スマホ新法とは何か?2025年12月18日施行のスマホソフトウェア競争促進法でスマホ利用環境に何が変わるのか徹底解説
スマホ新法とは何か?2025年12月18日施行のスマホソフトウェア競争促進法でスマホ利用環境に何が変わるのか徹底解説
スマホ新法とは、正式名称を「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」といい、2025年12月18日から施行される新しい法律です。この法律は、日本のスマートフォン市場における公正な競争を促進し、スマホユーザーの選択肢を拡大することを目的としています。従来、スマホのOSやアプリ配信市場はAppleとGoogleの2社によって支配され、ユーザーは各社の公式ストア経由でしかアプリを入手・決済できない状況でした。スマホ新法の施行によってこうした寡占状態にメスを入れ、アプリストアや決済方法、標準アプリの設定ルールが大きく見直されます。
具体的には、スマホ新法ではスマホの基本ソフトウェアと関連サービス4分野(OS、アプリストア、Webブラウザ、検索エンジン)における競争環境を改善する規定が設けられています。この4つの「特定ソフトウェア」について、市場で大きな支配力を持つ事業者による独占的・排他的な行為を制限し、他の事業者やサービスが参入・提供しやすくすることが狙いです。2025年3月には公正取引委員会により、Apple(および同社子会社のiTunes)とGoogleの3社が「特定ソフトウェア事業者」として指定されました。これにより、AppleとGoogleは自社が提供するOS・アプリストア・ブラウザ・検索エンジンに関して、新法に定められた競争促進ルールを遵守する義務を負うことになります。
2025年12月18日の施行に至るまでには、約1年半にわたる準備期間がありました。新法は2024年6月に国会で可決・成立し、公正取引委員会が詳細なガイドライン案を作成する過程でパブリックコメントを募集するなど、国内外の動向を踏まえて入念に制度設計が行われています。背景には、スマホ市場においてApple・Googleの2社による寡占状態への懸念がありました。欧米ではEUのデジタル市場法(DMA)などプラットフォーム規制の動きが先行しており、日本もこうした潮流を受けてスマホ新法の整備に踏み切った経緯があります。つまり、スマホ新法は国際的な規制強化の追い風を受けつつ、日本の実情(2社独占による競争制限)に対応したものといえます。
スマホ新法の施行によって、スマホユーザーの利用環境にはどのような変化がもたらされるでしょうか?まず、ユーザーはスマホを初期設定する際に、検索エンジンやブラウザなどのデフォルトアプリを自由に選択できるようになります。また、AppleのiPhoneではこれまで不可能だった代替アプリストアからのアプリ入手が現実味を帯び、Androidでもユーザーがより多様なアプリストアや決済方法を選べる環境が整備されます。これにより、ユーザーはアプリやサービスを選ぶ際に複数の選択肢を比較し、より安価または自分に合った方法を選択できるようになるため、利便性が向上し、場合によっては価格的なメリットも享受できるでしょう。例えば、同じアプリでもストア間の競争により価格差が生じ、より安く入手できるケースが出てくる可能性があります。
一方で、選択肢が広がることによる注意点も存在します。複数のストアや決済手段が乱立すると、ユーザーにとって「どこからアプリを入手すれば安全か」「どの決済方法が安心か」といった判断が複雑になる恐れがあります。また、新法の施行当初はそれを悪用しようとする不正なアプリストアや詐欺的な決済リンクが出現するリスクも指摘されています。スマホ新法はユーザーの利益を最大化するための法律ですが、ユーザー側も自ら情報収集し、安全な選択を心がける必要があるでしょう。
スマホ新法の正式名称「スマホソフトウェア競争促進法」とその制定の背景・概要・目的をわかりやすく詳しく解説
改めて、スマホ新法の正式名称は「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」です。その名の通り、スマートフォンで利用される特定のソフトウェア分野における競争を促進することを目的としています。公正取引委員会はこの法律を略して「スマホソフトウェア競争促進法」あるいは単に「スマホ法」などと呼称しています。名前が長いため、本記事では便宜上「スマホ新法」と呼びますが、正式名称が示す範囲や目的を理解することが重要です。つまり、スマホ新法は単なる新規制ではなく、「特定ソフトウェア事業者」の競争制限的な行為を是正する競争法的な性格を持つ法律だと言えます。
スマホ新法が生まれた背景には、AppleとGoogleという巨大プラットフォーマー2社によるモバイル市場の寡占状態がありました。日本のスマホOS市場はiOSとAndroidでほぼ100%を占め、アプリ配信もAppleのApp StoreとGoogleのGoogle Playストアが中心でした。この状況では、両社が自社のビジネスモデル(例えば30%の手数料収入や自社サービスの優遇)を維持する一方、他社が市場に参入・競争する余地が狭められているとの批判がありました。欧米ではすでにEUのデジタル市場法などでアップルやグーグルの独占的慣行に規制を加える動きが進んでおり、日本も同様の危機感からスマホ新法の検討が始まりました。つまり、国内市場の構造問題(2社による高い市場支配)と海外の規制動向が相まって、本法制定の原動力となったのです。
スマホ新法の制度概要を整理すると、まず対象となる「特定ソフトウェア」は先述の4分野(OS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン)です。これらの分野で市場支配的な事業者(日本ではAppleとGoogle)が「特定ソフトウェア事業者」に指定され、法律の規制対象となります。公正取引委員会は2025年3月にApple(および子会社のiTunes)とGoogleを正式に指定し、同年12月の施行までに詳細なガイドラインを策定しました。ガイドラインでは、特定ソフトウェア事業者が従うべき禁止事項や遵守事項が具体的に示されています。例えば、「特定のアプリストアのみを利用させる行為の禁止」「外部の決済手段利用を妨げる行為の禁止」「標準アプリ(ブラウザ・検索エンジン等)を固定・優遇する行為の禁止」など、後述するようなポイントが網羅されています。これらは要するに、AppleやGoogleが自社プラットフォーム上で自社サービスだけを有利に扱い、他社のサービス提供を不当に制限することを禁じるルールです。
