事業再構築補助金は原則として精算払です。補助事業が終わり、実績報告を出し、補助金額が確定してから入金されるため、設備の取得と補助金の受領が別の事業年度に分かれる「期ずれ」が普通に起こります。このとき圧縮記帳をいつ・いくらで行うかは、入金日ではなく補助金の返還を要しないことが確定した日で決まります。この記事では、中小企業基盤整備機構が国税庁に確認して公表した通知、法人税法42条から44条までの条文、補助事業の手引きに載っている財産処分の計算式を根拠に、期ずれの3パターンと仕訳を整理します。新規公募は2025年3月26日の第13回で終了しており、いま論点になるのは額の確定後の税務処理です。
まとめ:事業再構築補助金の圧縮記帳で押さえる5点
- 事業再構築補助金は法人税法42条の国庫補助金等に該当し、固定資産の取得に充てた部分だけが圧縮記帳の対象になります(中小企業基盤整備機構 令和3年8月11日通知)。技術導入費や専門家経費に充てた部分は対象外です。中小機構経由でも該当するのは、実質的に国から直接交付を受けたと認められるためです。
- 圧縮のタイミングは入金日ではなく、補助金の返還を要しないことが確定した日です。補助金等適正化法15条による額の確定通知を受けたものは、返還不要が確定したものとして扱われます(法人税基本通達10-2-1の注)。
- 資産の取得が先、補助金の確定が翌期なら、確定した期に法人税法42条で圧縮します。圧縮限度額は確定日の帳簿価額に補助割合を乗じた額です(法人税法施行令79条の2)。
- 概算払で補助金を受け取ったものの期末までに額が確定していないときは、43条の特別勘定に繰り入れて損金にし、翌期以後に44条で圧縮記帳へ振り替えます。
- 圧縮記帳は法人税の課税を繰り延べるだけで、償却資産税の取得価額や、財産処分のときに事務局へ納付する金額の計算には影響しません。
事業再構築補助金が圧縮記帳の対象になる根拠と、対象外になる経費
中小企業基盤整備機構が国税庁に確認した令和3年8月11日の通知
事業再構築補助金は国が直接交付する補助金ではなく、独立行政法人中小企業基盤整備機構から交付されます。この点が論点になったため、事務局側が中小企業庁を通じて国税庁に確認しています。公表された「中小企業等事業再構築促進補助金における圧縮記帳等の適用について」(令和3年8月11日・中小企業基盤整備機構)は、確認の経緯をこう書いています。
「中小企業等事業再構築促進補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構から補助対象者に交付されるものであり、直接的には国から補助対象者に補助金が交付されるものではないため、圧縮記帳等の適用可否について、中小企業庁を通じて国税庁に確認を行っておりました」
結論として「本補助金については、所得税法第42条又は法人税法第42条に規定する国庫補助金等に該当し、本補助金のうち固定資産の取得に充てるための補助金については、圧縮記帳等の適用が認められる旨の回答を受領」と明記されました。通知はA4で1枚のPDF(中小企業等事業再構築促進補助金における圧縮記帳等の適用について)で、本文と注記を合わせて読むと適用範囲を区別できます。
圧縮記帳の対象になる経費区分と対象外の経費
同じ通知は、対象外になる範囲も名指ししています。「本補助金のうち、技術導入費、専門家経費等の固定資産の取得以外に充てられた部分の金額については、所得税法第42条又は法人税法第42条の規定の対象外のため、圧縮記帳等の適用は認められません」という注記です。
事業再構築補助金の経費区分は建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、広告宣伝・販売促進費、研修費などに分かれています。このうち建物の建設・改修や機械装置の購入のように固定資産に計上される部分が圧縮記帳の対象で、ソフトウェアのように無形固定資産へ計上されるシステム構築費も同じ扱いです。ただし区分名だけでは判定できません。手引きの建物費には貸工場・貸店舗へ一時移転する際の賃借料や原状回復費が、機械装置・システム構築費にはリース・レンタルを指す「借用」に要する経費が含まれており、これらは資産に計上されないためです。技術導入費や専門家経費のように支出した期の費用になるものも、補助金だけが益金に立ち、圧縮する相手の資産がありません。
補助金額を経費区分ごとに按分し、固定資産に計上した区分に対応する金額だけを圧縮記帳の基礎にします。交付決定通知書と確定通知書の経費区分別の内訳がそのまま按分の根拠資料になるので、実績報告の控えを固定資産台帳と一緒に保管しておくと申告時に迷いません。
