賃金カーブは、従業員の賃金を年齢や勤続年数の順に並べたときに描かれる曲線です。人事の現場では「自社のカーブは急すぎないか」「春闘で言う賃金カーブ維持分はいくらなのか」という、金額に落とし込む場面で使われます。この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査と賃金引上げ等実態調査、連合の2026春闘最終回答集計、JILPTの長期統計から、日本の賃金カーブの実数と、維持分と賃上げ分の切り分け方を示します。
まとめ:賃金カーブの要点
- 賃金カーブは年齢(または勤続年数)を横軸、賃金を縦軸に取った曲線で、個人の賃金決定ルールを定める賃金テーブルとは役割が違う。
- 令和7年の実数では、男性は55〜59歳の445.6千円(20〜24歳=100として181.4)でピークを打ち、女性は45〜49歳と55〜59歳の305.7千円(同127.6)が最高となる。
- 賃金カーブ維持分は、連合の2026春闘 最終回答集計の同一集計対象で見ると5,430円・1.62ポイントに相当する(定昇相当込み5.12%と賃上げ分3.50%の差)。
- カーブのフラット化は進んでいる。男女計のピーク指数は1995年の194.4から2025年は163.2へ下がり、ピーク年齢階級は50〜54歳から55〜59歳へ後ろ倒しになった。
- 定期昇給制度の内容は自動昇給27.5%・その他(業績評価など)72.4%(複数回答)で、制度があれば自動的に上がるとは限らない。
- 理想のカーブは形の分類では決まらない。人件費の総額、採用競合との水準差、格差が開く年齢階級の3点を自社データで確認して決める。
賃金カーブの定義と、賃金テーブルとの役割の違い
賃金カーブという言葉は、統計の世界でも実務の世界でも使われます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況は「男女別に賃金カーブをみると、男性では、55〜59歳で445.6千円(20〜24歳の賃金を100とすると181.4)と賃金がピークとなり、その後下降している」と記述しており、集団の年齢別賃金プロファイルを指してこの語を使っています。
賃金カーブの軸と平均賃金・指数の読み方
横軸は年齢階級または勤続年数階級、縦軸はその階級の平均賃金です。グラフ上の1点は「この年齢階級の平均賃金はいくらか」を示すだけで、特定の個人が将来たどる道筋ではありません。同じ年に働いている別々の世代を横に並べた断面図だからです。
比較しやすくするため、賃金額そのものではなく指数で示すのが一般的です。厚生労働省もJILPTも、20〜24歳の賃金を100とした指数を併記しています。金額は物価や景気で動くので、傾きだけを取り出したいときは指数を見ます。
もう一つ、賃金構造基本統計調査の「賃金」は6月分の所定内給与額である点に注意が必要です。賞与も時間外手当も含みません。年収ベースのカーブは賞与や時間外手当の年齢別の配分によって形が変わるため、自社データと突き合わせるときは定義を揃えてください。
賃金カーブと賃金テーブルの使い分け
賃金テーブル(賃金表)は、等級と号俸ごとに基本給の額を定めた表です。個人の賃金を決めるルールそのものであり、人事が直接操作できます。一方の賃金カーブは、そのルールを全社員に適用した結果として現れる集計値です。操作の対象はテーブル、観測の対象はカーブ、という関係になります。
この区別は春闘の用語にそのまま対応します。連合は用語解説でベースアップを「個別賃金水準を引き上げることです。簡単にいえば、賃金表の書き換えです」、定期昇給を「前任者(先輩)に追いつくために必要な個人別の賃金の上昇のことをいいます。簡単にいえば、賃金表上の移動です」と説明しています。表を書き換えるのがベア、表の上を動くのが定昇です。
なお、等級ごとに1つの額を置くか幅を持たせるかという設計論は、カーブの傾きを直接左右します。シングルレートとは?レンジレートとの違いと富士通・ENEOSなどの採用例で、どちらの型がどの階層に使われているかを整理しています。
賃金カーブ維持分と賃上げ分の切り分け
「賃金カーブ維持分」「賃金構造維持分」「制度維持分」は、いずれも同じ考え方を指す春闘の実務用語です。全社員を1年進めて1歳ずつ年を取らせたとき、賃金カーブの形を去年と同じに保つために必要な原資を指します。連合の2026春季生活闘争方針は、中小組合の要求について「賃金カーブ維持相当分(1年・1歳間差)を確保した上で」と書いており、1年・1歳の間差がこの原資の正体です。