公正取引委員会はスマホ新法の執行主体として、ガイドラインの周知と監督を行います。違反があった場合、同委員会は特定ソフトウェア事業者に対し是正命令を出し、従わない場合には課徴金(罰金に相当するもの)を科すことが可能です。課徴金は違反行為による関連売上の一定割合となる見込みで、抑止力のある金額設定がされると報じられています。また、この法律にあわせて公取委は事業者向けに詳細なガイドラインを公表しており、特定ソフトウェア事業者だけでなく、広く関連企業が留意すべき運用ルールを提示しています。スマホ新法は、公取委による監督体制と具体的な運用指針(ガイドライン)をセットで整備することで、実効性の確保を図っているのです。
スマホ新法でiPhone・Androidの使い方はどう変わる?ユーザー体験に対する具体的な影響と新機能
スマホ新法の施行により、iPhone(iOS)とAndroidのプラットフォームにも具体的な変更が生じます。まず注目すべきは、Appleが提供するiOSにおける代替アプリストアの解禁です。Appleは日本市場向けに、App Store以外の外部アプリストアを利用できるようiOSを改変すると発表しました。ただし、「何でも自由にインストールできる」ようになるわけではなく、Appleは独自の認証プロセスを導入して外部ストアを審査・許可するとしています。具体的には、外部のアプリストア運営者はAppleの定める継続的な要件を満たす必要があり、Appleは外部ストアで配信されるアプリにも基本的な安全審査(公証)を行う方針です。この公証プロセスによって、Appleはマルウェアや不正アプリからユーザーを守る最低限のチェックを維持するとしています。iOSの最新版(Appleの発表ではiOS 16.2または26.2と表現されています)でこれらの変更が実装され、日本の開発者・ユーザーは順次その恩恵を受けられる見込みです。
一方、Androidでは既にある程度オープンなモデルが採用されていましたが、スマホ新法を受けてさらにユーザーへの選択画面の提示が強化されます。具体的には、Androidスマホを初期セットアップする際に、ユーザーがデフォルトの検索エンジンやWebブラウザを選択できる「チョイススクリーン」が表示されるようになります。Googleはこの対応を2025年12月2日から開始し、Android 15以降を搭載する全ての端末で順次実装すると発表しました。また、Android向けのGoogle Playストアでは、外部決済の選択肢拡大が行われます。Googleはゲーム以外のアプリでは既に一部認めていた「ユーザー選択型課金」(User Choice Billing)プログラムを、ゲームアプリを含むすべてのアプリに拡大適用し、デベロッパーが自社の決済システムを利用できるようにするとのことです。これにより、AndroidアプリでもGoogle Play決済以外の決済手段(例えばアプリ内ブラウザでの外部決済や別サービス経由の決済)をユーザーに提示できるようになります。
AppleとGoogleの具体的な対応としては、Appleは2025年12月17日に公式発表を行い、スマホ新法遵守のためのiOS変更点を公表しました。その中で、Appleは代替ストアや代替決済を受け入れる代わりに、前述した公証プロセスやストア認証などの新しい安全対策を導入することを明らかにしています。また、Appleは若年層ユーザー保護の機能強化(保護者による制限機能の充実や不適切コンテンツ遮断など)にも触れており、新法による開放がユーザーの安全を損なわないよう努める姿勢を示しました。一方のGoogleは、日本語版公式ブログでスマホ新法への対応方針を説明しており、上述のチョイススクリーン導入や決済プログラム拡充に加えて、「Androidはもともとオープンモデルであるため多くの要件は既に満たしている」と強調しています。例えば、「Androidではサードパーティ製アプリストアのインストールが元々容易」「ChromeやAndroidでは常に別のブラウザ・検索に切り替え可能」といった点を挙げ、自社のアプローチが新法の趣旨と整合していることを示しました。
では、こうした変更によりユーザーの体験はどう変わるでしょうか?まず、スマホの初回セットアップ時に、ユーザーはこれまで自動的に設定されていた検索エンジンやブラウザについて、複数の選択肢から明示的に選べるようになります。例えば、AndroidスマホではGoogle検索以外にYahoo!やBingなど候補が提示され(実際には日本語対応や利用状況等の要件を満たした上位5社が提示される予定)、ユーザーは好みの検索エンジンを選択できます。iPhoneでもiOSのアップデートによって、初回起動時にSafari以外のブラウザを選ぶ画面(チョイススクリーン)が表示されるテストが始まっています。また、アプリの入手方法については、ユーザーはAppleのApp StoreやGoogle Playストアだけでなく、公認された代替ストアや直接配布(ウェブサイト経由の配信)など、より多様な経路からアプリを入手できるようになります。さらに、アプリ内課金に関しても、アプリが用意する外部決済のリンクをクリックしてウェブで支払う、というような新しい支払いフローが許容されるため、ユーザーにとっては支払いオプションが増えることになります。例えば、これまでiPhoneのアプリでは外部への購入リンクが禁止されていたためアプリ内で商品を買えないケース(Kindleアプリで電子書籍が買えない等)がありましたが、今後はアプリ内から外部サイトに誘導して購入完了することも可能になります。このように、スマホ新法後はユーザー体験が「一社の規約に縛られた閉じた環境」から「複数の選択肢が開かれた柔軟な環境」へシフトすると言えます。
もっとも、ユーザー側には注意すべき点もあります。選択肢が増えることで利便性は向上しますが、その反面、セキュリティ面でのリスクも認識しておかねばなりません。例えば、公式ストア以外からアプリを入手する場合、それが信頼できるストアかどうかをユーザー自身が見極める必要があります。Appleは公認ストア制度を導入しますが、それでもApp Storeと比べてセキュリティ審査が限定的になるため、ユーザーが注意を払うべき部分が増えます。また、アプリ内の外部決済リンクを利用する際も、リンク先のサイトが正規のものであるか確認することや、不審な画面でクレジットカード情報を入力しないといった基本的な対策がより重要になります。幸い、主要プラットフォーマーもこうしたリスク低減策を講じています。Appleはセキュリティソフト(公証システム)や年齢制限の強化などで新たな脅威に備えると述べています。Googleも「ユーザーの安全とセキュリティに関する重要な要件」を外部決済プログラム参加条件に課すなど、安全性と利便性の両立を図る姿勢です。ユーザーとしては、新法施行後のスマホを使いこなす上で、公式情報や信頼できる情報源から安全な利用方法を学び、「知らないと損するポイント」を押さえておくことが大切です。
スマホ新法のメリット・デメリットとは一体何か?ユーザーと開発者の視点から利点と課題を徹底比較・徹底解説
スマホ新法の導入によって生まれるメリットとデメリットは、スマホの利用者(ユーザー)とアプリ提供者(開発者・企業)の立場で異なる側面があります。それぞれの視点から、利点と課題を整理してみましょう。