ほかの補助金へ同じ結論を広げる前の確認手順
この通知が出しているのは事業再構築補助金についての結論で、事務局経由の補助金すべてに自動で広がるわけではありません。法人税法施行令79条は、国と地方公共団体の補助金以外で国庫補助金等になるものを10号で限定列挙していますが、そこに並ぶのは高齢・障害・求職者雇用支援機構やNEDO、農畜産業振興機構など特定の機構の助成金だけで、中小企業基盤整備機構の名前はありません。条文の列挙だけを見て判断すると、対象外という誤った結論になります。
実質で判断してよい根拠は、国税庁の質疑応答事例「間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産の圧縮記帳の適用について」(令和7年8月1日現在)にあります。回答要旨は「間接交付される補助金であっても、補助金交付団体は国に代わって補助金の交付事務を行っているに過ぎず、実質的に国から直接交付を受けたものと認められる場合には、国庫補助金等に該当するものと考えられます」としています。照会の前提になっていたのは、国の補助金を財源としていること、交付決定に交付団体の裁量が入らないこと、国の監督の下で交付されること、交付された補助金が遅滞なく対象法人に交付されることの4点です。ものづくり補助金や省力化投資補助金のように事務局が挟まる補助金を扱うときは、この4点を交付規程で確認したうえで、固定資産の取得に充てた部分かどうかを見てください。
期ずれの処理時期|基準は入金日ではなく返還不要の確定日
期ずれの解説でよく見かける「圧縮記帳のタイミングは入金された期になる」という説明は、条文の書き方とずれています。法人税法42条1項も43条1項も、判断の基準にしているのは返還を要しないことが確定したかどうかです。法人税基本通達10-2-1の注は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条《補助金等の額の確定等》の規定により交付すべき補助金等の額が確定し、その旨の通知を受けた国庫補助金等は、返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当する」としています。つまり額の確定通知が基準日です。
事業再構築補助金は原則として精算払で、補助事業の手引きも「補助金の支払については、原則として、補助事業終了後に補助事業実績報告書の提出を受け、補助金額の確定後の精算払となります」と書いています。額の確定と入金はほぼ同じ時期に来ますが、資産の取得はそれより前です。期ずれの型は次の3つに分かれます。
| 状況 | 使う条文 | 圧縮限度額 |
|---|---|---|
| 取得と額の確定が同一事業年度 | 法人税法42条1項 | 返還不要が確定した補助金の額 |
| 資産の取得が先、額の確定が翌期以後 | 法人税法42条1項・施行令79条の2 | 確定日の帳簿価額×補助割合 |
| 概算払で受領、期末に額が未確定 | 法人税法43条1項(翌期以後に44条) | 特別勘定は補助金額以下、圧縮は施行令82条 |
資産の取得が先で、補助金の確定が翌期になるとき
精算払の事業再構築補助金では、資産を取得してから額の確定通知を受けるまでに決算期末をまたぐと、この型になります。資産を取得した期には補助金の益金も圧縮損も立たず、通常どおり減価償却だけを行います。翌期に額の確定通知を受けた時点で補助金を益金に計上し、同じ期に圧縮記帳を行います。
圧縮限度額は法人税法施行令79条の2が定めています。「その交付を受けた同項に規定する国庫補助金等の全部又は一部の返還を要しないことが確定した日における同項に規定する固定資産の帳簿価額」に、取得または改良に要した金額のうち返還不要となった補助金額が占める割合を乗じた金額です。取得価額そのものではなく、確定日の帳簿価額が基礎になる点が要注意です。すでに1期分の減価償却をしている分だけ、圧縮できる金額は補助金額より小さくなります。
機械装置を2,000万円で取得し、翌期に補助金1,000万円の額が確定した場合で計算します。定率法・耐用年数10年(償却率0.200)で1期分の償却400万円を計上済みなら、確定日の帳簿価額は1,600万円、補助割合は1,000万円÷2,000万円で0.5です。圧縮限度額は1,600万円×0.5=800万円になります。補助金1,000万円のうち800万円しか圧縮できず、差額200万円はその期の課税所得に残ります。この200万円は、補助金の確定前に取得価額2,000万円を基礎として400万円を償却していたことの裏返しです。先行取得のパターンをさらに詳しく確認したい場合は先行取得の圧縮記帳|補助金が期をまたぐ場合の圧縮限度額と別表で限度額の計算例と別表の記入まで解説しています。