2026春闘の最終集計では5,430円・1.62ポイント
連合が2026年7月3日に公表した第7回(最終)回答集計には、この内訳が読める箇所があります。賃上げ分が明確にわかる3,732組合について、定昇相当込みの賃上げが16,940円・5.12%、そのうち賃上げ分が11,510円・3.50%と併記されているためです。同じ集計対象の内訳なので差を取ることができ、賃金カーブ維持分に相当するのは5,430円・1.62ポイントとなります。
| 集計区分 | 組合数 | 定昇相当込み | 賃上げ分 | 差(維持分相当) |
|---|---|---|---|---|
| 賃上げ分が明確にわかる組合 | 3,732 | 16,940円・5.12% | 11,510円・3.50% | 5,430円・1.62ポイント |
| うち300人未満 | 2,385 | 13,936円・4.96% | 9,840円・3.51% | 4,096円・1.45ポイント |
よく引かれる「5.01%」という数字は、平均賃金方式で回答を引き出した5,368組合の加重平均であり、上の表とは集計対象が違います。連合自身も同資料で「2026年と2025年で集計対象組合が異なるため、『定昇相当込み賃上げ計』の昨年対比は整合しない」と注記しています。集計対象が違う数値どうしを引き算して維持分を出すと値がずれるので、内訳が同じ行に並んでいる集計を使ってください。
要求段階の目安も同じ構造です。連合の2026春季生活闘争方針は「賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上」を掲げていました。最終集計の3.50%と5.12%は、この2段構えの要求に対応する着地です。
定期昇給制度の内容と自動昇給・評価型の併用
賃金カーブ維持分は定期昇給とほぼ同義で語られますが、定期昇給を「毎年自動的に上がるもの」と理解すると実態を外します。厚生労働省の令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査では、定期昇給制度の内容は自動昇給が27.5%、その他(業績評価など)が72.4%です。この設問は複数回答で、自動昇給とその他の制度を併用する企業も含まれます。「その他(業績評価など)」の全てが評価結果だけで昇給額を決める制度とは限りません。
制度の有無と実施状況も分かれます。定昇制度がある企業は81.2%で、労働組合がある企業では92.3%、ない企業では77.9%です。制度がある企業のうち「定昇を行った・行う」企業は94.6%でした。76.8%は、賃金改定を実施した・予定している企業と実施しない企業を合わせた集計対象に占める割合で、実施予定を含みます。ベースアップのほうは、定期昇給制度がある企業を母数として「行った・行う」が57.8%にとどまり、労働組合がある企業の82.1%に対してない企業は49.4%と差が開いています。
つまり、賃金カーブ維持分が自動的に確保される会社ばかりではありません。連合の最終集計では、妥結済5,162組合のうち2,116組合・41.0%が、内訳を分離できない組合などを含む「確認中」でした。賃金改善分の獲得が確認できたのは2,980組合・57.7%、定昇相当分の確保だけにとどまった組合が66組合・1.3%ありました。
令和7年賃金構造基本統計調査で見る日本の賃金カーブ
ここからは実数です。令和7年調査は2026年3月24日に公表されたもので、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所52,242事業所を集計しています。一般労働者の賃金は男女計340.6千円(前年比3.1%増)、男性373.4千円、女性285.9千円で、平均年齢44.4歳・平均勤続年数12.7年でした。
男女で異なるピーク年齢と傾き
| 年齢階級 | 男女計(千円) | 指数 | 男(千円) | 指数 | 女(千円) | 指数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 242.8 | 100.0 | 245.7 | 100.0 | 239.6 | 100.0 |
| 25〜29歳 | 279.4 | 115.1 | 288.0 | 117.2 | 268.8 | 112.2 |
| 30〜34歳 | 312.3 | 128.6 | 330.4 | 134.5 | 283.2 | 118.2 |
| 35〜39歳 | 340.6 | 140.3 | 366.2 | 149.0 | 292.4 | 122.0 |