まずユーザーにとってのメリットですが、なんと言っても選択肢の拡大が大きな恩恵です。アプリストアや決済方法、ブラウザ・検索エンジンなど各種サービスを自分の好みや条件に合わせて選べるようになるため、従来よりもスマホの使い勝手を自分好みにカスタマイズできます。例えば、「このアプリは別ストアのほうが安いからそこで入手しよう」といった選択が可能になれば、ユーザーはより安価にアプリやコンテンツを手に入れられるでしょう。また、外部決済が解禁されることで、クレジットカード以外の支払い方法(電子マネーや銀行振込等)がアプリ内で使えるようになる可能性もあります。これはユーザーの利便性向上につながります。さらに、競争が促進されることでサービスの質も向上する期待があります。複数のストアが競うことでサポート体制やUIが改善されたり、決済手数料競争で価格が下がったりと、ユーザーは多方面でコスト減やサービス向上という恩恵を享受できるでしょう。
一方、ユーザーのデメリットとしては、セキュリティリスクの増大が挙げられます。公式ストア以外からアプリを入手できるようになると、悪意ある第三者が偽のアプリストアを立ち上げ、マルウェア混入アプリを配布するといった危険性も高まります。実際、新法施行後には「○○ストア解禁!」と謳ってユーザーを誘導し、詐欺やウイルス感染を狙うサイトが出てくる可能性があります。ユーザーはこれまで以上に警戒心を持ち、アプリの出所や権限要求をチェックするなど自己防衛が必要です。また、選択肢が多くなることで情報が錯綜し、どのストアや決済を使うべきか迷うケースも増えるかもしれません。例えば、「このアプリはどのストア版を入れるのが安全で得なのか?」といった判断に悩むと、最悪の場合誤って不正なものを選んでしまうリスクもあります。こうした混乱を防ぐには、ユーザー教育や情報提供が重要となるでしょう。
次に、開発者・企業側のメリットを見てみます。スマホ新法により、アプリ提供者はAppleやGoogleのプラットフォーム規約に縛られすぎない形でビジネス展開できる余地が広がります。具体的には、App StoreやGoogle Play以外の流通チャネルを利用できれば、30%前後のストア手数料負担を軽減できる可能性があります。実際、Appleは日本向けに手数料率の見直しを発表し、App Store経由でも開発者に有利な料率(21%や条件次第で10%など)を提示しました。また、App Store外で配信されるアプリのデジタル売上には5%の「コアテクノロジー手数料」を課すとしていますが、従来の30%に比べれば開発者の収益取り分は大幅に増える計算です。Googleも外部決済導入の場合、通常の15〜30%の手数料を10〜20%程度に抑える新体系を導入予定で、開発者の負担軽減につながります。これらにより、収益機会の拡大と収益性の向上が期待できます。さらに、複数のストアでアプリを配信できれば、一つのプラットフォーム依存から脱却し、自社サービスをより広範なユーザーに届けられるチャンスが生まれます。例えば、Epic Gamesのように自前のストアを持つ企業は、Appleの審査に左右されずにiPhoneユーザーにアプローチできるようになります。このように、開発者にとってはビジネスチャンスの増大というメリットがあるのです。
しかし、開発者・企業側にもデメリットがあります。まず、対応すべきプラットフォームやチャネルが増えることで開発・運用コストが増加する点です。これまでは「App Store用とGoogle Play用」の2バージョンを用意すればよかったものが、今後は場合によっては複数の外部ストア向けにもアプリを提供・メンテナンスする必要が生じるかもしれません。ストアが増えれば審査やアップデート手続きもストアごとに発生し、開発者にとって手間が増えるでしょう。また、外部決済を組み込む場合、自社で決済システムを用意・運用しなければならず(あるいは外部サービスを導入する)、その分の技術的・経済的コストがかかります。中小の開発者にとっては、この負担が大きいと感じるかもしれません。さらに、これまでAppleやGoogleが一括して処理していた返金対応やサポートの一部を、自社で担う場面も出てくるでしょう。例えば、外部ストアで購入したユーザーからの問い合わせ対応など、サポート業務の複雑化も予想されます。加えて、競争が激化することで、これまでプラットフォームに守られていた部分が削られる懸念もあります。大手プラットフォーマー主導の市場では露出できていたアプリが、競合サービスの台頭で埋もれてしまう、といったことも起こり得ます。
総合的に見れば、スマホ新法はユーザー・開発者双方に大きなメリットをもたらす一方、新たな課題も生み出します。そのため、メリットを最大化しデメリットを最小化するための工夫が求められます。例えば、ユーザー側では「信頼できるストアリスト」を公的機関や専門家が提示するなど、安全な選択を支援する取り組みが考えられます。また、開発者側では、セキュリティ対策を強化してユーザーの信頼を得ることや、複数チャネルを効率よく管理するツールの活用などが必要になるでしょう。公正取引委員会や関係省庁も、ガイドライン周知や違反取り締まりを徹底しつつ、企業からの相談に応じる窓口を設けています。結局のところ、スマホ新法の効果を最大化するには、法律を現場でどう運用するかが肝心です。ユーザー教育・企業の自主的取り組み・行政の監督が三位一体となって、新法の目指す「公正で自由な競争がもたらす恩恵」を実現していくことが期待されます。
スマホ新法で外部アプリストアは解禁されるのか?アプリ配信・課金ルールの主な変更点と決済手数料への影響
スマホ新法の目玉とも言える変更が、アプリストアと課金ルールの開放です。これまでAppleは自社のApp Store以外からiPhoneに公式にアプリをインストールさせず、GoogleもAndroidでは許可制で外部ストアを認めつつも主流はGoogle Playストアでした。新法施行により、Apple・Googleは自社ストア以外の代替アプリストアの提供・利用を妨げてはならなくなります。Appleは既に、日本向けにApp Store以外のストア運営を可能にするiOSの変更を案内しています。ただし、Appleの発表によれば、外部ストアには認証が必要であり、また外部ストアで配布されるアプリにもAppleによる基本的な公証審査が行われるとのことです。これはセキュリティ上のリスクを完全には排除できないまでも、できる限り抑える意図があります。言い換えれば、「外部ストア解禁」とはいえ無制限の解放ではなく一定の管理下での解禁です。ユーザーや開発者は、Appleが公式に認めたストアを通じてのみアプリを導入することが推奨され、認証されていない出所不明のストア利用は依然としてリスクが伴うでしょう。
