税務調査や申告の誤りで「追徴課税」が発生すると、納め足りなかった本税に加えて、加算税と延滞税が上乗せされます。加算税の税率は、税務署から調査の通知を受ける前に自分で直したか、仮装・隠蔽があったかによって原則0%から40%まで開きます。延滞税は令和8年中なら年2.8%と年9.1%の2段階です。この記事では国税通則法と国税庁の資料をもとに、それぞれの税率、本税50万円の場合の実額、納付期限、払えないときや納得できないときの手続きを順に説明します。
まとめ:追徴課税の金額を決める分岐
- 追徴課税は法律上の用語ではなく、本税+加算税+延滞税をまとめた呼び方です。
- 加算税は調査通知の前か後かで変わります。過少申告の基本割合は、調査による更正を予知せず通知前に自主修正した場合が0%、通知後でも更正を予知する前なら5%、更正を予知した後は10%、重加算税の要件を満たす場合は35%です。
- 延滞税は令和8年中が年2.8%(納期限の翌日から2か月以内)と年9.1%(それ以降)です。修正申告は提出した日が納期限になるため、その日に納めれば各年の低い方の割合が適用されます。令和8年中の対象期間は2.8%ですが、年をまたぐ場合は年ごとに分けて計算します。
- 期限内申告後の修正申告や更正による増差税額では、原則として法定申告期限から1年を経過した日の翌日から修正申告書の提出日または更正通知書の発送日までが延滞税の計算から外れます。ただし偽りその他不正の行為があった場合は、この特例が使えません。
- 「1か月以内に払う」のは更正・決定の通知を受けた場合です。修正申告の場合は提出日が納期限です。
- 一括納付で事業や生活の維持が困難になる場合は、納期限から6か月以内に換価の猶予を申請し、誠実な納税意思などの要件を満たして認められると分割納付でき、猶予期間中の延滞税は令和8年で年1.3%に下がります。
追徴課税の内訳と、似た言葉との違い
本税・加算税・延滞税の役割
国税通則法には「追徴課税」という言葉はありません。実際に請求されるのは次の3つです。
- 本税:最初から正しく申告していれば納めていた税額との差額です。
- 加算税:申告や納付の義務を果たさなかったことへの行政上の制裁です。過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税の4種類があります(通則法65条〜68条)。
- 延滞税:本税を期限までに納めなかった日数に応じてかかる、利息のような税です(通則法60条)。
加算税と延滞税は「附帯税」の一部です。この2つは法人税の損金にも所得税の必要経費にも算入できません。附帯税には利子税も含まれ、利子税の損金・必要経費への算入は別の扱いです。追徴された年に費用として落とせない点は、資金繰りの試算で見落とされがちです。
国税庁の公表では、令和6事務年度の実地調査1件当たりの追徴税額(調査の対象になった全年分の合計)は、所得税で241万円、法人税・法人消費税で634万2千円でした。
過怠税・刑法の追徴金・罰金は別の制度
名前は似ていても、次の3つは追徴課税とは別の制度です。
過怠税は印紙税だけにある制度です。契約書などに収入印紙を貼らなかった場合、本来の印紙税額の3倍(本来の額とその2倍の合計)が徴収されます。調査を受ける前に自分から「印紙税不納付事実申出書」を出せば1.1倍に軽くなり、貼った印紙に消印をしなかった場合は印紙の額面と同額です(国税庁タックスアンサーNo.7131)。過怠税も損金・必要経費に算入できません。
追徴金は刑法19条の2の刑罰です。犯罪で得た物を没収できないときに、その価額を取り上げます。税務署が課す加算税とは法律も手続きも異なります。罰金も刑事裁判で科される刑罰で、脱税で起訴された場合に問題になります(後述)。
加算税4種類の税率(令和8年時点)
加算税の税率は「調査の通知を受けたか」「調査による更正を予知していたか」で段階が分かれます。ここでいう調査通知は、実地の調査を行う旨、対象税目、対象期間を知らせる通知です。日時などを知らせる事前通知とは区別され、日程調整の段階で行われることがあります。
| 種類 | 更正・決定を予知した後 | 調査通知後・予知前 | 通知前の自主申告 |
|---|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 10%(超過部分15%) | 5%(超過部分10%) | 0% |
| 無申告加算税 | 15%・20%・30% | 10%・15%・25% | 5% |
| 不納付加算税 | 10% | 10% | 5% |
| 重加算税 | 35%(無申告は40%) | – | – |