| 40〜44歳 | 364.3 | 150.0 | 398.2 | 162.1 | 303.6 | 126.7 |
| 45〜49歳 | 377.9 | 155.6 | 420.7 | 171.2 | 305.7 | 127.6 |
| 50〜54歳 | 388.8 | 160.1 | 437.5 | 178.1 | 305.4 | 127.5 |
| 55〜59歳 | 396.2 | 163.2 | 445.6 | 181.4 | 305.7 | 127.6 |
| 60〜64歳 | 329.3 | 135.6 | 358.5 | 145.9 | 270.8 | 113.0 |
| 65〜69歳 | 285.3 | 117.5 | 304.3 | 123.9 | 240.7 | 100.5 |
男性は55〜59歳の445.6千円(指数181.4)でピークを打ち、60〜64歳で358.5千円へ下がります。女性は45〜49歳と55〜59歳の305.7千円(同127.6)が最高で、概況も「男性に比べ賃金の上昇が緩やかとなっている」と記述しています。男性が20代前半の1.81倍まで上がるのに対し、女性は1.28倍で頭打ちになる、という差です。
差が最も開くのは50代です。20〜24歳では男女差が6.1千円しかないのに対し、55〜59歳では140千円近くまで広がります。男女間格差を議論するときに新卒時の初任給を見ても差が見えないのは、このためです。
企業規模別:大企業ほど傾きが急で、中企業は40代後半から前年割れ
企業規模別の賃金は男女計で大企業385.1千円、中企業326.2千円、小企業305.6千円、規模間格差(大企業=100)は中企業84.7、小企業79.4です。ここでの大企業は常用労働者1,000人以上、中企業は100〜999人、小企業は10〜99人です。ただし、この平均値だけでは規模差の性格がわかりません。年齢階級ごとに見ると、格差は特定の年代に集中しています。
20〜24歳の規模間格差は中企業92.0・小企業87.6ですが、55〜59歳では中企業80.9・小企業71.9まで開きます。そして65〜69歳では中企業96.6・小企業95.4とほぼ解消します。規模差は20代前半にも存在しますが、開き方は中高年で大きくなります。なお、20〜24歳の平均賃金は新卒者の初任給とは異なります。
ピークの位置も違います。大企業は55〜59歳の465.9千円、中企業も55〜59歳の376.7千円ですが、小企業は50〜54歳の336.6千円で頭打ちになります。加えて中企業は対前年増減率が45〜49歳で0.6%減、50〜54歳で0.7%減、55〜59歳で2.2%減と、中高年層でマイナスに転じました。全体が3.1%増でも、中企業の一部の年齢階級では平均賃金が前年を下回っています。ただし、労働者構成の変化も影響するため、この集計だけで若年層への原資配分が原因とは判断できません。
雇用形態別:正社員以外のカーブはほぼ水平
正社員・正職員358.8千円に対し、正社員・正職員以外は241.7千円で、雇用形態間賃金格差(正社員・正職員=100)は男女計67.4です。年齢階級別に追うと、正社員・正職員以外は20〜24歳203.5千円、30〜34歳233.8千円、40〜44歳230.6千円、50〜54歳229.7千円、55〜59歳232.5千円と、30代でわずかに上がった後はほぼ水平のままです。
結果として格差は年齢とともに拡大し、55〜59歳で54.8と最も開きます。一方、60〜64歳では正社員・正職員以外が279.9千円へ上がり、格差は76.4へ縮みます。正社員側の平均が低く、正社員以外の平均が高い年齢階級を比較しているため、比率が接近しています。ただし、この表だけでは再雇用の影響や同じ人の待遇変化は特定できません。処遇差の説明責任を検討するときは、この年齢別の見え方の違いを押さえておいてください。派遣における実務の詰め方は同一労働同一賃金と派遣|労使協定方式の選び方と毎年度改定の実務で扱っています。
1995年と2025年の比較による賃金カーブのフラット化
フラット化は感覚的に語られがちですが、JILPTが公表している長期時系列の統計表(2026年4月30日更新、資料出所は厚生労働省 賃金構造基本統計調査)を使えば年次比較ができます。男女計・各年の20〜24歳を100とした指数です。
| 年齢階級 | 1976年 | 1995年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 30〜34歳 | 156.1 | 147.5 | 128.6 |