具体的なルール変更として、スマホ新法は「特定のアプリストアのみをスマホ利用者に強制すること」を禁じています。これに応じてAppleはApp Store独占配信を緩和し、Googleも独自ストア以外でのアプリ配布を制限しない方針を明確にしました。例えば、Epic Games社が運営する独自の「Epic Gamesストア」を日本のiPhone上で利用できるようになる可能性があります。もっとも、施行直後から新ストアが乱立するかというと、認証などのハードルもあり現実的には徐々に増えていくと考えられています。いずれにせよ、アプリ配布チャネルの多様化が進む点は大きな変化です。
次に課金ルールの変更についてです。スマホ新法は、「アプリ内課金で自社提供の決済方法のみを強制し、外部の決済方法への誘導を禁じる」ような行為を禁止しています。これにより、アプリ開発者はアプリ内で自社独自の決済システムを実装したり、外部のウェブページへの支払いリンクを掲載したりすることが可能になります。Appleは既に日本のApp Storeにおいて、開発者が代替決済手段やウェブへの決済リンクをアプリ内に組み込むことを正式に認めると発表しました。ただし条件として、アプリ内にはAppleの公式決済オプション(App Store決済)も併記され、ユーザーが「Apple経由かそうでないか」を認識できるようにする必要があります。また、Appleは外部決済を利用した場合でもユーザーが一定期間内に取引を完了した際に報告義務を課し、返金対応などの導線整備も開発者に求めています。Googleも同様に、Google Play外の決済プログラムを開始し、外部決済リンクから購入が成立した場合にはサービス手数料を課す新ルールを提示しました。つまり、アンチステアリング規制(開発者がユーザーを外部購入に誘導する行為を妨げていた規制)の撤廃に伴い、Apple・Googleともに外部決済を許容する代わりに新たな運用ルールを整備している状況です。
では、手数料は実際どう変わるのでしょうか?AppleとGoogleは、新法に対応する形で日本向けの手数料体系を刷新しました。Appleの場合、App Store上でのデジタルコンテンツ販売にかかる手数料を従来30%から21%(小規模開発者やサブスク長期利用など条件付きで15%や10%)に引き下げ、その代わりAppleのIAP(アプリ内購入)を利用する場合は別途5%の決済処理手数料を上乗せする仕組みに変更しました。これにより、Apple経由で決済すれば従来同様約26%(21%+5%)がApple取り分、外部決済でユーザーが購入すればApple取り分は21%のみ、という形になります。また、アプリ内からユーザーをウェブ購入に誘導し、ユーザーがウェブで購入を完了した場合には15%(条件付き10%)の「ストアサービス手数料」をAppleに支払うルールも導入されました。さらに、App Store以外で配布されるアプリでのデジタル商品売上には、一律5%の「コアテクノロジー手数料」を課す方針も示されています。一方Googleは、外部決済プログラムにおいて、外部リンク経由で購入が成立した場合にサービス手数料として定期購読なら10%、その他のデジタル購入なら20%を課すとしています(条件により10%に減免される場合もある)。要するに、Apple・Googleともに手数料ゼロにはしないものの、大幅な引き下げを行い、開発者に収益の一部を還元する形となりました。これら新しい料率は日本市場限定のものであり、世界的にも先進的な取り組みと言えます。
開発者にとって、手数料引き下げは大きなメリットであり、収益性の向上に直結します。例えば、従来は1000円のアプリ販売で700円しか手元に残らなかったところ、新制度では約800円〜850円程度が残る計算になります(Appleの場合、外部決済を選べばApple取り分21%のみとなり、開発者取り分79%)。この差は開発者の利益率を押し上げ、ビジネスの持続性向上につながるでしょう。また、手数料構造が変わることで価格設定の自由度も増します。開発者は手数料負担が軽くなった分、ユーザーに還元する形で価格を下げることも可能ですし、逆に利益確保のために価格を維持したまま収益を増やすこともできます。競争環境の中で各社が戦略的に価格設定を見直すことで、ユーザーにとっても価格低下という恩恵が期待できます。
ユーザーの支払い方法にも変化があります。スマホ新法後はアプリ内で複数の決済オプションが提示され得るため、ユーザーは自分の好みの支払い方法を選択できる可能性が高まります。クレジットカード以外にも、例えばQRコード決済やキャリア決済、ポイント払いなどが開発者によって実装されれば、ユーザーにとっての利便性は大きく向上するでしょう。また、外部サイト経由の決済ではしばしば割引キャンペーン等が行われることも考えられるため、ユーザーが支払い時に得するケースも出てくるかもしれません。とはいえ、注意点もあります。ユーザー自身が安全な決済オプションを選ぶ目利き力が求められる場面が増えるため、不審な画面やフィッシングサイトに誘導されないよう、これまで以上に気を付ける必要があります。決済オプションが増える分、ID・パスワードや個人情報の管理も複雑になる可能性がありますから、二要素認証の活用やパスワード管理の徹底など、ユーザー側のセキュリティ意識向上も重要です。
スマホ新法でブラウザや検索エンジンは自由に選べるようになるのか?デフォルト設定変更の義務化とその意味
スマホ新法のもう一つの重要なポイントが、標準アプリ(デフォルトアプリ)の選択に関する規制です。従来、スマホの初期設定ではApple製デバイスならSafariが、AndroidならChromeが標準ブラウザとなり、特にiPhoneではユーザーが自分で設定を変えない限りSafariが事実上のデフォルトとして固定されていました。また、検索エンジンもiOSではデフォルトがGoogleに設定され、変更可能とはいえ多くのユーザーはそのまま利用していたため、競合サービスがユーザー獲得するのは困難でした。スマホ新法では、このような標準アプリの優遇を禁止し、ユーザーに初期設定時から他社サービスを選ばせるよう義務付けています。具体的には、スマホのセットアップ時や該当アプリ初回起動時に、複数のブラウザや検索エンジンの中からデフォルトに設定したいものをユーザーが選択できる画面(チョイススクリーン)を表示しなければなりません。この措置はすでにEUでWindowsに対して導入されたブラウザ選択画面などに類似した施策で、ユーザーが自発的かつ容易に他社サービスを選べる仕組みを整えるものです。
