であること(40㎡台は令和8年1月1日以後の居住分から対象)
- 床面積の2分の1以上を自分の居住用に使い、工事費用の2分の1以上が自分の居住部分の工事であること
バリアフリー改修は、50歳以上の人、要介護・要支援の認定を受けた人、障害者、65歳以上の親族などと同居する人が対象で、年齢と同居は居住年の12月31日時点で判定します。子育て対応改修は、40歳未満で配偶者がいる人、40歳以上で40歳未満の配偶者がいる人、19歳未満の扶養親族がいる人が対象です。省エネ改修とバリアフリー改修は、前年以前3年以内に同じ住宅で同じ種類の控除を受けていると、原則として使えません。
耐震改修(住宅耐震改修特別控除)は要件が軽く、昭和56年5月31日以前に建築された自宅を令和10年12月31日までに現行の耐震基準に適合させれば、10%部分に床面積と所得の要件はありません。期限は居住開始日ではなく工事をした日で判定し、控除も工事をした年分で受けます。5%部分まで使う場合だけ、自己所有であることと合計所得金額2,000万円以下が求められます。
ローン型の対象工事と借入金の条件
ローン型(住宅借入金等特別控除の増改築等)は、性能向上を目的としない工事も対象になります。国税庁No.1211-4が挙げる対象工事は、増築・改築・大規模の修繕や模様替え、マンションの専有部分の床・階段・壁の過半の修繕、居室・キッチン・浴室・トイレ・洗面所・納戸・玄関・廊下のいずれか一室の床か壁の全部の修繕、耐震・バリアフリー・省エネの工事です。性能向上を伴わない間取りや内装の改修も入るため、投資型より対象が広くなります。ただし国土交通省の資料では、壁本体を改修しない単体のクロス張替え、既存の床材を残したままのフローリングの重ね張り、システムキッチン・給湯器・便器などの設備の単体交換は対象外とされています。石膏ボードの張替えのように壁材そのものを替える工事は対象です。
条件は、補助金を差し引いた工事費が100万円を超え、その2分の1以上が自分の居住部分の工事であること、返済期間10年以上の借入金があること、工事から6か月以内に住み、控除を受ける年の12月31日まで住み続けていることです。床面積と所得の要件は投資型と同じです。親族や知人からの借入金は対象外で、勤務先からの借入金も無利子か金利0.2%未満なら対象になりません。
ローン型と投資型の控除額の違い
| 項目 | ローン型 | 投資型 |
|---|---|---|
| 資金 | 返済10年以上のローン | 自己資金でも可 |
| 適用期限 | 令和12年12月31日居住分 | 令和10年12月31日(耐震は工事日) |
| 控除額 | 年末残高等×0.7% | 標準的な費用×10%+超過分×5% |
| 控除期間 | 10年 | 1年(その年分のみ) |
| 上限 | 年14万円 | 工事の種類で異なる |
| 2年目以降の年末調整 | 可 | なし |
投資型の控除額の計算式と工事別の控除対象限度額
投資型の控除額は「A×10%+B×5%」で計算します。Aは工事の標準的な費用の額(国が工事の種類ごとに定めた単価×施工面積等で、増改築等工事証明書に記載されます)で、下の控除対象限度額が上限です。Bは、標準的な費用のうち限度額を超えた部分と、併せて行ったその他の一定の工事費の合計で、1,000万円からAを引いた額が上限です。A×10%とB×5%は、それぞれ100円未満を切り捨てます。
| 工事の種類 | 控除対象限度額 | 10%部分の上限 |
|---|---|---|
| 耐震改修 | 250万円 | 25万円 |
| バリアフリー改修 | 200万円 | 20万円 |
| 省エネ改修 | 250万円(太陽光350万円) | 25万円(35万円) |
| 多世帯同居改修 | 250万円 | 25万円 |
| 子育て対応改修 | 250万円 | 25万円 |
| (耐震または省エネ)+耐久性向上 | 250万円(省エネで太陽光350万円) | 25万円(35万円) |
| 耐震+省エネ+耐久性向上 | 500万円(太陽光600万円) | 50万円(60万円) |
見落とされやすいのは、Bには「その工事の標準的な費用の額」という別の上限もある点です。国税庁No.1219は、Bを「(1)超過分とその他工事費の合計」と「(2)標準的な費用の額」のいずれか低い金額と定めています。たとえば省エネ改修の標準的な費用が180万円で、同時に行った工事のうち5%部分の対象になる工事費が220万円あった場合、Aは180万円、Bは220万円ではなく180万円になります。控除額は18万円+9万円=27万円です。どの工事が5%部分に入るかは、増改築等工事証明書の記載で確認します。耐震改修で5%部分を含めた最大62万5,000円(250万円×10%+750万円×5%)に届くのは、標準的な費用そのものが750万円以上ある大規模な工事に限られます。
ローン型の控除額と10年間の合計の目安