加算税の計算の元になる税額は1万円未満を切り捨てます。計算した加算税が5,000円未満なら課されません。不納付加算税は源泉徴収した所得税を期限までに納めなかった場合の加算税で、通知の有無ではなく「告知を予知してされたか」で10%と5%に分かれます。
過少申告加算税の15%部分と自主修正の0%
期限内に申告したものの税額が少なかった場合に課されます。税率は増えた本税の10%ですが、増えた本税のうち「期限内申告税額」と「50万円」のいずれか多い額を超える部分には15%がかかります(通則法65条2項)。たとえば期限内申告税額が100万円で本税が300万円増えたなら、10%×300万円+5%×200万円=40万円です。
調査通知前で、調査による更正を予知せず自主的に修正申告した場合は過少申告加算税がかかりません。通知後でも、更正を予知する前の修正申告なら5%(通常15%となる部分は10%)です。課税要件や「正当な理由」がある場合の扱いは過少申告加算税の仕組みと課税要件の解説で詳しく扱っています。
無申告加算税の3段階と300万円超の30%
期限までに申告しなかった場合の税率は、納付すべき税額のうち50万円以下の部分が15%、50万円超300万円以下の部分が20%、300万円超の部分が30%です。30%の段階は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が来る国税から適用されています。
調査通知より前に自分から期限後申告すれば5%に下がります。さらに、期限内に申告する意思があったと認められ、法定申告期限から1か月以内に申告した場合は無申告加算税が課されません(通則法66条9項)。この不適用には、1か月以内の自主的な申告に加え、原則として法定納期限までの全額納付と、過去5年間に無申告加算税・重加算税の賦課やこの不適用を受けていないことが必要です。条件の細目は国税庁のタックスアンサーNo.2024に載っています。
重加算税の35%・40%と、繰り返しによる10%加重
売上を別口座に隠す、架空の経費を計上するなど、事実を隠したり偽ったりして申告していた場合は、過少申告加算税の代わりに35%、無申告加算税の代わりに40%の重加算税が課されます(通則法68条)。
同じ税目で過去5年以内に一定の無申告加算税(自主的な期限後申告に対する5%のものを除きます)や重加算税を課された場合などには、今回の無申告加算税・重加算税に10%が上乗せされることがあります(通則法66条・68条4項)。令和6年1月1日以後に法定申告期限が来る国税では、前年分・前々年分にも無申告加算税(またはそれに代わる重加算税)が課された、または課されるべきと認められる場合にも、同じく10%が加算されます。また、職員から帳簿の提示を求められて提示しなかった場合や、対象帳簿の売上金額等の記載が本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合は、対象となる増差税額に10%が加算されます。2分の1以上3分の2未満の場合は5%です(通則法65条4項)。「仮装・隠蔽」の典型パターンと認定の傾向は重加算税が課される仕組みの解説にまとめています。
延滞税の計算:令和8年は年2.8%と年9.1%
2.8%の期間と9.1%の期間の境目
延滞税の本則は年7.3%と年14.6%ですが、実際には毎年、市中金利をもとにした「延滞税特例基準割合」で引き下げられています。国税庁のタックスアンサーNo.9205「延滞税について」によると、令和8年1月1日から12月31日までの割合は次のとおりです。
| 期間 | 令和7年 | 令和8年 |
|---|---|---|
| 納期限の翌日から2か月以内 | 2.4% | 2.8% |
| 2か月を経過した日以後 | 8.7% | 9.1% |
低いほうの割合がかかるのは「法定納期限の翌日から納期限まで」と「納期限の翌日から2か月を経過する日まで」です。修正申告や期限後申告では、申告書を提出した日が納期限になります。つまり、修正申告した日に納めれば、延滞税の対象期間には各年の低い方の割合が適用されます。令和4年から令和7年までの期間は2.4%、令和8年中の期間は2.8%で計算します。9.1%がかかるのは、修正申告から2か月を過ぎても納めなかった場合です。
計算式は「本税(1万円未満切り捨て)×割合×日数÷365」です。年をまたぐ場合はその年の割合で分けて計算します。算出した延滞税が1,000円未満なら納める必要はなく、1,000円以上なら100円未満を切り捨てます。起算日の考え方や期限後申告での計算例は延滞税の発生条件と課税開始の仕組みで解説しています。
1年を超えた期間が数えられない「除算期間」
期限内に申告していた人が、法定申告期限から1年以上たってから修正申告や更正を受けた場合、1年を経過した日の翌日から修正申告書を提出した日(更正なら更正通知書を発送した日)までの期間は延滞税の計算に含めません(通則法61条1項)。