新法施行を受けて、OS初期設定での選択肢提示が順次実現されます。Googleは2025年12月より、Android端末で検索エンジンとブラウザを選ぶチョイススクリーンの表示を開始しました。この画面では、Google以外の検索・ブラウザも平等に表示され、ユーザーは自分の好みのものをデフォルトに設定できます。AppleもiPhoneで同様の措置を講じる意向で、実際にiOSのアップデートによりSafari以外のブラウザ選択肢を提示する準備を進めていると報じられています。ユーザー体験としては、スマホ購入直後のセットアッププロセスが多少長くなるものの、自分で一度選んでおけば以降は好みの組み合わせでスマホを使えるようになるメリットがあります。例えば、「最初からChromeではなくFirefoxを標準ブラウザにしたい」「検索エンジンはプライバシー重視のDuckDuckGoを使いたい」といったニーズに応えられるわけです。これはユーザー体験の質を高め、満足度向上につながると期待されます。
スマホ新法のガイドラインでは、標準アプリについて「OS提供事業者が自社のサービスを他社より優先的に扱うこと」を禁止しています。具体的には、ブラウザや検索エンジンについて初期設定で自社サービスを固定したり、ユーザーに選択画面を表示しないことは違法となります。また、それら標準アプリを端末から削除不可能にすることも禁止対象です。これにより、AppleがSafariやVoice Memosなどの自社アプリを削除不可にすることや、Googleが自社検索を変更できないような設計にすることはできなくなります。実際、GoogleのAndroidでは以前からユーザーが設定画面でデフォルトのブラウザや検索アプリを変更できましたが、新法に照らせば初回起動時に同列に選択肢を提示することが義務になります。AppleもiOSで、例えばメールアプリやブラウザをデフォルトから変更できるよう機能提供を始めていますが、今後さらに進めてすべての標準アプリ分野でユーザーが自由に選択できる環境を整える必要があるでしょう。
さらに、スマホ新法は競争を妨げる設計の禁止も謳っています。これは少し抽象的ですが、例えば「設定画面が深い階層にあってユーザーがデフォルトアプリを変更しづらい」「特定のアプリを無効化すると他の機能に不具合が起きるような設計で事実上代替アプリを使えなくする」といったUI・UX上の工夫で競争を阻害する行為を指します。ガイドライン上も明確な禁止項目として挙げられており、ユーザーが自らの選択で他社サービスに切り替えることを意図的に妨げるようなデザインは許されません。例えば、AndroidのWebViewコンポーネントがChromeに強く結び付けられていて他社ブラウザエンジンを使いづらくしている状況なども問題視されており、将来的にはAppleがiOS上でサードパーティブラウザにも独自エンジン使用を認めるか(現在はすべてWebKitベースに制限)、GoogleがAndroid WebViewを切り離して他社エンジン採用を可能にするか、といった点にも注目が集まります。
これらブラウザ・検索分野の規制強化により、市場構図にも変化が予想されます。ユーザーに選択の自由が保証されることで、FirefoxやDuckDuckGo、日本独自の検索サービスなど、これまでシェア争いで苦戦していた競合がユーザー獲得のチャンスを得ます。実際、Googleは新たにデフォルトに選ばれる検索エンジン5社を公募し選定するプロセスを開始しています。しかしながら、現時点で日本語検索の技術やサービス水準ではGoogleが圧倒的優位であり、短期的にユーザーシェアが大きく動くことは考えにくいという指摘もあります。とはいえ、中長期的には競争の門戸が開かれたことで、イノベーションの余地が生まれます。ブラウザで言えば、性能やプライバシーで特徴ある新興ブラウザがシェアを伸ばす可能性もありますし、検索ではAIを活用した次世代の検索サービスが台頭するかもしれません。ユーザーにとっても、自分に合ったサービスを選べる自由は歓迎すべきものでしょう。今後の市場展開に注目しつつ、競争が健全に機能してユーザー利益につながるよう、引き続きウォッチしていく必要があります。
スマホ新法がAppleとGoogleにもたらす影響とは?ビジネスモデルや収益構造へのインパクトと今後の戦略
スマホ新法はAppleとGoogleという巨大プラットフォーマーのビジネスモデルに直接メスを入れる性格があります。当然ながら、両社の収益構造や戦略にも大きな影響を及ぼします。
まずAppleへの影響です。AppleはApp Storeを通じたアプリ課金からの30%手数料収入を重要な収益源としてきました。日本国内でもゲームやサブスクリプションサービスから多額の手数料収入を得ていましたが、新法によってこの手数料モデルが揺らぐことになります。Apple自ら発表したように、日本向けに手数料率を引き下げざるを得なくなったのは、それだけ規制の圧力が強かった証拠です。手数料が下がれば、Appleの短期的な収益は減少します(ユーザー支払額100のうち従来30もらっていたものが21〜26程度になる)。この減収を補うため、Appleは収益源の多角化を一層進める必要に迫られるでしょう。具体的には、サービス事業全般(音楽配信、映像配信、クラウド、金融等)で収益を伸ばす戦略への転換が加速すると予想されます。また、手数料率引き下げの代わりに導入した5%のコアテクノロジー手数料など、新たな収益確保策も講じています。さらに、代替ストア解禁によってApp Storeの独占力が低下するのを見据え、プラットフォームの価値維持策に注力するでしょう。例えば、公証制度によって「Apple経由なら安全」というブランドイメージを守り、ユーザーや開発者が結局Apple認証ストアを選びたくなるような環境作りを行うと考えられます。総じて、Appleは自社の収益モデル転換と安全・信頼性確保を軸に、新時代の戦略を練っていくことになるでしょう。
Googleへの影響も見てみましょう。GoogleはAndroid OS自体はオープンソースでライセンス料収入は限定的ですが、Google Playストアの売上やデフォルト検索からの広告収入という形で間接的に莫大な利益を上げています。スマホ新法で痛手となるのは、Android端末での検索エンジンのデフォルト設定規制でしょう。これまでGoogleは自社検索をデフォルトに組み込むことで莫大なトラフィックを独占してきましたが、チョイススクリーン導入で一部ユーザーが他社検索エンジンに流れる可能性があります。もっとも、現状では競合が弱いため影響は軽微かもしれません。しかしYahoo!(実態はGoogle検索エンジンを使用)以外に独自検索エンジンを持つ国産サービスが台頭すれば、将来的にはGoogleの検索広告収入に影響が出る可能性もあります。もう一つはGoogle Playの売上減です。外部決済が広がれば、Google Playの決済手数料収入は減少しますし、最悪ユーザーが全くGoogle Playを使わず別ストアでアプリを入手することもあり得ます。ただ、GoogleはAndroidのオープン性を武器に長年ビジネスを展開しており、新法による影響はAppleほど劇的ではないとの見方もあります。「Androidは既にユーザーが自由にアプリ・サービスを選べる環境だ」という主張からも、Googleは自社モデルを大きく変えずに規制を受け流そうとしている印象です。実際、Androidには複数ストアが存在しており、Googleも昨今はクラウドやデバイス販売など収益源を多様化しています。とはいえ、Google Play経由のアプリ課金や、Chromeを介した検索広告といった既存ビジネスへの余波は無視できません。Googleは日本市場に限定した対応を余儀なくされており、これは今後他国にも波及する可能性があります。今後は、プラットフォーム運営企業としてより透明で開かれた方針を示しつつ、どうユーザーを自社サービスに留めておくかという戦略が問われるでしょう。