ローン型の控除額は、年末のローン残高と工事費(補助金と贈与税の非課税特例を受けた額を差し引いた額)のうち少ないほうに0.7%を掛け、100円未満を切り捨てます。上限は年14万円、10年で140万円です。
元利均等返済で4月に借り入れ、1年目は9回返済した前提で試算します。工事費400万円を金利2.0%・10年返済で借り入れた場合、1年目の年末残高は約373万円で控除額は26,000円、10年間の合計は137,000円です。同じ工事が上の省エネ改修の例に当てはまれば、投資型は1年で27万円です。この条件では、毎年の所得税額が控除額を上回る限り、投資型を選んだほうが戻る額は大きくなります。
同じ前提で工事費1,500万円を金利1.0%・20年返済で借り入れた場合は、1年目の控除額が101,400円、10年間の合計は791,800円です。投資型の控除額の上限は工事の種類により60万円から80万円で、前述のとおり5%部分にも標準的な費用の額という上限があります。全面改装でも性能向上工事の部分が小さければ投資型の控除額は伸びず、借入額の大きいローン型の合計額が上回りやすくなります。ただし、どちらも控除できるのはその年の控除前の所得税額までです。ローン型は所得税で引ききれない分を翌年度の住民税から差し引けますが(上限は課税総所得金額等の5%、年9万7,500円)、投資型は所得税だけが対象です。比較するときは、10年間に納める見込みの所得税・住民税の額も条件に入れます。
耐震改修以外は選択になる併用のルール
国土交通省のリフォーム促進税制のページは「リフォーム促進税制(所得税)と住宅ローン減税(増改築)の併用は不可」と案内していますが、耐震改修だけは例外です。国税庁No.1222は、住宅耐震改修特別控除と増改築等の住宅借入金等特別控除の両方の要件を満たせば両方を受けられるとしています。ただしその場合、耐震改修の控除は10%部分(A)だけになり、5%部分は使えません。
省エネ・バリアフリー・多世帯同居・耐久性向上・子育て対応の工事は、ローン型との選択です。国税庁No.1219は、投資型を選んで確定申告書を提出すると、その後も選択替えはできず、投資型を適用しなかった場合も同様だと明記しています。申告前に両方の金額を試算してから選ぶのが前提です。
リフォームの確定申告に必要な書類
| 書類 | 入手先 | 投資型 | ローン型 |
|---|---|---|---|
| 計算明細書 | 国税庁(作成コーナー) | 必要 | 必要 |
| 増改築等工事証明書 | 建築士等 | 必要 | 必要 |
| 登記事項証明書 | 法務局 | 不動産番号の記載で省略可 | 不動産番号の記載で省略可 |
| 年末残高等証明書 | 金融機関 | 不要 | 証明書方式のみ |
| 工事の請負契約書の写し | 施工会社 | 証明書発行時に使用 | 必要(調書方式は一部省略可) |
| 補助金の額がわかる書類 | 国・自治体 | 受けた場合 | 受けた場合 |
増改築等工事証明書の発行者と依頼のタイミング
増改築等工事証明書は、建築士事務所に属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人のいずれかが発行します。耐震改修は市区町村が発行する住宅耐震改修証明書でも代えられます。証明書の発行には工事請負契約書、工事費の内訳書、改修箇所の写真などが要るため、工事の契約時に「減税を使うので証明書を出してほしい」と施工会社へ伝えておくと、工事後に写真が足りず発行できない事態を避けられます。ローン型で建築確認を伴う増改築をした場合は、確認済証か検査済証の写しで証明書に代えられます。
補助金を受けたときの差し引き
国や自治体の補助金を受けた場合は、投資型の標準的な費用の額からも、ローン型の工事費からもその額を差し引きます。50万円超・100万円超の判定も差し引いた後の金額で行うため、工事費120万円で補助金30万円を受けたリフォームは、ローン型の100万円超要件を満たしません。補助金の交付決定通知書は確定申告まで保管しておきます。
確定申告の期限と手順
令和8年中に工事を終えて住み始めた分は、令和9年2月16日(火)から3月15日(月)までが確定申告の期間です。会社員などで還付を受けるだけの申告(還付申告)は、令和9年1月1日から提出できます。国税庁の確定申告書等作成コーナーで税額控除の入力に進み、増改築等工事証明書の金額や年末残高を入力すると、計算明細書も自動で作成されます。所得税の還付申告そのものの流れは還付申告の対象と5年の期限を解説した記事で詳しく扱っています。
2年目以降の年末調整と1回限りの投資型
ローン型は、最初の年に確定申告をすれば、給与所得者は2年目以降を年末調整で受けられます。従来の証明書方式では、税務署から届く「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」と、金融機関の年末残高等証明書を勤務先に提出します。調書方式に対応した金融機関で適用申請書を出していれば、金融機関が税務署へ年末残高等調書を提出するため、年末残高等証明書は不要です(国税庁No.1230)。リフォームでも新築や中古購入と同じ流れで、手続きの詳細は住宅ローン減税の確定申告の手順と必要書類の記事で確認できます。