この特例は、偽りその他不正の行為で税を免れていた場合(隠蔽・仮装で重加算税の対象になるケースなど)には適用されません。数年前の年分が見つかったとき、延滞税の差は次の計算例のように2.7倍にもなります。
本税50万円の申告漏れで比べる追徴額
令和7年分の所得税で本税が50万円不足していた個人事業主を例に計算します。法定納期限は令和8年3月16日です。令和8年10月15日に修正申告(無申告の場合は期限後申告)をして、同じ日に納付したとします。期限内申告税額は50万円以下とします。また、帳簿の不提示・記載不備、過去の賦課歴、前年・前々年の無申告などによる加重措置は適用されない前提です。
| ケース | 加算税 | 延滞税 | 本税込みの合計 |
|---|---|---|---|
| 調査通知前に自主修正 | 0円 | 8,100円 | 508,100円 |
| 調査通知後・更正の予知前に修正 | 25,000円(5%) | 8,100円 | 533,100円 |
| 更正の予知後に修正 | 50,000円(10%) | 8,100円 | 558,100円 |
| 無申告で調査後に申告 | 75,000円(15%) | 8,100円 | 583,100円 |
| 仮装・隠蔽あり | 175,000円(35%) | 8,100円 | 683,100円 |
延滞税は、3月17日から10月15日までの213日間を2.8%で計算しています(50万円×2.8%×213÷365=8,169円、100円未満切り捨てで8,100円)。自主修正と仮装・隠蔽ありとの差は17万5,000円で、そのすべてが加算税の差です。この例の期間なら、延滞税は加算税に比べて小さく、大きな差は出ません。
差が大きく開くのは古い年分です。同じ本税50万円が令和5年分(法定納期限は令和6年3月15日)で、令和8年10月15日に修正申告して同日に納付した場合を比べます。
- 期限内申告あり・重加算税なし:除算期間があるので、計算期間は令和6年3月16日から令和7年3月15日までの365日です。50万円×2.4%×365÷365で12,000円です。
- 重加算税の対象:除算されないため、944日分(令和6年は2.4%で291日、令和7年は2.4%で365日、令和8年は2.8%で288日)を計算します。合計は32,600円になり、これに重加算税175,000円が加わります。
申告漏れに気づいた時点で、調査通知を待たずに修正申告して同じ日に納めるのが、加算税と延滞税の両方を最も小さくする方法です。所得税の所得が変わると住民税や個人事業税も計算し直しになり、地方税側でも延滞金(令和8年は納期限から1か月以内が2.8%、それ以降が9.1%)がかかります。
追徴課税の通知から納付までの期限
修正申告は提出日、更正・決定は1か月後が納期限
実地調査が終わると、税務署は非違(誤り)があった場合に、その内容と金額を説明し、修正申告や期限後申告を勧めます(通則法74条の11第2項・第3項)。ここからの流れは、修正申告に応じるかどうかで分かれます。
- 修正申告に応じる:申告書を提出した日が本税の納期限です(通則法35条2項1号)。加算税は後日「賦課決定通知書」が届き、発送日の翌日から1か月以内に納めます。
- 応じない:税務署が更正または決定をします。本税の納期限は、更正通知書などを発送した日の翌日から起算して1か月を経過する日です(同条2項2号)。
「追徴課税は1か月以内に納付」と一律には判断できません。修正申告による本税は提出日が納期限で、更正・決定や加算税の賦課決定とは区別する必要があります。調査が終わってから結果が出るまでの期間は税務調査の結果が出るまでの期間の解説、何年前までさかのぼって追徴されるかは個人事業主の税務調査は何年さかのぼるかで扱っています。
修正申告後の不服申立ての制限と更正の請求
修正申告は自分で税額を確定させる行為なので、あとから再調査の請求や審査請求で争えません。税額を減らすための通常の手続きは、原則として法定申告期限から5年以内に行う「更正の請求」です。一定の後発的理由がある場合には、その事実が生じた日の翌日から2か月以内に請求できる特例もあります。税務署職員は、修正申告を勧めるときにこの点を説明し、書面を交付しなければなりません(通則法74条の11第3項)。
指摘内容に納得できない場合は修正申告に応じず、更正を受けてから争うことができます。ただし、不服申立てをしても納付義務や徴収手続きが自動的に止まるわけではありません。更正通知書を受け取った日の翌日から3か月以内に、税務署長への再調査の請求か、国税不服審判所への審査請求をします。修正申告そのものの手続きや、応じるかどうかの判断材料は税務調査で指摘される修正申告の解説を参照してください。