概算払で受け取り、期末に額が確定していないとき
事務局の承認を得て概算払を受けた場合、補助金は手元にあるのに額が確定していない状態で決算期末を迎えることがあります。このときに使うのが法人税法43条1項の特別勘定です。条文は適用場面を「その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定していない場合に限る」と限定し、「その国庫補助金等の額に相当する金額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において特別勘定を設ける方法(政令で定める方法を含む。)により経理したときは、その経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する」としています。
ここで区別しておきたいのは、特別勘定の要件は「資産をまだ取得していないこと」ではなく「返還不要が確定していないこと」だという点です。資産の取得が済んでいても額が未確定なら特別勘定を使えますし、逆に額が確定していれば資産未取得でも特別勘定の出番はありません。特別勘定の経理方法には剰余金の処分による積立ても認められています(法人税法施行令80条)。
翌期に特別勘定を取り崩して圧縮記帳へ振り替えるとき
特別勘定は、返還すべきことまたは返還を要しないことが確定した時点で取り崩し、取り崩した額を益金に算入します(法人税法43条2項・3項、施行令81条1号)。額が確定して取り崩す期に、同じ資産について法人税法44条1項で圧縮記帳を行えば、益金と圧縮損が相殺されます。
44条の圧縮限度額は施行令82条で計算します。条文は「返還を要しないことが確定した日における同項に規定する特別勘定の金額のうち、同日における同項に規定する固定資産の帳簿価額」に補助割合を乗じた金額としており、特別勘定の残高が上限になる二段構えです。先ほどの例で、概算払1,000万円を特別勘定に繰り入れた翌期に機械装置2,000万円を取得し、同じ期に額が確定したとすると、帳簿価額2,000万円×0.5=1,000万円と特別勘定1,000万円のいずれも1,000万円なので、全額を圧縮できます。
直接減額方式と積立金方式の仕訳
直接減額方式の圧縮損と帳簿価額の減額
固定資産の帳簿価額を直接減らす方法です。法人税法42条1項は「その帳簿価額を損金経理により減額し」と規定しているため、確定した決算で費用または損失として経理する必要があります。額の確定と取得が同一事業年度で、補助金1,000万円・機械装置2,000万円のケースは次のようになります。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 設備の取得 | 機械装置 20,000,000 | 当座預金 20,000,000 |
| 補助金の額の確定・入金 | 当座預金 10,000,000 | 国庫補助金収入 10,000,000 |
| 圧縮記帳 | 固定資産圧縮損 10,000,000 | 機械装置 10,000,000 |
表は額の確定と入金を1行にまとめています。確定が先で入金が翌月以降になる場合は、確定時に「未収入金1,000万円/国庫補助金収入1,000万円」、入金時に「当座預金1,000万円/未収入金1,000万円」と分けて記帳します。補助金収入1,000万円と固定資産圧縮損1,000万円が相殺され、その期の課税所得への影響はゼロになります。機械装置の帳簿価額は1,000万円まで下がり、翌期以後の減価償却費もその金額を基礎に計算します。圧縮損の勘定科目は固定資産圧縮損のほか国庫補助金圧縮損なども使われますが、いずれも特別損失に区分するのが一般的です。
積立金方式の仕訳と税効果会計の調整
帳簿価額を動かさず、税務上だけ損金を認識する方法です。法人税法42条1項は「その圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法(政令で定める方法を含む。)により経理したとき」も損金算入の対象としており、施行令80条が「これらの規定に規定する決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法」を認めています。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 補助金の額の確定・入金 | 当座預金 10,000,000 | 国庫補助金収入 10,000,000 |