両社とも、セキュリティ・プライバシー対策を強化する方向に舵を切っています。Appleは前述のとおり公証(Notarization)制度を導入し、外部ストア経由でも悪意あるアプリが実行されにくい仕組みを構築中です。さらに、子供の利用に関する保護機能(アプリごとの年齢制限やコンテンツフィルタリング)を強化して、外部ストア解禁によるリスクを低減するとしています。これらはAppleが掲げる「最も安全なモバイルプラットフォーム」というブランドイメージを維持するための施策です。Googleもまた、安全性について慎重な対応を表明しており、日本のモバイルエコシステムの安全とイノベーション推進には慎重な対応が不可欠だと述べています。具体的には、外部決済導入プログラムにおいて参加デベロッパーにセキュリティ要件を課したり、チョイススクリーンで表示する検索エンジンに一定の品質条件(日本語対応や最新OS対応など)を設定したりしています。Googleにとって、「Android=安全ではない」という評判は避けねばならず、オープンモデルとセキュリティ確保の両立に腐心している状況です。
今後、AppleとGoogleの戦略はより明確に分かれていく可能性があります。Appleは規制対応を機に、サービス収益の拡大やハードウェアとの連携サービス(Apple One等のバンドル)に注力し、「手数料ビジネス」に依存しないモデルへのシフトを図るでしょう。また、セキュリティを差別化要因として「認証されたAppleプラットフォームの安心感」を前面に打ち出すと考えられます。一方、Googleは引き続きオープン路線を保ちながらも、Androidプラットフォーム上でのユーザーエクスペリエンスを向上させることでユーザーを繋ぎ留める戦略を採るでしょう。例えば、Google Playのサービス手数料を競争力ある水準(現に外部決済時は10〜20%へ引き下げ)に設定しつつ、開発者にとっても魅力的なプラットフォームであり続ける努力をするはずです。また、検索・広告事業についてもプライバシーや利便性の観点で革新を起こし、ユーザーが他社に移りにくくする施策を打ってくるでしょう。
こうした巨大プラットフォーマーの今後については、市場環境の変化にどう適応するかが鍵です。スマホ新法は両社にとって規制による痛みを伴いますが、それをバネに新たなビジネスモデルやユーザー価値創造に繋げられるかが注目されます。Appleはブランド力と垂直統合の強みを生かしてさらに独自路線を強めるかもしれません。Googleはオープンエコシステムの旗を掲げつつ、他社との連携や柔軟なビジネス展開で対応するでしょう。最終的に望ましいのは、両社が公正な競争環境の下でユーザー・開発者双方にとってより良いサービスを提供し続けることです。スマホ新法はそのためのルールを課したわけで、今後のApple・Googleの戦略展開によっては、市場全体に健全なダイナミズムが生まれることが期待されます。
スマホ新法ガイドラインの主要ポイントとは?押さえるべき禁止行為の具体例と事業者が留意すべき点を詳しく解説
公正取引委員会は、スマホ新法の施行に合わせてガイドラインを策定し、特定ソフトウェア事業者が遵守すべき具体的なルールを示しています。このガイドラインには、スマホ新法が禁じる行為や求められる対応が詳細に盛り込まれており、AppleやGoogleといった指定事業者はもちろん、広く関連する企業も参考にすべき内容です。主な禁止行為は大きく4つに分類できます。
禁止行為①:アプリストアの独占強制の禁止です。ガイドラインでは、「特定のアプリストアのみを利用させ、他のアプリストアの利用を不当に制限・妨害する行為」を明確に禁じています。これは例えば、端末上で自社ストア以外からアプリをインストールできないよう技術的にブロックしたり、他社ストアの存在をユーザーに知らせないようにすることなどが該当します。AppleがApp Store以外からのインストールを禁止していた従来の方針はまさにこのケースで、新法施行後はこうした独占的措置が是正されることになります。特定ソフトウェア事業者は、開発者やユーザーが他のストアを利用することを妨げてはならないという点を肝に銘じる必要があります。
禁止行為②:決済方法の強制とアンチステアリングの禁止です。具体的には、「アプリ内課金で自社の決済手段のみを使うことを強制し、他の決済手段の利用や外部サイトへの誘導を妨げる行為」が禁止されています。従来Appleはアプリ内購入は必ずIAP(Appleの決済)を使わせ、アプリ内に「こちらのサイトで購入できます」といった外部リンクを載せること(アンチステアリング行為)を禁じていました。このような行為は新法下では違法となり、ガイドラインも「外部決済や他社決済への誘導を妨げてはならない」と明記しています。結果として、AppleやGoogleは自社決済の強制をやめ、開発者が外部決済を実装・誘導する余地を認める運用に転換しています。これはユーザーの支払い選択肢を広げる重要なポイントであり、特定ソフトウェア事業者は自社決済に固執しすぎないように求められるということです。
禁止行為③:標準アプリ固定の禁止です。ガイドラインは、「特定の検索エンジンやWebブラウザ、音声アシスタントなどの標準アプリを初期設定で固定し、ユーザーが変更・削除できないようにする行為」を禁止しています。これは前述の通り、OS提供者が自社サービスをデフォルトに据え置いて他社サービスへの切替えを困難にする慣行をやめさせる趣旨です。AppleがSafariや自社検索をデフォルトに設定して削除不能としていたこと、GoogleがChromeやGoogle検索を事実上標準に組み込んでいたことが、この禁止行為の対象となります。新法施行後は、ユーザーに初期設定で必ず選択肢を提示しなければならず、また標準アプリであってもアンインストール可能にするか、少なくとも無効化できる手段を提供することが求められます。このルールにより、ユーザーは不要な標準アプリに悩まされることなく、好みのアプリ構成で端末を使えるようになるわけです。