追徴課税を一括で払えないときの換価の猶予
追徴課税も原則は一括納付ですが、一時に納めると事業の継続や生活が難しくなる場合は「換価の猶予」を申請できます。申請期限は納期限から6か月以内で、猶予期間は原則1年です。認められると分割で納付でき、猶予期間中の延滞税は令和8年で年1.3%に軽減されます。ただし、軽減されるのは猶予期間の開始日(通常は申請書を提出した日)からで、それより前の期間は通常の割合で計算されます。
換価の猶予には「猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと」という要件がありますが、申請中や猶予中の国税はこの判定から除かれます(国税徴収法151条の2第2項)。所得税と消費税を両方滞納しているときは、それぞれの申請期限を確認したうえで、あわせて申請してください。制度の概要は国税庁のタックスアンサーNo.9206で確認できます。必要書類や審査で不許可になる場面は消費税が払えないときの換価の猶予と分割納付の手順で解説しています。滞納を放置すると、督促状が発送された日から10日を経過した日までに完納しない場合、財産の差押えに進みます(国税徴収法47条)。
申告漏れ・所得隠し・脱税の境界
報道では「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」が使い分けられていますが、その違いは課される制裁の違いです。
- 申告漏れ:計算ミスや解釈の誤りによる過少申告です。過少申告加算税(10%・15%)の対象です。
- 所得隠し:仮装・隠蔽を伴う申告漏れです。重加算税(35%・40%)の対象となり得ます。所得を隠した行為が脱税罪の要件も満たせば、刑事責任を問われる場合があります。
- 脱税:「偽りその他不正の行為」で税を免れた犯罪です。国税局査察部の調査を経て検察に告発され、刑事裁判で刑罰が科されます。
所得税の場合、所得税法238条1項は「十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定めています。免れた税額が1,000万円を超えると、情状により罰金をその免れた税額まで引き上げられます(同条2項)。刑事罰を受けても、本税・重加算税・延滞税の納付義務は消えません。税務調査全体の目的や種類は税務調査の定義と基本的な仕組みで整理しています。
よくある質問
追徴課税の通知はいつ来ますか?
税務調査を受けた場合は、調査終了時に非違の内容と金額が説明され、修正申告を勧められるのが通常です。修正申告に応じなければ、後日、更正通知書が郵送されます。加算税の賦課決定通知書は、修正申告や更正から少し遅れて届きます。実地調査がなくても、電話や文書で申告内容の確認を求められ、修正申告を勧められることがあります。国税庁の令和6事務年度の実績では、「所得税の調査等の状況」に掲載された簡易な接触は689,440件で、同表の実地調査46,896件の約15倍でした。なお、この実地調査件数は所得税と消費税の件数で、消費税の簡易な接触は別表に掲載されています。
追徴課税は分割で払えますか?
原則は一括納付です。ただし、一時に納めると事業の継続や生活に支障が出る場合は、納期限から6か月以内に換価の猶予を申請すると、原則1年の範囲で分割納付が認められます。猶予期間中の延滞税は令和8年で年1.3%です。災害や病気、事業の著しい損失があった場合は、別に納税の猶予という制度もあります。まずは所轄の税務署の徴収担当に相談してください。
追徴課税は経費や損金にできますか?
本税のうち法人税・所得税・住民税は、もともと損金・必要経費になりません。加算税と延滞税(附帯税)、印紙税の過怠税も、法人税の損金にも所得税の必要経費にも算入できません。追徴額を払ったから翌期の税金が減る、という前提で資金計画を立てないようにしてください。
申告漏れが1,000万円だと追徴課税はいくらですか?
申告漏れ「所得」1,000万円なのか、不足した「本税」1,000万円なのかで大きく変わります。本税が1,000万円不足し、期限内申告税額が100万円だった場合、過少申告加算税は10%×1,000万円+5%×900万円で145万円です。仮装・隠蔽があれば、重加算税は35%の350万円になります。これに延滞税が加わり、さらに所得税なら住民税の追加分も発生します。
追徴課税に時効はありますか?
税務署が更正できる期間は、原則として法定申告期限から5年です。偽りその他不正の行為があった場合は7年に延びます(通則法70条)。確定した税金を徴収する権利は、法定納期限から5年で時効により消滅します(通則法72条1項)。ただし、督促や差押えなどで時効の完成が猶予・更新されるため、放置して逃げ切れることはまずありません。