| 圧縮積立金の積立(剰余金の処分) | 繰越利益剰余金 10,000,000 | 圧縮積立金 10,000,000 |
積立ては損益計算書を通さず、繰越利益剰余金から圧縮積立金へ振り替えます。損益計算書には補助金収入だけが残るので、会計上の利益は補助金の分だけ増え、税務上は別表で減算する形になります。税効果会計を適用している会社は、企業会計基準適用指針第28号15項により、繰延税金負債を控除した後の金額で圧縮積立金を積み立て、減価償却に応じて毎期取り崩します。取り崩した額は益金に算入され、対応する繰延税金負債も取り崩します。減価償却に係る申告調整まで含めれば、直接減額方式と最終的な税負担は変わりません。
どちらを選ぶかは、補助金で取得した資産の帳簿価額を財務諸表上いくらで見せたいかで決まります。金融機関へ提出する決算書で資産の実額を残したい、株主資本等変動計算書で補助金の使途を示したいという事情があれば積立金方式、処理の手数を減らしたいなら直接減額方式が向きます。
期ずれで特別勘定を使う場合の仕訳
概算払1,000万円を受け取り、期末に額が未確定というケースです。
| 時期 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| X1期 概算払の受領 | 当座預金 10,000,000 | 国庫補助金収入 10,000,000 |
| X1期 期末(額が未確定) | 特別勘定繰入額 10,000,000 | 国庫補助金等特別勘定 10,000,000 |
| X2期 資産の取得 | 機械装置 20,000,000 | 当座預金 20,000,000 |
| X2期 額の確定(特別勘定の取崩し) | 国庫補助金等特別勘定 10,000,000 | 特別勘定戻入額 10,000,000 |
| X2期 圧縮記帳 | 固定資産圧縮損 10,000,000 | 機械装置 10,000,000 |
X1期は繰入額が損金になり、補助金収入と相殺されます。X2期は戻入額が益金、圧縮損が損金で相殺されます。特別勘定は貸借対照表の負債の部に表示します。
圧縮後の取得価額と減価償却への影響
圧縮記帳で損金に算入した金額は、その固定資産の取得価額に算入しません。法人税法施行令80条の2第1項は、42条の適用を受けた場合に損金算入された金額と、すでに償却費として損金に算入された金額の累積額に施行令79条の2の割合を乗じた金額を加算した金額について「当該固定資産の取得価額に算入しない」と定めています。減価償却資産の償却計算に使う取得価額についても、施行令54条3項が同じ構造のみなし規定を置いています。
先ほどの先行取得の例に当てはめます。圧縮限度額800万円を損金に算入し、既償却額400万円×補助割合0.5=200万円を加算すると1,000万円になり、取得価額2,000万円から1,000万円が落ちて1,000万円が税務上の取得価額です。補助金1,000万円がそのまま取得価額から控除された形になります。圧縮しきれなかった200万円は、将来の償却費で取り戻せる金額ではありません。補助金の確定を織り込んだ取得価額1,000万円で計算していれば前期の償却は200万円だったところ、実際には400万円を落としていたため、その差がここで課税所得に戻る形になります。以後の償却費も税務上の取得価額1,000万円を基礎に計算するため、帳簿価額との差は償却超過額として申告調整に残ります。
圧縮記帳は税金そのものを減らす制度ではなく、適用した期の課税所得を減らすかわりに、その後の償却費を減らして課税を将来へ繰り延べる制度です。使うかどうかの判断材料は後半のよくある質問にまとめました。制度そのものの位置づけを確認したい場合は圧縮記帳とは?当初申告要件と損金経理の要件、補助金の仕訳を条文で整理を参照してください。
適用要件は確定申告書への明細の記載
圧縮記帳は決算処理をすれば自動的に認められるものではありません。法人税法42条3項は「確定申告書に同項に規定する減額し又は経理した金額に相当する金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する」と定めています。43条4項、44条2項も同じ構造です。明細とは別表十三(一)(国庫補助金等、工事負担金及び賦課金で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書)で、令和8年4月1日以後終了事業年度分の記載の仕方にも「この明細書のⅠは、法人が法第42条から第44条までの規定の適用を受ける場合に記載します」と書かれています。特別勘定の繰入と翌期繰越も同じ別表のⅠの欄で処理します。