禁止行為④:競争を妨げる設計の禁止です。これは上記③とも関連しますが、ガイドラインでは「ユーザーによるサービス選択や変更を不当に妨げるようなUI設計や機能提供」を禁じています。例えば、ユーザーがデフォルトアプリを変更しようとする操作を過度に煩雑にしたり、他社サービスに切り替えるとシステムの警告を頻繁に出すといった心理的圧力をかける行為が該当します。また、特定の組み合わせ(例:OSのWebViewとブラウザなど)でのみ最適に動作し、他社サービス利用時に不具合が起きるよう仕組んで競争を阻害することも問題です。要するに、表面的にはユーザーに選択肢を与えているように見せつつ、実質的に自社サービスから乗り換えづらくするような姑息な設計は許されないということです。特定ソフトウェア事業者は、自社のエコシステム維持のためにユーザーの囲い込みを図りたくなる誘惑がありますが、新法の下では公平な競争を阻害するあらゆる企みが取り締まられることを認識しておく必要があります。
以上の4点がスマホ新法ガイドラインの禁止行為の柱ですが、これらを踏まえて企業が留意すべきポイントもあります。まず、AppleやGoogleといった指定事業者は当然ガイドライン遵守が求められ、違反すれば公取委からの是正命令・課徴金といった厳しいペナルティを受けるリスクがあります。したがって、社内で法務・コンプライアンス体制を整え、新法に抵触しないようサービス設計や規約を見直すことが必須です。実際、AppleもGoogleも施行前に自社ポリシーの改定を行い、日本市場向けの特別対応を打ち出しました。次に、特定ソフトウェア事業者以外の関連企業(アプリ開発者や端末メーカーなど)も、新法の趣旨を理解して動くことが重要です。例えば、アプリ開発者はストア規約の変更に迅速に対応し、自社アプリが規約違反とならないようアップデートする必要があります。また、新たな外部ストアや決済オプションを活用する場合も、ガイドラインの範囲内で適切に実装することが大切です。公取委のガイドラインは一般にも公開されており、要点を押さえておくことで無用な違反リスクを回避できます。企業としては、社内教育やルール整備を徹底し、スマホ新法の遵守を組織文化として根付かせることが望まれます。
スマホ新法で企業・アプリ事業者は何をすべきか?今すぐ取り組むべき対応策とビジネス戦略の見直しポイント
スマホ新法の施行により、プラットフォーム事業者だけでなく、一般の企業やアプリ事業者も戦略の見直しや具体的な対応が求められます。以下に、企業・開発者が今すぐ取り組むべき主な対策を整理します。
まず、外部アプリストアへの参入検討です。アプリ提供企業にとって、AppleやGoogle以外の配信チャネルが開けたことは、自社サービス拡大のチャンスでもあります。例えば、大手ゲーム会社やIT企業などは、独自のアプリストアを開設して自社やパートナーのアプリを配信する可能性を検討してよいでしょう。Epic Gamesのように既に独自ストアを運営している企業も、日本のiOS端末向けにストア展開できるか検討を始める段階です。また、外部ストアを開設しなくとも、既存の他社ストア(たとえばAndroid向けにはAmazon AppstoreやGALAXY Store等が既に存在)に自社アプリを提供する方針もありえます。企業は自社のメリット・デメリットを踏まえ、どのチャネルを組み合わせて配信するか方針・計画を策定する必要があります。社内で関連部門を横断して検討チームを組み、技術的・ビジネス的な観点から外部ストア活用戦略を練ることが有用でしょう。
次に、代替決済システムの導入検討です。アプリ内課金でApple/Google経由に限定されない今、特にサブスクリプションや有料コンテンツを扱う企業は、自社独自の決済手段を組み込むかどうか検討するタイミングです。決済代行会社と提携して手数料の低い仕組みを導入すれば、ユーザーに値下げという形で還元することも可能になります。たとえば、動画配信サービスはアプリ内でクレジットカード直接決済を受け付ければ、Appleへの手数料負担を減らしつつユーザーには月額料金を下げる余地が生まれるかもしれません。もっとも、決済システムを自前で運用するにはセキュリティ・PCI DSS準拠などのハードルが高いため、Stripeやトークン決済サービスなど信頼性のある外部サービスを活用するのも一策です。いずれにせよ、企業は手数料削減とユーザー利便性向上を両立する決済戦略を構築する必要があります。実装コストや運用負荷も踏まえつつ、どの程度独自決済に踏み込むか慎重にプランを練りましょう。
また、アプリをガイドラインに適合させる対応も重要です。スマホ新法施行に伴い、AppleやGoogleはそれぞれストアのガイドライン(利用規約)を改訂しました。開発者は最新版の規約を精査し、自社アプリが違反にならないようアップデートを行う必要があります。例えば、Appleはアプリ内での外部決済リンク掲載を条件付きで許可しましたが、リンク先の要件や表示方法など細かなルールがあります。開発者はそれに従った形でリンクを実装しなければリジェクトされかねません。Googleも外部決済利用には事前登録やトランザクション報告の義務を課しており、手続きを踏んでSDKを組み込むことが必要です。さらに、既存のアプリについては、新法に反する表現や機能がないか点検しましょう。例えば「このアプリはApp Storeからのみ入手できます」といった記述はもはや適切でなくなりますし、他社サービスへの誘導を制限するような文言も見直すべきです。これらアップデート対応を迅速に行い、違反リスクを回避することが事業者には求められます。
ユーザーへの周知・サポートも欠かせません。スマホ新法によって利用環境が変わることを、多くの一般ユーザーは詳しく知りません。企業としては、自社サービスに関係する部分について、ユーザーにきちんと案内することが信頼維持につながります。例えば、外部決済を導入した場合、「○○ペイでのお支払いが可能になりました」「App Store経由と価格が異なる場合があります」といった説明をFAQやお知らせで提供すると良いでしょう。また、代替ストアで配信を開始するなら公式サイト等で入手方法を案内し、偽ストアへ誘導するフィッシングに利用されないよう対策します。さらに、ユーザーからの問い合わせには十分な注意喚起を行いましょう。特にセキュリティ面で、「このリンクから購入して大丈夫?」「このストアでアプリ入れて平気?」といった質問が増える可能性があります。カスタマーサポート担当者に新法に関する知識を共有し、適切に注意喚起・案内ができるよう教育することも重要です。ユーザーとの信頼関係を守るため、企業は積極的な情報提供と注意喚起の徹底を図るべきでしょう。