| 35〜39歳 | 166.6 | 167.1 | 140.3 |
| 40〜44歳 | 167.4 | 179.8 | 150.0 |
| 45〜49歳 | 166.9 | 191.0 | 155.6 |
| 50〜54歳 | 166.7 | 194.4 | 160.1 |
| 55〜59歳 | 145.2 | 178.5 | 163.2 |
賃金カーブのピーク指数の低下とピーク年齢の変化
1995年のピークは50〜54歳の194.4でした。2025年のピークは55〜59歳の163.2で、水準は31.2ポイント低くなり、位置は1階級後ろへ動いています。1976年は40〜44歳の167.4がピークで、40代前半から50代前半までほぼ横ばいの台形でした。比較した3時点では、1995年のピーク指数が最も高くなっています。
若年層側の変化も見逃せません。30〜34歳の指数は1976年156.1、1995年147.5、2025年128.6と一貫して下がっています。20代前半に対する30代前半の相対的な賃金差が小さくなっています。ただし、異なる人々の年齢階級別平均なので、同じ人の入社後10年間の昇給を示すものではありません。初任給の引き上げが続く一方で30代の水準が追随していないと、この形になります。
勤続年数別の賃金指数の低下と比較上の制約
年齢ではなく勤続年数で切ると、変化はさらに大きく出ます。勤続0年を100としたとき、勤続30年以上の指数は1976年233.8、1995年224.5、2025年161.8です。年齢階級別のピーク低下(194.4から163.2)より落差が大きく、長く勤めることの賃金上の見返りが縮んだことを示しています。勤続年数別のカーブは、採用時の賃金や職種、年齢構成にも左右されるため、自社ではこれらの条件も分けて確認してください。
ここで1点、統計上の断層に注意してください。JILPTの注記は「賃金構造基本統計調査では、令和2(2020)年調査より一部の調査事項や推計方法などが変更されている」としています。掲載値の差にはこの変更の影響も含まれるため、制度変更を分離した厳密な変化量とは解釈しないでください。
理想の賃金カーブを決める判断基準
「賃金カーブの理想」で検索すると、一律上昇型・早期立ち上げ型・上昇後フラット型といった形の分類がまず出てきます。ただし、これらは形を後から名付けたラベルであり、どれを選ぶべきかの判断基準にはなりません。自社のカーブが右肩上がりだとわかったところで、傾きを上げるべきか下げるべきかは決まらないからです。形の分類から入るのは避けて、次の3点を自社データで確認することをおすすめします。
自社カーブの判断指標:維持原資・市場水準・社内分布
1つ目は、カーブを1年進めたときの人件費増、つまり賃金カーブ維持分の絶対額です。全社員を1歳進めたときの総額を出せば、賃上げ余力のうちどれだけが現状維持に消えるかがわかります。2026春闘の最終集計では、定昇相当込み5.12%のうち1.62ポイントが維持分に相当していました。自社で維持分の比率が高い場合は、昇給額の設計、年齢・等級別の人数構成、賃上げ分の原資を分けて確認してください。賃上げ分が小さいだけでも、この比率は高くなります。
2つ目は、採用競合との水準差を年齢階級別に取ることです。全年齢の平均賃金だけでは年齢構成の違いと水準差を区別できません。中企業の大企業に対する指数が20代前半では92.0、55〜59歳では80.9であるとおり、差は特定の年代に集中します。自社が負けている階級を特定してから原資を配分してください。
3つ目は、社内の分散です。統計の賃金カーブは平均値の線なので、同じ年齢階級の中でどれだけばらついているかは見えません。評価による賃金差が年数とともに広がるかは、昇給の累積方法や給与レンジの上限によって異なります。自社の同一年齢階級について、賃金の分布と評価履歴を確認してください。平均が理想形でも、下位層が市場水準を割っていれば離職要因になります。実際、賃金を理由とした引き止め交渉が持つ限界は退職の引き止めで給料アップ|カウンターオファー受諾者の6割が1年以内に退職した調査データで整理しています。
フラット化を目標に掲げるべきではない場面