記載を忘れた場合の救済として、42条4項に「その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるとき」に税務署長が適用できる宥恕規定があります。ただしこれは記載のない確定申告書を提出した場合の規定で、申告後に修正申告で後から圧縮記帳を追加できるという意味ではありません。欄ごとの具体的な書き方は別表十三(一)(別表13(1))の記載例|国庫補助金の圧縮記帳を欄番号順に書くにまとめています。
財産処分・返還・償却資産税への圧縮記帳の影響
新規応募申請は第13回公募をもって終了し、公式サイトのトップページにも「本補助金の公募は終了しております。」と掲示されています。後継の中小企業新事業進出補助金も公募を終え、新規の受付は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ移りました。いま論点になるのは、実績報告を経て額が確定した後の申告と、事業化状況報告や財産処分の場面で、圧縮記帳による帳簿価額の減額を反映するかどうかの区別です。
財産処分の納付金計算で圧縮記帳が考慮されない理由
単価50万円(税抜き)以上の機械設備等は処分制限財産となり、処分制限期間内に譲渡や廃棄をするときは事前に事務局の承認が必要で、承認後に補助金の一部を納付します。この納付額は補助事業の手引き(第12回〜第13回の補助事業者向け1.2版・令和8年3月。第10回〜第11回向けの2.3版も同文)の算式D=A×C/Bで計算します。Dが納付金額、Bが当該処分財産に係った補助対象経費、CがBに対する補助金の確定額です。Aは処分の方法で変わり、有償譲渡・有償貸付では処分制限財産に係る補助金額を上限に譲渡額または貸付額、目的外使用・無償譲渡・無償貸付等では残存簿価相当額を使います。手引きはその残存簿価相当額について「なお、この算定にあたって、圧縮記帳は考慮しません。残存簿価相当額 = 取得価額(税抜き) - 減価償却費(累計金額)」と明記しています。
残存簿価相当額を使う処分では、圧縮記帳で帳簿価額を1,000万円まで下げていても、圧縮前の取得価額2,000万円から償却累計額を引いた金額が基礎になります。自社の固定資産台帳の簿価をそのまま当てはめると納付額を過小に見積もることになるため、圧縮前の取得価額を別途記録しておく必要があります。差し引く減価償却費についても、手引きは機械装置等について「補助事業者が独自に採用する会計基準(圧縮記帳等)に関わらず、原則として「イ」に定率法の償却率を用いて減価償却費を計算してください」とし、建物及び建物付属設備は定額法を原則としています。処分制限期間は減価償却資産の耐用年数等に関する省令を準用します。決算書の償却費と一致するとは限らないため、報告用の計算を別に確認してください。
収益納付の条件と消費税分の返還の切り分け
交付規程27条は、事業化状況報告で収益が生じたことを確認したときに補助金額を上限とする納付を命じることができるとし、報告の決算が赤字の場合は免除するとしています。この条項が付いていること自体は、圧縮記帳の判定に影響しません。法人税基本通達10-2-1が、交付の条件に違反した場合には返還しなければならないこと、一定期間内に相当の収益が生じた場合には返還しなければならないことという一般的条件について、「返還を要しないことが確定しているかどうかの判定には関係がないものとする」と明示しているためです。
一方、交付規程21条の消費税等仕入控除税額の返還は、これとは別に扱う必要があります。こちらは一般的条件ではなく、確定した補助金額そのものが後から減る話だからです。消費税等仕入控除税額は交付申請の段階であらかじめ補助対象経費から減額しておくのが原則ですが、消費税の申告で税額が固まった後に差額の返還命令を受けることがあります。圧縮の基礎になるのは確定通知に書かれた金額なので、返還が生じたときは返還の理由と時期、採用した圧縮の方式を確認したうえで処理を決め、金額が大きい場合は申告前に所轄税務署または顧問税理士へ相談してください。
償却資産税の申告に使う圧縮前の取得価額
固定資産評価基準第3章第1節六は、償却資産の取得価額の算定について、法人税法42条から50条まで及び142条の規定により損金に算入される額、所得税法42条から44条まで及び165条の規定により総収入金額に算入しない額は「当該償却資産の取得価額に含めて算定するものとし」と定めています。圧縮記帳で落とした金額を取得価額に戻して評価するという意味で、圧縮記帳をしても償却資産税は1円も下がりません。法人税の別表と償却資産申告書で取得価額が食い違うのは正しい状態です。
よくある質問
個人事業主でも事業再構築補助金の圧縮記帳はできますか?