最後に、セキュリティ対策の強化です。企業側でも、新法後の環境変化に備えて自社サービスの安全性を確保する努力が求められます。具体的には、アプリの改ざん検知や不正利用検出を強化したり、二段階認証等のセキュリティ機能をユーザーに提供したりすることが考えられます。外部ストアでアプリを配信する場合、署名やハッシュで配布物の真正性を検証する仕組みをユーザーに案内すると良いでしょう。決済においても、フィッシング対策としてドメインの確認方法をユーザーに示したり、アプリ内ブラウザ利用時には信頼できる証明書の検証を行ったりと、可能な手段はたくさんあります。企業はこれまでプラットフォーマーに任せきりだった部分も含め、自主的なセキュリティ施策を講じてユーザーの安心感を高める責任があります。例えば、セキュリティソフト会社と連携して公式ストア以外からのアプリ導入時にスキャンを推奨するなど、エコシステム全体で安全性を確保する取り組みも考えられます。新法の理念である「自由で公正な競争」は、同時に「安全で信頼できる利用環境」が伴って初めて実現します。企業はその点を肝に銘じ、ガイドライン順守のみならず、ユーザー保護の観点から主体的に動いていくことが求められるでしょう。
施行直前に確認したいスマホ新法の「知らないと損する」ポイントとは?新法対応における注意点とセキュリティリスク
スマホ新法の施行が目前に迫った今、エンジニアや上級ユーザーのみならず一般ユーザーも知っておくべきポイントがあります。知らないままでいると損をしたり、思わぬリスクにさらされたりする可能性があるため、ここで主要な注意点と対策を整理します。
まず、外部アプリストアを利用する際の注意点です。新法によって代替ストアからアプリを入手することが技術的に可能になりますが、ユーザーはストアの信頼性をしっかり見極める必要があります。基本的にはAppleが認証したストア、Googleが公式に案内するストアのみを使うようにしましょう。例えば、AppleデバイスではAppleが提供する認証プロファイルをインストールした上で外部ストアを利用するはずで、認証されていない出所不明のストアは極力避けるべきです。Androidでも、知らないサイトからAPK(アプリのインストールファイル)を直接ダウンロードするのではなく、AmazonやSamsungなど実績のある外部ストアアプリを利用するのが安全です。また、外部ストアでアプリをダウンロードする際は、公式のアプリ名・開発者名と一致しているか確認し、レビューや評価も参考にしましょう。不審な点があればインストールを中断する勇気も必要です。要するに、「公式ストア以外=危険」では必ずしもありませんが、自己責任でリスクを理解し適切な対策を講じることが大前提になります。
次に、アプリ内で外部決済を利用する場合の注意点です。アプリ内リンクから外部ウェブサイトに飛んで決済を行うシナリオが増えると予想されます。その際、ユーザーはリンク先のURLをよく確認してください。公式サイトのドメインか、SSL証明書が有効であるかをブラウザでチェックする習慣をつけましょう。例えば、「〇〇アプリの有料プランはこちらで購入」のリンクをタップしたとき、ブラウザに表示されるURLが公式ドメインと違う綴りになっていたり、HTTP(暗号化されていない通信)で始まっていたら要注意です。フィッシング詐欺の可能性があります。決済画面ではサイトの見た目だけで判断せず、SSLの錠マークを確認し、少しでも怪しいと感じたら入力を中止することが肝心です。また、クレジットカード情報や個人情報を入力する前に、そのアプリの案内に従って安全確認ポイントをおさらいしましょう。多くの正規サイトでは決済直前に自社名と利用用途を明示しています。不安な場合、そのアプリの公式サポートに問い合わせて確認するのも有効です。新法で決済自由度が上がる恩恵を受ける一方、ユーザー側も安全確認を徹底することでトラブルを未然に防ぎましょう。
また、偽アプリストアや詐欺サイトへの警戒も忘れてはなりません。新法施行に便乗して、「○○マーケット」と称する偽のアプリストアが現れる可能性があります。特にAndroidではセキュリティ保護の薄い端末もあるため、SMSやメールで「新ストアで有料アプリが無料!」などと謳うスパムが飛んでくるかもしれません。こうした悪意あるサイトやアプリは、ユーザーからお金や情報を騙し取ろうとします。具体例としては、偽ストアアプリをインストールさせてクレジットカード情報を入力させるフィッシングや、不正な権限を要求して個人情報を抜き取るスパイウェアなどが考えられます。対処法として、まず疑わしい誘い文句のリンクは開かないことが鉄則です。万一インストールしてしまった場合は、速やかに削除し、端末のウイルススキャンを行いましょう。公式のセキュリティ情報や口コミサイトで、そのストア名・アプリ名を検索するのも有効です。いずれにせよ、「おいしい話には裏がある」くらいの警戒心を持ち、巧妙化する詐欺手法に対して具体的な対処法を知っておくことが大切です。
スマホ新法後の世界では、ユーザー自身が使うサービスやアプリを取捨選択する比重が増えます。それに伴い、セキュリティソフトやOSアップデートの重要性も増すでしょう。これまで「公式ストア頼み」でセキュリティ対策を意識してこなかったユーザーも、この機会にモバイル用のウイルス対策アプリやセキュリティ設定を見直すことをおすすめします。例えば、信頼できるセキュリティアプリを導入すれば、新規にインストールするアプリのスキャンやフィッシングサイトブロックなどが期待できます。また、OSやアプリのアップデートを怠らないことも自己防衛の基本です。AppleやGoogleは新法対応に合わせてセキュリティ機能も強化したアップデートを配信しています。最新の状態にしておくことで、知らぬ間に旧バージョンに潜む脆弱性を突かれるリスクを下げられます。特に外部ストアや外部決済を活用するユーザーは、二段階認証の有効化やパスワードマネージャーの利用など、できる範囲のセキュリティ対策を徹底することが求められます。
最後に、「知らないと損する」情報として、新法施行後にユーザーが得する可能性のあるポイントも挙げておきます。例えば、外部ストアの競争が始まれば、ストア側がユーザー獲得のためにセールやポイント還元キャンペーンを展開するかもしれません。複数のストアで価格を比較することで、より安くアプリやサービスを利用できるチャンスがあるでしょう。また、開発者独自の決済を使うことで、これまでApple/Googleへの手数料分高かった価格が値下げされる可能性もあります。そうした情報は各サービスの公式発表や技術ブログ、ニュースサイトで随時報じられるはずです。ユーザーとしてはアンテナを高く張り、自分が使っているサービスが新法施行に伴い何かお得なプランを出していないかチェックしましょう。「知らないと損する」典型例として、Appleは外部決済やウェブ購入を利用した場合に一部機能(サブスクの一括管理等)が使えないことを案内しています。逆に言えばApple経由にこだわらなければ15%前後価格が安くなるケースも考えられます。このようなメリット・デメリットを知った上で、自分にとってベストな選択をするのが新時代のスマホとの付き合い方です。
まとめると、スマホ新法施行によってユーザーには多くの恩恵がもたらされますが、それを十全に享受するためには正しい知識と慎重な行動が不可欠です。エンジニアの方々はもちろん、一般ユーザーも含め、ぜひこの節で述べたポイントを押さえて、安全かつ賢くスマホライフを送りましょう。