カーブのフラット化による人件費への影響は、どの年齢層の賃金を変えるかと人数構成によって異なります。若年層の賃金を引き上げて傾きを緩くする場合、人件費は増えることもあります。令和7年調査では、中企業の45〜54歳が前年割れした一方、20〜24歳は4.5%増でした。ただし、これは年齢階級別の平均値の動きであり、各社が中高年の賃金を据え置いて若年層へ配分したと確認できるものではありません。仮に中高年への配分抑制を続ける場合は、社員が想定していた処遇とのずれや、定着への影響を確認してください。
フラット化を選ぶなら、年功に代わる賃金決定の軸を先に用意してください。役割や職務の大きさで等級を定める設計が現実的な選択肢で、ミッショングレード制とは?役割等級の仕組み・給与の決め方と導入企業の実例に仕組みと導入例をまとめています。軸がないままカーブだけ寝かせると、単なる賃下げとして受け取られます。
賃金カーブの作り方と見直しの手順
自社のカーブを描く作業自体は表計算ソフトで完結します。手順は4段階です。
まず、比較対象となる一般労働者の年齢(または勤続年数)と、6月分の所定内給与額を1人1行で並べます。基本給だけでなく所定内給与に含まれる諸手当を含め、賞与と時間外手当は外します。短時間労働者は別に集計してください。厚生労働省の統計と重ねるなら、ここで定義を揃えておかないと後の比較が成立しません。
次に、年齢を5歳刻みの階級にまとめ、階級ごとの平均額を算出します。統計と同じ20〜24歳から5歳刻みにしておくと、後で比較が効きます。ここで、該当者が数名しかいない階級を必ず記録しておいてください。1人や2人の階級は平均が個人の額そのものになり、線が跳ねます。
3番目に、20〜24歳の平均を100とした指数列を作ります。金額のグラフでは絶対額の差を、指数のグラフでは基準年齢に対する相対的な上昇幅を比較できます。指数にして初めて、令和7年調査の男女計の列(115.1、128.6、140.3、150.0、155.6、160.1、163.2)と重ねられます。
最後に、折れ線グラフにして統計値と重ねます。見るべきは3点です。傾きが統計より急か緩いか、ピークの年齢階級が比較対象をそろえた統計とどの程度異なるか、そして途中で不自然に段差がある階級はないか。段差がある場合、その前後で等級制度の運用が変わっている可能性があります。
見直しのタイミングとしては、人件費の総額が事業計画を超えたとき、採用競合との水準差が特定の年代で開いたとき、等級制度そのものを改定するときが挙がります。等級の定義を作り直すなら、賃金より先に職務の記述を固めるほうが順序として無理がありません。書き方はジョブディスクリプションの記載例|職務記述書の項目と書き方を先行20社の実務から解説にまとめています。
よくある質問
賃金カーブのピークは何歳ですか?
令和7年賃金構造基本統計調査では、男性が55〜59歳の445.6千円、女性が45〜49歳と55〜59歳の305.7千円です。男女計では55〜59歳の396.2千円がピークで、60〜64歳では329.3千円へ下がります。ただしこれは一般労働者の6月分の所定内給与額の平均であり、賞与や時間外手当は含みません。
賃金カーブの理想は?
形の分類に正解はありません。判断材料になるのは、カーブを1年進めたときの人件費増(賃金カーブ維持分)が賃上げ原資に占める比率、採用競合との年齢階級別の水準差、同一年齢階級内のばらつきの3点です。2026春闘の最終集計では、定昇相当込み5.12%のうち1.62ポイントが維持分に相当していました。
大企業には賃金カーブはありますか?
あります。むしろ中小企業より傾きが急です。令和7年調査では大企業のピークが55〜59歳の465.9千円であるのに対し、小企業は50〜54歳の336.6千円で頭打ちになります。規模間格差(大企業=100)は20〜24歳では小企業87.6ですが、55〜59歳では71.9まで開きます。
賃金カーブ維持分とは何ですか?
全社員が1年ずつ年を取っても賃金カーブの形を前年と同じに保つために必要な原資のことで、賃金構造維持分・制度維持分とも呼ばれます。連合の2026春季生活闘争方針は「賃金カーブ維持相当分(1年・1歳間差)」と表現しています。ベースアップは賃金表そのものを書き換えるものなので、維持分とは別枠で扱います。
定期昇給があれば賃金カーブは自動的に維持されますか?
されるとは限りません。厚生労働省の令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査では、定期昇給制度の内容は自動昇給が27.5%、その他(業績評価など)が72.4%です(複数回答)。また定昇制度がある企業は81.2%にとどまり、労働組合がない企業では77.9%です。制度の有無、実施の有無、額の決まり方の3つを分けて確認してください。