できます。中小企業基盤整備機構の通知が所得税法42条にも触れているとおりで、個人の場合は圧縮記帳ではなく総収入金額不算入という形を取ります。所得税法42条1項は「その国庫補助金等の返還を要しないことがその年十二月三十一日までに確定した場合に限る」とし、その年の12月31日までに交付目的に適合した固定資産を取得または改良したことを要件としています。年末までに額が確定しないときは43条の条件付国庫補助金等として、その年の総収入金額に算入しません。法人の事業年度末が基準になるのに対し、個人は12月31日で切る点が違います。
交付決定の通知を受けた時点で圧縮記帳できますか?
できません。交付決定は補助事業の実施を認める決定で、補助金額が確定したわけではないためです。基準になるのは補助金等適正化法15条による額の確定通知で、法人税基本通達10-2-1は、交付の条件に違反した場合には返還しなければならないといった一般的な条件が付されていても返還不要の確定の判定には関係がないとしたうえで、注で額の確定通知を受けたものが返還不要の確定した国庫補助金等に該当するとしています。実績報告を出して確定通知を受けるまでは、概算払を受けていても補助金は確定していないため、期末に返還不要が確定していなければ特別勘定による損金算入を選べます。
補助金に消費税はかかりますか?
補助金は資産の譲渡等の対価ではないため、消費税の不課税取引です。国税庁のタックスアンサーNo.6157も、課税対象にならないものの例として国または地方公共団体からの補助金や助成金等を挙げています。ただし補助対象経費の側には注意が必要で、補助事業の手引きは「補助事業者が課税事業者(免税事業者及び簡易課税事業者以外)の場合は」という条件を付けたうえで、「課税仕入の際の消費税等相当額について、原則としてあらかじめ補助対象経費から減額しておくこととします」と定めています。この扱いを受ける会社では消費税等仕入控除税額を差し引いた金額が補助対象経費になるため、圧縮記帳の基礎も税抜きの経費に対応した補助金額になります。免税事業者や簡易課税を選んでいる場合は前提が変わるので、確定通知の内訳で確認してください。
圧縮記帳をしないという選択はありますか?
あります。圧縮記帳は確定申告書に明細を記載した場合に適用する任意の制度で、使わなければ補助金の全額がその期の益金になります。繰越欠損金が十分にある会社、当期の所得が少なく翌期以後に利益が伸びる見込みの会社では、あえて使わずに欠損金と相殺したほうが有利になる場合があります。判断材料は欠損金の残高と繰越期限(平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金は10年)、補助金額、翌期以後の所得見込みの4つです。なお圧縮記帳を使わなくても、財産処分時の納付額や償却資産税の計算には影響しません。
ソフトウェアやシステム構築費も圧縮記帳の対象になりますか?
固定資産に計上されるものであれば対象になります。通知は「固定資産の取得に充てるための補助金」と書いており、有形か無形かを区別していません。機械装置・システム構築費のうち自社利用のソフトウェアとして無形固定資産に計上した部分は対象で、保守費用のように支出した期の費用になるものは対象外です。補助金の種類ごとの対象経費はシステム開発で使える補助金一覧【2026年版】種類・補助額・対象経費と申請の流れで比較できます。