投資型は、工事をして住み始めた年分の所得税から1回差し引いて終わる制度です。翌年以降に続く控除ではないため、年末調整で受ける場面はありません。
リフォームで減額される固定資産税の申告
固定資産税の減額は、税務署ではなく家屋がある市区町村への申告です。工事完了日から3か月以内に申告すると、翌年度分の固定資産税が減額されます。対象は令和13年3月31日までに行った工事です。減額されるのは家屋全体ではなく一定の床面積分までで、バリアフリーは100㎡、耐震・省エネ・長期優良住宅化は120㎡相当分が上限です。
| 工事 | 減額割合 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 耐震改修 | 2分の1 | 昭和57年1月1日以前から所在・工事費50万円超 |
| バリアフリー改修 | 3分の1 | 新築後10年以上・65歳以上等が居住 |
| 省エネ改修 | 3分の1 | 平成26年4月1日以前から所在・60万円超 |
| 長期優良住宅化改修 | 3分の2 | 増改築による長期優良住宅の認定 |
バリアフリー・省エネ・長期優良住宅化は床面積40㎡以上240㎡以下が条件で(40㎡への緩和は令和8年4月1日以後に完了した工事が対象)、バリアフリーと省エネは賃貸住宅が対象外です(国土交通省の各措置の資料)。所得税の投資型でバリアフリーは50歳以上が対象ですが、固定資産税は65歳以上(工事完了の翌年1月1日時点)が対象で、年齢の基準が違います。必要書類は自治体ごとに異なるため、申告書の様式は市区町村のサイトで確認します。
親からのリフォーム資金と贈与税の非課税
父母や祖父母からリフォーム資金の贈与を受けた場合、令和8年12月31日までの贈与であれば、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで贈与税が非課税です(国税庁No.4508)。増改築の工事費が100万円以上で、受贈者の合計所得金額が2,000万円以下などの要件があり、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告が必要です。この特例を使った金額は、ローン型の控除額を計算する工事費から差し引きます。
確定申告をしなかった場合と後から申告する方法
リフォームの控除を受けるための申告は任意です。申告しなければ控除を受けられないだけで、リフォームをしたこと自体を申告する義務はありません。申告を忘れた会社員は、翌年1月1日から5年間は還付申告で控除を受けられます(国税庁No.2030)。令和8年分なら令和13年12月31日までです。
すでに確定申告を出した後に控除を入れ忘れたと気づいた場合は、更正の請求で直します。期限は原則として法定申告期限から5年以内で、申告義務のない人が出した還付申告は、その申告書を提出した日から5年以内です。ただし、ローン型と投資型の両方の要件を満たしていた人が一方を選んで申告した場合は、後から他方へ切り替えることはできません。
よくある質問
お風呂やトイレのリフォームでも控除は受けられますか?
受けられる場合があります。浴槽をまたぎの低いものに替える、手すりを付ける、便器を座便式にするといった工事はバリアフリー改修として投資型の対象です。ただし本人が50歳以上であるなどの対象者要件と、標準的な費用50万円超の要件を満たす必要があります。設備を同じ機能のものに交換するだけなら、投資型の対象にはなりません。
リフォームの確定申告でいくら戻りますか?
投資型は工事の標準的な費用の10%が中心で、耐震や省エネで250万円分の工事なら25万円です。ローン型は年末残高等の0.7%で、年末残高等が400万円なら28,000円です。いずれもその年の控除前の所得税額が上限で、ローン型だけは引ききれない分を翌年度の住民税から差し引けます。
2年目以降も確定申告は必要ですか?
ローン型の会社員は2年目以降を年末調整で受けられます。個人事業主など年末調整のない人は毎年確定申告をします。投資型は1年で終わるため、2年目の手続きはありません。
マンションのリフォームも対象になりますか?
対象になります。床面積は登記事項証明書に記載された専有部分の面積で判定し、共用部分は含めません。ローン型では、専有部分の床・階段・壁の過半の修繕や、一室の床か壁の全部の修繕も対象工事です。
個人事業主はリフォーム代を経費にできますか?
経費にできるのは事業に使っている部分の工事費だけです。自宅兼事務所なら使用割合で按分し、建物の価値を高める工事は修繕費ではなく減価償却で数年に分けて経費にします。耐用年数の考え方は不動産の減価償却と耐用年数の記事で確認できます。居住部分の工事は、経費ではなく本記事の控除の対象です。